外国人材の受け入れが拡大する中、介護業界でも技能実習制度を活用した外国人の採用が進んでいます。特に人手不足が深刻な施設現場では、実習生の存在は欠かせない戦力となりつつあります。
一方で、「どの程度の日本語力があれば現場で問題なく働けるのか」という基準に対する理解が曖昧なまま採用が進むケースもあるのではないでしょうか。その結果、コミュニケーション不足による業務トラブルや職場内のストレスが発生することも起こってきます。
この記事では、「技能実習 介護 日本語要件」をテーマに、採用前に押さえておくべき制度的基準と実務上の見極めポイントを詳しく解説します。人事担当者や施設管理者の方々が安心して受け入れ体制を整えられるよう役立つ内容です。
株式会社BKUのご紹介
株式会社BKUは、ミャンマーの送り出し機関と日本国内の登録支援機関を運営する人材紹介会社です。ミャンマー人材の文化・言語などの理解はもちろん、外国人材の紹介から採用、入国手続きまで一貫してサポートできることが当社の強みです。
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この記事の監修者

伊勢明敏
株式会社BKU代表取締役|日本で光学機器メーカーで研究職として4年間従事。その後ミャンマーに移住して、株式会社BKUを創業。9年間の在住中では、外国語大学と仏教大学にてミャンマーの言語・文化を専門的に学習。ミャンマーの言語・文化・制度すべてに精通した人材紹介から、累計400名以上の技能実習生・特定技能人材の送り出し実績を持つ。
介護職の技能実習生に求められる日本語要件とは?
技能実習制度では、実習生が日本の介護現場で適切に働けるよう、日本語能力に関して一定の基準が設けられています。これらの要件は制度の段階ごとに異なり、試験や評価にも直結します。
ここでは、制度上で求められる日本語能力の基準と、それぞれの段階での実務対応への影響について解説します。
第1号技能実習はN4レベル
第1号技能実習の段階では、外国人実習生には日本語能力試験(JLPT)でN4レベル(※1)相当の語学力が求められます。
N4レベルは「基本的な日本語を理解できる」レベルで、簡単な日常会話や短い文章(手紙、案内など)が理解できることが求められます(※2)。実習生が施設内のルールや日常業務を理解するうえで最低限必要な語学力と位置づけられており、実際の評価試験でもN4レベル以上の語学力が求められることが明文化されています。
ただし、N4レベルをクリアしていても、実際の現場では以下のような問題が起こることがあります。
-
「はい」と答えるものの、本当は理解していない場合がある(業務事故につながるリスク)
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「トイレ」や「食事介助」などの専門用語を聞き取れない
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利用者や職員とのあいさつや日常会話が噛み合わない
N4はあくまで最低ラインであり、現場での円滑な就労を保証するものではありません。施設側は単に試験合格を確認するだけでなく、面接や会話のやりとりを通して実際の理解力を見極めることが重要です。
※1出典元:厚生労働省|技能実習「介護」における固有要件についてP6
※2出典元:日本語能力試験公式ウェブサイト|N1~N5:認定の目安
第2号移行にはN3が必要
第1号技能実習から第2号へ移行するには、原則として日本語能力試験(JLPT)のN3相当の語学力が必要とされています(※3)。これは、実習内容がより実践的・専門的になるため、コミュニケーションの精度も上げる必要があるためです。
N3レベルは、日常の会話や文章をある程度理解できるレベルです。N4に比べて文法や語彙が豊富で、より複雑な内容も理解できることが求められます(※4)。例えば、複数の指示を同時に理解したり、緊急時の会話に的確に対応したりする能力が求められます。これは介護現場での判断力やコミュニケーションに欠かせないレベルです。
現場の状況をみると、N3レベルの日本語を持つ実習生は、利用者や同僚との連携がスムーズで、業務の負担軽減にもつながっています。そのため、施設側は第2号への移行を考え、採用の段階からN3の習得を支援する体制を整えることが大切です。
※3出典元:厚生労働省|技能実習「介護」における固有要件についてP6
※4出典元:日本語能力試験公式ウェブサイト|N1~N5:認定の目安
第3号は会話力が重視される
技能実習制度における第3号は、これまでの実習で「良好な成果を出した者」が対象となる特例的な段階です。制度上、明確な日本語能力基準は定められていませんが、実際には高度な会話力が求められています。
これは、第3号が3年以上の長期就労を前提としているためです。日常業務の遂行だけでなく、現場で発生する突発的な状況への対応や、職員同士の細かなコミュニケーションが必要となる場面が多いのが特徴です。文法や語彙だけでは対応しきれない、「会話のキャッチボール」が特に重要視されるフェーズと言えるでしょう。
第3号の段階で問題となりやすいケース
-
利用者の感情表現に適切な反応ができず、関係性が築けない
-
新人の指導や説明に苦労し、職員間で誤解が生じる
-
突発的な事故や緊急対応時に、正確な報告・連絡・相談ができない
第3号では制度の基準以上に、実務における「会話力の質」が厳しく問われるため、施設側は語学指導に加え、対人スキルや状況理解力の育成にも力を入れる必要があります。
評価試験でも語学力が問われる
技能実習制度の中では、一定期間終了後に「技能実習評価試験」(※5)が実施されます。この試験は実技だけでなく、日本語での理解力や表現力も重要な評価ポイントに含まれています。単に作業ができるかどうかだけでなく、日本語の指示を正しく理解し、的確に対応できるかどうかが審査の対象となるため、語学力が不足していると、実技の能力があっても合格が難しくなることがあります。
「バイタルサインを確認してください」や「トイレ介助の準備をしてください」などの言語指示に対して、即時に理解・実行できることが前提になります。試験の多くは筆記形式や口頭質問を含むため、「読み・書き・聞き取り・話す」のバランスが問われるのも特徴です。
このように、制度上の各種試験は語学力と深く結びついており、「日本語は何となく話せればよい」という認識では通用しません。施設側は、試験合格を見据えた学習支援体制の整備が求められます。
※5出典元:厚生労働省|技能試験・日本語試験の概要
介護職の技能実習生を受け入れる条件を確認しよう
技能実習制度では、外国人を介護職として受け入れる際に、施設側にも複数の条件が課されます。実習生本人の語学力や態度だけを評価すればよいわけではなく、受け入れ側が制度的に整っているかどうかも、重要な審査ポイントとなっています。管理職や人事担当者にとって、ここを誤解したまま受け入れを進めると、後の監査や人材トラブルに発展する可能性があるため注意が必要です。
ここでは、日本語要件以外の、応募者側に求められる基本的な条件と、施設側の体制整備に関する要件を整理します。採用前にしっかりと確認しておくことで、制度違反のリスクを避け、円滑な受け入れにつなげられます。
介護職における技能実習生の応募条件
介護職の技能実習生として受け入れる外国人には、出身国の制度と連動した複数の応募条件があります。主な要件として、18歳以上であること、技能実習の趣旨を理解し真摯に取り組む意思があること、帰国後に介護関連の業務に従事する予定であることが求められます。また、団体監理型の場合は、介護と同種の業務経験や本国公的機関の推薦も必要です。健康面では心身の適性が重要視され、健康診断書や誓約書の提出が義務付けられています。
技能実習制度本体(主な要件)
・18歳以上であること。
・制度の趣旨を理解して技能実習を行おうとする者であること。
・帰国後、修得等をした技能等を要する業務に従事することが予定されていること。
・企業単独型技能実習の場合にあっては、申請者の外国にある事業所又は申請者の密接な関係を有する外国の機関の事業所の常勤の職員であり、かつ、当該事業所から転勤し、又は出向する者であること。
・団体監理型技能実習の場合にあっては、従事しようとする業務と同種の業務に外国において従事した経験を有すること又は技能実習に従事することを必要とする特別な事情があること。
・団体監理型技能実習の場合にあっては、本国の公的機関から推薦を受けて技能実習を行おうとする者であること。
・同じ技能実習の段階に係る技能実習を過去に行ったことがないこと。出典元;厚生労働省|技能実習生に関する要件より
「介護」職種では、上記の要件に加えて、日本語能力要件を満たす必要があります。
受け入れ施設の職員体制条件
技能実習制度では、実習生を指導できる十分な職員体制が整っていることが、受け入れ施設に課せられた条件の一つです。たとえば、介護福祉士や常勤職員が一定数以上在籍していることが前提とされており、単なるマンパワー不足の穴埋めとして外国人を導入することは制度上許されていません。
・技能実習指導員のうち1名以上は、介護福祉士の資格を有する者その他これと同等以上の専門的知識及び技術を有すると認められる者(※看護師等)であること。
・技能実習生5名につき1名以上の技能実習指導員を選任していること。
職員体制の条件は、技能の伝達と就業環境の維持を目的としています。指導者が明確に設定されておらず、実習生が場当たり的に業務を割り振られるような職場では、制度違反と見なされる可能性が高くなります。
安定した人員配置と教育体制を整えておくことで、実習生本人の定着にもつながります。結果的に、職場全体のストレス軽減や離職防止にも好影響を与える要素となります。
受け入れ人数に関する制限
技能実習生を受け入れられる人数には上限が設けられており、無制限に採用できるわけではありません。事業所の常勤職員数に対して、実習生の比率が一定以下であることが求められます。この上限比率は制度の信頼性を担保するために設定されており、監理団体からの確認も必須となります。
施設の規模や人員構成に応じて、受け入れ可能な人数が変わるため、事前に計算しておく必要があります。制度に詳しい監理団体と連携することで、申請の段階でミスを防ぎ、審査の通過率を高めることができます。
必要以上の採用を行えば、人員指導が追いつかず、実習の名目を超えた労働力活用とみなされかねません。こうしたリスクを避けるためにも、受け入れ人数の制限は遵守するべき基本項目の一つです。
介護職の技能実習生採用前に日本語力を見極めるには?
技能実習制度では、応募者に一定の日本語能力が求められています。ですが、実際に職場で働くには、試験の合否だけではわからない「実務での対応力」が重要になってきます。形式的な語学証明だけで採用を進めると、現場での意思疎通がうまくいかず、ミスやトラブルが起きることもあります。
こうした問題を防ぐためには、面接で日本語力をしっかり見極めることが大切です。応募者の言語スキルを正しく把握することで、採用後の指導方針がはっきりし、実習生との信頼関係も築きやすくなります。
ここでは、制度で定められた基準を超えた、「現場で通用する日本語力」を判断するポイントを具体的に紹介します。
N4やN3の証明だけで安心しない理由
JLPTのN4やN3合格だけでは、現場で求められる「話す・反応する」日本語力を十分に保証できません。
日本語能力試験(JLPT)は主に「読む・聞く」能力を評価するペーパーテスト形式のため、「話す・反応する」力は正確に測れないからです。そのため、N3合格者でも簡単な指示を理解するのに時間がかかったり、業務中に質問できないことがあります。
つまり、試験結果はあくまで参考程度であり、実際の業務に必要な対応力とは別物です。面接や事前トレーニングで、話し言葉の理解力や受け答えのスムーズさを確認することが必要です。
面接時に確認すべき日本語のポイント
日本語スキルを面接で評価する際には、事前に決まった質問をするだけでは不十分です。日常業務で想定される場面に沿った質問や、少し込み入ったやりとりを通じて、実際の理解力を見極める必要があります。
たとえば、「食事介助をお願いします」や「ベッドメイキングが終わったら報告してください」といった具体的な場面を想定した言葉が通じるかどうか。また、質問に対してすぐに返答ができるか、もしくは聞き返す際の言葉遣いが適切か。こうした反応から、業務遂行時の不安要素を見抜くことが可能です。
形式的な応答よりも、意味を理解して受け答えできているかどうか。面接はその確認の機会であり、採用後のミスマッチを防ぐ第一歩です。
話し方・理解力・反応から見る判断軸
語学力の評価では、回答内容よりも「どのように答えているか」に注目してみると、分かってくるものがあります。流暢さだけで判断せず、ゆっくりでも自分の言葉で説明できているか、質問の意図を汲み取って応答できているか。反応の質とタイミングが、その人の“業務への適応度”を反映します。
たとえば、話しながら相手の表情を確認する姿勢が見られるか、言い直しや確認の表現を自然に使えるかどうかもチェックポイントとなります。単語の暗記力よりも、言語を通じた“現場でのやりとり”に着目することが大切です。
技能実習の採用は、あくまで「介護業務への適性」が軸です。会話の反応力や理解の深さから、日本語力だけでなく、協調性や応用力の有無も見えてきます。
介護職の技能実習と特定技能の日本語要件の違いとは?
外国人材を介護職で受け入れる制度には、「技能実習」と「特定技能」の2つがあります。いずれも人材不足の現場を支える重要な制度ですが、制度の目的・在留資格・就労可能年数・日本語要件には明確な違いがあります。これらの違いを把握せずに制度選定を進めてしまうと、採用後のトラブルや制度上のミスマッチを引き起こしかねません。
両制度を正しく比較することで、自施設の運営体制や人材ニーズに適した選択をすることができます。
ここでは、特に日本語要件の違いを軸に、両制度の特徴と選定のポイントを整理します。
在留資格と就労年数の違い
技能実習制度は「技術移転」を目的とした制度であり、原則として1号・2号・3号の段階に応じて、最長5年間の在留が認められています。
一方、特定技能制度は「人手不足分野への即戦力の確保」を目的としており、特定技能1号は最長5年、特定技能2号では在留の上限がなく、家族帯同も可能です。
特定技能 | 技能実習 |
---|---|
1号:通算5年 |
技能実習1号:1年以内 技能実習2号:2年以内 技能実習3号:2年以内(合計で最長5年) |
この違いは、採用計画や長期的な人材戦略に大きな影響を与えます。技能実習は“育成型”であるのに対し、特定技能は“即戦力型”の制度であり、導入時の体制や人材の役割が異なるためです。施設として、育成に時間をかけられる体制があるのか、それとも即戦力を求めるのか。この判断が、制度の選定に直結します。
介護業務に求められる語学力の差
制度選定を検討する際に見落とされがちなのが、「日本語能力の実務的な差」です。では、具体的に技能実習と特定技能では、どのような日本語力の違いがあるのでしょうか。
項目 | 技能実習(第1号) | 技能実習(第2号) | 特定技能(1号) |
---|---|---|---|
日本語要件 | JLPT N4相当(初級) | JLPT N3相当(初中級) | JLPT N4以上または介護日本語評価試験 合格(+実技試験) |
求められる理解力 | ゆっくり話せば理解可。単語ベースの理解が中心 | 複数の指示や短い説明が理解可能 | 状況に応じた判断、報連相、会話のキャッチボールが必要 |
実務対応レベル | 指導者の付き添い必須、反復指導が必要 | 一部の業務を単独で対応可。定型業務中心 | 自立して業務が可能。非定型業務にも対応 |
日本語要件の水準についても、技能実習と特定技能では求められる基準が異なります。本記事冒頭「介護職の技能実習生に求められる日本語要件とは?」でも触れたように、技能実習制度では、1号で日本語能力試験N4相当、2号でN3相当が目安とされており、主に基本的な業務の理解や指示への対応を想定した基準です。
一方、特定技能1号での受け入れには、介護日本語評価試験または日本語能力試験N4以上の合格が必須となっており、技能実習修了者はその一部が免除対象となります。特定技能は即戦力としての受け入れであるため、実務現場において会話力・報連相・マニュアル読解など、より高度な言語対応力が求められます。
この違いは、単なる試験合格の有無だけでなく、介護業務の質と安全性にも直結する要素です。現場での実行力を重視する場合、特定技能の方がより適した選択肢になるケースもあります。
制度選定の判断ポイント
技能実習と特定技能のいずれを選ぶかは、施設の目的・教育体制・人員の役割によって異なります。短期間で育成しながら現場に慣れさせたい場合は技能実習が適しており、既に基本的な実務対応が可能な人材を求めるなら特定技能の導入が効果的です。
選定時の判断ポイントとしては、次のような視点が挙げられます。
-
長期雇用を前提としたいかどうか
-
職場内に語学指導・OJTを担える人材がいるか
-
採用後すぐに独り立ちできる業務内容か
-
家族帯同や生活支援への備えがあるか
制度を使い分けることで、受け入れの目的と実務のバランスを最適化することができます。採用方針が明確でないまま制度を選んでしまうと、本人にも施設にも負担がかかるため、初期段階での選定判断は極めて重要です。
介護職の技能実習生が従事できる業務
技能実習制度のもとで外国人を介護職に受け入れる場合、実習生が従事できる業務範囲は法的に定められています。現場では即戦力として期待されることも多いですが、あくまで技能習得が目的のため、任せられる業務には明確な制限が設けられています。
もし実務とのギャップを考慮せずに業務を割り振ると、制度違反や指導監査の対象となる恐れがあります。特に訪問系サービスや専門性の高い判断業務は誤解されやすいため、事前にしっかりと理解し確認しておくことが大切です。
ここでは、厚生労働省が示す「介護職種における技能実習の業務範囲」をもとに、受け入れ施設が注意すべき業務内容とその制限について詳しく紹介していきます。
厚労省で定められた必須業務
介護職の技能実習生に許可されている業務は、厚生労働省が公表している「技能実習評価試験の職種細目」(※6)に基づき定められています。ここでは、日常生活支援や身体介助といった基本的な介護業務が「必須業務」とされており、受け入れ施設はこれに則った業務を提供しなければなりません。
主な業務には、食事介助・入浴介助・排泄介助などが含まれます。いずれも実習を通じて技能を習得させることが求められており、単純労働や雑務だけを任せる形は制度の趣旨に反します。
必須業務を逸脱した作業指示や、不適切な業務分担は、監理団体や行政からの指摘を受けるリスクがあります。まずはこの「業務の枠」を正しく把握し、配属計画を立てることが制度運用の基本です。
※6出典元:厚生労働省|技能実習「介護」における固有要件についてP5
実習段階ごとの業務内容
技能実習制度には1号・2号・3号という段階があり、それぞれで実習生が経験すべき業務内容にも違いがあります。1号は基礎的な作業が中心で、指導者の管理下で実習を進めることが原則です。2号ではより自立した業務遂行が求められ、3号では一定の業務範囲で判断を伴う対応も認められるようになります。
段階が上がるごとに、技能試験や日本語能力の基準も引き上げられます。そのため、同じ実習生であっても、受け入れ時期や所属年数によって任せられる業務の幅は異なります。
配属前には、実習生本人の制度ステータスを確認することが欠かせません。業務計画とステージの整合性が取れていない場合、制度逸脱と見なされる可能性があります。
【2025年6月時点】介護職の技能実習生は訪問系サービスへ従事できる?
2025年6月時点で、技能実習生は一定の条件を満たせば訪問介護などの訪問系サービスに従事できるようになりました。
これまでは、緊急対応や指導体制の難しさから、一人で利用者宅を訪問する業務は技能実習生に禁止されていました。しかし、深刻な人手不足を受けて、令和7年4月からは、介護職員初任者研修を修了し、介護事業所での実務経験が1年以上あるなどの条件を満たす場合に限り、訪問系サービスへの従事が認められています。
さらに、受け入れ事業所は、利用者やその家族に対し事前に説明し同意を得るとともに、以下の事項を厳守する必要があります。
- 訪問介護業務に関する研修の実施
- 訪問介護業務開始時に一定期間、責任者等の同行によるOJTの実施
- キャリアアップ計画の策定と本人への説明
- ハラスメント防止策の徹底と相談窓口の設置
- 緊急時対応のためのICT活用など環境整備
これらの措置により、安全で質の高いサービス提供と実習生の働きやすさを両立させることが求められています。訪問介護等に従事させる場合、同行訪問期間や回数は利用者の状況やサービス頻度に応じて細かく設定されており、十分なフォローが義務付けられています。
なお、記録作成やモニタリング評価など高度な判断を要する業務は依然として実習生の範囲外であり、介護福祉士など資格保有者に限定されます。制度違反を避けるために、業務範囲の明確な区分と、監理団体や行政への事前確認を行うようにしましょう。
※7出典元:厚生労働省|外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について
介護現場における技能実習生の配置基準と比率の決まり
介護職として技能実習生を受け入れる場合、施設は単に人手不足を補うだけでなく、「適切な配置基準」を守る責任があります。技能実習制度はあくまで“教育制度”であり、労働力確保を主目的とした運用は制度違反に当たります。
実習生の人数、指導者との比率、施設の体制。これらはすべて、厚生労働省や監理団体がチェックする対象です。仮に配置のバランスを誤れば、監査対応の負担が増えるだけでなく、実習生本人の負担にもつながります。
ここでは、制度に基づいた人員配置の基本と、遵守すべき比率、違反した場合のリスクについて解説します。
指導者1人に対する実習生数
介護現場における技能実習生の指導体制では、一定の基準を満たした技能実習指導員を配置することが義務付けられています(※8)。
介護職種の場合、技能実習生5名につき1名以上の指導員を選任する必要があり、例えば10名の実習生がいる場合は2名以上の指導員が必要です。指導員は介護福祉士の資格を持つか、それと同等の専門知識や技術を有する者(看護師など)が務めることが求められています。
技能実習生数 | 必要な指導員数 | 指導員の資格例 |
---|---|---|
1~5名 | 1名以上 | 介護福祉士、看護師など |
6~10名 | 2名以上 | 介護福祉士、看護師など |
11~15名 | 3名以上 | 介護福祉士、看護師など |
技能実習制度の基本要件では事業所に1名以上の指導員を配置すればよいとされていますが、介護職種では上記の人数比率が定められています。これは、実習生が適切な指導と安全管理を受けられるようにするためです。
もし指導員の数が不足し、1人が過剰な実習生を担当すると、指導の質が落ち、教育効果の低下や安全面での問題が生じやすくなることも考えられます。そのため、施設はこの配置基準を必ず守り、健全な指導体制を維持することが求められます。
※8出典元:公益財団法人 国際人材協力機構|③実習実施者に関する要件
日本語レベルと配置比率の関係性
実習生の日本語能力は、単にコミュニケーションの可否だけでなく、配置比率にも影響します。日本語能力が不十分な実習生を多数受け入れてしまうと、指導者が一人で対応できる範囲を超え、教育や安全指導が機能しなくなる恐れがあります。
特に、N4レベルの1号実習生が複数名いる場合、業務指示の補足や表現の言い換えが必要になる場面が増えます。こうした状況では、一般の介護職員が業務に集中できず、全体の運営効率にも影響が出かねません。
日本語能力が高い実習生とそうでない実習生を組み合わせて配属するなど、バランスの取れた配置が求められます。単なる人数管理ではなく、「言語対応のしやすさ」も考慮に入れるべきです。
配置基準を守らない場合のリスク
技能実習制度は厳格に運用されており、配置基準を逸脱すると、監理団体や出入国在留管理庁からの指導・警告の対象になります。改善命令が出されるだけでなく、重大な違反とみなされた場合には、受け入れ停止や制度からの除外措置を受けることもあります。
さらに、指導が不十分な状態で業務に就いた実習生が事故やトラブルを起こせば、施設の責任が問われます。日本語での報告がうまくできず、問題の発見が遅れるリスクも否定できません。
制度に沿った人員配置は、受け入れ施設の信用と継続的な運用を守る土台です。「人手不足だから増やす」ではなく、「体制に応じて受け入れる」視点を持つことが不可欠です。
【介護】夜勤はいつから?技能実習生の配置ルール
技能実習生が介護現場で夜勤に入れるかどうかは、多くの施設で悩まれるポイントです。夜勤は単なるシフト勤務ではなく、突発的な対応や緊急判断が求められるため、日本語力や実務経験において一定の条件が必要とされています。
「第2号技能実習生であること」「所定の日本語能力を有していること」「十分な日勤経験を積んでいること」が目安となります。夜勤に関する規定は制度的にも繊細であるため、現場判断での対応は避けるべきです。
夜勤の具体的な条件や配置ルールについては、「介護技能実習生の夜勤いつから可能?受け入れ施設が知っておくべき5つの注意点」で詳しく解説しています。実務での判断に迷われた場合は、ぜひご参照ください。
介護現場で起こるコミュニケーションの課題
介護職の技能実習生と日本人スタッフの間で、日本語による意思疎通がスムーズにいかない場面は少なくありません。とくに、業務指示や緊急時の対応で言葉の壁が明確になることがあり、誤解やトラブルの温床となるケースもあります。
背景には、実習生の語彙力だけでなく、介護特有の表現や敬語の使い分けといった日本語の運用難度があります。こうした課題に対しては、マニュアル整備やOJT、通訳アプリの活用など、複合的な対策が必要です。
詳細な事例と具体策は、「外国人介護士とのコミュニケーションを円滑にするには?現場で役立つ実践ポイントを紹介」でわかりやすく整理しています。現場改善の参考にお役立てください。
介護職の技能実習生への日本語教育支援の方法
介護現場で技能実習生が活躍するには、日本語の理解力やコミュニケーション力がとても大切です。日本語の理解度が低いままだと、業務指示の誤解や事故につながるリスクもあり、現場全体の運営にも支障をきたしてしまいます。
こうした状況を避けるためにも、計画的かつ段階的な日本語教育支援が必要になってきます。日本語講習やOJT、アプリなどのツールの導入を通じて、実習生の語学力向上を図ることが、安心・安全な介護サービス提供につながります。
ここでは、日本語教育支援の具体的な方法を3つの側面からみていきます。
入国後講習の実施と注意点
介護職の技能実習生は、来日後に監理団体が実施する「入国後講習」を受けることが義務付けられています。この講習には、生活習慣や法令、安全指導に加えて、日本語教育も含まれています。標準的には計240時間以上のカリキュラムが用意されており(※9)、その一部で介護現場に即した日本語も取り上げられます。
ただし、講習の質や時間配分は監理団体ごとに異なるため、施設側もその内容を把握し、実務で必要となる語彙や表現がカバーされているか確認しておくことが重要です。基礎教育に過度な期待を寄せるのではなく、現場での継続的なフォローとセットで考えるべきでしょう。
特に、介護特有の用語やマニュアル文書の読み解きは、講習だけでは習得しきれない場合が多く、受け入れ側の支援体制が成功の鍵を握ります。
※9出典元:厚生労働省|監理団体が行う入国後講習の標準的な日本語学習プログラム P6
現場での日本語OJTの進め方
入国後の講習を終えた技能実習生は、いよいよ現場での仕事がスタートします。ここで大切なのが、実際の仕事を通して行うOJT(On the Job Training)による日本語教育です。
ただ指示を出すだけでなく、言葉の使い方や表現の意味まで丁寧に教えることで、実習生の理解度をしっかり深めていきます。
たとえば、命令形ではなく「〜してください」という丁寧な言い方を教えたり、「交換」と「取り替え」といった似た言葉の違いを説明したりすることがよくあります。こうした日常の会話も、学びのチャンスであり、OJTとして積極的に取り入れていくと良いでしょう。
また、定期的に理解度をチェックし、言い直しや復唱を促すことで、実際に言葉が身につくようにサポートしましょう。時間をかけて丁寧に教える姿勢が、実習生の安心感と定着率の向上にもつながります。
ツールやアプリを活用した支援
近年では、日本語学習に役立つツールやアプリが数多く登場しています。介護現場でも、こうしたデジタル教材を上手に活用することで、技能実習生の自習と業務理解を効果的に支援できます。
代表的な例としては、介護用語を音声で学べるアプリ、会話形式で反復練習ができる教材、イラスト付きマニュアルなどがあります。自身だけではなかなか計画通りに進めることができない技能実習生も多いため、オンライン講座で能動的に学べる環境も提供されています。

ただし、ツール導入だけで満足せず、「実際に役に立っているか」「進捗はどうか」といった目線を常に持っていることも必要です。導入後は、定期的に現場スタッフや技能実習生にヒアリングする、など行っていくようにしましょう。
【介護現場必見】技能実習制度の見直しで何が変わる?
介護業界では外国人技能実習生の受け入れが増加していますが、現在、2027年6月までをめどに、技能実習制度の大幅な見直しが進んでいます(※10)。特に「育成就労制度」への移行をはじめ、制度の目的や運用ルールに変化が起こることで、介護施設の運営に直接影響が及ぶ可能性があります。
ここでは、制度見直しの背景と具体的な変更点、そして特に日本語要件の今後の動向について詳しく解説します。
介護現場が安心して外国人材を受け入れ、効果的に活用するためのポイントも紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
※10出典元:福祉新聞|育成就労外国人、転籍受け入れに上限 都市部集中に対策(政府素案)
技能実習制度見直しの背景と目的
技能実習制度の見直しは、外国人材受け入れの現場で増加している課題を解決し、制度の信頼性を高めることが目的です。
本来の目的は「技術移転を通じた国際貢献」でしたが、実際には日本国内の労働力不足を補う手段として運用されるケースが増え、制度本来の意義が失われていました。特に介護分野では、人手不足の深刻化により外国人労働者の存在感が大きくなっていますが、言語の壁や教育体制の不備からトラブルが多発していました。
こうした課題を踏まえ、単なる技能習得だけでなく、長期的な就労とキャリア形成を支援する新たな制度構築が求められています。これにより、受け入れ側の施設もより実践的かつ継続的な支援体制を整備する必要が生じています。
育成就労制度への移行と主な変更点

新たに導入される育成就労制度は、従来の技能実習制度を実質的に置き換える形で計画されています。この制度では、実習生を「育成しながら長期的に働く人材」と位置付け、単なる研修から「実践的な就労」を前提とした支援体制に移行します。
主な変更点として、他の事業所への転職が可能になること、支援計画の義務化、就労者としての待遇強化などがあります。これにより、介護施設はより多様な外国人材の受け入れと定着を図ることが期待されていますが、一方で対応すべき法令や運用ルールの複雑化も進みます。
日本語要件の現状と今後の見通し
日本語要件については、制度見直し後も基本的には現行の水準が維持される見込みです。具体的には、技能実習1号で日本語能力試験N4相当、2号でN3相当の基準がベースとなっています。ただし、今後は「実務で通用するコミュニケーション能力」の強化がより重視される方向にあります。
これは、単に試験合格を目指すだけでなく、利用者や職員との円滑な意思疎通や緊急時対応が求められるためです。介護施設側も教育プログラムの充実やOJTの強化に取り組む必要があります。
介護施設が今から取り組むべき準備
今後の制度変更に対応するため、介護施設は早めに準備を始めることが重要です。まずは、現行制度の運用状況を見直し、受け入れ体制の強み・弱みを把握していくことです。育成就労制度の要件に沿った支援計画や教育プログラムの整備を進めることも求められてくるでしょう。
また、スタッフ間で最新情報を共有し、外国人技能実習生や特定技能者への日本語教育・フォロー体制を強化することも必要です。制度変更に柔軟に対応しながら、安定した人材確保と質の高い介護サービス提供を目指していきましょう。
介護職の技能実習生の日本語要件と現場対応を理解する
介護の現場で外国人の技能実習生を受け入れるときは、日本語の能力がどのくらいなのかを把握することがとても大切です。
特に、日本語要件は法律で決められており、これを守ることはルールだけでなく、利用者の安全や信頼を守ることにも関わってきます。言葉がうまく通じないと、ケアのミスや事故につながることもあるため、最初にしっかりとした要件の基準をクリアすることが必要です。
また、技能実習の段階ごとに求められる日本語のレベルや指導の仕方、指導員の人数などのルールは変わってきています。そのため、介護施設は最新の制度を理解し、受け入れる前の準備から実際の指導まで、しっかりと対応できる体制を作ることが求められます。
とはいえ、「最初から完璧な日本語が話せる人だけを受け入れる」という考えにこだわりすぎるのはよくありません。入国後の講習や日本語学習ツールを活用し、現場で日本語力を伸ばせるようサポートすることが大切です。
このように、技能実習生が安心して働きながら日本語を学べる環境を整えることが、介護の質向上と施設運営の安定につながります。日本語要件を守りつつ、しっかりと支援することが、これからの介護現場における重要な課題でしょう。