介護業界における人材不足は深刻化の一途をたどっており、その解決策として注目されているのが外国人介護人材の活用です。とりわけ2019年4月に新設された「特定技能1号」制度は、外国人材の円滑な受け入れを促進するための新たな在留資格として大きな期待を集めています。
しかし、どのような制度なのか、どのように受け入れを進めればよいのか、疑問を抱える介護事業者も少なくありません。
本記事では、特定技能1号「介護」の制度概要から受け入れ方法、外国人材にとってのキャリアパスまで、企業の経営者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。介護現場での人材確保に悩む経営者の方々にとって、本稿が外国人材活用の第一歩となれば幸いです。
株式会社BKUのご紹介
株式会社BKUは、ミャンマーの送り出し機関と日本国内の登録支援機関を運営する人材紹介会社です。ミャンマー人材の文化・言語などの理解はもちろん、外国人材の紹介から採用、入国手続きまで一貫してサポートできることが当社の強みです。
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この記事の監修者

伊勢明敏
株式会社BKU代表取締役|日本で光学機器メーカーで研究職として4年間従事。その後ミャンマーに移住して、株式会社BKUを創業。9年間の在住中では、外国語大学と仏教大学にてミャンマーの言語・文化を専門的に学習。ミャンマーの言語・文化・制度すべてに精通した人材紹介から、累計400名以上の技能実習生・特定技能人材の送り出し実績を持つ。
特定技能1号「介護」とは?制度の全体像について解説!

2019年4月に始まった特定技能制度は、深刻化する人手不足に対応するため、特定の産業分野において一定の知識や経験を持つ外国人材を受け入れる制度です(※1)。
介護分野はその特定産業の一つとして指定され、「特定技能1号」の在留資格で外国人材を受け入れることが可能となりました。
この制度の導入により、従来の技能実習制度や介護福祉士の在留資格とは異なるルートでの人材受け入れが実現し、より柔軟な外国人材活用の道が開かれました。
※1引用元:出入国在留管理庁:特定技能外国人受入れに関する運用要領 令和7年4月
特定技能1号「介護」の制度の背景と目的とは
特定技能1号「介護」制度が創設された背景には、日本の介護業界が直面する深刻な人材不足があります。高齢化社会の進展に伴い介護需要は急増している一方で、国内の労働力は減少の一途をたどっています。厚生労働省の推計によれば、2025年には約34万人の介護人材が不足すると予測されており、この状況に対処するためには外国人材の活用が不可欠です。
この制度の主な目的は、介護の現場で即戦力となる外国人材を受け入れることで人材不足を緩和し介護サービスの質を維持することにあります。特定技能1号「介護」では、一定の専門性・技能を有する外国人材を受け入れることで、介護現場の人材確保と質の向上を同時に実現しようとしています。
さらに、この制度は日本の介護技術や知識を母国に持ち帰ることも期待されており、国際貢献の側面も持ち合わせています。介護分野における国際的な人材の循環を促進することで、相互理解や協力関係の強化にもつながるでしょう。
このように、特定技能1号「介護」は単なる人材確保策にとどまらない、多面的な意義を持つ制度なのです。
特定技能1号「介護」の業務内容と他の在留資格(介護福祉士・技能実習)の違い
- 入浴
- 排せつ
- 食事
- それに関連する日常生活上の世話
- 機能訓練など
つまり、身体介護を中心とした直接介護業務全般が含まれ、介護施設や事業所での実務に即した内容となっています。
次に他の在留資格との違いについてです。
項目 | 特定技能1号「介護」 | 介護福祉士 | 技能実習「介護」 |
---|---|---|---|
目的 | 人材不足対応のための就労 | 専門的な知識・技術を持つ介護福祉士としての就労 | 技能移転による国際貢献 |
在留期間 | 最長5年まで(通算) | 制限なし(更新可能) | 最長5年まで |
家族帯同 | 不可 | 可能 | 不可 |
必要な資格・試験 | 「介護技能評価試験」と「介護日本語評価試験」 | 介護福祉士国家資格 | 不要(入国後に講習) |
日本語要件 | 日本語能力試験N4以上または介護日本語評価試験合格 | N1〜N2相当(国家試験に合格するレベル) | 入国時N4程度、3年目はN3程度 |
業務範囲 | 身体介護、生活支援等の基本的な介護業務 | 身体介護、生活支援、ケアプラン作成など専門的業務 | 段階的に技能習得(移乗介助、食事介助など) |
特定技能1号の外国人材は転職の自由が認められており、より良い労働条件を求めて職場を変更することが可能です。
5年後はどうなる?特定技能1号「介護」の期間や撤廃の可能性について
特定技能1号「介護」の在留期間は最長で通算5年となっています。
この5年という期限を迎え特定技能1号の在留期間が満了した場合、原則として帰国することになります。
しかし、特定技能1号の在留期間中に介護福祉士の国家資格を取得することができれば、「介護福祉士」の在留資格に切り替えることが可能です。この場合、在留期間の上限はなくなり、更新を重ねることで長期的に日本での就労が可能となります。
また、永住権の取得要件を満たせば、永住者として日本に滞在することもできるようになります。
制度撤廃の可能性については、必要に応じて制度の見直しが行われる可能性はありますが介護業界の人材需要を考えると、今後も外国人材の受け入れ拡大に向けた政策が打ち出される可能性が高いと言えるでしょう。
特定技能「介護」に2号ってあるの?
特定技能制度には「1号」と「2号」の二つの区分がありますが、現状「介護分野」には特定技能2号は設定されていません。
- 「建設」
- 「造船・舶用工業」
しかし、介護分野の人材不足の深刻さを考えると、今後「介護」が特定技能2号の対象に加わる可能性は十分にあります(※2)。
このように、介護分野における特定技能制度は今後も発展・変化していく可能性が高く、最新の情報を常にキャッチアップしておくことが求められるでしょう。
※2引用元:出入国在留管理庁:特定技能2号の対象分野の追加について(令和5年6月9日閣議決定)
特定技能1号「介護」受け入れ時に企業が知っておきたいメリット・デメリットを解説
特定技能1号で外国人介護人材を受け入れる際、企業側にはさまざまなメリットとデメリットが存在します。
特定技能1号「介護」のメリットとデメリット
メリット
- 慢性的な介護人材不足の解消
- 職場の活性化や異文化理解の促進
デメリット
- 言語コミュニケーションの壁
- 受け入れに際しての行政手続きの煩雑さ
- 初期コストがかかる
こうしたメリット・デメリットを総合的に判断した上で、自社に合った外国人材活用の戦略を立てることが重要です。
外国人材受け入れのメリット・デメリットについての詳細は、「介護分野における外国人材受け入れ時の課題ー企業のための完全ガイド」をご参照ください。
特定技能「介護」は派遣雇用できる?【介護分野はできない】

特定技能制度において介護分野は派遣雇用が認められていない分野の一つであり、介護事業者が特定技能1号「介護」の外国人材を受け入れる際の重要なポイントです。
特定技能制度では分野ごとに雇用形態に関する規定が異なり、介護分野においては派遣形態での就労が明確に禁止されています。これは、介護という業務の特性や外国人材の保護という観点から定められた重要なルールです。
では、なぜ介護分野では派遣が認められていないのか、どのような雇用形態が可能なのかについて詳しく見ていきましょう。
なぜ特定技能1号「介護」は派遣雇用できないのか?雇用形態の原則とは
特定技能1号「介護」において派遣雇用が認められていない理由にはいくつかの重要な背景があります。

- 介護サービスの質と継続性の確保
- 外国人材の保護
- 特定技能制度の趣旨との整合性
介護は利用者の生活に直接関わる仕事であり、サービスの質を保つためには安定した雇用環境と継続的なケアの提供が不可欠です。派遣形態では就労先が頻繁に変わる可能性があり、利用者との信頼関係構築や継続的なケアの提供が難しくなる恐れがあります。
また、派遣形態では雇用主と就労先が異なるため責任の所在が不明確になりやすく、労働条件や権利保護の面で問題が生じる可能性があります。特に言語や文化の違いがある外国人材にとって、こうした複雑な雇用関係は不利益をもたらす恐れがあるのです。
さらに、特定技能制度は単なる労働力確保だけでなく、外国人材の技能向上や日本社会への適応支援も目的としています。派遣形態では就労先が変動するため、計画的な技能向上や生活支援が難しくなります。これらの理由から、介護分野では直接雇用が原則とされているのです。
特定技能1号「介護」で認められている雇用形態は、介護施設・事業所による直接雇用のみです。
具体的には、
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 通所介護
- 訪問介護など
上記のような介護事業所が直接雇用主となり、その施設・事業所内で就労するという形態になります。この直接雇用の原則により外国人材は一つの職場で安定して働くことができ、介護技術の向上や職場環境への適応がスムーズに進むことが期待されています。
介護事業者はこの雇用形態の制限を理解した上で、自社で特定技能外国人を直接雇用する体制が整っているかを検討することが必要です。直接雇用には人事管理や生活支援などの責任が伴いますが、長期的な人材育成という観点からは大きなメリットとなるでしょう。
求人情報を探すコツと登録支援機関の活用
特定技能1号「介護」の外国人材を採用するためには、効果的な求人情報の発信と適切な支援機関の活用が鍵となります。
まず、求人情報を効果的に発信するポイントを押さえましょう。
- 住居支援
- 日本語学習サポート
- キャリアパスなど
- 外国人特化型の求人プラットフォーム
- 特定技能に特化したマッチングサイト
- 海外の送り出し機関と連携している登録支援機関を通じた採用
外国人材が求める情報は日本人とは異なる場合が多く給与や労働条件だけでなく、上記のような情報を多言語で明確に提示することで質の高い人材からの応募が期待できます。
出入国在留管理庁に登録された機関で、特定技能外国人のサポートを行う組織。
支援計画の作成から在留資格の申請手続き、入国後の生活支援を行う。
特に初めて外国人材を受け入れる事業者にとっては登録支援機関のサポートは大きな助けとなるでしょう。
- 介護分野での支援実績
- 対応可能な言語
- サポート内容の範囲
- 料金体系 など
複数の機関に相談し自社のニーズに合った支援が受けられるかを確認することが重要です。
また、登録支援機関の中には求人情報の海外発信から候補者の選考、入国後の支援まで一貫してサポートしてくれる機関もあります。
ただし、登録支援機関に全てを任せるのではなく自社でも受け入れ体制を整えることが大切です。特に職場での指導担当者の選定や、生活面でのサポート体制の構築は、外国人材の定着率を高める上で重要な要素となります。登録支援機関と自社の役割分担を明確にし、協力して外国人材の受け入れを進めることが成功への近道です。
企業が特定技能1号「介護」を受け入れたいと思ったら?

特定技能1号「介護」の外国人材を受け入れるためには事前に様々な準備や条件整備が必要です。まず受け入れ側の施設が制度の対象となっているか確認することが大前提となります。
また、施設の種類によって受け入れ条件や業務範囲に違いがあるため、自施設が該当するカテゴリーの条件を正確に理解することが重要です。受け入れ準備には行政手続きだけでなく、職場環境の整備や受け入れ体制の構築など多岐にわたる項目があります(※3)。
ここでは、企業が特定技能1号「介護」の外国人材を受け入れるために必要な基準や要件、準備事項について詳しく解説していきます。
※3引用元:出入国在留管理庁:特定技能外国人受入れに関する運用要領 令和7年4月
【施設種別】まずは特定技能1号「介護」の受け入れ対象施設の基準と要件を知ろう!
特定技能1号「介護」の外国人材を受け入れられるのは、すべての介護施設・事業所というわけではありません。厚生労働省が定める特定の施設基準を満たす必要があります。
まず、受け入れ対象となる施設種別を確認しましょう。対象となるのは、介護保険法に基づく介護サービスを提供する施設・事業所であり、具体的には以下のような施設が含まれます(※4)。

特定技能1号「介護」の外国人材を受け入れられる施設
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院などの入所系施設
- 通所介護(デイサービス)
- 通所リハビリテーション(デイケア)などの通所系サービス
- 訪問介護、訪問入浴介護などの訪問系サービス
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 小規模多機能型居宅介護などの地域密着型サービス
- 障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス事業所
特定技能1号「介護」の外国人材を受け入れるための要件
- 介護保険法や障害者総合支援法に基づく指定を受けていること、または介護保険法に基づく届出をしていること
- 特定技能外国人が従事する業務が「要介護者等の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助等」に該当すること
特定技能1号「介護」の外国人材受け入れ施設に必要な指導体制
- 外国人が円滑に業務を行えるよう指導する体制が整っていること
- 労働、社会保険、租税に関する法令を遵守していること
また、特定技能外国人と直接雇用契約を結ぶことが必須であり、先述の通り派遣形態での雇用は認められていません。
受け入れ施設は日本人と同等以上の給与水準の確保や、社会保険・労働保険への加入など適切な雇用環境を整備することが求められます。これらの要件を満たすことで、特定技能外国人を受け入れるための基礎的な条件が整うことになります。
※4引用元:厚生労働省:介護分野の1号特定技能外国人を受け入れる対象施設について
外国人材受け入れ施設に求められる体制づくりについての詳細は、「【外国人技能実習生の介護指導ガイド】効果的な指導法と現場で必要な体制づくりとは」をご参照ください。
特定技能1号「介護」の受け入れ可能施設についての詳細は『特定技能「介護」受け入れ可能施設完全ガイド』をご参照ください。
特定技能1号「介護」は訪問介護で働けるの?制限と条件について
特定技能1号「介護」での訪問介護は原則として想定されておらず、主に施設内での介護業務が前提となっています。
項目 | 制限・条件 | 備考 |
---|---|---|
訪問介護での就労 | 原則として不可 | 基本的に施設内での介護業務が前提 |
例外条件 | 同一事業所内の利用者訪問は可能 | 施設と訪問の両方を行う事業所に限る |
必要な要件 | 施設内業務の習熟が必要 | 入国後一定期間は施設内業務が基本 |
指導・監督体制 | 日本人職員の同行が必要 | 一人での訪問介護は不可 |
業務範囲 | 身体介護中心の基本業務のみ | 医療行為・専門的判断が必要な業務は除外 |
例外的に施設と訪問の両方を行う事業所で、日本人職員の同行のもとで訪問介護の一部業務に従事することが可能な場合があります。
ただし、独立した訪問介護専門の業務は認められていません。
特定技能1号「介護」受け入れ施設に必要な準備は?
特定技能1号「介護」の外国人材を受け入れるためには、事前に様々な準備が必要です。
- 社内での受け入れ方針の決定と体制づくり
- 行政手続きに関する準備
- 職場環境の整備
- 生活支援の準備
- 受け入れ後の教育・研修計画を立てる
- なぜ外国人材を受け入れるのか、どのような役割を期待するのか、誰が責任者となるのかなど、基本的な方針を決定しましょう。経営層から現場スタッフまで、全員がこの方針を共有することが成功の鍵となります。
- 在留資格認定証明書の交付申請や雇用契約の締結など、複数の手続きが必要となりま。これらの手続きは複雑なため、登録支援機関のサポートを受けることでが一般的です。
- 言語の壁を考慮した作業マニュアルやコミュニケーションツールの準備、多言語表示の導入などが効果的です。
- 特定技能外国人の多くは来日直後に様々な生活面での支援を必要とします、住居の確保、銀行口座開設、携帯電話契約、役所での各種手続きなど、日本での生活を始めるためのサポートを計画しましょう。
- 業務に必要な専門知識や技術の習得だけでなく、日本語能力の向上支援や日本の文化・習慣への理解を深める機会を設けるべきでしょう。
これらの準備を計画的に進めることで、特定技能外国人の円滑な受け入れと定着が期待できます。
なお、すべてを自社だけで準備するのは負担が大きいため、登録支援機関や地域の支援団体、自治体のサポートを積極的に活用することも検討しましょう。
介護分野における特定技能協議会とは?申請システムの仕組み
特定技能制度の重要な特徴の一つに「分野別協議会」の存在があります。介護分野においては「介護分野における特定技能協議会」が設立されており、この協議会への加入が特定技能外国人を受け入れる上での必須条件となっています。
では、この協議会とはどのような組織でどのような役割を担っているのでしょうか。
介護分野における特定技能協議会は、特定技能外国人の受入れが適正に行われるよう支援・監督するために設立された団体です。正式名称は「介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に基づいて設置された「介護分野特定技能協議会」です。
- 特定技能外国人の雇用管理や待遇の改善
- 関係行政機関との連携による情報共有
- 受入れ機関(介護施設等)への指導・助言
- 特定技能外国人からの相談・苦情対応
- 就業構造の変化や技能水準の向上等の状況把握・分析
協議会に加入することで得られるメリットもあります。
- 特定技能制度に関する最新情報や好事例の共有
- 外国人材の雇用管理に関する相談対応
- 各種セミナーや研修会の開催など
また、同じ分野で外国人材を受け入れる機関同士のネットワーク構築も可能となり、情報交換や課題解決のための協力関係を築くことができます。
申請システムでは、入国管理局のオンラインシステム(出入国在留管理庁電子届出システム)を通じて各種申請・報告が行われ、特定技能協議会と連携した情報共有の仕組みが構築されています。これにより、外国人材の適正な受入れと処遇の確保が図られているのです。
- 受入れ機関(介護施設等)の登録
- 出入国在留管理庁への登録申請
- 適合性の審査(欠格事由の確認等)
- 特定技能外国人候補者の要件確認
- 介護技能測定試験の合格または技能実習2号修了
- 日本語能力試験N4以上または介護日本語評価試験の合格
- 特定技能雇用契約の締結
- 日本人と同等以上の報酬保証
- 雇用条件・労働条件の明示
- 在留資格認定証明書交付申請
- 地方出入国在留管理局への申請
- 必要書類:雇用契約書、事業計画書、技能試験・日本語試験合格証明書等
- 特定技能協議会への加入
- 受入れ機関は介護分野特定技能協議会への加入が義務付けられている
- 協議会への情報提供・報告義務
- 定期的な報告義務
- 四半期ごとの活動状況の報告
- 雇用状況・賃金支払状況等の報告
- 支援計画の作成と実施
- 生活オリエンテーション
- 住居の確保
- 相談・苦情対応体制の整備
- 日本語学習支援
申請システムの仕組みは一見複雑に思えますが、出入国在留管理庁や厚生労働省のウェブサイトには詳細なマニュアルが掲載されており、登録支援機関のサポートを受けることで比較的スムーズに手続きを進めることができます。協議会への加入は手続きの一部ですが、特定技能制度の適正な運用と外国人材の保護という観点から重要な意味を持っています。
※5引用元:厚生労働省:介護分野における分野別の協議会とは
特定技能1号「介護」の受け入れ可能人数の目安は?
特定技能1号「介護」の外国人材を受け入れる際、多くの事業者が気になるのが「何人まで受け入れられるのか」という点です。特定技能制度では、分野ごとに受け入れ総数の上限(いわゆる「受け入れ枠」)が設定されていますが、介護分野においては各事業所の受け入れ人数に明確な上限は設けられていません。
ただし、適切な受け入れ体制の確保という観点から施設の規模や体制に見合った人数を検討することが重要です。
介護分野全体としては、政府は2019年度から2023年度までの5年間で最大6万人程度を受け入れる目安を示していました。これは介護分野における人材不足の深刻さを反映したものであり、他の特定技能対象分野と比較しても多い数字となっています。
しかし、実際の受け入れ数はこの目安を大幅に下回っており、制度の普及には時間がかかっていることがうかがえます。
- 施設の規模や職員体制に見合った人数であるか
- 住居の確保や生活支援の提供など、生活面でのサポートはできるか
- 日本語研修や介護技術の指導など、教育・研修体制はどの程度整っているか
特定技能外国人は一定の日本語能力と介護技能を持っているとはいえ、職場に馴染むまでには時間がかかり、日本人スタッフによるサポートが必要となります。そのため、日本人職員の数や経験、外国人材の指導・支援に割ける時間などを考慮して受け入れ人数を決めることが望ましいでしょう。
特に地方の施設では住居の確保が課題となることが多く、どの程度の住環境を提供できるかも受け入れ人数の制約となります。
また、生活支援の担当者をどれだけ確保できるかも重要なポイントです。
適切な教育体制なくして多数の外国人材を一度に受け入れると、十分な成長機会を提供できず、結果的に定着率の低下につながる恐れがあります。
これらの要素を総合的に判断すると、初めて特定技能外国人を受け入れる施設であれば、まずは少人数(1〜3名程度)から始め、受け入れ体制や経験を徐々に拡充していくアプローチが現実的でしょう。受け入れ経験を積んだ後、体制が整えば段階的に受け入れ人数を増やしていくことが理想的です。
外国人介護人材が特定技能1号「介護」として働くための条件とは?

特定技能1号「介護」の資格を取得するためには、外国人材側にも様々な条件をクリアすることが求められます。単に「日本で働きたい」という希望だけでは不十分であり、年齢や学歴、職歴といった基本的な条件から、試験合格や日本語能力の証明まで、複数のハードルが存在します。
受け入れ側の企業として、どのような人材が特定技能1号「介護」の対象となるのかを正確に理解することは採用計画を立てる上で非常に重要です。
特定技能1号「介護」の運用要領について
特定技能1号「介護」の運用に関する基本的なルールや手続きは、出入国在留管理庁が定める「特定技能外国人受入れに関する運用要領」に詳細に記載されています(※6)。この運用要領は特定技能制度全体の基本的な枠組みを示すとともに、介護分野に特化した規定も含んでいます。
運用要領では、特定技能1号「介護」の基本的な考え方として、介護人材の確保・育成と同時に、介護サービスの質の担保を重視する姿勢が明記されています。
また、外国人材の保護や権利擁護の観点も重視されており、適正な労働条件の確保や差別的取扱いの禁止など、人権尊重の理念が貫かれています。
運用要領の主な内容
- 特定技能1号「介護」の対象となる業務範囲
- 外国人材の要件
- 受け入れ機関の基準
- 支援計画の策定方法
- 雇用契約の基準
- 報酬水準の考え方
- 在留資格変更手続きの流れなど
外国人材の要件について
- 18歳以上であること
- 介護技能と日本語能力に関する試験に合格していること
- 過去に日本から強制退去処分を受けていないことなど
受け入れ機関の要件として
- 過去5年間に出入国・労働法令違反がないこと
- 特定技能外国人と直接雇用契約を結ぶこと
- 同等の業務に従事する日本人と同等以上の報酬を支払うこと
- 一定の基準を満たす支援計画を策定することなど
特に重要なのは「特定技能雇用契約の基準」と「1号特定技能外国人支援計画の基準」で、これらは受け入れ機関が必ず順守すべき事項となっています。
運用要領は随時改訂されるため最新版を確認することが重要です。出入国在留管理庁のウェブサイトでは最新の運用要領を公開しているほか、制度に関するQ&Aや申請手続きに関するガイドラインなども掲載されています。特定技能制度を活用する上でこの運用要領を理解することは不可欠であり、制度の基本的な枠組みを把握する上での第一歩となります。
※6引用元:出入国在留管理庁:特定技能運用要領
特定技能1号「介護」に必要な条件とは(年齢・学歴・職歴)
特定技能1号「介護」の資格を取得するためには、いくつかの基本的な条件をクリアする必要があります。
年齢
- 18歳以上
- 上限年齢は設けられていない
学歴
- 特別な学歴要件は設けられていない
- 技能試験と日本語試験に合格することが主な要件
- 日本語学校や介護専門学校などで学んだ経験を持つ方が多い傾向
職歴
- 特別な要件は定められていない
- 介護業界での実務経験がなくても、技能試験と日本語試験に合格すれば資格を取得することが可能
その他の条件
- 健康状態が良好であること
- 犯罪歴がないこと
- 過去に日本から強制退去や出国命令を受けていないこと
- 特定技能に関する制度を理解していること など
学歴や職歴に特別な要件がない点は、多様なバックグラウンドを持つ人材に門戸を開いていると言えるでしょう。
ただし、実質的には介護技能評価試験と日本語能力の要件がハードルとなるため試験対策が重要となります。
特定技能1号「介護」に必要な試験と日本語レベルはどのくらい?
特定技能1号「介護」の資格を取得するためには、「介護技能評価試験」と「介護日本語評価試験」に合格する必要があります。
これらの試験は、外国人材が介護現場で適切に業務を遂行できるだけの技能と日本語能力を有しているかを評価するものです。
区分 | 試験/要件 | 内容・レベル | 備考 |
---|---|---|---|
技能試験 | 介護技能測定試験 |
基本的な介護技能の測定
|
筆記と実技試験 |
日本語能力 |
介護日本語評価試験 |
介護現場で必要な日本語能力
|
介護分野に特化した日本語試験 |
日本語レベルの目安としては、一般的に日本語能力試験のN4レベル以上(基本的な日本語を理解し、日常的な場面で使用できるレベル)が求められます。または、これに相当する「JFT-Basic」と呼ばれる国際交流基金日本語基礎テストでも代替可能です。
ただし、介護の専門用語や現場特有の表現も理解する必要があるため、実質的にはN3程度(日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる)の日本語力が望ましいと言われています。
試験は日本国内だけでなく、フィリピン、インドネシア、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、ネパール、タイ、中国などの送り出し国でも実施されており、母国で試験に合格してから来日するルートも確立されています。試験は多言語で実施されており、筆記試験については各国の言語で受験することが可能ですが、介護日本語評価試験はもちろん日本語での受験となります。
これらの試験は決して容易ではありませんが、適切な準備と学習により合格は十分に可能です。多くの外国人材が、日本語学校や介護専門学校、あるいは送り出し国の教育機関で集中的に学習することで試験に備えています。
在留資格の取得手順と申請方法
特定技能1号「介護」の在留資格を取得するための手順と申請方法について解説します。
必要な試験に合格する
- 介護技能測定試験に合格する
- 日本語能力試験N4以上または介護日本語評価試験に合格する
受入れ機関(介護施設等)と雇用契約を結ぶ
- 雇用条件や賃金、就労場所などを明確にした契約書を作成
- 日本人と同等以上の待遇であることが条件
在留資格認定証明書の申請
- 日本国内の受入れ機関が申請者となる場合が多い
- 必要書類を揃えて地方出入国在留管理局へ申請
在留資格認定証明書の交付
- 審査に通過すると認定証明書が交付される
- 通常1〜3ヶ月程度かかる
ビザ申請と入国
- 在留資格認定証明書を持って母国の日本大使館・領事館でビザ申請
- ビザ取得後、日本へ入国
この手順に沿って申請を進めることで、特定技能1号「介護」の在留資格を取得することができます。
必要書類
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 特定技能雇用契約書の写し
- 特定技能外国人支援計画書
- 技能試験・日本語試験の合格証明書
- パスポートの写し
- 写真(縦4cm×横3cm)
- 受入れ機関の登記事項証明書や決算報告書
- 返信用封筒(404円分の切手を貼付)
申請窓口
- 受入れ機関の所在地を管轄する地方出入国在留管理局または出張所
- 一部の手続きはオンラインでも可能
申請手数料
- 在留資格認定証明書交付申請:無料
- ビザ申請:国によって異なる
- 在留カード交付:無料
申請後の流れ
- 審査(1〜3ヶ月程度)
- 在留資格認定証明書の交付
- 証明書を外国人本人に送付
- 本人による母国でのビザ申請
- 日本入国
- 入国後14日以内に居住地の市区町村役場で住民登録
注意点
- 特定技能1号は最長5年までの在留
- 雇用契約が終了した場合、3ヶ月以内に新たな雇用先を見つける必要がある
- 特定技能協議会への加入・報告が義務付けられている
- 受入れ機関は支援計画を作成し、住居確保や生活支援を行う義務がある
申請手続きは複雑であるため、登録支援機関や行政書士などの専門家のサポートを受けることが一般的です。
なお、在留資格取得後も資格の更新や受け入れ機関の変更、住所変更などの際には適切な手続きが必要となります。特定技能1号「介護」の在留期間は最長で5年となりますが、通常は1年ごとの更新となるため更新手続きも定期的に必要です。受け入れ機関が変わる場合は「就労開始届出」と「支援計画届出」も必要となります。
特定技能1号「介護」取得に必要な試験とおすすめの勉強法を伝授!

特定技能1号「介護」の資格取得には、介護技能評価試験と介護日本語評価試験の両方に合格することが必要です。これらの試験は決して容易ではありませんが、適切な準備と効果的な勉強法によって合格を目指すことができます。
このセクションでは試験の内容や難易度を詳しく解説するとともに、効果的な勉強法や利用可能な学習リソースについて紹介します。
また、2024年・2025年度の試験スケジュールや申込方法についても最新情報を提供しますので、外国人材の採用・育成を検討している介護事業者の方々にとって参考になるでしょう。
介護特定技能評価試験と介護日本語評価の内容について
はじめに、「介護特定技能評価試験」という言葉は存在せず、特定技能1号「介護」の資格取得には「介護技能評価試験」と「介護日本語評価試験」に合格する必要があります。
「介護技能評価試験」と「介護日本語評価試験」の具体的な内容について詳しく説明します。
区分 | 試験/要件 | 内容・レベル | 備考 |
---|---|---|---|
技能試験 | 介護技能測定試験 |
基本的な介護技能の測定
|
筆記と実技試験 |
日本語能力 |
介護日本語評価試験 |
介護現場で必要な日本語能力
|
介護分野に特化した日本語試験 |
まず「介護技能評価試験」は、介護の基本理念から具体的な介護技術まで幅広い知識と技能を評価する試験です。筆記試験では介護業務全般に関する問題が出題され試験時間は約60分で選択式の問題が約60問出題されます。実技試験では、実際の介護現場を想定した複数の課題が出され適切な介護技術を実演することが求められます。実技試験の時間は一人あたり約20分程度となっています。
次に「介護日本語評価試験」は、介護現場で必要となる日本語能力を測定する試験です。試験の形式としては、聞き取り問題、会話問題、読解問題、作文問題などが含まれ、試験時間は合計で約90分となっています。
これらの試験の合格基準は、一般的に60%以上の正答率とされていますが試験によって多少の変動があります。
試験結果は通常1〜2ヶ月後に通知され、合格証は在留資格申請の際に必要となります。
試験の難易度については介護の基本的な知識や技術を持ち、日本語での基本的なコミュニケーションが可能であれば合格は十分に可能です。特に日本語能力については日常会話レベルではなく、介護現場での専門的なコミュニケーションが求められるため集中的な学習が必要となります。
【2024・2025年度】特定技能1号「介護」を取得するための試験とは?試験概要や申込方法とスケジュール(日程)
試験は日本国内だけでなく主要な送り出し国でも定期的に実施されています。
試験は「プロメトリック社(PROMETRIC)」という試験運営会社が実施しており、同社のウェブサイトから申し込みや情報確認が可能です。
2024年度の国内では、
- 東京
- 大阪
- 名古屋
- 福岡
主要都市で概ね2〜3ヶ月に一度のペースで実施されています。
海外では、
- フィリピン
- インドネシア
- ベトナム
- ミャンマー
- カンボジア
- ネパール
- タイ
- 中国
主要都市で年に数回実施されています。
2025年度の具体的な試験日程は試験実施機関のウェブサイトで随時更新されていますので、最新情報を確認することをお勧めします。一般的に、試験の申込期間は試験日の約2ヶ月前から1ヶ月前までとなっています。申込みはオンラインで行い、申込後に受験料の支払いを行います。
- 氏名
- 生年月日
- 国籍
- パスポート番号
- 連絡先(メールアドレス、電話番号)
また、受験料は筆記試験と実技試験を合わせて約20,000円程度、介護日本語評価試験は約15,000円程度となっています。
なお、海外での受験の場合は現地通貨での支払いとなり金額も多少異なる場合があります。
※7引用元:PROMETRIC:介護技能評価試験、介護日本語評価試験
受験可能言語はどのくらいあるの?(中国語・英語・ベトナム語・ネパール語など)
特定技能1号「介護」の試験は外国人材の多様な言語背景に配慮して、複数の言語で受験することが可能です。これにより、日本語能力は別途評価しつつ介護の知識や技術については母国語で理解度を測ることができるようになっています。
介護技能評価試験の筆記試験部分は、以下の言語で受験可能です。
- 日本語
- 英語
- 中国語
- ベトナム語
- インドネシア語
- タガログ語(フィリピン)
- タイ語
- カンボジア語(クメール語)
- ミャンマー語
- ネパール語
- モンゴル語
このように、アジアの主要言語をカバーしており主な送り出し国の外国人材が母国語で受験できるように配慮されています。一方、実技試験では基本的な日本語でのコミュニケーションが求められますが、指示は上記の言語でも補足説明されることがあります。
対照的に「介護日本語評価試験」は日本語での聞き取り、会話、読み書き能力を評価するものであるため他言語での代替はありません。
なお、試験で使用可能な言語は送り出し国と日本の二国間協定や需要に応じて順次追加される可能性があります。最新の情報については、試験実施機関のウェブサイトで確認することをお勧めします。
受験言語が多様化していることは、より多くの国からの人材受け入れを促進する効果がありますが、実際の介護現場では日本語でのコミュニケーションが不可欠であるため、「介護日本語評価試験」の重要性は変わりません。外国人材は母国語で介護の知識を証明し、同時に日本語での実務コミュニケーション能力を示す必要があるのです。
介護技能評価試験で出る!試験問題の過去問題集をPDFで学ぶ!
一般社団法人シルバーサービス振興会のウェブサイトでは、外国人技能実習制度における介護技能実習評価試験の過去問題集がPDF形式で公開されています(※8)。これらは特定技能の試験とは異なるものの、出題傾向や範囲が類似しているため貴重な学習リソースとなります。
筆記試験
- 護保険制度の基礎知識
- 介護の理念
- 基本的な介護技術
- 安全管理
- 感染症対策
- 認知症ケア
- コミュニケーション技術
- 記録方法
実技試験
- 主要な介護技術(食事介助、入浴介助、排泄介助、移乗介助など)の手順や注意点
特に近年では利用者の尊厳保持や自立支援、コミュニケーション技術に関する問題が増えている傾向にあります。
過去問題集の他にも、厚生労働省が公開している「介護の特定技能評価試験学習テキスト」も非常に有用な学習リソースです。このテキストは次のセクションで詳しく解説しますが、過去問題集と合わせて活用することで、試験対策をより効果的に進めることができるでしょう。
※8引用元:一般社団法人シルバーサービス振興会:外国人技能実習制度における介護技能実習評価試験
特定技能1号「介護」試験対策テキストとは

特定技能1号「介護」の試験対策に最も有効な教材の一つが、厚生労働省が発行している『介護の特定技能評価試験学習テキスト』です(※9)。
このテキストは特定技能評価試験の公式教材として位置づけられており、試験範囲を網羅した内容となっています。2024年には改訂版が発行され、最新の介護知識や制度に関する情報が更新されています。
このテキストの特徴は、介護業務に必要な基本知識と技術を体系的にまとめていることです。
- 介護の基本理念(尊厳の保持、自立支援など)
- 介護保険制度の基礎知識
- 認知症ケア
- コミュニケーション技術
- 基本的な介護技術(食事、入浴、排泄、移動、着脱、整容など)
- 安全対策と緊急時の対応
- 感染症対策
- 記録・報告の方法
また、各章末には確認テストが設けられており学習の進捗を確認することができます。
テキストは単なる知識の羅列ではなく、実際の介護現場でのシナリオや事例を交えて解説されているため理解しやすい構成となっています。また、イラストや図表も豊富に使用されており、視覚的にも理解を助ける工夫がされています。
※9引用元:厚生労働省:『介護の特定技能評価試験学習テキスト』改訂版 日本語
特定技能介護テキストの種類(日本語・中国語・英語・ネパール語・インドネシア語)
厚生労働省の『介護の特定技能評価試験学習テキスト』は、外国人材の多様な言語背景に配慮して複数の言語版が用意されています。
現在、以下の言語でテキストが提供されています。
- 日本語版
- 英語版
- 中国語版
- ベトナム語版
- インドネシア語版
- タガログ語(フィリピン)版
- ネパール語版
- ミャンマー語版
- タイ語版
- カンボジア語(クメール語)版
- モンゴル語版
これらの多言語版テキストにより外国人材は母国語で介護の基本知識と技術を学びながら、同時に日本語版も参照することで専門用語や表現も習得することができます。特に、最初は母国語版で内容を理解し、徐々に日本語版にシフトしていくという学習方法が効果的です。
テキストはPDF形式で厚生労働省のウェブサイトから無料でダウンロードすることができ印刷して使用することも可能です。
特定技能1号「介護」向け 日本語評価試験用テキストの活用法を伝授!
介護日本語評価試験は、介護現場で必要な日本語コミュニケーション能力を評価する試験です。厚生労働省の『介護の日本語評価試験学習テキスト』は、この試験に特化した公式教材として提供されています。
このテキストの効果的な活用法としては、まず「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能をバランスよく学習することが重要です。特に介護現場での実践的な会話例や記録の書き方などは重点的に学習すると良いでしょう。
- まず全体の構成を把握し、自分の弱点となる分野を特定する
- 介護の基本用語と表現を集中的に覚える
- 会話例を音読し、自然な発音とイントネーションを身につける
- 記録の書き方の例文を参考に、実際に記録を書く練習をする
- 付属の確認テストで理解度を確認する
また、テキストだけでなく以下の補助教材も併用すると効果的です。
- 介護現場で使われる専門用語集
- 介護記録の実例集
- 音声教材(リスニング強化用)
- 会話練習用のロールプレイシナリオ
日本語評価試験の特徴として、介護場面を想定した実践的な日本語能力が問われることが挙げられます。
- 利用者の状態を同僚に報告する
- 介護記録を読み解く
- 申し送り事項を記録する
そのため、テキストの学習だけでなく可能であれば実際の介護現場での日本語使用経験を積むことも大切です。
これらの学習リソースを効果的に活用することで、介護日本語評価試験の合格率を高めることができます。
また、試験対策だけでなく、実際の介護現場での円滑なコミュニケーションにも役立つ実践的な日本語力を身につけることができるでしょう。
特定技能1号「介護」から介護福祉士としてのキャリアパスは実現できる?

特定技能1号「介護」の資格で働き始めた外国人材の多くが、将来的には介護福祉士の資格取得を目指しています。介護福祉士は国家資格であり、特定技能よりも高度な知識と技術が求められますが、取得することでキャリアアップや安定した在留資格の獲得が可能となります。
では、特定技能から介護福祉士へのキャリアパスは具体的にどのようなものなのでしょうか。
特定技能1号「介護」から介護福祉士になる方法が知りたい!
介護福祉士の資格を取得することで、更新回数の制限なく日本で働き続けることが可能になります。
また、家族の帯同も認められるようになるため、生活の安定につながります。
特定技能1号「介護」から介護福祉士になるには、主に以下の二つのルートがあります。
- 実務経験ルート: 特定技能1号「介護」として3年以上の実務経験を積んだ後、介護福祉士国家試験を受験するルートです。このルートでは実務者研修(450時間程度の講習)の修了が必要となります。実務者研修は働きながら夜間や週末に通学したり、一部オンラインで受講したりすることも可能です。そして、毎年1月に実施される介護福祉士国家試験に合格することで介護福祉士の資格を取得できます。
- 養成施設ルート: 介護福祉士養成施設(専門学校や短期大学など)に入学し、2年以上の教育課程を修了するルートです。このルートでは国家試験の受験が免除されますが学費や時間の面で負担が大きいため、すでに特定技能で働いている方には実務経験ルートの方が現実的な選択肢と言えます。
特定技能から介護福祉士へのキャリアアップについての詳細は「特定技能から介護福祉士へー外国人介護人材の新たなキャリアパス」をご参照ください。
技能実習生から特定技能「介護」へのステップアップ方法は?
技能実習生から特定技能「介護」へのステップアップは、外国人介護人材のキャリアパスとして確立されたルートの一つです。技能実習制度で来日し介護の基本的な知識と技術を習得した後、特定技能へ移行することでより安定した雇用条件のもとで働くことが可能になります。
- 技能実習2号の修了
- 技能実習1号(1年目)を修了
- 技能実習2号(2〜3年目)を良好に修了
- 特定技能への移行準備
- 受入れ機関(介護施設)との雇用契約締結
- 必要書類の準備
- 在留資格変更許可申請
- 出入国在留管理局への申請
- 審査・許可
技能実習生から特定技能「介護」へステップアップするための具体的な方法は以下の通りです。
試験免除要項の確認
- 技能実習2号を良好に修了すると、特定技能の技能試験が免除されます
- 技能実習期間中の日本語学習で一定水準に達していれば、日本語要件も満たしたと認められる場合があります
受け入れ機関の確保
- 現在の技能実習先で継続勤務するか
- 新しい受入れ機関(介護施設)を探して雇用契約を結ぶか検討
申請に必要な書類準備
- 在留資格変更許可申請書
- 技能実習2号修了証明書
- 特定技能雇用契約書
- 特定技能外国人支援計画書
- 受入れ機関の登記事項証明書・決算書等
- パスポートの写し
- 在留カードの写し
- 顔写真(4cm×3cm)
在留資格変更許可申請
- 居住地を管轄する地方出入国在留管理局に申請
- 現在の在留期間が満了する3ヵ月前から申請可能
- 必要に応じて面接や追加資料の提出があることも
審査結果の受領
- 通常1〜3ヵ月程度で結果が出る
- 許可された場合は在留カードが交付される
技能実習2号を「良好に修了」とは、技能実習の評価試験に合格し、実習実施者(雇用先の介護施設)から良好な評価を受けていることを意味します。具体的には出勤率が良好であること、技能実習計画に基づいた技能等の修得が認められること、労働関係法令・実習関係法令に違反していないことなどが評価の対象となります。
技能実習から特定技能へのステップアップにあたって注意すべき点としては、まず在留期間の空白が生じないようにすることが重要です。技能実習の在留期間が満了する前に、余裕を持って在留資格変更申請を行うことをお勧めします。
また、特定技能では技能実習と異なり、転職が可能となりますが転職する場合は新たな雇用先との契約締結や出入国在留管理局への届出が必要となります。
介護にまつわる漢字・名前・意味の豆知識

介護の世界には独特の専門用語や漢字が使われており、外国人介護人材にとってはこれらを理解することも大切な学習ポイントです。
ここでは、「介」という漢字を中心に、介護関連の漢字や名前に関する豆知識をご紹介します。
「介」の漢字の意味・読み方・役職での使われ方
「介」という漢字は、「かい」「すけ」と読み、「間に入る」「助ける」「仲立ちする」という意味を持っています。
この漢字は「介護」以外にも、
- 「介入」(かいにゅう:間に入って関わること)
- 「仲介」(ちゅうかい:仲立ちすること)
- 「介助」(かいじょ:手助けすること) など
様々な熟語で使われています。
介護の分野では、この「介」の字は非常に重要な意味を持ちます。「介護」(かいご)という言葉は、「介助」と「看護」を組み合わせた言葉とも言われており、日常生活の援助と医療的なケアの両面をカバーする概念を表しています。
役職名としては、
- 「介護福祉士」(かいごふくしし)
- 「介護支援専門員」(かいごしえんせんもんいん:ケアマネジャー)
- 「介護職員」(かいごしょくいん) など
多くの職名に使われています。
また、介護保険制度における要介護度の区分(要介護1〜5)にも使用されています。
「介」の名前に使う場合の印象や避けられる理由
「介」の字は名前に使われることもありますが、現代日本では比較的少ない傾向にあります。名前として使う場合、「すけ」と読むことが多く、「助ける」「支える」といった肯定的な意味が込められています。
しかし、この漢字が名前に避けられる理由としては、いくつかの要因が考えられます。まず、「介護」という言葉から連想される「要介護状態」(介護が必要な状態)というネガティブなイメージです。また、「介入」という言葉が「余計な干渉」というネガティブな意味で使われることもあります。
一方で、「介」の持つ「助ける」「支える」という本来の意味は非常に尊い概念であり、介護の本質的な価値を表す重要な漢字でもあります。介護の仕事に携わる方々は、この「介」の字の持つ深い意味を理解し、誇りを持って業務に取り組んでいます。
外国人介護人材にとっては、このような漢字の持つ意味や背景を知ることで日本語の理解が深まるだけでなく介護の仕事に対する理解も深まります。
また、利用者や家族との会話の中で名前の漢字について尋ねられたときなど、こうした豆知識があると会話が広がるきっかけにもなるでしょう。
特定技能1号「介護」を正しく理解し、外国人材活用を成功させよう

特定技能1号「介護」は、深刻な人材不足に対応するために創設された在留資格です。単なる人手不足の解消だけでなく、介護の質を維持しながら外国人材と共に成長する仕組みとして活用することが重要です。
- 在留期間:最長5年(通算)
- 業務範囲:身体介護、生活支援等の基本的な介護業務
- 施設内業務が基本(訪問介護は限定的)
- 試験要件:介護技能測定試験と日本語能力(N4以上または介護日本語評価試験)
- 原則禁止: 特定技能1号「介護」の外国人は労働者派遣の対象にはできない
- 直接雇用の原則: 在留資格を取得した介護施設等で直接雇用することが必要
- 派遣会社による特定技能外国人の受入れ不可: 人材派遣会社は特定技能外国人の受入れ機関になれない
- 同一法人内での異動(転勤)は可能
- グループ法人内での出向は一定条件下で可能
- 受入れ機関の倒産等の場合の転職支援
介護業界における外国人材の活用は今後ますます拡大していくことが予想されます。
特定技能1号「介護」制度を正しく理解し適切に活用することで、介護の質の向上と持続可能な介護体制の構築につなげていきましょう。
外国人材と共に創る新しい介護の形は、超高齢社会を迎えた日本の大きな希望となるはずです。