介護分野の技能実習日誌について、「何を書けばよいか」「指導者コメントが毎回同じになる」と悩む受入れ施設は少なくありません。最初に押さえたいのは、法令上の技能実習日誌と、実習生本人が学びを書く振り返りシートは別の記録だという点です。
この記事の結論
- 法定帳簿の技能実習日誌は、実習実施者が業務・指導内容・指導者氏名を記録するものです。
- 外国人技能実習機構の参考様式第4-2号を使えます。独自様式でも、必要事項を欠かさないことが重要です。
- 実習生本人の感想や振り返りは指導に有効ですが、法定帳簿の代わりにはなりません。
- 帳簿は事業所に備え、対象の技能実習が終了した日から1年間保存します。
以下に、介護現場でそのまま応用できる業務記録と指導者コメントの例文を掲載します。

技能実習日誌とは?最初に2種類の記録を分ける
法定帳簿の「技能実習日誌」
技能実習法の施行規則では、実習実施者が事業所に備える帳簿として「技能実習生に従事させた業務及び技能実習生に対する指導の内容を記録した日誌」が定められています。
外国人技能実習機構の参考様式第4-2号には、次の欄があります。
| 記入欄 | 記入する内容 |
|---|---|
| 日付 | 実習を行った日 |
| 従事させた業務 | 実際に行った業務と、技能実習計画の実習実施予定表にある対応番号 |
| 指導の内容 | 指導した手順、安全上の注意、本人の実施状況、次回の確認事項 |
| 指導者氏名 | 当日の指導を担当した職員 |
技能実習の区分、期間、行わせる業務などが異なる場合は、日誌を分けて作成します。対象者は別紙の技能実習生一覧表で管理し、認定計画の履行状況に係る管理簿と併せて保存します。
公式様式:外国人技能実習機構「帳簿関係」/参考様式第4-2号 技能実習日誌
実習生本人の「振り返り日誌」
実習生が「今日した仕事」「できたこと」「分からなかったこと」を書く振り返りシートは、日本語学習や理解度確認に有効です。厚生労働省の介護技能実習生キャリア支援ガイドにも、実習生が毎日記入し、指導員と10分間の面談に活用する事例が紹介されています。
ただし、実習生の振り返りシートだけでは、実習実施者が作成する法定帳簿の必要事項を満たさない場合があります。法定帳簿と教育用の振り返りは、目的を分けて運用してください。
【すぐ使える】介護技能実習日誌の記載例6選

次の例文は、そのままコピーして終わらせるのではなく、利用者の状態、実施した手順、本人の習熟度に合わせて書き換えてください。個人名や不要な健康情報は避け、施設の個人情報保護ルールに従います。
記載例1:食事介助
従事させた業務:昼食時の食事介助、姿勢調整、摂取量の確認
指導の内容:嚥下状態を観察し、一口量と介助速度を利用者に合わせるよう指導した。声かけ後に嚥下を確認してから次の介助へ進む手順は実施できた。次回は食後の口腔内確認まで一連で行えるか確認する。
記載例2:排泄介助
従事させた業務:トイレ誘導、移乗、衣類の着脱介助、排泄後の記録
指導の内容:本人ができる動作を先に確認し、必要な部分だけ介助するよう指導した。ブレーキ確認と足位置の調整は自分で行えた。立位時のふらつきを確認した際は、すぐに指導者へ報告できた。
記載例3:移乗介助
従事させた業務:ベッドから車いすへの移乗介助
指導の内容:車いすの位置、ブレーキ、フットサポートを確認してから介助を始めるよう指導した。手順は理解しているが、利用者への次の動作の説明が短かったため、介助前に具体的な声かけを行うよう再指導した。
記載例4:入浴介助
従事させた業務:入浴前の体調確認、脱衣介助、洗身介助、皮膚状態の観察
指導の内容:プライバシーに配慮して露出を最小限にし、湯温を本人と確認するよう指導した。発赤を見つけた際に場所と状態を指導者へ報告できた。記録では「赤い」だけでなく、大きさと部位を具体的に記載するよう助言した。
記載例5:体調変化の観察
従事させた業務:バイタル測定、体調確認、職員への報告
指導の内容:測定値、本人の訴え、普段との違いを分けて報告するよう指導した。体温と血圧を正確に記録し、食欲低下を発見後すぐに担当職員へ報告できた。判断を加えず事実を記録する点を確認した。
記載例6:感染対策と環境整備
従事させた業務:居室環境整備、リネン交換、手指衛生、物品消毒
指導の内容:清潔区域と不潔区域を分け、手袋交換と手指衛生のタイミングを指導した。手順表を見ながら実施できたが、使用後物品の置き場所を一度誤ったため、作業前に動線を確認するよう助言した。
指導者コメント例|評価別の書き方

指導者コメントは「よくできました」だけで終わらせず、何ができたか・何を指導したか・次に何を確認するかの3点を含めると、実習の進捗を追いやすくなります。
| 場面 | 指導者コメント例 |
|---|---|
| 自立して実施できた | 移乗前の安全確認から利用者への声かけまで、決められた手順で実施できた。次回は利用者の残存能力に合わせて介助量を調整できるか確認する。 |
| 一部支援が必要 | 排泄介助の手順は理解している。衣類調整時に利用者の姿勢が不安定になったため、支持する位置を実演して再指導した。次回も指導者同席で確認する。 |
| 安全面を再指導 | 車いすのブレーキ確認前に移乗を始めようとしたため作業を止め、確認順序を再指導した。本人とチェック項目を復唱し、次回は開始前に口頭確認する。 |
| 報告ができた | 利用者の食欲低下に気づき、摂取量と本人の訴えを分けて速やかに報告できた。継続して普段との違いを具体的に伝えるよう助言した。 |
| 日本語を支援 | 介護手順は理解していたが、「傾眠」の意味が分からなかったため、やさしい日本語と具体例で説明した。本人が自分の言葉で説明できることを確認した。 |
| 次回目標を設定 | 本日は見守りの下で食事介助を完了できた。次回は姿勢調整、嚥下確認、摂取量記録を一連で実施することを目標とする。 |
実習生本人の振り返り記載例

教育用の振り返り日誌では、難しい漢字や長文を最初から求める必要はありません。「したこと・分かったこと・次にすること」の定型文から始めると、指導者も確認しやすくなります。
食事介助の振り返り例
今日は食事介助をしました。急いで次の一口を入れないで、飲み込んだことを確認しました。明日は利用者さんの姿勢も先に確認します。
排泄介助の振り返り例
今日はトイレの移乗をしました。車いすのブレーキを確認できました。服を直すときの立つ位置が難しかったので、明日もう一度教えてもらいます。
体調変化の振り返り例
利用者さんが「気持ちが悪い」と言いました。すぐに先輩へ報告しました。体温と血圧だけではなく、いつから気持ちが悪いかも聞くことを学びました。
実習生が書いた内容に指導者が短いコメントを返し、口頭でも確認すると、「書く・話す・聞く」を同時に練習できます。法定日誌へは、その日に行った業務と指導内容を指導者側で別途記録します。
技能実習日誌で避けたい5つの書き方

1. 「介護業務」「問題なし」だけで終える
実際に従事した業務と指導内容が分かりません。食事介助、移乗、記録など業務を具体化し、指導の内容と本人の実施状況を残します。
2. 毎日同じ文章をコピーする
同じ業務を繰り返した日でも、当日の利用者の状態、本人ができた点、再指導した点、次回の確認事項は変わります。計画に沿った実習の進捗が分かる記録にします。
3. 感想と事実を混ぜる
「やる気がない」ではなく、「声かけ前に作業を始めたため、手順を止めて再説明した」のように、確認できる行動と行った指導を記載します。
4. 実習生の振り返りだけで法定日誌を済ませる
本人の感想は教育に役立ちますが、参考様式第4-2号が求める業務、指導内容、指導者氏名を満たすとは限りません。用途を分けます。
5. 個人情報を必要以上に書く
日誌は技能実習の業務・指導記録です。利用者のフルネームや不要な病歴などを安易に記載せず、施設の記録規程と個人情報保護ルールに従います。
保存期間と監理団体への提出ルール

保存は技能実習終了後1年間
技能実習法の施行規則では、技能実習日誌などの帳簿書類を、対象となる技能実習生が技能実習を終了した日から1年間、技能実習を行わせる事業所に備えておくことが定められています。
第1号から第2号まで3年間の実習を行った場合は、第2号終了時から1年間、第1号開始時からの帳簿を確認できる状態にします。「毎年1年で捨てる」という意味ではありません。
月末提出は全国一律の法定ルールではない
法令で求められるのは、実習実施者が日誌を作成し、事業所に備えておくことです。監理団体は監査で日誌の作成状況を確認しますが、毎月末に日誌を監理団体へ提出するという全国一律の期限が法令で定められているわけではありません。
監理団体が月次提出やクラウド共有を求める場合は、その運用に従います。施設内の締め日、確認者、監理団体への共有方法を決め、法定義務と契約・運用上のルールを区別してください。
日誌を形だけにしない運用手順
1. 業務分類と例文を施設内で統一する
食事、排泄、移乗、入浴、環境整備など、技能実習計画に対応する業務分類を一覧にします。例文はコピー用ではなく、「何を観察し、何を指導するか」を揃えるために使います。
2. 当日の指導者が事実を記録する
後からまとめて思い出すのではなく、当日または記憶が明確なうちに記録します。指導担当者が交代する場合も、誰が何を指導したかが追えるようにします。
3. 月次で技能実習計画とのずれを確認する
技能実習責任者は、日誌と認定計画の履行状況に係る管理簿を照合します。同じ業務だけに偏っていないか、予定した技能を実施できているか、再指導が続く項目はないかを確認します。
【BKU面談記録】日誌指導で実際に起きたこと
BKUが実習生と定期的に行った面談では、日誌のつまずき方と施設の支援方法に違いが見られました。以下は個人や取引先を特定できない形に整理した事例です。
漢字が読めない時期は、ひらがなと定型文で支援
配属直後、介護用語の漢字が読めず申し送りや日誌に苦労した実習生に対し、職員がひらがなを併記した施設がありました。別の施設では、日誌で漢字を調べる場合に限って携帯電話の使用を認めています。記録の水準を下げるのではなく、意味を理解して書ける段階まで補助する方法です。
指導する人によって書き方が違うと混乱する
実習生からは「指導員に教わった通りに書くと別の先輩に直される」という相談もありました。日誌の記載基準、略語、質問先を施設内で統一し、修正理由を本人へ説明すると混乱を減らせます。
振り返りと短時間面談を組み合わせる
日誌の記載だけで理解度を判断せず、本人に内容を口頭で説明してもらうと、書けないのか、手順自体を理解していないのかを分けられます。厚生労働省の支援ガイドにも、毎日の振り返りと10分面談を組み合わせる事例があります。
介護技能実習日誌のよくある質問
Q1. 技能実習日誌は実習生本人が書くものですか?
法定帳簿の技能実習日誌は、実習実施者が従事させた業務、指導内容、指導者氏名を記録するものです。実習生本人の振り返り日誌は教育に有効ですが、目的が異なります。
Q2. 公式の様式はありますか?
外国人技能実習機構が参考様式第4-2号をPDF・Wordで公開しています。独自様式を使う場合も、法令と運用要領が求める事項を欠かさず記録してください。
Q3. 指導者コメントには何を書けばよいですか?
何を指導したか、本人がどこまでできたか、次回何を確認するかを具体的に書きます。「よくできた」「問題なし」だけでは、指導内容や習熟状況を確認できません。
Q4. 監理団体へ毎月提出する必要がありますか?
法令は、実習実施者が帳簿を作成して事業所に備えることを求めています。全国一律の月末提出期限はありませんが、監理団体が監査・運用上のルールとして提出や共有を求める場合は従ってください。
Q5. 日誌は何年間保存しますか?
対象の技能実習生が技能実習を終了した日から1年間です。第1号から第2号まで3年間実習した場合、第2号終了後1年間は第1号開始時からの帳簿を備えておきます。
まとめ|法定帳簿と振り返りを分けて、指導が見える日誌にする
介護分野の技能実習日誌は、実習生本人の感想文ではなく、実習実施者が業務と指導内容を記録する法定帳簿です。参考様式第4-2号の項目に沿って、「何を行い、何を指導し、次に何を確認するか」を具体的に残してください。
実習生の振り返りシートは別に用意し、短時間の面談や日本語支援へ活用すると、日誌を監査用の書類だけでなく育成の道具にできます。制度運用や施設内の指導体制に不安がある場合は、監理団体と事前に確認しましょう。
介護技能実習生の採用・指導体制を整理したい企業様へ
BKUでは、ミャンマー人材の募集から入国前教育、配属後の定期面談まで支援しています。現在の受入れ状況を伺い、必要な準備を整理します。

