日本の介護現場では、深刻な人手不足を背景に外国人介護人材の受け入れが急速に進んでいます。しかし、単に人材を採用するだけでは十分な成果は得られないでしょう。
外国人材が介護現場で活躍するためには、体系的な研修プログラムと継続的な指導が欠かせません。文化的背景や言語の違いを理解し、それぞれの特性に応じた研修内容を設計することで、外国人材の定着率向上と介護サービスの質の確保ができます。
本記事では、介護施設で外国人研修を担当する現場担当者に向けて、効果的な研修プログラムの構築から実践的な指導方法まで、実務に直結する内容を詳しく解説します。
株式会社BKUのご紹介
株式会社BKUは、ミャンマーの送り出し機関と日本国内の登録支援機関を運営する人材紹介会社です。ミャンマー人材の文化・言語などの理解はもちろん、外国人材の紹介から採用、入国手続きまで一貫してサポートできることが当社の強みです。
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この記事の監修者

伊勢明敏
株式会社BKU代表取締役|日本で光学機器メーカーで研究職として4年間従事。その後ミャンマーに移住して、株式会社BKUを創業。9年間の在住中では、外国語大学と仏教大学にてミャンマーの言語・文化を専門的に学習。ミャンマーの言語・文化・制度すべてに精通した人材紹介から、累計400名以上の技能実習生・特定技能人材の送り出し実績を持つ。
介護業界における外国人介護研修の背景と重要性
日本の介護業界では、急速な高齢化の進行と労働人口の減少により、深刻な人手不足が続いています。厚生労働省の調査によると、2026年度には約25万人の介護職員が不足すると予測されており、この状況を受けて外国人介護人材の積極的な受け入れが進められています(※1)。
しかし、外国人材の受け入れには多くの課題が伴います。言語の壁、文化的違い、日本独自の介護理念の理解など、これらの課題を克服するためには、体系化された研修プログラムが欠かせません。ここでは、外国人介護研修の背景にある社会的要因と、その重要性について詳しく解説します。
※1引用元:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」
人手不足と高齢化で高まる外国人の採用と研修ニーズ
外国人材の受け入れが拡大する中、介護業界においても外国人材の採用とその研修の需要は高まっています。
理由として、2025年には団塊の世代が全て75歳以上の後期高齢者となり、介護サービスの需要が急激に増加することが予想されています。この「2025年問題」を前に、介護現場では質の高い人材の確保が急務となっており、外国人材の活用は避けて通れない課題となっているからです(※2)。
外国人介護人材の採用において、彼らが持つ異なる文化的背景や価値観を理解し、それを活かした研修プログラムで外国人介護人材を育成していくことを前提として考えることが大切です。例えば、フィリピンやインドネシアなどアジア諸国出身の介護人材は、家族を大切にする文化的背景を持っており、これは日本の介護理念と共通する部分が多くあります。しかし、具体的な介護技術や日本特有の制度については、体系的な研修が必要です。
また外国人材の研修は、日本語能力の向上、介護技術の習得、日本の文化・制度の理解など、複数の要素を同時に進める必要があります。これらの要素を効果的に組み合わせた研修プログラムを構築することで、外国人材の即戦力化と長期的な定着を実現できるでしょう。
※2引用元:厚生労働省「人口の推移、人口構造の変化」
外国人介護研修で直面する課題
外国人介護研修を実施する際に、直面する主な課題は以下の3つです。
・言語の壁
・文化の違い
・指導経験不足
最も根本的な課題は言語の壁です。日本語でのコミュニケーションは、利用者の安全に直結する重要な要素であり、特に緊急時の対応や細かな体調の変化を察知する能力は、言語理解力に大きく左右されます。また、介護現場では専門用語や方言が多用されることも多く、標準的な日本語学習だけでは対応が困難な場合もあるでしょう。
また、文化的な違いも大きな課題の一つです。日本の介護現場では、利用者の尊厳を重視した細やかな配慮が求められますが、これらの価値観は言葉だけでは伝えにくく、実際の現場体験を通じて理解を深める必要があります。加えて、チームワークや報告・連絡・相談(ホウレンソウ)の重要性など、日本の職場文化に特有の要素についても、丁寧な指導が必要です。
さらに、研修を担当する職員側にも課題があります。外国人材への指導経験が乏しい日本人職員が多く、どのような方法で指導すればよいか戸惑うケースが少なくありません。これらの課題を克服するためには、研修担当者自身のスキルアップと、組織的なサポート体制の構築が不可欠です。
介護現場を支える外国人研修の重要性
外国人介護研修は、単なる技術習得の場を超えて、介護現場全体の質向上に非常に重要です。外国人材が適切な研修を受けることで、日本人職員との協働がスムーズになり、利用者により質の高いサービスを提供できるようになります。また、外国人材の視点が加わることで、従来の介護方法に新たな発見や改善点が見つかることも多く、現場全体のスキルアップにつながるでしょう。
さらに、外国人材の研修を通じて、日本人職員自身も自分たちの介護技術や方法を再認識し、改善する機会を得ることができます。外国人材へ効果的に指導することで、日本人職員にとっても学びの機会となり、組織全体の成長につながります。このような相互学習の環境を構築することで、持続可能で質の高い介護サービスの提供が可能になるでしょう。
介護現場において外国人材が研修で学ぶべきポイントは?
外国人介護人材が日本の介護現場で活躍するためには、技術的なスキルだけでなく、日本特有の文化や価値観を理解することが重要です。研修プログラムは、これらの要素を体系的に組み込み、段階的に学習できるよう設計する必要があります。
ここでは、外国人材が研修で学ぶべきポイントを、4つに分けて詳しく解説します。
ポイント①日本語習得を含めたコミュニケーション、文化
日本語によるコミュニケーション能力は、外国人材にとって最も基本的かつ重要なスキルです。介護現場では、利用者やその家族、同僚との適切に意思疎通できることが求められます。特に利用者の体調変化や緊急時の対応では、正確で迅速なコミュニケーションが生命に関わる場合もあるのです。
研修では、日常会話レベルの日本語だけでなく、介護現場で使用される専門用語や敬語の使い方についても重点的に学習する必要があります。また、非言語コミュニケーションの重要性についても指導することが大切です。日本の文化では、相手の表情や声のトーンから感情を読み取ることが重要視されており、これらの文化的な要素を理解することで、より効果的なコミュニケーションが行えるようになるでしょう。
文化的な理解については、日本の高齢者に対する敬意の表し方や、家族との関係性、プライバシーの概念など、介護現場で必要な文化的知識を体系的に学習することが重要です。これらの知識は、利用者との信頼関係構築に影響するため、技術的なスキルと同等の重要性を持っています。
ポイント②日本の介護における考え方
日本の介護は、「利用者の尊厳を保持し、その人らしい生活を支援する」という基本理念に基づいています(※3)。この考え方は、外国人材にとって理解が難しい場合があるため、研修では具体的な事例を交えながら丁寧に説明する必要があります。
自立支援の概念についても重要な学習項目です。日本の介護では、利用者ができることは自分で行ってもらい、必要な部分のみを支援するという「自立支援」の考え方が基本となっています。この考え方は、すべてを世話してあげることが良いケアだと考える文化圏出身の外国人材には、新しい視点となる場合があるかもしれません。
また、個別ケアの重要性についても理解を深める必要があります。利用者一人ひとりの生活歴、価値観、好みに応じてケアを提供することが求められ、画一的な対応ではなく、その人らしさを尊重したケアの実践が必要です。これらの考え方を身に着けることで、質の高い介護サービスの提供が可能になるでしょう。
※3引用元:日本能率研究協会総合研究所「外国人介護人材に対するけ研修の手引き 」
ポイント③介護の基本技術
介護の基本技術は、外国人材が現場で即戦力として活躍するために必要不可欠なスキルです。研修では、移乗・移動介助、食事介助、入浴介助、排泄介助などの基本的な身体介護技術について、安全性と効率性を重視した指導を行います。
これらの技術習得においては、利用者の身体的特徴や疾患の理解も重要です。日本の高齢者に多い疾患や身体的特徴について学習し、それぞれの状態に応じた適切な介護方法を身に着ける必要があります。また、介護機器の使用方法についても、実際の機器を使用した実技研修を通じて習得させることが重要です。
また、安全管理の観点から、事故防止や感染予防の知識と技術についても重点的に指導しましょう。介護現場では、利用者の転倒や誤嚥などの事故リスクが常に存在するため、これらのリスクを予防するための知識と技術の習得は欠かせません。研修では、理論的な知識と実技練習を組み合わせて、確実な技術習得を目指しましょう。
ポイント④障害、認知症などの介護利用者に関する理解
介護現場では、身体的な障害を持つ利用者だけでなく、認知症や精神的な疾患を持つ利用者への対応も重要な業務となります。これらの利用者への適切な対応は、専門的な知識と技術が必要であり、外国人材にとって最も習得が困難な領域の一つです。
認知症ケアついては、症状の理解から始まり、BPSD(行動・心理症状)への対応方法、コミュニケーションの取り方など、実践的な知識を学習します(※4)。認知症の利用者とのコミュニケーションでは、言語的な理解だけでなく、非言語的なコミュニケーションの重要性が高まるため、外国人材にとって特に重要な学習項目となります。
身体障害や精神障害についても、それぞれの特性を理解し、適切な支援方法を学習することが必要です。障害の種類や程度に応じた個別的な対応方法を身に着けることで、利用者の生活の質向上に貢献できるようになります。また、家族との連携や多職種との協働についても学習し、チームケアの一員として機能できる能力を養うことも良いでしょう。
※4引用元:厚生労働省「認知症ケア法ー認知症理解」
外国人に研修を行う介護施設の受け入れ準備は何か?
外国人介護人材の研修を成功させるためには、施設側の十分な準備が欠かせません。単に研修プログラムを用意するだけでなく、外国人材を受け入れるための環境整備や支援体制の構築が必要となるのです。
ここでは、外国人材の研修を行う施設側が準備すべきことを解説します。
研修プログラムの企画、運営
外国人材向けの研修プログラムは、通常の日本人職員研修とは異なる配慮が不可欠です。まず、研修の目標を明確に設定し、外国人材の現在のスキルレベルと必要な到達レベルを把握することが重要になります。研修期間についても、言語習得と技術習得の両方を考慮し、十分な時間を確保する必要があるでしょう。
研修内容の構成では、段階的な学習プログラムを設計することが重要です。初期段階では日本語と基本的な文化理解に重点を置き、徐々に介護技術や専門知識の習得に移行していく構成が効果的でしょう。また、理論の学習と実技練習をバランスよく組み合わせ、学習した内容を実際の現場で活用できるよう配慮する必要があります。
研修の運営においては、外国人材の学習進度や理解度を定期的に評価し、必要に応じて個別のサポートを提供することが重要です。評価方法についても、言語的なハンディキャップを考慮し、実技評価や図表を活用した評価方法を取り入れるなど、公平で適切な評価システムを構築することが必要です。
外国人材を受け入れるためのサポート体制を作る
外国人材の研修を成功させるためには、施設全体でのサポート体制の構築が欠かせません。まず、専任の指導者やメンター制度を設け、外国人材一人ひとりに対して継続的な支援を提供する体制を整えることが重要です。指導者には、外国人材の文化的背景を理解し、適切な指導方法を身に着けた職員を配置することが理想的でしょう。
言語面でのサポートも重要です。日本語学習の支援だけでなく、必要に応じて通訳や翻訳のサポートを提供し、コミュニケーションの障壁を取り除く努力が必要になります。また、研修教材についても、外国人材の理解を促進するため、図表やイラストを多用した視覚的な教材を準備することが効果的です。
また、生活面でのサポートも忘れてはいけません。住居の確保、生活必需品の準備、行政手続きの支援など、外国人材が日本での生活に適応できるよう包括的なサポートを提供することが重要です。これらのサポートは、外国人材の心理的な安定にもつながり、研修効果の向上に大きく貢献します。
【補助金は使えるの?】外国人介護研修のための支援制度
外国人介護人材の研修に関しては、国や自治体から様々な支援制度が提供されています。これらの制度を活用することで、研修にかかる費用負担を軽減し、より充実した研修プログラムを実施することができるでしょう。
主な支援制度として、厚生労働省が実施する「外国人介護人材受入環境整備事業」があります(※5)。この事業では、外国人材の日本語学習支援、介護技能向上のための研修、相談・支援体制の整備などに対して補助金が支給されます。また、各都道府県レベルでも独自の支援制度を設けている場合があり、地域の実情に応じた支援を受けることができるでしょう。
これらの支援制度を活用する際には、申請手続きや要件の確認が必要です。補助金の対象となる経費や支給条件について事前に詳しく調べ、適切な申請を行うことが重要です。また、補助金を受けた場合の報告義務や成果の評価についても理解し、適切な運営を行う必要があります。
※5引用元:厚生労働省「令和5年度補正予算事業(外国人介護人材関係)について」
外国人材向けの介護研修内容の準備と組み立て手順
外国人材向けの介護研修を効果的に実施するためには、体系的な準備と組み立てが必要です。研修の成否は、事前の準備段階での計画にかかっており、外国人材の特性や学習ニーズを十分に考慮した研修設計が求められます。
ここでは、研修内容の準備から実施まで、5つの具体的な手順について詳しく解説します。
手順①研修テーマと講師を選定する
まずは研修テーマと講師の選定です。研修の成功は、適切なテーマの選定と質の高い講師の確保にかかっています。研修テーマの選定では、外国人材の現在のスキルレベルと最終的な到達目標を明確にし、その間のギャップを埋めるために必要な学習項目を体系的に整理することが重要です。
たとえば、ミャンマー出身で日常会話レベルの日本語を話す新人3名を対象とする場合は、「日本語コミュニケーション」、「日本の介護文化と理念」、「基本的な介護技術」、「安全管理と事故防止」、「認知症ケア」、「チームワークと報告・連絡・相談」などが挙げられます。これらのテーマを外国人材の習熟度に応じて優先順位をつけ、段階的に学習できるよう配置することが必要です。
講師の選定については、外国人材への指導経験や異文化コミュニケーション能力を重視することが重要です。単に介護技術に優れているだけでなく、外国人材の文化的背景を理解し、適切な指導方法を身に着けた講師を選定することで、研修効果を向上させることができるでしょう。
手順②研修カリキュラムを作成する
次は研修カリキュラムの作成です。研修カリキュラムの作成は、選定したテーマを具体的な学習プログラムに落とし込む重要な作業です。カリキュラム設計では、外国人材の学習特性を考慮し、理論学習と実技練習をバランスよく組み合わせることが重要になります。
たとえば、1週目に日本語と安全研修を座学2割と実技8割の割合で行い、2週目から口腔ケアや認知症ケアを段階的に追加するーといった具合に、まず基礎的な内容から始めて、徐々に応用的な内容に移行する段階的な学習プログラムを設計します。各学習項目については、学習目標を明確に設定し、どのような知識や技術を身に着けるのかを具体的に示すことが必要です。また、学習項目間の関連性も考慮し、前の学習内容が次の学習に活かされるよう配慮するようにしましょう。
評価方法についても、カリキュラム設計の段階で明確にしておくことが必要です。外国人材の言語的なハンディキャップを考慮し、実技評価や図表を活用した評価方法を取り入れるなど、公平で適切な評価システムを構築することが重要になります。
手順③研修の要項とタイムスケジュールを検討する
カリキュラムを作成したら、次は研修の要項とタイムスケジュールの検討です。研修の要項とタイムスケジュールの検討も研修を計画する上では欠かせません。
また研修期間については、外国人材の現在のスキルレベルと必要な到達レベルを考慮し、十分な学習時間を確保することが重要です。たとえば、勤務シフトと照らし合わせ、午前は座学、午後は日本人職員に付き添いながら実務をこなす形式にしていくなどのスケジュールを作成します。
日程の設定では、外国人材の就労状況や生活リズムを考慮し、無理のないスケジュールを組むことが必要です。また、研修内容の難易度や重要度に応じて、時間配分を調整することも必要でしょう。難易度の高い内容については、より多くの時間を割り当て、十分な理解と習得を図ることが大切です。
研修の実施場所についても、外国人材が集中して学習できる環境を整えることが大切です。研修室の設備や教材の準備、必要に応じた通訳や翻訳サポートの手配など、研修環境の整備も要項に含めて検討してください。
手順④研修テキストを用意する
研修の要項とタイムスケジュールを検討したら、次に研修テキストを用意します。外国人材向けの研修テキストは、言語的な理解を促進するため、通常のテキストとは異なる工夫が必要です。テキストの内容は、外国人材の日本語レベルに応じて、わかりやすい表現を使用し、専門用語については丁寧な説明を加えることが重要です。
理解を促進するため、図表やイラスト、写真を多用したテキストを作成することが効果的です。特に介護技術については、文字による説明だけでなく、実際の動作を示した写真や図解を多用することで、理解度を大幅に向上させることができるでしょう。
また、文化的な理解を促進するため、日本の介護現場での実際の事例や体験談を盛り込むことも重要です。これにより、外国人材は理論的な知識だけでなく、実際の現場での活用方法についても理解を深めることができるでしょう。厚生労働省補助事業において、学習用のコンテンツやテキストが用意されているので、ぜひ参考にしてください(※6)。
※6引用元:厚生労働省「介護分野で働く外国人の方のための学習用コンテンツ・テキストについて」
手順⑤研修効果のフォローアップにも取り組む
最後に研修効果のフォローアップにも取り組みます。研修の効果を最大化するためには、研修終了後のフォローアップが欠かせません。例えば、研修終了後1週間と1ヶ月後に面談と実技チェックを実施し、必要に応じて追加の指導や支援を追加しましょう。
定期的な面談や実技チェックを通じて、外国人材の理解度や技術習得状況を継続的に評価し、個別の課題に対応することが必要になります。また、研修内容の定着度を測るため、一定期間後に再評価を実施し、必要に応じて補完的な研修を提供することも重要です。
フォローアップの過程で得られた情報は、今後の研修プログラムの改善にも活用することができます。外国人材からのフィードバックを、次回の研修内容反映させることで、研修プログラムの質をより高めることができるでしょう。
外国人材の介護研修で大切な指導のポイント
外国人材への介護研修において、指導者の役割は極めて重要です。単に知識や技術を教えるだけでなく、文化的な違いを理解し、外国人材の学習スタイルに適応した指導方法を身に着けることが求められるからです。
ここでは、外国人材の介護研修における指導のポイントを4つの観点から詳しく解説します。
ポイント①日本語教育と技術研修のバランスを考える
外国人材の介護研修では、日本語能力の向上と介護技術の習得を同時に進める必要があります。これらの要素は相互に作用しており、日本語能力が不十分だと介護技術の理解も困難になり、逆に介護技術を学ぶ過程で日本語能力も向上するという相乗効果があるのです。
指導において重要なのは、外国人材の日本語レベルに応じた適切な説明方法を選択することです。初級レベルの場合は、簡潔で明確な表現を使用し、必要に応じて母国語での補足説明や通訳を活用しましょう。中級レベル以上の場合は、より詳細な説明を日本語で行い、専門用語の理解を深めることに重点を置くと良いでしょう。
また、実技指導においては、言語による説明だけでなく、実際の動作を示しながら指導することが効果的です。視覚的な理解を促進することで、言語的なハンディキャップを補い、確実な技術習得を図ることができます。
ポイント②ケーススタディやロールプレイングを活用する
外国人材にとって、日本の介護現場での実際の状況を理解することは業務をする上で欠かせません。ケーススタディやロールプレイングを活用することで、理論的な知識を実践的なスキルに変換し、現場での対応力を向上させることができるでしょう。
ケーススタディでは、実際の介護現場で発生する様々な状況を設定し、外国人材がどのように対応すべきかを考えてもらいます。認知症の利用者への対応、緊急時の判断、家族との関わり方など、多様な場面を想定したケーススタディを実施することで、実践的な判断力を養うことができるでしょう。
ロールプレイングでは、外国人材が実際に利用者や家族の役割を演じることで、相手の立場に立った理解を深めることができます。また、日本人職員との協働場面をロールプレイングで体験することで、チームワークの重要性や効果的なコミュニケーション方法を学ぶことができるでしょう。
ポイント③デジタル教材やeラーニングを活用する
現代の外国人材は、デジタル技術に慣れ親しんでいる場合が多く、デジタル教材やeラーニングを活用することで、学習効果を大幅に向上させることができます。
動画教材は、介護技術の習得において特に有効です。実際の介護技術を動画で示すことで、細かい動作のポイントや安全な手技を視覚的に理解させることができます。また、動画は繰り返し視聴が可能であり、外国人材が自分のペースで学習を進めることができるでしょう。
また、eラーニングシステムを活用することで、外国人材の学習進度を個別に管理し、それぞれの理解度に応じた学習コンテンツを提供できます。また、クイズやテスト機能を活用することで、学習内容の定着度を客観的に評価し、必要に応じて追加の学習機会を提供することも可能です。
ポイント④研修内容は明確な表現で伝える
外国人材への指導では、曖昧な表現や抽象的な概念を避け、具体的で明確な表現を使用するようにしましょう。日本語には、文脈に依存した表現や暗黙の了解が多く含まれているため、これらを外国人材にも理解しやすい明確な表現に変換する必要があるからです。
指導内容を伝える際は、「なぜそうするのか」という理由や根拠を明確に説明することが重要です。単に手順を教えるだけでなく、その背景にある理念や目的を理解させることで、外国人材は応用的な判断ができるようになります。また、良い例と悪い例を具体的に示すことで、適切な行動の基準を明確にすることができるでしょう。
さらに、専門用語については、必ず平易な言葉で説明を加え、必要に応じて図表やイラストを活用して視覚的に理解を促進することが効果的です。これにより、外国人材は確実に知識を習得し、実際の現場で活用できるようになります。
介護研修現場での効果的な外国人への指導方法
介護研修現場での実際の指導において、外国人材に対して効果的な指導を行うためには、従来の指導方法を見直し、外国人材の特性に適応したアプローチが必要です。言語的な障壁や文化的な違いを克服し、外国人材が確実にスキルを習得できるような指導環境を整えましょう。
効果的な指導を実現するためには、指導者自身が外国人材の背景を理解し、適切なコミュニケーション方法を身に着けることが前提となります。また、個別の学習ニーズに対応できる柔軟な指導体制を構築することも欠かせません。
実際の指導現場では、理論的な知識と実践的な技術を効果的に組み合わせ、外国人材が段階的にスキルを習得できるような環境を提供することが求められます。指導者は、外国人材の理解度を継続的に確認し、必要に応じて指導方法を調整する柔軟性を持つことが重要です。
【無料PDF】研修で使える外国人向け介護テキスト4選
外国人材の介護研修を効果的に実施するためには、適切な教材が欠かせません。現在、厚生労働省や日本介護福祉会などから、外国人材向けの介護研修に特化したテキストが無料で提供されており、これらを活用することで研修の質を向上させることができます。
これらのテキストは、外国人材の日本語レベルや文化的背景を考慮して作成されており、理解しやすい表現と視覚的な教材が特徴です。ここでは、特に有用な4つのテキストについて、その特徴と活用方法を詳しく解説します。
テキスト①「にほんごをまなぼう」デジタルガイドブック
「にほんごをまなぼう」デジタルガイドブックは、外国人材の日本語学習を支援するために開発された包括的な教材です。介護現場で必要な基本的な日本語表現から専門用語まで、段階的に学習できる構成になっています(※7)。
特に優れているのは、音声機能が充実していることです。正しい発音を学習できるため、利用者や同僚とのコミュニケーションにおいて、より自然な日本語を使用できるようになるでしょう。また、介護現場でよく使用される敬語表現についても、具体的な場面設定と共に学習できる内容となっています。
※7引用元:公益社団法人日本介護福祉会「にほんごをまなぼう」
テキスト②「介護の日本語」テキスト
「介護の日本語」は、介護現場で使用される専門的な日本語に特化した教材です。介護技術に関する用語や表現を、実際の介護場面と関連付けて学習できる構成になっています(※8)。
テキストの特徴は、介護現場での実際の会話例が豊富に収録されていることです。利用者との会話、家族との面談、職員同士の申し送りなど、様々な場面での適切な日本語表現を学習できます。また、よく使われる介護専門用語も記載してあり、外国人材が実際の現場で戸惑うことが少なくなるよう配慮されています。
※8引用元:公益社団法人日本介護福祉会「介護の日本語」
テキスト③介護の特定技能評価試験学習用テキスト
「介護の特定技能評価試験学習用テキスト」は、特定技能制度での介護分野における評価試験に対応した学習教材です。介護の基本的な知識から実践的な技術まで、幅広い内容が網羅されています(※9)。
テキストの構成は、日本の介護制度の概要から始まり、具体的な介護技術、安全管理、チームワークなど、介護現場で必要な全ての要素を段階的に学習できるようになっています。各項目については理論的な説明と実践的な応用例が併記されており、知識と技術を同時に習得できる内容です。また、図表やイラストが豊富に使用されており、言語的な理解が困難な場合でも、視覚的に内容を把握できるよう工夫されています。
※9引用元:公益社団法人日本介護福祉会「介護の特定技能評価試験学習テキスト」
テキスト④学んでみよう日本の介護
「学んでみよう日本の介護」は、日本の介護文化や理念について、外国人材にわかりやすく説明した教材です。技術的な内容だけでなく、日本の介護が大切にしている価値観や考え方について学習できる内容です(※10)。
テキストでは、日本の高齢者に対する敬意の表し方、家族との関係性、プライバシーの考え方など、文化的な理解が必要な内容が丁寧に説明されています。また、実際の介護現場での体験談や事例が多数紹介されており、外国人材が日本の介護現場をより深く理解できるよう配慮されています。
各章には、文化的な違いを理解するための比較表や、実際の場面での対応例が示されており、外国人材が自分の文化的背景と比較しながら学習を進めることができるでしょう。
※10引用元:公益社団法人日本介護福祉会「学んでみよう日本の介護」
【研修で役立つ】外国人向け介護専門用語
介護の現場では、職員同士の連携や記録のために以下のような専門用語が頻繁に使われます。
・バイタルチェック
・ケアプラン
・ベッドメイキング
・トイレ誘導
・オムツ交換
・失禁
・口腔ケア
・水分補給
・配膳
・移乗
・清拭
・車椅子
・発熱
・受診
・処置
・見守り
・体位変換
・介助
厚生労働省より外国人介護人材向けに多言語での専門用語集も公開されており、英語やベトナム語、インドネシア語などで確認できます(※11)。現場での円滑なコミュニケーションのため、積極的に研修で活用してください。
※11引用元:厚生労働省「外国人のための介護福祉専門用語集」
介護職員初任者研修は外国人にも必要なの?
特定技能(介護)の資格を取得する上で、日本の介護職員初任者研修は必須ではありません。しかし、訪問介護に従事する場合は必須となります。より詳しく知りたい方は、別記事「特定技能「介護」に初任者研修は必要か?現役介護士の視点で徹底解説」をご参照ください。
要点をおさえた介護研修で外国人材を育成しよう
外国人材の介護研修を成功させるためには、これまで述べてきた様々な要素を考慮し、体系的なアプローチが必要です。言語的な支援、文化的な理解、技術的な指導、継続的なフォローアップなど、多面的な取り組みを行うことで、外国人材の能力を最大限に引き出すことができるでしょう
また、効果的な研修プログラムの構築には、外国人材の個別のニーズに対応した柔軟性と、日本の介護現場で必要な標準的なスキルを身に着けさせる体系性の両方が求められます。そして、研修担当者自身のスキルアップと、施設全体でのサポート体制の構築も欠かせません。
今後、外国人材の受け入れはさらに拡大することが予想されます。これからの介護現場では、多様な文化的背景を持つ職員が協働することで、より豊かで質の高い介護サービスの提供が可能になります。外国人材の研修を通じて、介護現場全体の成長と発展を目指していくことが、これからの時代に求められる重要な取り組みといえるでしょう。