日本の介護現場では、深刻な人手不足が続いており、その解決策の一つとして外国人材の受け入れが進められています。特に、特定技能「介護」の在留資格を取得した外国人の雇用が広がる中で、重要な役割を果たしているのが「登録支援機関」です。支援機関の選び方次第で、外国人材の定着や施設運営の安定性は大きく左右されます。
しかし、「どの支援機関を選べばよいのか?」「費用に見合う価値はあるのか?」といった疑問や不安を抱く現場の声も少なくありません。登録支援機関の制度や役割を十分に理解しないまま契約を進めると、支援不足やトラブルにつながるリスクも存在します。
本記事では、登録支援機関の役割から選び方、導入の実務ステップまでを、最新データと事例を交えて網羅的に解説します。
株式会社BKUのご紹介
株式会社BKUは、ミャンマーの送り出し機関と日本国内の登録支援機関を運営する人材紹介会社です。ミャンマー人材の文化・言語などの理解はもちろん、外国人材の紹介から採用、入国手続きまで一貫してサポートできることが当社の強みです。
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この記事の監修者

伊勢明敏
株式会社BKU代表取締役|日本で光学機器メーカーで研究職として4年間従事。その後ミャンマーに移住して、株式会社BKUを創業。9年間の在住中では、外国語大学と仏教大学にてミャンマーの言語・文化を専門的に学習。ミャンマーの言語・文化・制度すべてに精通した人材紹介から、累計400名以上の技能実習生・特定技能人材の送り出し実績を持つ。
登録支援機関は使うべき?介護施設にとっての必要性とは
特定技能「介護」の在留資格を持つ外国人を雇用するにあたり、重要な存在となるのが「登録支援機関」です。制度上、外国人材の受け入れ企業は、生活支援や定期的なフォローといったサポートを実施する義務を負っています。しかし、これらをすべて自社で担うには、多くの時間と専門知識、そして外国語対応が求められ、現場にとっては大きな負担となりかねません。
ここでは、登録支援機関の基本的な役割と、介護施設にとっての利用価値、そして最新の登録状況について詳しく解説します。
登録支援機関の基本的役割
登録支援機関とは、特定技能外国人を受け入れる企業(特定技能所属機関)に代わって、外国人が日本で安心して働き、生活できるように支援を行う専門機関です(※1)。出入国在留管理庁に正式に登録され、一定の要件を満たしている事業者だけが「登録支援機関」として認められます。
入国時の空港送迎、生活オリエンテーション、住居確保、相談対応、日本語学習支援、職場でのトラブル対応など、生活面・就労面にわたる多岐のサポートが挙げられます。これらの項目は、法律で定められた「義務的支援」として位置づけられており、未実施の場合、受け入れ企業には行政指導や受け入れ停止といった処分が下されることもあります。
こうした支援をすべて自社で対応するのは、多くの施設にとって大きな負担となるため、登録支援機関に業務を委託することで、専門的で適切な対応が可能となり、外国人材の雇用を円滑に進めることができます。登録支援機関は、単なる業務代行者ではありません。外国人材の定着と活躍を支える「制度的な要」として、特定技能制度の運用において不可欠な存在であり、いわば“縁の下の力持ち”として介護現場を支える重要な役割を担っています。
※1引用元:出入国在留管理庁
介護分野で登録支援機関が必要とされる理由
介護分野において登録支援機関が必要とされる理由は、外国人労働者が日本で安心して働き続けるためには、就労支援だけでなく、生活支援まで幅広くサポートが求められるからです。介護現場は専門性が高く、加えて文化や言語の違いによるコミュニケーション課題も発生しやすい職場環境です。そのため、外国人本人が業務に集中できるよう、生活面を含めた支援体制を整えることが不可欠です。
登録支援機関は、住居の確保、日本語学習支援、行政手続きの補助、トラブル相談対応など、外国人の日本での生活基盤を総合的にサポートします。これにより、受け入れ施設側も本来の介護業務に集中できるため、業務効率とスタッフの定着率向上の両面で大きなメリットがあります。
特に介護分野では、単なる人材確保だけでなく、「長期的に安心して働き続けてもらうこと」が重要であり、登録支援機関の活用は現場の安定運営と外国人材の定着支援、双方にとって不可欠な要素となっています。
【最新】登録支援機関一覧と現状
出入国在留管理庁の公式サイトでは、『登録支援機関一覧』(※2)が掲載されており、所在地や対応可能言語での検索が可能です。2025年5月8日時点で、全国の登録支援機関数は10,104件に達しています(※3)。また、厚生労働省が行ったアンケートによると、登録支援機関を「利用している」法人は82.6%、「利用していない」法人は17.4%でした。
登録支援機関が、最も受入れている海外の国・地域は以下のとおりです(※4)。
ベトナム | 43.2% |
インドネシア | 16.5% |
ネパール | 7.9% |
ミャンマー | 5.0% |
一方、介護分野における支援内容に対応できる登録支援機関は限定的であり、たとえば『介護知識・技能の学習の機会』に対応している機関は36.0%、『介護福祉士国家試験対策』に対応している機関は20.1%にとどまっており、登録支援機関を選ぶ時は介護分野に長けているか、見極める必要があります(※5)。
※2,3引用元:出入国在留管理庁「登録支援機関一覧」
※4,5引用元:国際厚生事業団「令和3年度 介護分野における特定技能協議会運営委員会事務局報告」
特定技能「介護」はどんな人材?在留データから見る現状
外国人材を受け入れるための在留資格のひとつとして注目されているが「特定技能制度」です。特定技能制度の導入により、介護分野においても即戦力となる外国人材の受け入れが加速しています。しかし、「実際にどんな人が働いているのか」「技能実習や介護福祉士との違いは何か」など、実態の理解が不十分なまま採用を進めてしまうケースも少なくありません。
ここでは、2025年時点の最新データをもとに、特定技能「介護」の内訳、他の資格との違いについて解説していきます。
【2025年5月時点】特定技能「介護」の外国人在留数
現在最新で更新されているのが、2024年12月末時点で、特定技能「介護」の在留外国人数は44,367人に達しています(※6)。これは、特定技能全体(28万人超)の中でも上位に位置し、介護業界における外国人材の存在感が年々高まっていることを示しています。特に、2019年の制度開始からわずか5年で4万人を突破した点は注目に値します。
この増加背景には、以下のような要因が挙げられます。
-
介護分野の人手不足が慢性化していること
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技能実習から特定技能への移行がスムーズであること
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他分野と比較して就業までの手続きが簡便であること
さらに、政府は2024年度から5年間で最大82万人の特定技能外国人を受け入れる方針を掲げており、介護分野はその中核をなす分野のひとつです。このことからも、今後のさらなる拡大が見込まれています。
※6引用元:出入国管理庁「特定技能在留外国人数の公表等」
どんな人が働いているのか(国籍・年齢・スキル)
実際に介護の現場で働く特定技能外国人は、国籍・年齢・スキルにおいて一定の傾向があります。
ベトナムからの人材が半数近くを占めており、次いでインドネシア、フィリピン、ミャンマーと続き、登録支援機関が受け入れている国籍順と同様です。多くが技能実習を経て特定技能へと移行しています。彼らは日本での生活・就労経験を積んでいるため、即戦力となりやすいという強みがあります。

また、特定技能外国人の年齢は18~29歳が約7割を占めており(※8)、比較的若い人材が多く就業している点も特徴です。スキル面では、日本語能力試験(JLPT)N4程度の読解力が求められ、さらに「介護技能評価試験」と「介護日本語評価試験」の両方の合格が必要です。
こうした要件を満たす人材は、単に労働力としてだけでなく、一定の日本語運用力と専門知識を備えた即戦力として現場に貢献しています。
※7引用元:出入国管理庁「特定技能在留外国人数の公表等」
※8引用元:厚生労働省|国際厚生事業団PDF
技能実習生・介護福祉士との違い
特定技能「介護」と混同されやすいのが、技能実習制度や介護福祉士資格との違いです。制度上の目的と受け入れ条件に明確な違いがあります。
まず、技能実習生は「技能移転」を目的とした制度であり、本来は開発途上国への技術還元を目的としたもので、労働力としての受け入れは想定されていません。就労はあくまで「訓練」であり、一定年数を経て帰国する前提です。
一方、特定技能「介護」は「人手不足分野への労働力確保」が目的で、就労ビザの一種です。更新すれば最長5年間の就労が可能であり、将来的には介護福祉士を取得して「在留資格・介護」へとステップアップすることもできます。また、介護福祉士は国家資格であり、日本語能力(JLPT N2)や専門的な知識・実務経験が必要です。取得すれば在留期間に上限がなく、永続的な雇用も可能になる点で、特定技能とは一線を画します。
このように、受け入れ目的・期間・スキル要件が異なるため、それぞれの制度の特徴を理解した上で、施設の受け入れ戦略を設計することが求められます。
【介護分野】登録支援機関の支援内容
登録支援機関は、単なる「相談窓口」ではありません。法務省が定めた支援義務に基づき、受け入れ施設と外国人材の双方をサポートする多岐にわたる業務を担っています。支援内容は大きく分けて、実施が義務付けられている「義務的支援」と、施設や外国人材の状況に応じて追加で行う「任意的支援」の2種類に分類されます。
ここでは、登録支援機関が担う具体的な支援内容について、義務的支援と任意的支援に分けて詳しく解説していきます。
登録支援機関が担う「義務的支援10項目」
登録支援機関が必ず提供しなければならないのが「義務的支援」です。これは、出入国在留管理庁が制度として定めた10項目からなる支援内容であり(※9)、外国人材が日本で安心して働き、暮らしていくための最低限のサポートを指します。
具体的には、事前ガイダンスの実施、出入国時の送迎、住居確保、生活に必要な契約支援(携帯電話や銀行口座など)、日本語学習の機会提供、相談・苦情対応、職場環境整備、定期面談と報告、転職支援、日本人との交流促進などが含まれます。
これらを確実に履行することで、外国人材の不安を軽減し、離職やトラブルを未然に防ぐことが可能になります。
義務的支援は単なる形式ではなく、実際の職場定着や満足度に直結する重要な支援要素です。制度順守だけでなく、現場の安定にも大きく貢献します。
※9引用元:出入国在留管理庁「義務的支援10項目」
差が出る「任意的支援」とは
任意的支援とは、登録支援機関や受け入れ企業が法律上義務づけられている支援項目以外に、外国人材の職場定着や生活安定をさらに促進するために自主的に提供する支援のことを指します。義務的支援に加えて、各企業や支援機関の裁量で行われるサービスです。
例えば、日本語検定の受験サポート、キャリアアップ講座の実施、地域社会との交流イベントの企画、健康診断やメンタルヘルスサポート体制の強化などが挙げられます。また、外国人材向けの金融リテラシー講座や、介護技術のスキルアップ研修を提供している支援機関も存在します。
任意的支援を充実させることは、外国人材の満足度向上と離職防止に大きく貢献します。特に介護分野では、言語や文化の違いによる不安を軽減するため、きめ細かなケアが求められます。任意的支援を積極的に行っている支援機関は、より外国人に選ばれやすく、施設側も安心して受け入れられる傾向にあります。
支援内容は施設によってどう違う?
登録支援機関が行う支援には、法令で定められた「義務的支援10項目」がありますが、実際には施設ごとに支援内容の細かい違いが見られます。契約内容や施設の受け入れ体制、現場のニーズによって、提供される支援の質や範囲が変わるからです。
登録支援機関が提供する支援内容は、法令で定められた義務的支援に加えて、施設のニーズや地域性、登録支援機関の対応能力によって多様化しています。施設側は、自施設の課題や状況を踏まえ、適切な支援を提供できる登録支援機関を選定することで、外国人材の定着率や職場満足度の向上を図ることができます。
このように、支援内容は一律ではないため、施設側は「何を支援してくれるのか」「どこまで対応してくれるのか」を事前に確認し、自施設の課題や状況に合う支援機関を選ぶと良いでしょう。
介護施設が登録支援機関を利用するメリット
介護施設が特定技能外国人を受け入れる際、自社で支援業務を完結させる選択肢もありますが、現実には多くの施設が登録支援機関を活用しています。その背景には、支援機関を利用することで得られる多くのメリットが存在するからです。
登録支援機関を適切に活用することで、外国人材の安定的な雇用と職場定着を実現することができます。ここでは、介護分野において登録支援機関を利用することによる、具体的なメリットについて解説していきます。
支援業務を外注することで“本業”に集中できる
登録支援機関を利用する最大のメリットは、外国人材の生活支援を専門家に任せられる点にあります。特定技能制度では、住居の確保、行政手続き、日本語学習支援など、生活面のサポートが義務づけられていますが、これを施設内で全て対応するのは現実的ではありません。
入国後の生活オリエンテーション、住居確保、日本語学習支援、行政手続きサポートなど、幅広い義務的支援を専門家が代行してくれます。これにより、介護職員は本来業務である介護サービスに専念でき、現場の負担軽減と業務の質向上が期待できます。
トラブル対応や外国人本人からの相談窓口設置も登録支援機関が担うため、施設側がイレギュラー対応に追われるリスクも大幅に減少します。結果として、外国人材の職場定着率が向上し、安定した人材確保に結びつくのです。施設運営において、支援業務を外部専門機関に任せることは、もはや不可欠な選択肢といえるでしょう。
専門スタッフによる対応で、外国人材の定着率が安定する
登録支援機関による適切な支援は、介護施設における外国人材の定着率向上に大きく貢献します。特定技能「介護」で来日する外国人にとって、日本での生活は言葉や文化、職場環境の違いに直面する連続です。この不安や負担を和らげるためには、生活面・就労面のきめ細かな支援が不可欠です。
登録支援機関は、外国人材に対して生活オリエンテーションの実施、住居確保のサポート、日本語学習機会の提供、定期的な面談を通じたフォローアップなどを行い、職場や地域での適応を促します。こうした支援により、外国人材が孤立感を抱えずに安心して生活できる環境が整い、離職リスクが大きく下がります。
また、支援機関が介護現場の事情に詳しい場合、業務上の悩みも早期にキャッチアップできるため、問題が深刻化する前に対処が可能です。施設側にとっても、採用コストを無駄にせず、長期的な戦力として外国人材を育成できる点は非常に大きなメリットといえます。支援体制の質が、外国人材の定着率に直結するのです。
制度の申請や手続きの不備が軽減できる
登録支援機関を活用することで、制度に基づく申請や報告の手続き不備を未然に防ぐことができます。特定技能制度では、四半期ごとの定期報告や支援計画の履行記録の保管、在留資格更新時の書類作成など、法律で定められた実務が数多くあります。これらを怠れば、行政指導や受け入れ停止といった厳しい措置を受けるリスクもあるため、対応には制度の理解と経験が求められます。
登録支援機関に委託すれば、報告義務の期限管理や書類の整備、入管庁による実地確認時の対応まで、専門スタッフが代行し、施設側の不安や負担を大幅に軽減してくれます。このように、支援機関の活用は、制度トラブルを回避し、安心して外国人材を受け入れる体制づくりに直結する重要な選択肢といえるでしょう。
継続的な受け入れ体制が整い、採用計画を立てやすくなる
登録支援機関の活用は、単発的な人材補充にとどまらず、介護施設の長期的な採用戦略を支えてくれる存在です。登録支援機関は継続的な外国人材の受け入れに対応できる体制を持ち、制度面・生活面の支援を安定して提供できるため、施設側は1名ごとの個別対応に追われることなく、年間採用枠の計画、複数人の同時受け入れなど、先を見据えた人材確保に集中できます。
実際に、支援機関を利用する施設の多くが「人材の安定確保がしやすくなった」と評価しており、支援の質が人材の定着にも寄与している点がポイントです。人手不足が慢性化するなかで、採用の継続性を担保できる体制は、施設経営の安心材料にもなります。
このように、登録支援機関は「その場しのぎの採用」から「持続可能な人材戦略」への転換を後押しする存在といえるでしょう。
登録支援機関なしでも受け入れ可能?自社支援の現実と注意点
登録支援機関に委託せず、介護施設自らが外国人材支援を内製化するという選択肢も存在します。実際、一部の施設ではコスト削減や支援体制の柔軟性向上を目的に、自社支援へ踏み切るケースも見られます。しかし、自社支援には高い支援能力と法令遵守意識が求められ、誰でも簡単に選択できる方法ではない点に注意が必要です。
ここでは、登録支援機関に頼らず自社で支援を行う場合の条件や注意点について詳しく解説し、施設がどのように準備を進めるべきかについて具体的なポイントを整理していきます。
自社で支援するために必要な条件とは
介護施設が登録支援機関を利用せず、自社で直接特定技能外国人の支援を行う選択肢もあります。ただし、自社支援を行うには一定の条件を満たす必要があり、簡単にできるわけではありません。
まず、前提として受け入れ企業自身が、登録支援機関と同様の「義務的支援10項目」をすべて適切に実施できる体制を整えていることが求められます。具体的には、支援責任者・支援担当者の配置、外国人材への生活支援、日本語学習支援、トラブル対応体制の整備などが必要です。さらに、外国人とのコミュニケーションをスムーズに行うため、対応可能な言語を話せるスタッフを配置することも重要な要件となります。
また、支援業務の実施状況について出入国在留管理庁への報告義務も発生するため、法令遵守を徹底できる社内管理体制が不可欠です。こうした条件を満たした場合に限り、自社支援が認められます。施設側に十分なリソースと経験がない場合は、無理に自社支援を選ばず、専門の登録支援機関へ委託する選択肢も慎重に検討すべきでしょう。
【比較】自社対応と委託支援、どちらが向いているか
介護施設が自社で特定技能外国人への支援を行う場合には、メリットとデメリットの両面をしっかり把握しておく必要があります。
まず、メリットとしては、支援の質を自施設独自にカスタマイズできる点が挙げられます。外国人材の生活支援や就業支援を、施設の方針や現場のニーズに即した形で提供できるため、より柔軟な対応が可能になります。また、登録支援機関への委託費用が不要となるため、長期的に見るとコスト削減効果も期待できます。
一方でデメリットとしては、まず支援業務にかかる手間と負担が増加します。支援担当者の配置、定期面談の実施、行政への定期報告など、通常の業務に加えて多くの追加作業が発生します。さらに、外国人材への支援に不慣れな場合、支援の質が低下し、本人の不安や早期離職につながるリスクも高まります。
自社支援を選ぶ際は、人的リソースとノウハウが十分に備わっているかを慎重に見極めることが重要です。安易な判断は施設運営に大きな負担をもたらす可能性があるため、メリット・デメリットを冷静に比較検討しましょう。
失敗しない登録支援機関の選び方|6つのチェックポイント
登録支援機関は数多く存在しますが、そのすべてが高品質な支援を提供しているとは限りません。特に介護分野では、外国人材に対するサポートの質が職場の雰囲気や離職率に直結するため、登録支援機関選びは慎重に行う必要があります。
ここでは、介護施設が特定技能外国人材を安心して受け入れるために押さえておくべき、登録支援機関選びの6つのチェックポイントについて詳しく解説していきます。それぞれのポイントを理解することで、施設に最適なパートナー選びができるようになるでしょう。
1.支援内容の明確さと柔軟対応
登録支援機関を選ぶ際にまずチェックすべきポイントは、提供される支援内容が明確に定義されていて、かつきちんと実施されているかどうかです。支援計画書や契約書に、どのような支援を、いつ、どのような方法で行うかが具体的に記載されているかを必ず確認しましょう。
たとえば、「日本語学習支援あり」とだけ書かれていても、具体的なレッスン形式やサポート体制が不明確であれば、実際に十分な支援が行われないリスクがあります。また、生活相談やトラブル対応についても、窓口の設置状況、相談対応の体制などが明文化されているかが重要です。
介護現場では、外国人材が抱える課題は一人ひとり異なります。そのため、支援内容が画一的でなく、個別事情に合わせた柔軟な対応ができる支援機関を選ぶことが、外国人材の定着率を高め、施設運営を安定させることにもつながります。支援計画の具体性と実施の有無は、比較検討するべき重要な要素です。
2.対応できる言語・国籍とフォロー体制
登録支援機関を選定する際は、対応できる言語や国籍の範囲、そしてそれを支える支援体制の充実度を必ず確認することが重要です。特に介護分野では、外国人材との円滑なコミュニケーションが業務の質に直結するため、母国語による支援体制が整っているかは非常に大きなポイントです。
ベトナム、フィリピン、インドネシアなど、介護分野で多く採用されている国の言語に対応できるスタッフが在籍しているか、また緊急時やトラブル発生時に迅速にサポートできる体制が整っているかをチェックしましょう。単に「多言語対応」と記載されているだけではなく、実際にどの言語に何人体制で対応できるのか、支援内容は具体的にどうかを確認することが大切です。
また、異文化理解や生活習慣への配慮を含めたサポートができる体制が整っているかも、外国人材が安心して長く働くためには欠かせません。対応できる言語・国籍の範囲と実際の支援体制を事前にしっかり見極めることが、ミスマッチを防ぐ最大のポイントになります。
3.介護分野の専門性と支援実績
登録支援機関を選ぶ際には、単に支援実績があるかだけでなく、介護分野での具体的な支援実績と専門知識の有無を必ず確認する必要があります。介護分野は専門性が高く、利用者の安全確保やサービスの質が直接問われるため、一般的な支援とは異なるきめ細かな対応が求められるからです。
これまでに介護施設への外国人材支援経験がどれくらいあるか、支援した人数、施設の種類(特養、老健、グループホームなど)に応じた支援実績があるかを確認しましょう。また、介護業界特有の用語や現場運営の理解度が高い支援担当者が在籍しているかも大切なポイントです。
加えて、外国人材に対する介護技術研修、日本語レベル向上支援など、介護職に特化した支援プログラムを独自に提供している支援機関は、外国人スタッフの定着率も高い傾向にあります。単なる一般的な支援ではなく、「介護現場に適応するための支援」ができるかどうかを必ず見極めましょう。
4.費用の妥当性と見積りの透明性
登録支援機関を選ぶ際には、委託費用の内訳が明確で、見積書の内容が透明であるかを必ず確認する必要があります。支援サービスの価格は機関によって異なり、不明瞭な内訳のまま契約してしまうと、後から追加費用を請求されるリスクがあります。
通常、費用には「義務的支援業務」「生活支援プログラム運営」「相談対応」などが含まれますが、任意的支援や通訳費用が別途加算されるケースも見られます。見積書や契約書には、支援内容ごとの料金設定、更新費用、解約条件が明記されているか必ず確認しましょう。なお、介護分野における登録支援機関の委託費用は、1名あたり月額2万円〜5万円前後が一般的な相場です(※10)。初期費用が必要な場合もあるため、トータルコストを比較して無理のない委託先を選ぶことが大切です。
※10引用元:一般社団法人日本料飲外国人雇用協会
5.アフターフォローの充実度
登録支援機関を選定する際、支援開始後のアフターフォローの充実度は非常に重要な評価ポイントです。支援は単発のサポートではなく、外国人材が長期間安定して働き続けるために、継続的なケアが求められるからです。
定期的な職場訪問や面談を通じて、就労状況や生活状況を把握し、必要に応じてフォローアップを行う体制が整っているかを確認しましょう。また、外国人本人からの相談を受け付ける窓口が常設されているか、トラブル発生時に迅速に対応できる仕組みがあるかも重要な要素です。
特に介護分野では、業務負担や文化的ギャップによるストレスが原因で、早期離職に至るケースも少なくありません。こうした問題を未然に防ぐには、支援機関によるきめ細かなアフターフォローが不可欠です。初期支援だけでなく、半年後、1年後と継続的に状況を確認し、必要な支援を柔軟に提供できる機関を選ぶことが、外国人材の定着と施設運営の安定に直結します。
6.契約条件・解約ルールの明文化
登録支援機関を選ぶ際には、契約内容や解約時の条件が文書で明確に取り交わされているかを必ず確認する必要があります。口頭での取り決めや、曖昧な説明だけで契約を進めると、後々トラブルになった際に非常に不利な立場に立たされるリスクがあります。
特に注目すべきは、支援の具体的な内容、提供範囲、料金体系、契約期間、更新条件、解約の手続き方法と違約金の有無などが、契約書に詳細に記載されているかどうかです。支援内容が変更された場合の対応や、解約時に発生する費用についても事前に明文化されていることが望ましいです。
また、登録支援機関側の都合で十分な支援が行われなかった場合に契約解除できる条項があるか、契約違反があった際の責任範囲がどこまで及ぶか、といったリスク回避策も文書でチェックしておきましょう。しっかりと文書で交わされた契約は、施設側・外国人材双方を守るための大切な備えになります。
登録支援機関って儲かるの?費用相場と実態を徹底解説
登録支援機関を介して特定技能外国人を受け入れる際、最も気になるのが「費用の妥当性」と「支援の実態」です。介護施設にとっては、限られた人材採用コストの中で、どれだけ効果的に人材を確保し、支援の質を担保できるかが経営判断のカギを握ります。
ここでは、「1人あたりにかかる委託費用の目安はどの程度か」「支援機関の収益構造は“ビジネスとしてどう成り立っているのか”」「見積書で確認すべき注意点は何か」といった観点から、登録支援機関を選ぶ際の判断材料を整理していきます。
実際の委託費用は?1人あたりの相場と初期費用の目安
登録支援機関に委託する場合の費用は、特定外国人ひとり当たりの平均は28,386円(※11)です。介護分野では一般的に1名あたり月額2万円〜5万円程度が目安とされています。この金額には、生活オリエンテーションの実施、日本語学習支援、住居確保の補助、定期的な職場訪問や面談、トラブル対応など、制度で定められた義務的支援10項目の実施が含まれます。また、契約時に初期費用として登録料や事務手数料(1万〜5万円前後)が別途かかることもあります。
支援項目ごとに単価設定されている場合の主な相場は以下の通りです(※12)。
支援項目 | 相場(1回または1ヶ月あたり) |
事前ガイダンス | 2万〜6万円/1回 |
生活オリエンテーション | 2万〜8万円/1回 |
定期面談 | 1万〜2万円/1回 |
トラブル・苦情対応 | 1万〜2万円/1回 |
日本語学習支援 | 1万〜3万円/月 |
住居確保支援 | 2万〜3万円/回 |
入国時の送迎 | 1万〜3万円/回 |
顧問基本料金(オプション) | 2.5万〜5万円/月 |
複数名(3〜5名以上)を一括で委託する場合は、1名あたりの月額単価が割引となる場合もあるため、支援機関ごとに料金体系を確認しましょう。
※10引用元:出入国在留管理庁「技能実習制度及び特定技能制度の現状について」
※11参考:キャリアリンクファクトリー、アイデムグローバル
支援機関は“儲かるビジネス”?実態はどうなのか
登録支援機関の収益構造については、一般的に「高額なマージンを取って儲けている」との誤解がありますが、実際には多くの業務とコストがかかっており、利益率は高くないのが現状です。
登録支援機関は、特定技能外国人の受け入れに際して、法令で定められた10項目の義務的支援を提供する必要があります。これには、定期面談や職場訪問、24時間体制での相談対応など、人的・時間的コストが多くかかります。例えば、1人あたり月額2万~3万円の契約であっても、担当者1人が複数名の外国人をサポートしている場合、1名あたりの利益率は非常に限られます。
また、法務省への報告業務や支援記録の管理など、見えにくい部分の業務も多く発生します。これらの業務を適切に行うためには、専門的な知識と経験が必要であり、短期的な利益確保よりも継続的な信頼獲得が重視されるビジネスモデルとなっています。
ある企業が行った、2021年の調査によると(※13)、登録支援機関のうち支援人数が5名以下の機関が80%を占めており、10名以下となると90%に達しています。登録支援機関事業単体で収益化ができている機関は非常に少ないとされています。
※13参考:jaefn「セミナーレポート「特定技能登録支援機関 成功のための経営戦略」」
損をしないために|見積書で確認すべき点
登録支援機関と契約する前に、見積書の中身をしっかり確認することが非常に重要です。見積書には、必ず義務的支援の各項目(住居支援・日本語学習・相談対応など)が明示されているか確認が必要です。また、任意的支援(キャリア支援・地域交流など)の有無や、その費用が別途かかる場合は、別明記されているかをチェックすべきです。
さらに、「通訳翻訳対応費」「24時間サポートの有無」「緊急対応費」などが一括表示になっている場合は、内訳の確認が必須です。不明瞭な料金設定は、後のトラブルの火種になりかねません。解約手数料や契約更新料といった追加費用も、事前確認が欠かせません。
こうした内容がしっかり記載されている見積書であれば、契約後のトラブルを防ぐうえで大きな安心材料となります。 不明点がある場合は、契約前に必ず説明を受け、納得できるかたちで文書化しておくことが大切です。
登録支援機関を変更・解約したいときの対処法
登録支援機関を慎重に選んだつもりでも、実際に支援を受けてみると、期待していた対応が得られなかったり、トラブル対応に不満が生じたりするケースは少なくありません。こうした場合、施設側は登録支援機関を変更するという選択肢を取ることが可能です。しかし、変更には正しい手続きと慎重な対応が求められます。
ここでは、登録支援機関を変更する際に確認すべき典型的なケース、手続きの流れ、現場で気をつけるべきポイントについて解説します。
変更を検討すべき典型ケースとは?
登録支援機関の選定を誤ると、介護施設にとって深刻なトラブルを引き起こすリスクがあります。代表的なケースとしては以下のようなものがあります。
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支援業務の未履行:生活オリエンテーションを実施しない、日本語学習支援が形だけで機能していない、定期面談が形骸化している等
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トラブル対応の遅れ:外国人材の不安が長期化し、早期離職に繋がるケース
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費用トラブル:契約時に料金体系が不明瞭で、後から追加費用を請求された
これらの問題は、支援機関の選定時に「安さ」や「知名度」だけで判断してしまった結果として起こりやすいものです。定期的に支援の履行状況を確認し、不信感や齟齬が生じた時点で変更も視野に入れましょう。
変更時の手続きと必要書類
登録支援機関を変更する際には、出入国在留管理局への届出が必要です。主な手続きは以下の通りです(※14)。
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必要書類:「支援委託契約の締結又は終了に係る届出書」と「支援委託契約の変更に係る届出書」の2種類を提出
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提出期限:変更が発生してから14日以内
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添付内容:旧支援機関と新支援機関の情報、契約日、支援内容、支援計画書の修正または新規作成 など
また、支援機関の変更は外国人本人にも影響を及ぼすため、新たな支援内容についての説明と同意取得も必要です。手続きの遅れや不備があれば、施設側が行政処分の対象となる可能性もあるため、慎重に進めましょう。
※14引用元:出入国在留管理庁「特定技能所属機関による支援委託契約に係る届出」
変更時に施設が気をつけるべきこと
登録支援機関を変更する場合、いくつか注意すべき点があります。最も気をつけたいのは、支援の空白期間が生じることです。手続きがスムーズに行われなかった場合、外国人材が必要なサポートを受けられず、不安や混乱を招く可能性があります。また、新たな支援機関が引き継ぎに慣れるまでの間、支援の質が一時的に低下する恐れもあります。
加えて、支援機関の変更は、外国人本人にとっても環境の変化によるストレスとなり、職場定着に影響を与える可能性や、引き継ぎミスが発生した場合には、生活支援や行政手続きに不備が生じ、施設や本人が行政指導を受けるリスクも発生します。
こうしたリスクを回避するためには、変更を決める段階から、新旧支援機関間での引き継ぎ計画をしっかり立てることが重要です。あわせて、外国人本人への丁寧な説明と安心感の提供、新たな支援機関の支援体制チェックを怠らず、スムーズな移行を心がけましょう。
失敗しないために!登録支援機関を使った採用までのステップ
登録支援機関を活用して特定技能「介護」人材を採用することは、単なる契約行為ではありません。制度に則った採用を進めるには、事前の準備から実際の受け入れ、さらには採用後の運用管理に至るまで、段階ごとに押さえるべき重要なポイントが存在します。特に、外国人材を初めて受け入れる介護施設にとっては、制度の理解不足や現場との連携ミスが思わぬトラブルを招くことも少なくありません。
ここでは、「採用前に準備すべきこと」「契約後の流れ」「導入後のフォロー体制」の3段階に分けて、スムーズな導入のための実践的なポイントを整理します。
採用前に準備すべき3つのポイント
特定技能「介護」人材の受け入れを始める前に、施設側でも準備しておくことがあります。外国人材の採用には国内採用と異なる制度・文化・契約上の配慮が求められるため、以下の3点を見直しましょう。
- 受け入れ体制の整備
日本語での意思疎通が困難な場合に備えた支援体制や、生活面でのサポート計画の策定が必要です。
- 募集要項の明確化
仕事内容、給与、勤務時間、福利厚生などを正確に伝えることが、ミスマッチの予防につながります。
- 登録支援機関との協議
どこまでの支援を任せられるか、費用はどの程度か、実績はあるかを事前に確認しておくことで、契約後のトラブル回避にもつながります。
こうした準備をすることで、安心して採用のスタートを切れます。
契約から外国人材受け入れまでの流れ
登録支援機関との契約が済んだ後は、採用活動から在留手続き、受け入れ準備へと進みます。この一連の流れを正しく把握しておくことで、想定外の遅延やトラブルを避けることができます。
- 雇用契約の締結…採用が決定した外国人材と、特定技能雇用契約を締結します。この契約は、外国人が理解できる言語で作成する必要があります。
- 支援計画の策定…受入れ機関は、外国人材の生活や就労を支援するための「支援計画」を策定します。この計画には、生活オリエンテーションや日本語学習の機会提供などが含まれます。
- 在留資格認定証明書の申請…地方出入国在留管理局に対し、「在留資格認定証明書交付申請書」を提出します。申請には、雇用契約書や支援計画書などの関連書類が必要です。
- 査証(ビザ)の申請と取得…在留資格認定証明書が交付された後、外国人材は日本の在外公館で査証の申請を行い、取得します。
- 入国と受け入れ準備…外国人材の入国に合わせて、受入れ機関は住居の確保や職場の準備を行います。また、空港での出迎えや生活オリエンテーションの実施も必要です。
- 就労開始…外国人材は、受入れ機関での就労を開始します。以降、定期的な面談や報告書の提出など、継続的な支援が求められます。
導入後のフォロー体制をどう整えるか
外国人材の受け入れは「雇ったら終わり」ではありません。導入後の支援体制をどう構築するかによって、定着率や職場の満足度が大きく左右されます。まず、受け入れ後3か月ごとの定期報告や、生活・業務での困りごとに対応する相談窓口の設置が求められます。登録支援機関が中心となって対応するケースが一般的ですが、施設側でもフォロー担当者を決めておくことで、連携のスピードが格段に向上します。
また、日本語能力の向上支援や、同僚職員との信頼関係構築の場づくりなど、日々の職場環境も大切です。外国人材が孤立せずに働けるよう、継続的な声がけや関与が欠かせません。このように、受け入れ後の運用こそが、制度の真価を引き出す鍵となります。導入直後から“定着”を見据えた仕組みを構築しておくことが、長期的な雇用安定につながるのです。
登録支援機関に関するよくある質問(FAQ)
登録支援機関を介して特定技能「介護」人材の受け入れを検討する際、多くの介護施設が共通して抱える疑問や不安があります。ここでは、現場でよくある質問を掲載しています。
在留資格やビザの手続きは誰が行う?
在留資格の取得やビザの申請といった入管手続きは、通常、受け入れ企業が責任を持って行う必要があります。ただし、実際の申請作業や必要書類の準備は、行政書士などの専門家に委託するケースが多いです。また、登録支援機関にこれらの事務作業の補助を依頼することも可能です。
たとえば、在留資格認定証明書の交付申請、在留期間の更新、資格変更などは正確な書類作成が求められ、誤りがあると審査が遅延する恐れがあります。そのため、制度に精通したパートナーとの連携が欠かせません。
採用前に外国人材を選べるのか?
登録支援機関を通じて外国人材を選ぶことは可能です。ただし、すべての支援機関で対応できるわけではありません。登録支援機関は本来、外国人材の生活・就業支援を行う専門機関ですが、実際には人材紹介業を兼ねるケースが増えており、施設の希望に応じた人材紹介を行う機関も存在します。施設側が重視するポイント(性格、対人コミュニケーション力など)をヒアリングしたうえで、支援機関がマッチングを図るという形式が主流です。
実際のマッチングでは、履歴書や試験結果の提示、Web面談による事前確認も一般的に行われています。ただし、人材紹介を行うには「職業紹介事業」の許可が必要なため、すべての登録支援機関が対応しているわけではありません。採用を見据えて選ぶ際は、紹介機能の有無を確認するのも良いでしょう。
トラブル時の相談窓口は?
受け入れた人材とのラブルが発生した際は、まず登録支援機関や人材紹介会社に相談するのが一般的です。たとえば、職場での不適応、言語面での困難、生活面でのトラブルなどについて、支援機関が仲介に入って調整してくれるケースも多くあります。
登録支援機関との間で支援内容の不履行や不適切な対応といったトラブルが生じた場合は、出入国在留管理庁(入管庁)へ報告することが可能です。特定技能制度では、登録支援機関が「義務的支援10項目」を適正に実施することが法令で定められており(出入国管理及び難民認定法施行規則)、受け入れ機関(介護施設)や外国人本人がその履行状況について通報できる制度が整備されています。
入管庁は、報告内容をもとに支援機関に対して事実確認を行い、重大な違反が認められた場合には改善命令や登録の取消しといった行政処分を行うことがあります(※12)。報告は原則として書面提出またはオンラインフォームから行います。
また、介護分野では、外国人介護人材の受け入れに関する業界団体(例:外国人介護人材受入れ協議会など)が相談窓口を設けている場合があり、制度や契約の悩みについて中立的な立場でのアドバイスを受けることができます。このように、トラブル発生時には施設単独で抱え込まず、制度の所管官庁や第三者機関を活用することが、トラブルの深刻化を防ぐ鍵となります。
※12引用元:入管庁ホームページ「特定技能外国人受入れに関する運用要領(第9章 登録支援機関)」
支援機関に義務違反があった場合の責任は?
登録支援機関が法令で定められた義務的支援を適切に実施しない場合、出入国在留管理庁は当該機関に対して指導や登録の取消しなどの措置を講じることがあります。また、受入れ機関も、登録支援機関の選定や監督において適切な対応を行わなかった場合、責任を問われる可能性があります。
そのため、施設側としても「任せきり」にせず、支援内容の進捗や対応状況を定期的に確認し、必要に応じて記録を残しておくことが大切です。信頼できる支援機関との連携と、透明性のある運用が、制度運用上のリスク回避につながります。
登録支援機関を上手に活用して、特定技能「介護」の採用を成功させよう
介護施設にとって、特定技能外国人材の受け入れは、今後の人手不足対策としてますます重要性を増しています。しかし、単に採用するだけでは、現場に定着し、力を発揮してもらうことはできません。外国人材が安心して働き続けるためには、制度に基づいたきめ細やかな支援体制が不可欠です。
その支援を専門的に担うのが登録支援機関です。登録支援機関は、生活支援や職場環境の整備、日本語学習支援、トラブル対応などを体系的に実施し、施設側の負担を軽減しながら、外国人材の職場定着を後押しします。適切な支援を受けた外国人スタッフは、安心して業務に取り組むことができ、施設全体の運営安定にも寄与します。
今後、外国人介護人材の採用を拡大したいと考えている施設にとって、信頼できる登録支援機関との連携は極めて重要な選択肢です。施設ごとの採用戦略に合わせた支援体制を整備し、特定技能「介護」の外国人材を中長期的な戦力として迎え入れるためにも、登録支援機関の積極的な活用を検討してみてください。