高齢化が進む日本の介護分野において、外国人介護士の活躍は必要不可欠な存在です。彼らが国家資格である「介護福祉士」の資格を取得し、専門職としてのスキルを高め、安定して長く日本で働くことは、人材確保を目指す受け入れ施設にとって重要と言えるでしょう。
この記事では、外国人スタッフが介護福祉士資格を取得するための主要な4つのルート(EPA、留学、特定技能、技能実習)それぞれの特徴やプロセスを詳しく解説します。
そして、合格に向けた学習支援策や無料ツール、試験における配慮事項などの情報も網羅しており、外国人材の定着を進めたい受け入れ施設にとって有益な内容となっています。
株式会社BKUのご紹介
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この記事の監修者

伊勢明敏
株式会社BKU代表取締役|日本で光学機器メーカーで研究職として4年間従事。その後ミャンマーに移住して、株式会社BKUを創業。9年間の在住中では、外国語大学と仏教大学にてミャンマーの言語・文化を専門的に学習。ミャンマーの言語・文化・制度すべてに精通した人材紹介から、累計400名以上の技能実習生・特定技能人材の送り出し実績を持つ。
高齢化が進む日本の介護分野において、外国人介護士の活躍は必要不可欠な存在です。彼らが国家資格である「介護福祉士」の資格を取得し、専門職としてのスキルを高め、安定して長く日本で働くことは、人材確保を目指す受け入れ施設にとって重要と言えるでしょう。
この記事では、外国人スタッフが介護福祉士資格を取得するための主要な4つのルート(EPA、留学、特定技能、技能実習)それぞれの特徴やプロセスを詳しく解説します。
そして、合格に向けた学習支援策や無料ツール、試験における配慮事項などの情報も網羅しており、外国人材の定着を進めたい受け入れ施設にとって有益な内容となっています。
- 1 【2025年4月最新】外国人における介護福祉士の資格取得の人数と割合
- 2 介護福祉士を持つ外国人に適用される「2つの在留資格」
- 3 なぜ、在留資格「介護」は「介護ビザ」と呼ばれるのか?
- 4 外国人が介護福祉士の資格を取得するための4つのルート
- 5 外国人にとって介護福祉士の資格取得がもたらす3つのメリット
- 6 受け入れ施設にとっての外国人が介護福祉士の資格を取得する3つのメリット
- 7 外国人の介護福祉士国家試験の合格率は?
- 8 外国人が介護福祉士の資格を取得するための第一歩「にほんごをまなぼう」とは?
- 9 介護福祉士の資格取得を目指す外国人介護士のための【レベル別の無料テキスト5選】
- 10 外国人の介護福祉士試験対策:つまずきやすい科目「社会の理解」
- 11 【事例あり】外国人が間違いやすい介護福祉士の試験問題3選
- 12 外国人の介護福祉士試験「ふりがな付き問題用紙」は事前申請しないと使えない
- 13 外国人の介護福祉士国家試験の制度が2026年に変わる!パート合格とは?
- 14 外国人が介護福祉士の資格を取得するために使える補助金は?
- 15 外国人が介護福祉士の資格を取得した時の給料設定の目安は?
- 16 まとめ
【2025年4月最新】外国人における介護福祉士の資格取得の人数と割合
介護福祉士の資格を持つ外国人介護士の数は、下記のグラフをみて分かるように近年着実に増加しています(※1)。
※1引用元:厚生労働省「第36回介護福祉士国家試験におけるEPA介護福祉士候補者の試験結果」「外国人介護職員 活躍のためのガイドブック」
この外国人の介護福祉士の数は近年急速に増加しており、2024年は前年比4,358人増、過去5年間で13倍以上という顕著な伸びを見せています。
一方で、厚生労働省が令和7年4月4日に発表した資料によると、外国人介護士の全体人数(75,755人)に占める有資格者(12,679人)の割合は約16.7%に留まっており、増加はしているものの、全体に対する比率で見るとまだまだ少数派です。
引用元:厚生労働省「外国人介護人材の受入れに関する制度の現況について」
これは、言い換えれば、外国人介護士の約83.3%にあたる63,076人は、まだ介護福祉士の資格を有していないことを意味します。今後、深刻化する介護人材不足への対応として、この大多数を占める方々が、いかにして国家資格である介護福祉士を取得し、より専門性の高い人材として定着・活躍していけるように支援していくかが、重要な課題となっています。
介護福祉士を持つ外国人に適用される「2つの在留資格」
外国人が日本で介護福祉士の資格を取得した場合、以下の在留資格のいずれかに該当します。
※在留資格とは、外国人が日本に滞在して、働く、学ぶ、家族と暮らすなどの活動を行うために必要な法的な資格のことです。
①在留資格「介護」:日本の介護福祉士養成施設卒業者、または日本の介護施設等で3年以上の実務経験を経て国家試験に合格した介護福祉士資格を持つ外国人が対象となる在留資格です。国籍による制限はありません。
②在留資格「特定活動(EPA介護福祉士)」:インドネシア、フィリピン、ベトナムとの経済連携協定(EPA)に基づく制度です。これらの国から候補者として来日し、日本の施設で就労・研修を受けながら介護福祉士の国家資格取得を目指します。
どちらのルートでも介護福祉士の国家資格が必要な点は共通しています。参考までに、外国人介護福祉士12,679人の内訳は、在留資格「介護」を持つ人が12,227人、在留資格「特定活動(EPA介護福祉士)」が452人という状況です(※2)。
※2引用元:厚生労働省「外国人介護人材の受入れに関する制度の現況について」
この内訳からもわかるように、現在、外国人介護福祉士の多くが在留資格「介護」で日本に滞在し、活躍しています。
ところで、この在留資格「介護」は、しばしば「介護ビザ」という言葉で耳にすることがあるかもしれません。しかし、厳密には「在留資格」と「ビザ」は異なるものです。
なぜこのような通称が広く使われているのか、その理由と両者の違いについて、次に詳しく見ていきましょう。
なぜ、在留資格「介護」は「介護ビザ」と呼ばれるのか?
先ほどもお伝えしましたが、日本で介護福祉士として働くための一つが在留資格「介護」です。では、なぜこれが「介護ビザ」と呼ばれることがあるのでしょうか。
まず、大前提として「ビザ(査証)」と「在留資格」は異なるものです。
・ビザ(査証): 日本への入国を希望する外国人のパスポートが有効であり、その人物の入国に支障がないことを示す在外公館(海外の日本大使館や総領事館)による推薦です。入国審査を受けるための要件の一つですが、入国や滞在を保証するものではありません。
・在留資格: 外国人が日本に入国し、滞在して特定の活動を行うことを許可する資格です。これは日本の出入国在留管理局が決定・管理しています。日本に中長期滞在する外国人は、活動内容に応じた在留資格を持っている必要があります。
上記で説明した通り、厳密にはビザと在留資格は異なるものです。しかし、一般的に、外国人が日本に滞在するための許可を指して「ビザ」という言葉を使う傾向があります。
「在留資格」という言葉は、具体的に何ができる資格なのかが分かりにくいです。そこで、「〇〇をするためのビザ」というように、日本での活動目的をはっきりさせた方が、その資格の意味合いが伝わりやすい、という背景があります。
話をまとめると、正式な名称はあくまで在留資格「介護」です。しかし、「ビザ」という言葉の方が一般的に浸透しています。また、介護分野で働くための資格であることが分かりやすいため、「介護ビザ」という通称が広く使われているのです。
※3引用元:外務省「査証(ビザ)と在留資格」
外国人が介護福祉士の資格を取得するための4つのルート
外国人が介護福祉士の資格を取得した場合、在留資格「介護」または「特定活動(EPA介護福祉士)」のいずれかになります。ここでは、介護福祉士の資格を取得し、これらの在留資格を得るための4つのルートについて説明します。4つのルートとは、以下のとおりです。
①EPAルート:
経済連携協定(EPA)に基づき、インドネシア、フィリピン、ベトナムから介護福祉士候補者として来日します。日本の施設で就労・研修を経て介護福祉士資格を取得後、在留資格「特定活動(EPA介護福祉士)」を得て働くルートです。
②留学生ルート:
留学で来日し、日本の介護福祉士養成施設(専門学校など)を卒業します。介護福祉士の資格を取得後、在留資格「介護」を得て働くルートです。
③特定技能ルート:
特定技能で来日し、日本の施設で介護の実務経験を3年以上積みます。その後、実務者研修を取得し介護福祉士国家試験に合格し、在留資格「介護」を得て働くルートです。このルートは、日本の受験者と同じ方法になります。
④技能実習ルート:
技能実習で来日し、日本の施設で介護の実務経験を3年以上積みます。その後、実務者研修を取得し介護福祉士国家試験に合格し、在留資格「介護」を得て働くルートです。このルートは、先ほど紹介した特定技能と日本の受験者と同じ方法になります。
この4つのルートを経て、外国人は介護福祉士の資格を取得することができます。この章では、4つのルートを詳しく説明します。
外国人が介護福祉士の資格を取得するためのルート①:EPA
EPA(経済連携協定)は、日本がインドネシア、フィリピン、ベトナムと結んでいる協定です。この協定に基づき、これらの国々から介護福祉士を目指す人材を受け入れています。来日した方々は、日本の介護施設で実際に働きながら知識や技術を学び、介護福祉士の資格取得を目指します。
・ステップ1:母国での準備:
各国の送出し機関によって候補者として選定され、一定期間(通常6ヶ月〜1年程度)の日本語研修の受講
・ステップ2:来日:
日本の受入機関(介護施設など)と雇用契約を結び、日本に入国
・ステップ3:入国後研修:
来日後、約6ヶ月間の研修を受講
・ステップ4:介護施設での就労・研修:
入国後研修を修了した後、受入施設で実際に働きながら、介護の実務経験を習得
・ステップ5:介護福祉士国家試験の受験資格取得:
3年間の就労・研修を修了すると、介護福祉士国家試験の受験資格の取得
・ステップ6:介護福祉士国家試験の受験:
受験資格を得た後、介護福祉士国家試験を受験
・ステップ7:介護福祉士としての就労:
介護福祉士登録後、在留資格「特定活動(EPA介護福祉士)」に変更
在留資格「特定活動(EPA介護福祉士)」は、更新を続けることで長期的な滞在も可能です。
もし国家試験に不合格だったとしても、直ちに帰国とはなりません。在留期間を1年間延長することが認められております。ただし、この延長された滞在期間が満了するまでに合格できなかった場合には、原則として母国へ帰国することになります。
※4引用元:厚生労働省「EPA介護福祉士候補者の 受入れについて」
外国人が介護福祉士の資格を取得するためのルート②:留学生
・ステップ1:日本語能力の習得
介護福祉士養成施設の入学要件を満たすため、日本語学校などで必要な日本語能力を習得
・ステップ2:介護福祉士養成施設への入学
養成施設で介護に関する専門知識や技術を学び、必要なカリキュラムを受講
・ステップ3:介護福祉士資格の取得
養成施設を卒業すると、介護福祉士国家試験の受験資格を取得
・ステップ4:介護福祉士国家試験の受験
実技試験は免除
・ステップ5:在留資格の変更と就労
介護福祉士の資格を取得した後、在留資格を「留学」から在留資格「介護」に変更
介護福祉士国家試験の結果が不合格だった場合でも、令和8年度(2026年度)末までに養成施設を卒業する方には、特別な経過措置が設けられています。この措置は、外国籍の方だけでなく、日本国籍の方にも同様に適用されます。
特別な措置とは、養成施設を卒業した場合、たとえ国家試験に合格していなくても、卒業後の最初の5年間は、暫定的に介護福祉士として登録し、就労することが可能です。
ただし、介護福祉士の資格を6年目以降も維持するためには、最初の5年間のうちに、次のいずれかの条件を満たす必要があります。
・国家試験に合格すること
・5年間継続して介護業務に従事すること
どちらかの条件を満たせば、5年経過後も引き続き介護福祉士の資格を保持できます。注意として、この経過措置は令和8年度(2026年度)末までに養成施設を卒業する方に限定された措置となります。
※5引用元:厚生労働省「外国人介護人材の受入れに関する制度の現況について」
外国人が介護福祉士の資格を取得するためのルート③:特定技能
特定技能は、日本の介護分野における深刻な人手不足に対応するため、2019年4月に創設されました。一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材を受け入れることを目的としています。日本には最長5年間いることができます。
特定技能外国人が介護福祉士を目指す場合、一般的に以下の「実務経験ルート」をたどります。このルートは日本人と同じ条件です。
・ステップ1:特定技能として就労開始
在留資格「特定技能」で日本の介護施設等で就労
・ステップ2:実務経験を積む
介護福祉士国家試験の受験資格を得るには、介護等の業務で3年以上の実務経験が必要
・ステップ3:介護福祉士実務者研修の修了
3年間の実務経験に加えて、日本人同様に「実務者研修」を受講
・ステップ4:介護福祉士国家試験の受験
実技試験は免除
・ステップ5:在留資格「介護」への変更
介護福祉士資格を取得した後、「特定技能」から在留資格「介護」に変更
在留資格「介護」を取得すると、特定技能のように最長5年といった在留期間の制限がなく、更新を続けることで長期的に働くことができます。
特定技能の方が介護福祉士国家試験に不合格だったとしても、再受験ができます。国家試験は年に1回実施されるため、不合格でも翌年に再受験が可能です。
ただし、在留資格には制限がある点に注意が必要です。特定技能の在留期間は、通算で最長5年という上限があります。そのため、この5年の間に国家試験に合格しなければなりません。
もし、特定技能の在留期間(最長5年)が満了するまでに介護福祉士国家試験に合格できない場合は、原則として帰国となります。
※6引用元:厚生労働省「介護福祉士国家試験に関する参考資料」
外国人が介護福祉士の資格を取得するためのルート④:技能実習
技能実習とは、日本の企業などが開発途上国から外国人を受け入れ、働きながら日本の技術・知識・技能を学んでもらう制度です。目的は、日本で習得した技術を母国に持ち帰って活かしてもらい、その国の経済発展に貢献することです。日本には最長5年間いることができます。
技能実習生が介護福祉士を目指す場合、一般的に以下の「実務経験ルート」をたどります。このルートは日本人や上記で紹介した特定技能と同じ条件です。
・ステップ1:入国後の講習
講習期間は、1日8時間以内かつ週5日程度
・ステップ2:介護分野での技能実習を開始
日本の介護施設等で就労
・ステップ3:実務経験を積む
介護等の業務で3年以上の実務経験が必要
・ステップ4:実務者研修の受講
日本人の方と同様に「実務者研修」を修了が必要
・ステップ5:介護福祉士国家試験の受験
実技試験は免除
・ステップ6:在留資格「介護」への変更
介護福祉士資格を取得した後、「技能実習」から在留資格「介護」に変更
技能実習で就労している方の従業期間算定開始日は、雇用開始日となります。技能実習には、ステップ1で説明した入国後の講習期間があり、この期間は実務経験に含まれない点に注意しましょう。
技能実習生が、介護福祉士国家試験に不合格になっても、すぐに帰国する必要はありません。 不合格でも、実習期間内は滞在できます。実習修了時に資格がないと原則帰国ですが、「特定技能」へ移行すれば、最長5年間日本で働きながら再挑戦するチャンスが得られます。
※7引用元:社会福祉振興「介護福祉士国家試験」
外国人にとって介護福祉士の資格取得がもたらす3つのメリット
在留資格ごとの介護福祉士へのルートをご理解いただいたところで、次は資格取得の具体的なメリットへと移ります。
介護福祉士を取得することは、外国人にとって日本での生活を大きく向上させます。ここでは、外国人が介護福祉士の資格取得でもたらす3つのメリットをご紹介します。
外国人が介護福祉士の資格を取得するメリット1:収入の増加
介護福祉士の資格を取得すると、収入面の増加があります。社会福祉振興の調査によると、介護福祉士の資格手当の平均金額は月9,055円でした。資格手当だけでも年間108,000円の給料アップが見込めます(※8)。
過去の調査を見ると、介護福祉士の資格手当は前回の調査では8,237円でしたが、令和2年度には9,055円へと増加しています。この実績から、今後も手当額が上昇していく可能性が考えられます。
※8引用元:社会福祉振興「社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士就労状況調査」
日本で働く外国人にも、日本人と同様に労働基準法が適用されるため、日本人と同等の報酬が支払われます。
介護福祉士の資格を取得すると、資格がない場合と比べ、平均で月々61,160円、年間では約73万円(61,160円 × 12ヶ月)収入が増える見込みがあります(※9)。
介護福祉士の資格の有無 | 月収(平均) |
資格あり | 331,690円 |
資格なし | 270,530円 |
※9引用元:厚生労働省 「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」
ただし、ここで示されている『平均月収』には、年間の賞与などを12ヶ月で割った金額が含まれるため、実際に毎月受け取る基本的な給与(月給)は、この数字よりも少なくなる点にご注意ください。
外国人が介護福祉士の資格を取得するメリット2:長期就労が可能
在留資格「介護」を取得した場合、在留期間は入国管理局によって5年、3年、1年、または3ヶ月のいずれかが決定されます。この在留資格は更新可能です。
介護福祉士として日本の介護施設などで働き続けるかぎり、在留期間の更新が認められます。さらに、その更新回数には上限がありません(※10)。これは、理論上、日本で永続的に働き続ける道が開かれていることを意味します。
技能実習や特定技能という在留資格には、最長5年の在留期間が設定されています。そのため、原則としてそれを超えて日本で働き続けることはできません。これに対し、介護福祉士の資格を取得して在留資格「介護」になれば、更新回数に上限はないため長期就労が可能です。
※10引用元:厚生労働省 「外国人介護職員と 一緒に働いてみませんか?」
外国人が介護福祉士の資格を取得するメリット3:家族帯同の可能
外国人が介護福祉士の資格を取得する大きなメリットが、家族(配偶者・子ども)の帯同が許可されることです(※11)。
技能実習や特定技能では、原則として家族の帯同は認められていません。しかし、介護福祉士の資格を取得して在留資格「介護」に変更すれば、家族の帯同が認められます。故郷に大切な家族を残し、日本で頑張る外国の方にとって、このメリットは心の拠り所となるでしょう。
※11引用元:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「外国人介護人材の受入れと活躍支援に関するガイドブック」
受け入れ施設にとっての外国人が介護福祉士の資格を取得する3つのメリット
介護福祉士の資格は、外国人介護士にとって有益であるばかりでなく、受け入れる施設にとってもプラスの効果があります。ここでは、受け入れ施設側のメリットを3つ紹介します。
受け入れ施設にとっての外国人が介護福祉士の資格を取得するメリット1:外部機関への委託費が削減できる
外国人介護士が介護福祉士の資格を取得し、在留資格「介護」に変更すると、施設のコスト削減に大きく貢献します。
現状、特定技能や技能実習で外国人を雇用する場合、多くの施設では登録支援機関や監理団体への委託が必須です。仮に月額3万円の委託費用がかかっていたとすれば、年間36万円、5年間で180万円ものコストとなる計算です。
しかし、雇用している外国人介護士が介護福祉士の国家資格を取得し、在留資格「介護」に変更させると、この状況は変わります。これにより、これまで外部機関へ支払っていた委託費用が不要となり、経費削減ができます。
受け入れ施設にとっての外国人が介護福祉士の資格を取得するメリット2:外国人介護士の教育担当を任せられる
外国人介護士の受け入れにおいて、「言語の壁」や「文化・習慣の違い」は、施設が向き合うべき課題です。日本人スタッフの努力だけでは埋めきれないコミュニケーションギャップや、文化的な誤解が生じることもあります。
そうした中で、同じ外国人という立場で先に介護福祉士の資格を取得した先輩は、新人にとって心強い存在です。母国語でのコミュニケーションは、不慣れな環境での不安を和らげてくれます。
そして何より、彼らは「同じ苦労を知る者」としての強みを持っています。日本で生活する難しさ、介護現場での戸惑い、資格取得への挑戦など、自らが乗り越えてきた経験があるからこそ、新人が抱えるであろう具体的な悩みや不安に深く共感し、的確なアドバイスを提供できるのです。
受け入れ施設にとっての外国人が介護福祉士の資格を取得するメリット3:期間の制限なく長期雇用できる
受け入れ施設にとって、外国人介護士が介護福祉士の資格を取得するメリットは、長期的な雇用につながることです。
介護福祉士の資格で得られる在留資格「介護」は、他の資格とは大きく異なります。更新を続ければ、期間の制限なく日本に滞在し続けられるため、腰を据えて働けます。介護施設側にとっても、技能実習や特定技能のように滞在期間の心配が必要ないのがメリットと言えるでしょう。
このように、在留期間に縛られない雇用は施設にとって大きな魅力ですが、その前提となるのが介護福祉士国家試験の合格です。そこで気になるのが、外国人受験者の介護福祉士試験の合格率です。次の章では、外国人の介護福祉士国家試験の合格率をみていきます。
外国人の介護福祉士国家試験の合格率は?
令和6年1月におこなわれた第36回介護福祉士国家試験では、全体の合格率が82.8%でした。一方で、外国人介護士の合格率は43.8%に留まります(※12)。
この数値から、外国人介護士にとって合格のハードルが高い試験であることがうかがえます。(※この合格率はEPA候補者に限定されており、技能実習生や特定技能で働く外国人介護士のデータは含まれていません)
合格率が低い背景には、外国人受験者が抱える特有の課題があります。それは、不慣れな日本語の習得と、介護に関する専門知識の習熟という、二つの課題を同時に乗り越えなければならない「二重の負担」です。
この言語能力と専門知識の両方が高いレベルで要求される状況が、外国人の方々の合格を阻む大きな要因となり、結果として合格率が伸び悩む一因となっています。
では、この不慣れな日本語の習得と、介護に関する専門知識の習熟という大きなハードルを乗り越え、合格を掴むためには、具体的にどのようなアプローチが有効なのでしょうか。
次の章では、この課題解決に焦点を当て、日本語能力と専門知識の両面から学習をサポートし、介護福祉士の資格試験の合格を高めるための厚生労働省が推奨しているサイトについて詳しくご紹介します。
※12引用元:厚生労働省「第36回介護福祉士国家試験におけるEPA介護福祉士候補者の試験結果」
外国人が介護福祉士の資格を取得するための第一歩「にほんごをまなぼう」とは?
慣れない日本語での試験対策に励む外国人の方にとって、心強い味方となるのが、厚生労働省も推奨しているサイト「にほんごをまなぼう」です。
紹介動画では、以下の内容を話しています。
・目的と対象者
日本の先進的な介護技術を学び、介護現場で働くことを目指す外国人
・利用料とアクセス
日本語や日本の介護に関心があれば、誰でもID登録のみで無料利用が可能
・マルチデバイス対応
スマートフォン、PC、タブレットに対応しており、インターネット環境があれば、いつでもどこでも学習が可能
・学習コンテンツ
レベル別に用意された介護現場で必要なスキルや知識の習得できるコンテンツ
・実践的な日本語学習
日常会話だけでなく、介護現場特有の日本語表現も、翻訳機能や音声再生機能を活用して分かりやすく学習が可能
・学習管理機能
学習目標の設定や進捗状況を確認できる機能があり、計画的な学習をサポート
「にほんごをまなぼう」を利用するためのID登録は、在留資格の種類、学習したい言語、現在の日本語能力レベルなどを入力するだけで、すぐに使用できます(※13)。
※13引用元:公益社団法人日本介護福祉士会「にほんごをまなぼう」
対応言語は、以下の14言語が可能です。(2025年4月現在)
・日本語
・英語 (English)
・中国語 (中文)
・ベトナム語 (Tiếng Việt)
・インドネシア語 (Bahasa Indonesia)
・タイ語 (ภาษาไทย)
・クメール語 (ភាសាខ្មែរ)
・ミャンマー語 (မြန်မာ)
・モンゴル語 (Монгол хэл)
・ネパール語 (नेपाली)
・ウズベク語 (o’zbek)
・ベンガル語 (বাংলা)
・ヒンディー語 (हिन्दी)
・タガログ語 (Tagalog)
次の章では、「にほんごをまなぼう」で提供されているレベル別の無料日本語テキストを紹介します。レベル1からレベル5まで用意されており、これらを学習することで、外国人が介護福祉士の資格取得に向けたステップを踏むことができます。
※13引用元:公益社団法人日本介護福祉士会「にほんごをまなぼう」
介護福祉士の資格取得を目指す外国人介護士のための【レベル別の無料テキスト5選】
「にほんごをまなぼう」では、外国人介護士が日本語や介護の知識を段階的に習得できるよう、レベルに応じた無料の学習テキストを提供しています。ここでは、レベル1からレベル5までのテキストを順に見ていきます。
レベル1の無料テキスト:「 学んでみよう日本の介護」
まず、紹介するレベル1の無料テキストは、「学んでみよう日本の介護」です(※14)。
※14引用元:公益社団法人日本介護福祉士会「学んでみよう日本の介護」
このテキストは、外国人介護士の方が日本の介護技能を正しく習得することを目的として開発されました。単に手順を覚えるだけではありません。
「人間の尊厳」「介護実践の考え方」「社会のしくみ」といったことを理解し、それらに裏付けられた介護の考え方をきちんと学べる構成になっています。
介護の土台となる知識と考え方を理解するための、最初のステップとなる学習テキストといえるでしょう。
レベル2の無料テキスト:「介護の日本語」
次にご紹介するレベル2のテキストは「介護の日本語」です(※15)。
※15引用元:公益社団法人日本介護福祉士会「介護の日本語」
この教材では、外国人介護士は現場での指示や利用者との基本的なコミュニケーションなど、初歩の介護を学べます。
「介護の日本語」では、学習内容を以下の2つのカテゴリーに分けています。
・介護場面での語彙:
介護現場で頻繁に使われる基本的な単語を学べる
・介護場面での声かけ表現:
利用者への呼びかけや、介助の際に使う具体的なフレーズを学べる
この教材の大きな特徴として、Webサイト上で音声を確認できる機能があることです。
教材で取り上げられている語彙や表現の正しい発音を耳で聞いて確認できるため、聴解力や発話力の向上につながり、学習効率を一層高めることができます。音声は「にほんごをまなぼう」のウェブサイトで利用可能です。
レベル3の無料テキスト:「介護の特定技能評価試験学習テキスト」
介護福祉士の資格取得への道のりは続きます。レベル1、2で介護の基本的な考え方を学んだあとは、レベル3の「介護の特定技能評価試験学習テキスト」になります(※16)。
※16引用元:厚生労働省「介護の特定技能評価試験学習テキスト」
このテキストは、厚生労働省と共同で作成された、介護分野の特定技能評価試験対策用の教材です。
2019年4月に始まった特定技能制度は、日本の深刻な人手不足に対応するため、特定の専門性や技能を持つ外国人材を受け入れる制度です。介護分野でこの「特定技能」の在留資格を得て働くためには、基本的に以下の試験に合格する必要があります。
・介護技能評価試験
・介護日本語評価試験
「介護の特定技能評価試験学習テキスト」は、まさにこの介護技能評価試験と介護日本語評価試験の両方に対応できるように作成されました。介護福祉士の本格的な勉強を始める前にこの内容を学んでおくと、専門知識がよりスムーズに理解できます。
レベル4の無料テキスト:「外国人のための介護福祉専門用語集」
レベル1からレベル3までのテキストで、日本の介護の基礎や現場でのコミュニケーションに関する知識を身につけてきました。
いよいよここからは、介護福祉士国家試験を見据えた、専門的な学習が始まります。その強力なサポートとなるのが、レベル4の「外国人のための介護福祉専門用語集」です(※17)。
※17引用元:厚生労働省「外国人のための介護福祉専門用語集」
用語集には、介護・福祉分野の専門用語や医療分野の関連用語が、約1,200語収載されています。学習中に出てくる難しい言葉の意味を調べたり、現場で使う言葉を確認したりする際に、非常に役立つ補助テキストです。
レベル5の無料テキスト:「外国人のための介護福祉士国家試験一問一答」
「にほんごをまなぼう」が推奨するレベル別学習も、いよいよ最終段階に入ります。レベル1から4までで培ってきた知識と言語能力を活かし、介護福祉士国家試験の合格を目指して実践的な問題演習に取り組みましょう。
そのための最適なツールが、レベル5の「外国人のための介護福祉士国家試験一問一答」です(※18)。
※18引用元:厚生労働省「外国人のための介護福祉士国家試験一問一答」
「外国人のための介護福祉士国家試験一問一答」の収録問題数は全体で713問と非常に豊富で、試験合格に向けて必要となる十分な量の演習をこなすことができます。
日本の介護福祉士国家試験は日本語で実施されるため、このテキストには外国人学習者に配慮した以下の特徴があります。
①問題文は日本語のみ
⇒試験本番と同様の形式に慣れることを最優先としています。問題を日本語で読み解く練習を重ねることができます。
・解説文は多言語対応
⇒解答の根拠や関連知識を深く理解できるよう、解説文は多言語で提供しています。これにより、答えを母語で確認し、知識の定着をはかることができます。
対応言語は、日本語版、英語版、中国語版、ベトナム語版、インドネシア語版、タイ語版、クメール語版、ビルマ語版、モンゴル語版、ネパール語版、ウズベク語版、ベンガル語版、ヒンディー語版、タガログ語版です。
「にほんごをまなぼう」登録すると「外国人のための介護福祉士国家試験対策2026」が無料で学べる!
介護福祉士国家試験は、関連する制度や法律が年によって改正されることがあります。したがって、試験対策を行う上では、常に最新の情報が反映されているテキストを選ぶことが合格への鍵となります。
そこでおすすめしたいのが、最新の試験情報に対応した「外国人のための介護福祉士国家試験対策2026」です(※19)。
※19引用元:国際厚生事業団「外国人のための介護福祉士国家試験対策2026」
通常、書店で購入すると税込み3,100円しますが、「にほんごをまなぼう」に登録すると、なんとデジタル版を無料で学習できるのです。
「にほんごをまなぼう」に登録するだけで、この「外国人のための介護福祉士国家試験対策2026」のデジタル版を無料で利用できるようになります。
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話をまとめると、「にほんごをまなぼう」では、外国人介護士が介護福祉士の資格を取得するために、レベル別の無料テキストを提供しています。
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しかし、これらの教材を活用しても、外国人受験生が苦戦しやすい科目があります。それが、日本の社会制度や仕組みを問う「社会の理解」です。次の章では、この難関科目をどう乗り越えるか、具体的な対策を掘り下げていきます。
外国人の介護福祉士試験対策:つまずきやすい科目「社会の理解」
外国人の方が介護福祉士国家試験に挑戦する際、難しいと感じる科目は「社会の理解」です。ここでは、データに基づき、外国人受験者がつまずきやすいとされる理由、そして効果的な対策について解説します。
外国人受験者がつまずきやすい科目「社会の理解」の正答率は40%でした。他の科目に比べて低い水準になっています(※20)。
※20引用元:「外国人介護人材の受入れと活躍支援に関するガイドブック」
「社会の理解」は、日本の社会制度や福祉サービス、家族形態など、日本社会の仕組みに関する幅広い知識が問われる科目となります。
外国人受験者にとって「社会の理解」が難しいのは、年金や介護保険といった日本の社会保障制度は、馴染みが薄いためです。
「社会の理解」の対策は、母語資料の活用が有効です。介護保険制度などの母語で書かれたリーフレットは、厚生労働省のサイトにあります(※21)。
※21引用元:厚生労働省「介護保険制度について」
これらの母語で書かれたリーフレットを活用し、まずは制度の全体像や基本的な考え方を母語で把握することから始めましょう。厚生労働省だけでなく、お住まいの自治体などが外国人向けに分かりやすく解説した資料を提供している場合もありますので、探してみるのもおすすめです。
【事例あり】外国人が間違いやすい介護福祉士の試験問題3選
介護福祉士国家試験は、外国人受験者にとっては言語や文化、そして日本の介護事情に関する知識の面で、特有の難しさがあります。間違いやすい問題は、どのようなものでしょうか。
ここでは、過去の試験結果分析などから見えてきた、外国人が間違いやすい3つの試験問題と、その理由について解説します。
外国人が介護福祉士試験で間違いやすい問題1:「認知症の理解」
まず、多くの外国人受験者が苦手とする「認知症の理解」の問題を見ていきましょう(※22)。
※22引用元:日本介護福祉士養成施設協会「留学生指導のポイント」
この科目でつまずきやすいポイントを解説します。
専門用語と関連知識への不足
⇒外国人受験者は、認知症の病名を知っていても、それぞれの具体的な症状や生活への影響、さらには「アルツハイマー型は女性に多い」といった基本事項や、日本の高齢化といった関連知識まで十分に理解できていない傾向があります。試験特有の難しい用語が理解を妨げる一方で、文章全体で見ると他の部分は基本的な言葉で書かれていることもあります。
結論として、正答できない原因は、日本語能力そのものよりも、むしろ「認知症に関する基礎知識の不足」にある場合が多いと考えられます。
外国人が介護福祉士試験で間違いやすい問題2:「生活支援技術」
次に、外国人受験者がつまずきやすい「生活支援技術」の問題を見ていきましょう(※23)。
※23引用元:日本介護福祉士養成施設協会「留学生指導のポイント」
「生活支援技術」の問題で間違いやすいポイントを解説します。
①介護知識・専門性の理解不足
⇒「自己導尿」といった専門用語の意味や、介護福祉職がおこなえる業務の範囲について、知識が不十分な傾向があります。
②日本語の読解における課題
問題文全体を注意深く読まず、一部分のキーワード(例えば「そばで見守る」といった表現)だけで判断してしまう傾向が見られます。これは、日本語の読解力がまだ十分に養われていないことが原因です。
対策としては、「自己導尿」などの専門用語の意味、介護福祉職の業務範囲、清潔・不潔の概念を、その理由も含めて正確に理解する必要があります。さらに、問題文を最後まで注意深く読み、問われている内容を的確に把握するための日本語読解力を養うのが大事です。
外国人が介護福祉士試験で間違いやすい問題3:「発達と老化の理解」
最後に、外国人受験者が間違いやすい「発達と老化の理解」の問題を見ていきます(※24)。
※24引用元:日本介護福祉士養成施設協会「留学生指導のポイント」
「発達と老化の理解」で間違いやすいポイントを解説します。
① 専門知識の理解不足
⇒外国人受験者は、「意欲低下」といった専門用語は知っていても、その原因となる心理、評価方法、他の介護知識との関連といった深い理解が不足しているため、応用問題に対応できません。
② 文化・経験の違い
⇒文化や経験の違いから、日本人学生は「動機づけ」を自然に理解しやすい一方、外国人受験者は理解しにくいため、学習内容が自分事になりにくく知識が定着しにくい傾向があります。
③ 日本語の読解力不足
外国人受験者は、試験特有の日本語(特に「〜すると…」のような条件文)の構造を正確に理解できず、読み間違いをしやすいため、読解力不足から誤答する傾向があります。
結論として、外国人受験者が「発達と老化の理解」の問題でつまずくのは、専門知識・文化経験・日本語読解力の複合的な要因によるためです。対策には関連知識の学習、文化への配慮、試験日本語への習熟が不可欠となります。
外国人の介護福祉士試験「ふりがな付き問題用紙」は事前申請しないと使えない
これまで外国人の方向けの介護福祉士試験対策として、効果的な勉強法などをご紹介しました。学習の積み重ねはもちろん重要ですが、試験本番で実力を出し切るためには、事前の準備も不可欠です。
その中でも、特に外国人受験者にとって絶対に忘れてはならない介護福祉士の受験手続きが、「ふりがな付き問題用紙」の事前申請です。介護福祉士の試験問題には、漢字にふりがなが付いた問題用紙が用意されており、外国人の方はこれを利用できます(※25)。
※25引用元:社会福祉振興「過去の試験問題」
このように、すべての漢字にふりがなが振られた問題用紙で受験できますが、利用するには事前申請が必要です。
介護福祉士国家試験は、外国人の方も日本人と同様に、例年1月下旬に実施されます。受験申し込みも国籍に関わらず共通で、毎年7月頃に配布される「受験の手引」に沿って手続きを行ってください。
申し込み時に申請し忘れると、試験当日になってから希望しても、「ふりがな付き問題用紙」は適用されませんので、注意が必要です。
外国人の介護福祉士国家試験の制度が2026年に変わる!パート合格とは?
介護福祉士国家試験は、受験者の8割は仕事と学習の両立に苦労しています。特に外国人受験者は日本語学習の負担も加わるため、受験意欲の維持が困難な状況です(※26)。
この課題に対応し、より多くの人が挑戦しやすく学習を進めやすい仕組みとして、「パート合格」制度の導入が提言されました。ここでは、パート合格がいつから始まり、どのような仕組みなのかを詳しく見ていきます。
※26引用元:NHK「ニュースサイト」
介護福祉士国家試験の「パート合格」制度とは?
「パート合格」制度では、具体的に以下のような仕組みが提案されています(※27)。
・初回の受験:全員が全パートを受験
⇒初めて試験を受ける際は、現行どおり、試験範囲のすべてのパートを受験します。
・再受験の場合:不合格パートは必須、合格パートは選択制
⇒初回の試験で一部のパートが不合格でも、合格したパートは「パート合格」となります。再受験する際には、不合格だったパートの受験は必須です。一方、合格済みのパートを再受験するかどうかは、受験者が選択できます。
なぜ、合格済みパートの再受験も選択できるのでしょうか。現在の試験は全科目の合計点で合否が決まるためです。得意科目で高得点を取れば、苦手科目をカバーして全体の合格ラインを超える可能性があるからです。
※27引用元:厚生労働省「介護福祉士国家試験パート合格の 導入の在り方について」
介護福祉士国家試験「パート合格」の合格基準は?
介護福祉士国家試験の「パート合格」の合格基準は以下になります。
・全体の合格基準 (一発合格の場合):
これまでどおり、総得点の約6割を基準とし、問題の難易度で調整した点数以上であること。(かつ、すべての試験科目群で得点があること)が合格基準です。
・パートごとの合格基準:
全体の合格基準点を、全科目受験者の「パートごとの平均点の比率」で割り振って設定します。これにより、パート間の難易度差を考慮した公平な基準となります。(かつ、そのパートを構成するすべての科目群で得点があることが条件です。)
合否の判定方法は、受験するパート数によって異なります。全パートを受験した場合は、まず全体の総得点で合否が判定され、その結果が不合格だった際に、パートごとの合否が判定。一方、一部のパートのみを受験した場合は、パートごとに合否が判定されます。
重要なポイントは、パート合格では、得意パートの得点で不得意パートを補えません。合格するためには、苦手分野もしっかり学習する必要があります。これは、知識・技能の偏りを防ぎ、全体の質を担保するためです。
介護福祉士国家試験「パート合格」はいつから?受験料は?
パート合格は、令和8年1月(予定)の第38回介護福祉士国家試験からの導入を目指しています。
受験手数料は現行どおり(18,380円)とする方向で調整中です。受験するパート数に関わらず、受験手数料は毎回一律の金額となる見込みになります。
パート合格制度は、受験のプレッシャーを和らげ、学習意欲を高めることで、より多くの受験生が合格できるよう後押しすることが期待されています。
外国人が介護福祉士の資格を取得するために使える補助金は?
外国人の方が介護福祉士の資格を取得することを支援する介護施設向けの補助金制度があります。
詳しく知りたい方は、解説記事「外国人介護人材のための補助金制度とは?|制度の仕組みや申請方法を徹底解説」をご覧ください。
外国人が介護福祉士の資格を取得した時の給料設定の目安は?
外国人の方が介護福祉士として就労される場合、給与はどのように決定されるのでしょうか?
詳しく知りたい方は、解説記事「外国人介護士の給料設定はどうする?在留資格ごとに給料が違う理由と待遇の重要性」をご覧ください。
まとめ
外国人介護士を受け入れる施設にとって、彼らの介護福祉士の資格取得は、施設の安定経営とサービス品質向上に直結する重要な要素です。
現在、日本で働く外国人スタッフのうち、介護福祉士の資格を持つ方はまだ少数派です。国家試験合格は、特に日本語能力や日本の複雑な社会制度の理解といった面で、彼らにとって大きな挑戦となっています。
しかし、この挑戦を乗り越えて資格を取得すれば、施設にとって「安定した人材確保」という大きなメリットに繋がります。介護福祉士の資格を得て在留資格「介護」に変更できれば、技能実習や特定技能のような在留期間の制限(最長5年)がなくなります。これにより、更新を続ければ理論上は永続的に日本で活躍できるため、人材確保の有効な解決策となります。
介護福祉士の資格取得は、外国人スタッフ自身の就労意欲を高める上でも、非常に大きな意味を持ちます。収入の向上や家族を呼び寄せられることも可能だからです。
そのため、施設として彼らの資格取得を積極的に後押しすることが重要です。具体的には、無料のオンライン学習サイト「にほんごをまなぼう」などのリソース活用を勧め、日々の業務の中で学習時間を確保できるよう配慮します。
また、外国人スタッフが苦手としやすい「社会の理解」といった科目については、理解を助ける情報提供や学習機会を設けることも有効です。さらに、受験申し込み時に不可欠な「ふりがな付き問題用紙」の事前申請といった重要手続きを確実に伝え、申請漏れがないよう注意喚起することも必要です。
外国人スタッフの資格取得支援は、単なる福利厚生の提供ではなく、施設の未来を見据えた重要な人材投資になります。
一時的な時間やコストがかかる側面はあるかもしれませんが、長期的な視点に立てば、質の高い、意欲ある人材を確保し、安定した施設運営を実現するための有効な方法の一つと言えるでしょう。ぜひ、貴施設においても、計画的かつ継続的な支援体制の構築を積極的にご検討ください。