特定技能「介護」の受け入れ可否は、施設名だけでは決まりません。重要なのは、その事業所で担当させる仕事が介護福祉士国家試験の実務経験として認められる「介護等の業務」に当たるかです。
さらに、直接雇用、受入れ人数枠、介護分野の特定技能協議会への加入、1号特定技能外国人支援計画などの要件も確認します。2025年4月21日からは、一定の条件を満たす特定技能外国人が訪問系サービスに従事できるようになりました。
この記事では、受け入れ可能な施設・事業所、訪問介護の追加要件、人数枠、雇用までの流れを2026年8月13日時点の厚生労働省資料に基づいて整理します。
まず確認:特定技能「介護」を受け入れる6つの条件

受け入れを検討する施設・事業所は、最初に次の6点を確認すると判断しやすくなります。
- 対象事業所であること:介護福祉士国家試験の実務経験として認められる介護等の業務を行う事業所である
- 対象業務に従事させること:入浴・食事・排せつなどの身体介護等を中心に担当させる
- 直接雇用であること:介護分野では派遣による受け入れはできない
- 人数枠を守ること:事業所単位で、1号特定技能外国人の人数が日本人等の常勤介護職員数を超えない
- 協議会へ加入すること:対象者の在留諸申請を行う前に、介護分野の特定技能協議会へ加入する
- 支援体制を整えること:適切な雇用契約と1号特定技能外国人支援計画を用意する
訪問系サービスに従事させる場合は、この6点に加えて研修、同行によるOJT、キャリアアップ計画、ハラスメント対策、緊急時の連絡体制などが必要です。
特定技能「介護」を受け入れ可能な施設・事業所

対象は、厚生労働省の「介護分野の1号特定技能外国人を受け入れる対象施設」に整理されています。代表的な施設・事業所は次のとおりです。
高齢者介護の施設・通所・短期入所
- 特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院
- 養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム
- 通所介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護
- 通所リハビリテーション
- 短期入所生活介護、短期入所療養介護
- 認知症対応型共同生活介護
- 小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護
- 特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、名称だけで一律に判断できません。有料老人ホームとしての要件を満たし、対象となる特定施設入居者生活介護等を行う施設かどうかを確認します。外部サービス利用型は対象外です。
障害福祉・児童福祉の施設・事業
- 障害者支援施設、生活介護、療養介護、短期入所
- 自立訓練、就労移行支援、就労継続支援
- 共同生活援助(外部サービス利用型を除く)
- 児童発達支援、放課後等デイサービス、障害児入所施設
- 児童発達支援センター
事業所が制度上の対象に含まれていても、外国人材を介護以外の業務だけに従事させることはできません。実際の職務内容まで確認する必要があります。
病院・診療所など
- 病院、診療所
- 救護施設、更生施設
- 地域福祉センター、ハンセン病療養所、労災特別介護施設など
病院や診療所では、看護師・准看護師の指導の下で、食事、清潔、排せつ、入浴、移動など療養生活上の世話を行う看護補助者が想定されています。医療事務など介護等を主な業務としない職種は、受け入れ人数枠の介護職員にも含まれません。
訪問系サービス
- 訪問介護、第1号訪問事業
- 夜間対応型訪問介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護
- 訪問入浴介護、介護予防訪問入浴介護
- 居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援
訪問系サービスは2025年4月21日の制度改正で対象になりました。ただし、施設内介護と同じ手続きだけで直ちに一人で訪問できるわけではありません。次の追加要件を満たす必要があります。
2025年改正:訪問介護で必要になった追加要件

厚生労働省の「外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について」では、特定技能外国人を訪問系サービスへ従事させる条件を示しています。
本人には、原則として介護事業所等で1年以上の実務経験があり、介護職員初任者研修課程等を修了していることが求められます。受入れ事業所には、主に次の対応が必要です。
- 訪問介護の基本、生活支援技術、コミュニケーション、緊急時対応などの研修
- 一人で適切にサービス提供できると判断するまで、責任者等が同行するOJT
- 本人の意向を確認した上でのキャリアアップ計画作成と提出
- ハラスメント防止マニュアル、相談窓口、発生時の対応ルールの整備
- 緊急連絡、他職員が駆けつける体制、記録共有、ICT活用などの環境整備
- 利用者・家族への書面説明と署名の取得
巡回訪問等実施機関へ必要書類を提出し、適合確認を受けてから従事させます。実務経験1年未満の例外には、より高い日本語能力や長期間の同行訪問など、追加の条件があります。個別案件では最新の通知・Q&Aまで確認してください。
担当できる業務と、担当させてはいけない業務

特定技能「介護」の中心業務は、利用者の状態に応じた入浴、食事、排せつなどの身体介護等です。これに付随する次のような支援業務も担当できます。
- レクリエーションの実施
- 機能訓練の補助
- 掲示物の管理、物品の補充など、日本人介護職員も通常担当する関連業務
一方、清掃、配膳、送迎、事務などの関連業務だけを主な仕事にすることはできません。また、介護分野では労働者派遣による受け入れは認められず、受入れ機関との直接雇用が必要です。
業務範囲の根拠は、厚生労働省の「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領―介護分野の基準について」で確認できます。
受け入れ人数の上限

1号特定技能外国人の人数は、事業所単位で、日本人等の常勤介護職員の総数を超えることができません。
ここでいう「日本人等」には、次の外国人材も含まれます。
- 介護福祉士国家試験に合格したEPA介護福祉士
- 在留資格「介護」で働く人
- 永住者や日本人の配偶者など、身分・地位に基づく在留資格で働く人
技能実習生、EPA介護福祉士候補者、留学生は人数枠の「日本人等」には含みません。事務職員、就労支援員、通常の看護業務を行う看護師・准看護師も原則として常勤介護職員には含まれません。
例として、人数枠に算入できる日本人等の常勤介護職員が10人の事業所では、1号特定技能外国人は10人までです。法人全体ではなく、外国人材が働く事業所ごとに計算します。
受入れ機関が満たす主な雇用・支援要件

同等以上の報酬と適正な雇用契約
報酬額は、同じ業務に従事する日本人と同等以上である必要があります。労働時間、休日、社会保険、控除項目なども本人が理解できるように説明し、適正な雇用契約を締結します。
在留諸申請前の協議会加入
介護分野では、対象となる1号特定技能外国人の在留諸申請を行う前に、介護分野の特定技能協議会へ加入し、構成員証明書を用意します。受け入れ後も、協議会や厚生労働省等の調査・指導に協力する必要があります。
1号特定技能外国人支援計画
特定技能1号では、事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居確保、生活オリエンテーション、日本語学習、相談対応などを含む支援計画を作成・実施します。自社で全部を実施できない場合は、登録支援機関へ委託できます。ただし、雇用主としての責任までなくなるわけではありません。
外国人材本人に必要な試験・日本語要件

試験ルートで特定技能1号「介護」を取得する場合、原則として次の試験に合格します。
- 介護技能評価試験
- 介護日本語評価試験
- 国際交流基金日本語基礎テスト、または日本語能力試験N4以上
介護職種の技能実習2号を良好に修了した人などは、条件により試験が免除されます。試験内容、日程、免除対象は厚生労働省の介護分野・特定技能案内で最新情報を確認してください。
介護分野では特定技能2号による受け入れはありません。介護福祉士国家試験に合格し、要件を満たせば、在留資格「介護」へ変更して介護職として働き続ける道があります。
特定技能「介護」を受け入れる流れ

- 事業所と業務の対象可否を確認:対象施設一覧と運用要領を照合する
- 人数枠と受入れ体制を確認:常勤介護職員数、指導担当、住居、生活支援を確認する
- 候補者を募集・選考:試験、技能実習修了歴、日本語力、介護経験を確認する
- 雇用条件を提示して契約:日本人と同等以上の報酬、職務、勤務地を明確にする
- 支援計画を作成:自社支援か登録支援機関への委託かを決める
- 介護分野の特定技能協議会へ加入:在留諸申請より前に加入する
- 在留資格を申請:必要書類をそろえて地方出入国在留管理局へ申請する
- 受け入れ・定着支援:入社教育、日本語支援、面談、相談対応を継続する
訪問系サービスへ従事させる場合は、別途、巡回訪問等実施機関への書類提出と適合確認を行います。
受け入れ前によくある質問
住宅型有料老人ホームやサ高住でも受け入れできますか?
名称だけでは判断できません。有料老人ホームとしての要件を満たし、外部サービス利用型を除く特定施設入居者生活介護等を行うなど、厚生労働省の対象要件に該当するか確認します。併設の訪問介護事業所で雇用する場合は、訪問系サービスの追加要件も確認してください。
訪問介護は今も対象外ですか?
対象外ではありません。特定技能外国人については2025年4月21日から、一定の条件の下で訪問系サービスへの従事が認められています。原則1年以上の実務経験、初任者研修課程等の修了、研修・同行OJT・キャリアアップ計画・緊急時体制などが必要です。
清掃や配膳だけを担当してもらえますか?
できません。清掃や配膳などは身体介護等に付随する関連業務として担当できますが、それだけを主な業務にすることはできません。
派遣会社から受け入れできますか?
介護分野では派遣による受け入れはできません。受入れ機関と外国人材が直接雇用契約を結ぶ必要があります。
5年後は特定技能2号へ移れますか?
介護分野に特定技能2号はありません。介護福祉士の資格を取得し、在留資格「介護」の要件を満たせば、同資格へ変更して働き続ける選択肢があります。
受け入れ可否は「施設名・業務・体制」の3点で確認

特定技能「介護」は、対象一覧に施設名があれば自動的に受け入れられる制度ではありません。事業所が対象か、担当業務が介護等に当たるか、人数枠・直接雇用・協議会・支援体制を満たせるかを順番に確認します。
特に訪問系サービス、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅は、サービス類型や実際の業務によって判断が分かれます。制度は更新されるため、申請前には必ず厚生労働省・出入国在留管理庁の最新資料を確認してください。
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