- 1 はじめに:介護企業が知るべき外国人材受け入れ制度の選択肢
- 2 特定技能と技能実習の基本的な違いとは?
- 3 【介護事例で考える】特定技能と技能実習の対応業務の違い
- 4 【一覧紹介】特定技能と技能実習の介護受け入れ可能施設に違いはある?
- 5 日本語は問題ない?介護現場における特定技能と技能実習の日本語レベルの違い
- 6 特定技能と技能実習の受け入れ要件の違い
- 7 介護施設の人員配置基準|特定技能と技能実習の違いとは?
- 8 在留期間の違い|特定技能と技能実習でどれくらい働ける?
- 9 転職の可能性は?特定技能と技能実習の転職可否について
- 10 【プロセス公開】特定技能と技能実習の採用プロセスの違いは?
- 11 介護事例で考える特定技能と技能実習の選定基準
- 12 【参考】介護福祉士は特定技能・技能実習と何が違う?
- 13 介護業界における特定技能と技能実習の違いを正しく理解しよう
はじめに:介護企業が知るべき外国人材受け入れ制度の選択肢
近年、介護人材の不足が深刻化しており、外国人の雇用が増えてきました。外国人材受け入れの仕組みとして、特定技能制度と技能実習制度は介護現場で注目されています。
しかし、この2つの制度は目的や運用方法、対象となる業務範囲など多くの点で異なります。どちらが自社に適しているのか、適切な判断をするためには、それぞれの制度の特徴や違いを正確に理解することが不可欠です。
本記事では、介護分野に特化して「特定技能」と「技能実習」の違いやメリット・デメリットを採用プロセス・業務範囲・在留期間を踏まえて明らかにします。
それぞれの介護現場における人材戦略の最適化を目指す企業の方々にとって、この記事が有益な指針となることを願っています。
特定技能と技能実習の基本的な違いとは?
介護分野における外国人材の受け入れ制度として、「特定技能」と「技能実習」の2つが代表的です。これらは一見似ているようで、その目的や仕組みには大きな違いがあります。
- 特定技能:一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく仕組み※1
- 技能実習:本国に帰国後本邦において修得等をした技能等を要する業務に従事すること※2
介護企業が外国人材を活用する際には、この基本的な違いを理解したうえで最適な制度を選択することが重要です。
ここでは、「特定技能」と「技能実習」それぞれの制度や目的、そして介護企業にとってのメリット・デメリットなどについて詳しく解説します。二つの制度を比較することで、自社の状況や目的に合った外国人材受け入れの戦略を立てるための参考にしていただければと思います。
※1引用元:特定技能外国人受入れに関する運用要領
※2引用元:2 第1 技能実習の内容に関するもの (1) 技能実習生の基準に関するもの
特定技能制度とは?介護分野での目的と概要を解説
特定技能制度は、2019年4月に新たに創設された在留資格の制度です。深刻化する人手不足に対応するため、特定の業種において専門的な知識や技術を持つ外国人材を受け入れることを目的としています。介護分野も特定技能の対象14分野の一つで、多くの介護事業者が活用しています。
特定技能制度の最大の特徴は、「即戦力」として外国人材を採用できることです。特定技能のビザを取るには介護の技術と日本語の能力の両方が、一定のレベル以上なければなりません。具体的には、以下のどちらかの条件を満たす必要があります。
- 「介護分野の技能評価試験」と「日本語能力試験(N4以上)」に合格する
- 「介護技能実習2号」を修了している。
在留期間は最長5年間で、同一業種内であれば転職ができるという点が挙げられます。つまり、特定技能外国人は介護分野内であれば、より良い条件の職場に移ることができるのです。
現在、介護分野では「特定技能1号」のみが対象となっています。また、待遇面については、日本人と同じかそれ以上の報酬を支払うことが義務です。不当な差別は認められていません。これにより、外国人と日本人が公平な条件で働ける環境が整えられています。
技能実習制度とは?介護企業が理解すべき目的と概要
技能実習制度は、1993年に創設された制度で、日本の技術や知識を発展途上国に伝える「技能移転」を目的としています。日本で働きながら培われた技術を自国に持ち帰ることで、その国の発展に役立てる「人づくり」に協力するという理念に基づいています。介護分野においては2017年11月から対象となり、多くの介護施設が技能実習生を受け入れるようになりました。
技能実習生は以下の流れで段階的に技術を習得していきます。
- 最初の1年間(技能実習1号):基本的な技能を習得
- 2年目〜3年目(技能実習2号):さらに技能を向上させる
- 4年目〜5年目(技能実習3号・優秀な実習生のみ):最長5年間の実習が可能となる
受け入れにあたっては、監理団体を通じた受け入れと企業単独型による受け入れの2つの方法があります。
- 監理団体を通じた受け入れ:介護分野では一般的であり、実習計画の作成支援・定期的な巡回指導などを行い、適正な実習環境を確保する役割を担っている。
- 企業単独型の受け入れ:海外に自社の関連企業がある場合、監理団体を介さず自社で技能実習を管理する。
技能実習生は原則として、同じ企業で技能実習を継続する必要があります。つまり、特定技能と違い、実習期間中の転職は原則として認められていません。これは、計画的・継続的 に技能を習得するための制度設計と言えるでしょう。
介護職種の技能実習では、入国前に母国で日本語能力試験N4以上の日本語能力が求められます。また、実習開始後6ヶ月間は、利用者の身体に直接接する業務(入浴、食事、排せつの介助等)を行うことはできません。段階的に業務を行っていくことで、利用者の安全も確保でき、実習生の負担軽減にも繋がります。
特定技能生と技能実習生の受け入れメリットの違いとは?
介護企業が外国人材を受け入れる際、特定技能と技能実習のどちらを選択するかは、各制度のメリットを比較すると決めやすいでしょう。
特定技能生の受け入れメリットは、「即戦力となる人材が確保できる」ことや「柔軟な雇用形態で雇える」ことでしょう。理由は以下です。
- 一定の介護技能と日本語能力を有する人材を採用できる
- 短期間での現場投入が可能
- 正社員、契約社員、パートタイムなど多様な雇用形態で採用することができる
- 在留資格の範囲内であれば勤務時間の調整も可能
職場のニーズに合わせた柔軟な人員配置が可能となります。
一方、技能実習生の受け入れメリットとしては、「長期的な人材育成」が可能な点が挙げられます。
- 自社の介護理念やケア方針に沿った人材を育成できる
- 自社の組織文化に適応した人材を育てることができます。
- 監理団体のサポートがある(日本語教育や生活支援、トラブル対応)
- 監理団体との連携により、計画的かつ継続的な人材確保が可能
特に外国人材の受け入れ経験が少ない企業にとっては、監理団体のサポートは大きな安心材料となるでしょう。
どちらの制度を選択するかは、企業の人材ニーズや受け入れ体制によって異なります。即戦力を求めるなら特定技能、じっくりと育成したいなら技能実習、というのが基本的な選択基準になるでしょう。また、両制度を併用することで、短期的な人材確保と長期的な人材育成の両立も可能です。自社の状況を踏まえて最適な選択をしましょう。
特定技能生と技能実習生のデメリットを徹底比較!
外国人材の受け入れには多くのメリットがある一方で、それぞれの制度特有のデメリットや課題もあります。介護企業が適切な意思決定を行うためには、デメリットも理解しておくとよいでしょう。
特定技能制度のデメリットとしては、以下のものがあげられます。
- 同一分野内であれば転職が可能なため、より良い条件を求めて人材が流出する可能性がある
- 日本語教育や生活支援、各種手続きなどを自社または登録支援機関で対応する必要がある
- 即戦力とはいえ理論と実践のギャップに直面することがある
- 実際の現場での経験が乏しい場合も多く、施設の業務に慣れるまで時間がかかることもある
給与水準や労働環境が業界平均より低い場合、せっかく採用した人材が短期間で退職してしまう可能性が高まるでしょう。そのため、魅力的な職場環境や待遇の整備が求められます。また、技能実習とは異なり、監理団体による手厚いサポートがないため、受け入れ初期段階での企業負担が大きくなる傾向があります。
一方、技能実習制度のデメリットとしては、以下のものがあります。
- 実習開始後6ヶ月間は業務範囲の制限があるため、即戦力として活用しにくい
- 月数万円の監理費用の負担があり、小規模事業者にとっては大きな負担となる
- 実習計画の作成や定期報告などの事務負担がある
- 不満や困難に直面しても転職できないことへの不満が生まれる可能性がある
両制度を比較すると、特定技能は人材流出リスクと自社でのサポート体制構築の負担、技能実習は業務制限と監理費用の負担という課題があります。企業としては、これらのデメリットを認識した上で、自社の受け入れ体制や経営資源を考慮し、どちらの制度が適しているか検討することが大切です。
また、デメリットを最小化するための対策を事前に検討しておくことも成功の鍵と言えるでしょう。
【介護事例で考える】特定技能と技能実習の対応業務の違い
介護現場において、特定技能生と技能実習生では実際にどのような業務に従事できるのか、その範囲や制限に明確な違いがあります。それぞれの制度的特徴を理解し、適切な業務配置を行うことが重要です。ここでは、実際の介護現場を想定して、両者の対応可能な業務範囲の違いを詳しく解説します。
日常生活の援助から専門的なケアまで、介護業務は多岐にわたります。特定技能生と技能実習生では、どのような業務に携わることができるのか、また夜勤などの特殊な勤務形態への対応可否など、実務的な観点から両者の違いを明らかにしていきましょう。
特定技能生と技能実習生の具体的な介護業務の違いとは?
介護現場において、特定技能生と技能実習生が担当できる業務範囲には明確な違いがあります。これらの違いを理解することで、施設運営の効率化と適切な人材活用が可能となるでしょう。
特定技能生の対応可能業務としては、入職直後から身体介護を含む幅広い業務に従事することができます。具体的には、以下の業務が行えます。
- 入浴介助
- 食事介助
- 排泄介助
- 移乗・移動介助
- 着替えの介助
- 生活援助(掃除、洗濯、調理等)
- 福祉用具の使用補助
- レクリエーション支援
- 介護記録の作成
- 申し送り など
特定技能生はこれほど多くの業務が可能なのです。つまり、基本的には日本人スタッフとほぼ同等の業務範囲で働くことが可能なのです。ただし、ケアプランの作成やサービス担当者会議の開催など、より専門性の高い業務については、経験や能力に応じて判断する必要があるでしょう。
一方、技能実習生の対応可能業務については、入国後6ヶ月間は身体介護業務が制限されるという大きな特徴があります。この期間に可能な業務は以下になります。
- ベッドメイキング
- 居室の清掃
- 洗濯
- 配膳・下膳
- 食事の準備
- レクリエーションの補助
- 見守り業務 など
技能実習生が行えるのは、生活援助業務が中心となります。入国後6ヶ月を経過すると、身体介護業務にも従事できるようになりますが、実習計画に基づいた段階的な実習となります。つまり、すべての身体介護業務をいきなり任せるのではなく、比較的簡単な業務から徐々に難易度の高い業務へと移行していく必要があるのです。また、技能実習計画に記載されていない業務は、原則として行うことができません。
このように、特定技能生は入職直後から幅広い業務に従事できる一方、技能実習生は段階的に業務範囲が広がっていくという違いがあります。また、技能実習生の場合は実習計画に基づいた業務に限定されるため、緊急時や人手不足時の柔軟な対応が難しいという点も考慮が必要でしょう。
介護施設としては、これらの違いを踏まえた上で人員配置を検討することが重要です。即戦力として幅広い業務を担当できる人材が必要な場合は特定技能、じっくりと育成しながら業務範囲を広げていきたい場合は技能実習、といった選択が考えられます。また、両制度を併用することで、バランスの取れた人員構成を実現することも可能です。
夜勤業務はどちらも対応できる?特定技能と技能実習の制約を比較
介護現場において、夜勤業務の人員確保は常に課題となっています。特定技能生と技能実習生は、この夜勤業務に対応できるのでしょうか。両者の制約を比較しながら詳しく見ていきましょう。
特定技能生の夜勤対応については、基本的に制度上の制限はありません。日本人スタッフと同様に夜勤シフトに入ることが可能です。ただし、実際の夜勤業務においては、緊急時の対応や複雑なケースへの判断が求められることも多いため、日本語能力や介護技術がある程度高いレベルに達していることが前提となります。
また、特定技能生を夜勤業務に配置する場合は、十分な研修期間を設けることが望ましいでしょう。日勤帯での業務に慣れた後、準夜勤や遅番などを経験させ、段階的に夜勤業務に移行していくという配慮が必要です。さらに、初めての夜勤時には日本人スタッフとのペア勤務から始めるなど、安全面にも配慮した導入が求められます。
一方、技能実習生の夜勤対応については、いくつかの制約があります。まず、入国後6ヶ月間は身体介護業務に制限があるため、この期間中の夜勤業務は基本的に困難です。身体介護を伴う緊急対応ができない状況では、夜勤業務の要件を満たせないためです。
6ヶ月を経過しても技能実習計画に夜勤業務が含まれていることが前提条件となります。つまり、実習計画作成時点で夜勤業務を想定していない場合は、後から追加することは容易ではありません。さらに、夜勤業務を行う場合でも、日本人スタッフとのペア勤務が基本となり、実習生単独での夜勤は避けるべきでしょう。
技能実習制度の場合、技能移転という目的に照らして、夜勤業務が適切かどうかという観点も重要です。夜勤中は利用者が就寝している時間が多く、介護技術を習得する機会が限られるため、実習目的に沿った業務かどうか慎重に判断する必要があります。
なお、両制度共通の注意点として、労働基準法に基づく労働時間管理や深夜割増賃金の支払いは当然ながら必要です。また、母国との生活習慣の違いから、夜勤業務への適応に時間がかかるケースもあるため、心身の健康面にも配慮した勤務体制の構築が重要です。
夜勤業務の対応がしやすいのは特定技能生といえますが、実習技能生だけでなく、特定技能生であっても段階的な導入と適切なサポート体制が不可欠です。施設の運営状況や夜勤体制の在り方を踏まえ、どちらの制度が適しているかを判断することが重要でしょう。
【一覧紹介】特定技能と技能実習の介護受け入れ可能施設に違いはある?
介護現場には様々な種類の施設やサービスが存在しますが、特定技能生と技能実習生を受け入れられる施設やサービスの範囲には違いがあり、これが人材の活用に影響を与えています。
特定技能生を受け入れ可能な施設は、介護保険法に基づく全ての介護サービスが対象となっています。具体的な施設は以下のものになります。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- グループホーム
- デイサービス
- 訪問介護
- 障害福祉サービス事業所(障害者総合支援法) など
以上のような、幅広いサービスでの就労が可能です。基本的には介護・福祉に関わるほぼすべての現場で特定技能人材を活用できるでしょう。実際の運用面では、施設間の異動や、同一法人内での複数サービスの掛け持ちなども可能です。例えば、デイサービスと特別養護老人ホームの両方で勤務するといった柔軟な働き方も認められています。
一方、技能実習生の受け入れ可能施設は比較的限定的です。介護職種の技能実習は、「介護等の業務に係る試験等」の実施に関する告示において定められた介護施設等に限定されています。具体的な施設は以下のものになります。
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
- 指定介護療養型医療施設
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム等)
対象外のものは、訪問系サービスである訪問介護(ホームヘルプサービス)となります。これは、技能実習制度が「指導者の下での技能習得」を前提としているため、単独での訪問業務が基本となる訪問介護は適さないと判断されているためです。ただし、通所系サービスであるデイサービスや小規模多機能型居宅介護などは、一定の条件を満たせば対象となる場合もあります。原則として実習計画に記載された特定の施設・サービスでの実習に限定されるため、この点でも制約があると言えるでしょう。
施設運営の観点からは、様々なサービスを展開している法人であれば、特定技能制度の方が人材の有効活用が図りやすいと考えられます。一方、入所系施設に特化した事業展開をしている法人であれば、技能実習制度も選択肢として十分検討の余地があるでしょう。各法人の事業形態や将来計画に合わせた制度選択が重要となります。
なお、いずれの制度においても、受け入れ施設側には適切な指導体制や生活支援体制の整備が求められます。特に技能実習制度では、以下の役員の選任が必須となります。
- 技能実習責任者
- 技能実習指導員
- 生活指導員
技能実習制度では、受け入れ体制に関する要件が厳格に定められていることも押さえておくべきポイントです。
日本語は問題ない?介護現場における特定技能と技能実習の日本語レベルの違い
介護現場において、コミュニケーション能力は業務を行う上で重要な要素です。利用者とのコミュニケーションや申し送り、記録作成など、十分な日本語能力が必要となります。外国人財の場合、日本語が十分でなければ業務に支障をきたすでしょう。
ここでは、特定技能と技能実習における日本語要件の違いや、介護現場で実際に求められる日本語スキルについて詳しく解説します。適切な人材を採用し、効果的に育成するための参考にしていただければと思います。
特定技能生に求められる日本語能力とは?(試験・会話レベル)
特定技能制度では、介護分野において一定レベル以上の日本語能力が求められます。具体的には、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 日本語能力試験(JLPT)でN4以上に合格している
- 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)で一定以上のスコアを取得している
- 介護日本語評価試験(特定技能1号技能測定試験「介護日本語評価試験」)に合格する
- 介護技能実習2号を修了した人
日本語能力試験(JLPT)でN4レベルは、「基本的な日本語を理解することができる」レベルとされており、日常的な場面で使われる日本語をある程度理解でき、基本的な文法や漢字約300字程度、語彙約1,500語程度を習得していることが目安です。
国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)では特に外国人材の受け入れを想定して開発されたもので、日常生活や職場でのコミュニケーションに必要な日本語能力を測定するものです。
介護日本語評価試験(特定技能1号技能測定試験「介護日本語評価試験」)は介護現場で必要な日本語コミュニケーション能力に特化したもので、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能をバランスよく評価します。
介護技能実習2号を修了した人については、これらの試験を免除されます。すでに日本での実習経験があり、一定の日本語能力が身についていると判断されるためです。
実際の会話レベルとしては、特定技能1号の段階では、基本的な日常会話や介護現場での定型的なコミュニケーションはある程度可能であると想定されています。例えば、「利用者の基本的な要望を理解できる」「体調変化の報告ができる」「基本的な介護記録が書ける」といったレベルが期待されるでしょう。
ただし、複雑な表現や専門用語、方言、高齢者特有の言い回しなどについては、理解が難しい場合も多いと考えられます。そのため、受け入れ側としては、わかりやすい表現を心がけるなどの配慮が必要です。また、採用後も日本語能力向上のための継続的な支援体制を整えることが重要です。
技能実習生の日本語スキルの現状|JLPT基準で判断できるか?
技能実習生に関しては、入国時の日本語能力について明確な基準は設けられていません。そのため、日本語レベルは人によって大きく異なり、JLPTでいえばN5レベル(基本的な日本語をある程度理解できる)程度、あるいはそれ以下の場合も少なくありません。多くは送り出し国の日本語教育機関で基礎を学んで来日しますが、その学習期間や内容は様々です。
技能実習生の日本語能力は、JLPT等の客観的な基準だけでは正確に判断できない面があります。実際の会話能力や現場での対応力は、試験の結果だけでは測れません。例えば、JLPTのスコアが低くても、日常会話は比較的スムーズにできる実習生もいれば、読み書きはできても会話が苦手な実習生もいます。
技能実習生は、来日後に日本語能力を向上させていくことが前提です。そのため、受け入れ側は日本語教育を計画的に実施する必要があります。特に技能実習1年目は、基礎的な日本語から介護現場で使用する専門用語まで、幅広い学習支援が求められるでしょう。
監理団体で来日後の集合研修や定期的な日本語学習支援を行っていますが、日常的な学習サポートは受け入れ施設の役割となります。実習生の日本語学習を効果的に高めるためには、専門の日本語教師による指導だけでなく、職場での日常的なコミュニケーションを通じた学びも重要です。技能実習生の日本語能力向上は、受け入れ施設と監理団体が連携して取り組むべき重要な課題といえるでしょう。
介護現場で求められる日本語スキルは?特定技能と技能実習の違いを比較
介護現場で求められる日本語スキルは、単なる日常会話能力だけではなく、利用者の状態を把握し、他の職員に正確に伝える能力や、緊急時に速やかに対応するための理解力・表現力が必要です。特定技能生と技能実習生では、入国時点での日本語能力に違いがあるため、業務範囲や成長過程にも差が生じます。
特定技能生は入国時点でN4以上の日本語能力を有しているため、基本的な介護業務のコミュニケーションには大きな問題がないことが多いです。例えば、「〇〇さんの血圧が高いので、安静にしてもらってください」といった指示を理解し、適切に対応できます。また、基本的な介護記録の作成も可能です。しかし、複雑な医療用語や専門的な申し送り事項については、まだ支援が必要な場合があります。
一方、技能実習生は入国時点での日本語能力が限られていることが多いため、特に実習開始直後は基本的なコミュニケーションにも苦労する場合があります。「お茶を持ってきてください」「トイレに行きたいと言っています」といった簡単な指示や情報の伝達から始めましょう。実習開始直後は通訳アプリの活用や視覚的な指示書の作成など、コミュニケーションを補助する工夫が必要です。
特定技能生と技能実習生に共通して、介護現場では専門用語(ケアプラン・バイタルサイン・ADLなど)の理解や、地域特有の方言・高齢者特有の言い回しへの対応が必要となります。また、非言語コミュニケーション(表情、ジェスチャーなど)を適切に活用する能力も重要です。受け入れ施設は、外国人材の日本語レベルに合わせた教育計画を立て、段階的に日本語能力を向上させるための支援が求められるでしょう。
特定技能と技能実習の受け入れ要件の違い
外国人材を受け入れる際には、特定技能と技能実習のそれぞれで異なる要件があります。特定技能では主に支援体制の整備が求められる一方、技能実習ではより厳格な受け入れ体制の構築が必要です。
また、受け入れ可能人数や施設基準についても重要な違いがあります。自社でクリアできる要件を持つ制度を選択すると良いでしょう。この項目では、特定技能と技能実習の受け入れ要件の違いについて、詳細に解説していきます。
受け入れ可能人数はどう違う?特定技能と技能実習の比較
特定技能と技能実習では、受け入れ可能な外国人材の人数に大きな違いがあります。
特定技能制度で、外国人材の受け入れ人数を左右するのは常勤介護職員の総数です。具体的には、以下の範囲で特定技能外国人を受け入れることができます。
- 常勤介護職員総数が30人以下の施設→常勤職員総数を超えない範囲
- 31人以上の施設→常勤職員総数の2分の1を超えない範囲
小規模事業所においても、少なくとも1名の特定技能外国人を受け入れることは可能です。
技能実習制度でも、実習実施者(受け入れ企業)の常勤職員数に応じた受け入れ人数枠が設定されています。基本的には、以下の範囲です。
- 常勤職員数30人以下の場合→3人まで
- 31人以上の場合→常勤職員数の10分の1まで
ただし、優良な実習実施者として認定されると、この人数枠が2倍になります。
両制度の受入れ人数枠を比較すると、特定技能の方が多くの外国人材を受け入れられる可能性があります。特に中小規模の施設では、この違いが必要な人材の確保に大きな影響を与えるでしょう。例えば、常勤職員20人の施設の場合、特定技能では最大20人の外国人材を受け入れることができますが、技能実習では通常3人までとなり、優良実習実施者でも6人までとなります。
ただし、受入れ可能人数が多いことが必ずしも最適な選択とは限りません。外国人材の教育体制や生活支援体制、日本人職員との関係構築なども考慮し、自施設の受入れ体制に合った人数を検討することが重要です。特に初めて外国人材を受け入れる施設では、まずは少人数から始めた方が良いでしょう。
技能実習生の受け入れ要件|監理団体・施設基準・実習計画とは?
技能実習生を受け入れるためには、まず監理団体と契約を結ぶことが必要です。監理団体は、技能実習の監理(実習実施者への指導・監督)を行う非営利団体で、公益財団法人、一般社団法人、商工会議所などがこれに当たります。監理団体は技能実習生の受入れから帰国までを一貫してサポートするため、信頼できる団体を選びましょう。
施設基準については、技能実習制度では「技能実習を行わせる体制」と「技能実習生の保護体制」の両面から厳格な要件が設けられています。具体的には、技能実習指導員(介護福祉士や実務者研修修了者等)と生活指導員を選任し、適切な指導体制を整備する必要があります。また、技能実習生1人につき指導員1人以上の配置が求められ、指導員は3年以上の実務経験を有することが条件となっています。
さらに、「技能実習計画」の作成と認定も必須です。計画には、以下の内容を入れます。
- 技能実習の目標
- 技能実習の内容
- 技能実習の期間
- 指導体制
以上を詳細に記載し、外国人技能実習機構の認定を受ける必要があります。介護分野では特に、利用者の安全確保の確保が求められます。
特定技能生の受け入れ要件|試験・登録支援機関の活用とは?
特定技能制度は2019年4月に始まった比較的新しい制度であり、介護分野でも外国人材を即戦力として活用できる仕組みです。ここでは、特定技能における受け入れ要件の詳細を見ていきましょう。特定技能制度と技能実習制度では、その目的や受け入れ条件に決定的な違いがあります。では、特定技能生を受け入れるためには、具体的にどのような要件を満たす必要があるのでしょうか。
特定技能生の受け入れ要件|試験・登録支援機関の活用とは?
特定技能制度で外国人材を受け入れるには、まず候補者が「介護技能評価試験」と「日本語能力試験」の合格が必要条件となります。この制度の目的は「即戦力となる外国人材」の確保になるためです。
介護技能評価試験は、介護の基本的な知識や技術を測定するもので、実技試験と筆記試験から構成されています。日本語能力については、N4レベル以上であり、介護現場での基本的なコミュニケーションが可能であることが求められます。
また、特定技能制度では「登録支援機関」の活用が特徴的です。受け入れ企業は自社で支援計画を作成・実施するか、登録支援機関に委託するかを選択できます。登録支援機関は出入国在留管理庁に登録された組織で、特定技能外国人の生活支援や相談対応などを行う機関です。特に介護業界では、外国人材の生活面でのサポートが業務定着に大きく影響します。専門的な知識を持つ登録支援機関を活用した方が定着しやすくなるでしょう。
特定技能制度の受け入れ要件として、適正な雇用条件の確保も大切です。日本人と同等以上の給与水準、適切な労働時間や休暇の付与など、労働関係法令を遵守した雇用条件が必要になります。
このように、特定技能生の受け入れには試験合格者の採用・適切な支援体制の構築・適正な雇用条件の確保という三つの大きな要件があるのです。
介護施設の人員配置基準|特定技能と技能実習の違いとは?
介護施設を運営する上で、人員配置基準は遵守しなければなりません。しかし、外国人材を雇用する場合、特定技能と技能実習では人員配置基準への算入方法に大きな違いがあります。この違いを正しく理解せずに採用計画を立てると、基準違反に陥るリスクも生じます。
特定技能と技能実習では人員配置基準への算入可否や条件が異なるため、施設運営計画に大きな影響を与えるでしょう。人員配置は介護サービスの質に直結する重要事項です。両制度の違いを詳しく見ていきましょう。
特定技能生は人員配置基準に算入できるのか?
特定技能外国人は、基本的に介護施設の人員配置基準に算入することが可能です。特定技能制度は「即戦力」として外国人材を受け入れており、一定水準の介護知識と技能を持つことが前提となっているためです。特定技能1号(介護)の在留資格を持つ外国人は、介護技能評価試験に合格し、日本語能力試験N4相当以上の能力を有しています。そのため、特定技能生は入職直後から人員配置基準の対象となる「介護職員」としてカウントできます。
特定技能生は介護現場での実務経験があるか、介護技能評価試験に合格した人材であるため、入職後すぐに基本的な介護業務を担当することが可能です。施設側にとっては、採用と同時に人員基準に算入できることで、人材確保と基準遵守の両立が図れるというメリットがあります。
ただし、特定技能生を人員配置基準に算入する際には、以下の注意点があります。
- 特定技能生が従事できる業務範囲を明確にしておく
- 適切な研修やOJTの実施は必要
特定技能生が従事できる業務は、医療行為を伴わない入浴、排泄、食事等の介護になります。研修では言語や文化の違いから生じる誤解を防ぎ、安全なケアを提供できるようにすることが重要です。
このように、特定技能生は人員配置基準に算入できる一方で、適切な教育と支援が必要になります。
技能実習生は人員配置基準にカウント可能?条件を解説
技能実習生の人員配置基準への算入については、原則1年目は行えません。算入するには以下の条件をクリアしなければいけません。
- 技能実習2号(2年目以降)に移行している
- 日本語能力試験N4以上
- 「技能実習指導員」を配置する
技能実習制度の目的は、開発途上国等への技能移転であり、入国当初は研修生という位置づけです。そのため、技能実習1号の期間(原則1年目)は、人員配置基準への算入が認められていません。介護施設にとっては、この1年間は実質的に「研修期間」としてサポートが必要であり、人員計画に影響があるでしょう。技能実習2号(2年目以降)に移行すれば、1年間の実習を通じて基本的な介護技能を習得したと認められます。ただし、算入するには日本語能力試験N4以上などの条件があります。
また、実習実施者(受入れ企業)は、技能実習生が算入要件を満たした場合でも、利用者の安全確保や適切なケア提供の観点から、業務範囲を適切に設定することが求められるでしょう。
技能実習生の業務範囲は段階的に広げていく前提で設計されています。そのため、「技能実習指導員」を配置する必要があります。この指導員は技能実習生を指導する役割を持ちます。技能実習生に指導できる経験豊富な職員でなければなりません。この指導員の確保も施設運営上の課題となる場合があります。また、技能実習計画に基づいた業務の遂行が前提であるため、施設の人員配置上の必要性だけで業務範囲を決めることはできません。
このように、技能実習生が人員配置基準に算入するにはいくつもの条件があるため、特定技能生より多くの制約と準備が必要になります。技能実習制度の本来の目的を踏まえた受け入れ計画が必要です。
特定技能と技能実習の人員配置の違いを一覧で比較!
特定技能と技能実習の人員配置基準への算入に関する違いを明確に理解するため、主要なポイントを比較してみましょう。
項目 | 特定技能制度 | 技能実習制度 |
人員配置基準の算入時期 | 入職直後 | 技能実習2号(2年目以降)に移行している |
資格要件 | 入国前に介護技能評価試験と日本語能力試験N4以上に合格していること |
|
業務範囲 | 入職後すぐに基本的な介護業務(入浴、排泄、食事等の介護)に従事できる |
|
指導体制 | 特定技能では「登録支援機関」による支援を選択できる | 「技能実習指導員」の配置が義務付けられている |
このように、特定技能と技能実習では人員配置基準への算入において明確な違いがあります。特定技能は即戦力確保と人員基準維持を両立できるメリットがある一方、技能実習は長期的な人材育成の観点で検討する必要があります。
各介護施設の状況や目的に応じて、どちらの制度が適しているかを見極めることが重要です。人員配置基準の遵守は介護サービスにおいて重要事項となります。外国人材の活用方針を決める際の重要な判断材料にしていただければ幸いです。
在留期間の違い|特定技能と技能実習でどれくらい働ける?
外国人材を採用する際、「どれだけの期間、施設で働いてもらえるのか」という点は重要なポイントです。特定技能と技能実習では、在留期間の上限や延長の可否に大きな違いがあります。長期的な人材戦略を考える上で、この違いを正しく理解することが大切です。
特に介護現場では、利用者との信頼関係構築や施設環境への適応に時間がかかるでしょう。安定したサービスを提供するには長期間、在留してもらう必要があります。ここでは、両制度の在留期間の仕組みと特徴を詳しく解説していきます。
特定技能生の在留期間は何年?5年を超えるとどうなる?
特定技能制度における在留期間は、特定技能1号と2号で大きく異なります。まず、介護分野で適用される特定技能1号の在留期間は、通算で最長5年間です。この期間は1年の中で、6カ月または4カ月ごとの在留期間更新を繰り返すことで、最大5年間まで日本に滞在し働くことができます。
特定技能1号は原則として家族の帯同が認められておらず、「一定期間の就労後は帰国する」という前提で制度設計されています。ただし、この5年という期間は他の在留資格への変更がない場合の上限であり、実際にはさまざまなキャリアパスが可能です。
特定技能1号の在留期間が5年を超えた場合、介護分野では特定技能2号への移行は認められていません。特定技能1号のまま5年を超えて滞在することはできないのです。5年の期間満了後は原則として帰国することになりますが、介護福祉士の国家資格を取得した場合は「介護」という別の在留資格に変更でき、その場合は無期限で更新可能となります。また、永住許可申請の要件を満たせば、「永住者」の在留資格を取得することも可能です。
このように、特定技能1号には上限がありながらも、キャリアアップによって長期的な就労の道が開かれます。
特定技能生の在留期間を計画する上で考慮すべき点は、日本語能力の向上と介護福祉士取得への支援です。5年という期間を有効に活用し、介護福祉士の資格取得をサポートすることで、人材の長期的な確保へつながるでしょう。一方で、帰国を前提とした研修計画や技術移転も検討する必要があります。特定技能生の中には母国での介護キャリア構築を目指す人材もいるため、帰国後の活躍も視野に入れた支援が理想的です。このように、適切な支援と計画により、施設と外国人材の双方にとって有益な関係を構築できるのです。
技能実習生の在留期間の仕組み|1号・2号・3号の違いとは?
技能実習制度における在留期間は、1号、2号、3号という3段階の区分に基づいています。
技能実習1号の期間は原則として1年間であり、主に基本的な技能習得と日本の生活や職場環境へ慣れるための期間です。技能実習1号修了後、技能検定基礎級等の試験に合格すると、技能実習2号へ移行できます。技能実習2号の期間は通常2年間であり、この期間中はより実践的な技能習得が求められます。基本的な技能実習の期間は1号と2号を合わせて最長3年間です。技能実習制度は「開発途上国への技能移転」という目的があるため、段階的な制度設計にすることで着実な技能習得を目指しています。
さらに技能実習制度には、一定の要件を満たした優良な監理団体と実習実施者(受入れ企業)のもとであれば、技能実習3号へ移行できる制度があります。技能実習3号への移行には、技能検定3級等の実技試験に合格することが条件となります。技能実習3号の期間は最長2年間あるため、技能実習1号の頃より合計すると技能実習制度全体では最長5年間の在留が可能です。
技能実習3号では高度な技能習得が期待され、将来的に母国で「指導者」となることを想定した実習内容となっています。ただし、技能実習3号に移行するためには、いったん帰国して手続きを行う必要があるケースも多く、連続した5年間の滞在とはならないことがあります。
技能実習制度では最長5年の在留期間がありますが、この期間で「技能移転」できる状態になることが目的です。実習計画を立てるにあたって以下のポイントに注意するとよいでしょう。
- 技能実習1号から2号、2号から3号と次の段階へ移行するには試験に合格することが条件
- 技能実習指導員を置くなど、実習生の技能習得をサポートする体制の整備が必要
- 将来的に母国での活躍ができるよう、日本での実習期間中に確実に技能を習得できるようなカリキュラムの設計が必要
この段階的な仕組みを理解し、長期的な実習計画を立てることが重要です。
長期雇用が可能なのはどっち?特定技能と技能実習の在留期間の比較
長期雇用が可能なのは特定技能制度といえるでしょう。特定技能と技能実習の在留期間を比較すると、両制度とも最長5年間という同じ期間に見えますが、実際の運用により大きな違いがあります。
まず、特定技能1号の場合、在留期間は通算で最長5年間ですが、一度の許可で最長1年間の在留資格が付与され、更新手続きが比較的シンプルです。対して技能実習は1号(1年)、2号(2年)、3号(2年)と段階的な移行が必要であり、各段階で試験合格などの条件を満たす必要があります。また、3号への移行には一時帰国が必要なケースもあるため、実質的な連続滞在期間は特定技能の方が安定している場合が多いでしょう。
長期的な雇用ができる可能性という観点では、両制度のその後のキャリアパスに注目する必要があります。特定技能生の場合、介護福祉士の国家資格を取得すれば「介護」という在留資格に変更でき、以降は更新回数に制限なく日本での就労が可能です。一方、技能実習生も同様に介護福祉士資格を取得すれば「介護」の在留資格に変更できますが、技能実習の期間に介護福祉士の資格を取得するには時間的・言語的なハードルが高い傾向にあります。
人材の定着という観点からも特定技能の方が長期雇用に向いているといえるでしょう。なぜなら、特定技能制度は「人手不足対策」という目的であり、日本での就労継続を前提とした制度設計になっているからです。一方、技能実習制度は本来「技能移転」が目的であり、技能を習得できれば帰国するため定着は難しいでしょう。
施設側の負担を考慮すると、特定技能では「登録支援機関」にサポートを依頼できますが、技能実習では「監理団体」を通じて自施設での厳格な管理が求められます。
このように、在留期間の長さだけでなく、制度の趣旨や支援方法、その後のキャリアパスも含めて総合的に判断すると、長期的な人材確保という面では特定技能制度の方が適していると考えられます。
ただし、どちらの制度が自施設に適しているかは、採用目的や教育体制などさまざまな要素を考慮して判断するとよいでしょう。
転職の可能性は?特定技能と技能実習の転職可否について
外国人材を受け入れる上で、「転職の可能性」は施設側にとっても外国人材本人にとっても重要な問題です。特定技能と技能実習では、転職に関する規定が大きく異なります。この違いは、人材の定着率や採用コストの回収に関わるため、制度選びの重要なポイントになるでしょう。
また、外国人材の権利保護という観点からも、転職の可否は重要な議論点です。ここでは、両制度における転職の可能性と、企業が知っておくべきポイントを詳しく解説します。
特定技能生は転職可能?企業が知っておくべきポイント
特定技能制度では、外国人材がより適切な労働環境や条件を求めて転職できる仕組みがあります。転職を認めることで、外国人材が安心して働ける環境づくりにつなげる考えです。
特定技能外国人の転職は、同一業種内(介護分野内)と決まっています。在留資格の変更申請をすることで他の企業への転職が可能です。特定技能外国人にとっては、能力や経験に見合った待遇を求めて転職できることがメリットとなります。
一方、企業側は「転職リスク」へ備えなければなりません。特定技能外国人が転職を希望した場合、基本的に引き止めることはできません。
そのため、採用や教育にかけたコストを回収できないリスクがあります。ただし、転職には在留資格変更など一定の手続きが必要であり、すぐに転職するわけではありません。また、雇用契約に定められた退職手続きや通知期間を守る必要もあります。特定技能外国人の安易な引き抜きは業界内の信頼関係を損なう可能性もあるため、一定の配慮が求められます。
特定技能生の転職を防ぐためには以下の点を意識した職場環境の整備です。
- 適正な賃金や福利厚生か見直す
- キャリアアップの機会を与える
- 働きやすい職場環境を整える
特に介護福祉士の資格取得支援など、長期的なキャリアパスを示すことが外国人材の定着に効果的でしょう。さらに、生活面でのサポートや文化的な配慮も欠かせません。こうした総合的な取り組みが、特定技能外国人の「転職したい」という気持ちを抑え、長期的な雇用関係につながるでしょう。転職が可能だからこそ、企業側には魅力的な職場づくりが求められます。
技能実習生は転職NG?制度上の理由と例外ケースとは?
技能実習制度では、原則として実習期間中の転職は認められていません。これは、技能実習制度が「特定の実習実施者(受入れ企業)のもとで計画的に技能を習得する」という設計がされているためです。
技能実習生は入国前に作成された「技能実習計画」に基づいて技能を習得することが求められます。この計画は特定の実習実施者と結びついており、実習期間中に他の企業へ移ることはできないのです。技能実習生は1号〜3号まで合わせて最長5年間、原則として同じ企業または同じ監理団体傘下の企業で実習を続けることになります。
ただし、技能実習生の人権保護の観点から、実習実施者側に以下のケースがあった場合は転職が認められます。
- 倒産
- 事業の縮小
- 技能実習法違反(賃金不払いや労働基準関係法令違反など)
- ハラスメント行為があった
こうした「実習の継続が困難になった」と認められる場合、出入国在留管理庁や外国人技能実習機構の支援により、技能実習生は同一の職種かつ同一作業の範囲内で他の実習実施者のもとへ移ることができます。これは「実習先変更支援」と呼ばれるもので、技能実習生の保護と技能習得の機会確保を両立させる仕組みです。
技能実習制度の転職制限は、企業側にとっては人材の定着率が高いというメリットがある一方で、実習生の権利制限という側面も持ち合わせています。実習先で不当な扱いを受けた際は転職が可能です。そのため、企業側には適切な実習環境の整備と法令遵守が強く求められます。
また、監理団体による定期的な監査も行われるため、コンプライアンス意識の高さが不可欠です。技能実習制度を選択する場合は、こうした制度の特性を十分に理解し、責任ある受け入れが重要です。転職が制限されているからこそ、技能実習生の権利を守り、適切な実習環境を提供する企業側の責任は重大だといえるでしょう。
特定技能と技能実習の転職に関する注意点とリスク
特定技能制度と技能実習制度は転職に関して大きく異なります。特定技能では転職が認められており、「同一分野内での転職自由」が特徴です。しかし、これには「引き継ぎ期間の設定」や「在留資格関連手続き」が必要で、企業側には「人材育成投資の回収困難」というリスクがあります。
一方、技能実習制度には「原則として転職不可」という基本的制約があります。これは人材定着の観点では企業にメリットですが、例外として「やむを得ない事情による転職」があります。実習実施者の倒産や不正行為、人権侵害などの場合は「実習先変更支援」を通じて転職が認められることがあります。技能実習における企業側のリスクは「不満の蓄積による実習意欲低下」です。
両制度共通のリスクとして「文化的・言語的ミスコミュニケーション」があります。特に日本特有の「空気を読む」文化や遠回しな表現が外国人材には伝わりにくく、誤解や不満の原因となることがあります。これを防ぐためには明確なコミュニケーションと定期的なフィードバックが重要です。
【プロセス公開】特定技能と技能実習の採用プロセスの違いは?
外国人材を受け入れる際に、特定技能と技能実習では採用プロセスが大きく異なります。それぞれの制度には独自の手続きや必要書類、関係機関との調整が必要です。それぞれどのような違いがあるのでしょうか。
特定技能の場合は試験合格からビザ申請まで手続きが中心となる一方、技能実習では監理団体を通じた手続きが基本となります。ここからは、それぞれの採用プロセスの詳細と、その違いについて段階的に解説していきます。自社に最適な制度を選択するための重要な判断材料としていただけますと幸いです。
特定技能生の採用プロセス|試験合格・ビザ申請など
特定技能外国人の採用プロセスでの最大の特徴は、候補者が特定技能評価試験に合格していることが前提となる点です。この試験は、介護分野においては国際厚生事業団(JICWELS)が実施機関となり、介護技能と日本語能力の両面から候補者の適性を評価します。
特定技能の採用プロセスは、始めに候補者の選定です。海外の送り出し機関と連携して候補者を募集するか、すでに日本国内にいる技能実習修了者や留学生などから採用するかを決定します。国内にいる候補者の場合、直接面接や実技試験を行うことができるため、より適切な人材を選びやすいのが利点です。
候補者が決まったら、在留資格認定証明書の交付申請を行います。この申請には、以下の書類が必要になります。
- 雇用契約書
- 事業所の概要
- 支援計画書
特に支援計画書は、登録支援機関に依頼するか自社で作成するかを選択できます。初めて外国人材を受け入れる場合は、専門知識を持つ登録支援機関に依頼する方が一般的です。
在留資格認定証明書が交付されたら、候補者はそれを用いて自国の日本大使館でビザ申請を行います。ビザが発給されれば、いよいよ来日です。来日後は、生活基盤を整えるため以下の支援が必要になります。
- 居住地の市区町村での住民登録
- 銀行口座の開設
- 携帯電話の契約
次に特定技能の採用プロセスで重要なのは、支援体制の整備です。特定技能制度では、外国人材に対する生活支援や職場適応支援が義務付けられています。具体的内容は以下の通りです。
- 日本語学習支援
- 生活オリエンテーション
- 相談・苦情対応体制の整備 など
これらの支援を自社で行うか、登録支援機関に委託するかを事前に検討しておく必要があるでしょう。
このように特定技能の採用プロセスは、候補者の選定から支援体制の整備まで、幅広い準備と手続きが必要です。しかし、技能実習と比較すると監理団体を介さない分、直接的なコミュニケーションが可能であり、自社のニーズに合った人材を柔軟に採用できるという利点があります。特に即戦力となる人材を求める介護施設にとっては、特定技能のプロセスは効率的な選択肢となるかもしれません。
技能実習生の採用プロセス|監理団体の役割と手続きの流れ
技能実習生の採用プロセスにおいて最も特徴的なのは、「監理団体」という第三者機関が介在する点です。監理団体は、技能実習生の受入れから帰国までの全過程を監理・支援してくれ、実習実施者(受入企業)と技能実習生の間に立ってさまざまな手続きや調整を行います。
技能実習生の採用プロセスは、まず監理団体の選定から始まります。監理団体は全国に数多く存在しますが、介護分野に強い団体や、特定の国からの受け入れに実績のある団体など、それぞれに特色があります。自社のニーズに合った監理団体を選ぶことが、円滑な実習生受け入れの第一歩となるでしょう。
監理団体が決まったら、技能実習計画の作成に入ります。この計画は、実習期間中にどのような技能を、どのような方法で習得させるかを詳細に記載したものです。介護分野の場合、「介護職種」の実習項目に沿って、入浴、食事、排泄などの介助技術をどのように習得させるかを具体的に計画します。この技能実習計画は、外国人技能実習機構(OTIT)による認定が必要です。
同時に、監理団体を通じて海外の送り出し機関と連携し、実習生候補者の選定を行います。候補者が決まれば、在留資格認定証明書の交付申請を行い、交付後に実習生は自国の日本大使館でビザ申請を行います。
実習生の来日前には、受入れ準備として宿舎の確保や職場環境の整備が必要です。技能実習では、実習生の宿舎提供が義務付けられており、実習実施者が適切な居住環境を整える必要があります。また、実習指導員や生活指導員の選任もしておきましょう。
実習生が来日したら、まず入国後講習が実施されます。これは監理団体が主催し、日本語や日本の生活習慣、法的保護に関する知識などを習得させるものです。通常2ヶ月程度の研修期間を経て、いよいよ実習先での実習が始まります。
実習開始後も、監理団体による定期的な巡回指導があり、実習の進捗状況や生活状況をチェックします。また、技能実習1号から2号、2号から3号へのステップアップ時には、技能検定試験の合格が必要です。
このように技能実習の採用プロセスは、監理団体という仲介者を通じてさまざまな手続きや調整が行われるため、実習実施者の直接的な負担は比較的少ない傾向にあります。しかし、その分、監理団体への監理費用が発生し、また実習計画の認定など独自の手続きも必要となります。長期的な人材育成を視野に入れた採用計画が求められる点も、技能実習の特徴と言えるでしょう。
特定技能と技能実習の採用手続きの違いをステップごとに解説!
特定技能と技能実習、どちらの制度で外国人材を受け入れるかを検討する際、採用手続きの違いを理解しておきましょう。ここでは、両制度の採用手続きの違いをステップごとに比較し、それぞれの特徴を明らかにしていきます。
項目 | 特定技能 | 技能実習 |
準備段階 | 登録支援機関と契約する
or 自社で支援計画を策定する |
監理団体の選定 |
候補者選定段階 |
海外の送り出し機関や人材紹介会社から独自に候補者を募集する or 国内の技能実習修了者や留学生から直接採用する |
監理団体と連携している海外の送り出し機関から紹介してもらう |
申請書類の準備・提出段階 | 雇用契約書や支援計画書 | 技能実習計画の作成と認定申請
(外国人技能実習機構(OTIT)による厳格な審査) |
来日後の対応段階 |
在留カードの取得や住民登録などの手続き支援が必要 すぐに就労が可能 |
来日後、2ヶ月程度の入国後講習
その後実習 |
フォローアップ段階 | 登録支援機関や自社による定期的な面談や相談対応 | 監理団体による定期的な巡回指導 |
継続・更新段階 | 最長5年(特定技能1号の場合)まで在留期間の更新が可能 | 1号から3号まで段階的に移行し、最長5年間の実習が可能
(各段階での技能検定試験の合格が条件) |
まず「準備段階」から見ていきましょう。この時点で、特定技能は企業の裁量が大きい一方、技能実習は監理団体に依存する形になるという違いが現れます。
次に「候補者選定段階」です。候補者の選択肢という点では、特定技能の方が幅広い可能性があると言えるでしょう。
「申請書類の準備・提出段階」では、両制度とも必要書類に違いがあります。技能実習では実習計画は実習期間全体での技能習得プロセスを詳細に記載する必要があります。書類準備の手間と時間という観点では、技能実習の方が負担が大きい傾向にあります。
次の「来日後の対応段階」でも大きな違いがあります。就労開始までの期間という点では、特定技能はすぐに就労できるのに対して、技能実習は入国後2ヶ月程度の講習を受けなければいけません。その後も実習期間となり、就労までは時間を要するでしょう。
「フォローアップ段階」では特定技能は登録支援機関に依頼していなければ、自社で特定技能生の悩みや相談に対応しなければなりません。技能実習は、監理団体により定期的に巡回してもらえるため企業の負担は少ないと考えられます。
最後に「継続・更新段階」です。滞在期間の柔軟性という点では、特定技能の方が優位といえるかもしれません。特定技能は1年に1度更新すれば最長5年滞在可能ですが、技能実習は1号から3号への移行が段階的です。また、試験をクリアしなければ移行できない点も柔軟性に欠けるでしょう。
このように両制度は採用手続きの各段階で明確な違いがあります。特定技能は比較的シンプルで企業の選択肢が多い一方、技能実習は監理団体を中心とした体系的なプロセスが特徴です。どちらが自社に適しているかは、求める人材の性質や受入れ体制の状況、長期的な人材戦略によって異なります。それぞれ比較し、自社に最適と思う選択をしてください。
介護事例で考える特定技能と技能実習の選定基準
介護分野で外国人材を受け入れる際、特定技能と技能実習のどちらを選択すべきか、具体的な判断基準が必要です。
両制度には明確な違いがあり、介護施設の規模や業態、求める人材像によって最適な選択肢は変わってくるでしょう。すぐに現場で活躍できる人材が必要なのか、それとも時間をかけて育成していきたいのか。コスト面での気をつけることは何か。
これらの問いに答えるために、実際の事例を交えながら詳しく解説していきます。自社の状況と照らし合わせながら、最適な制度選択のヒントを得ていただければと思います。
即戦力が欲しいなら特定技能?選定のポイントとは?
介護の現場で「今すぐに戦力になる人材が必要」と考えている施設には、特定技能制度が適しているでしょう。特定技能は、「一定の専門性・技能を有する外国人材の受入れ」を目的としており、すでに基本的な技能と日本語能力を有している人材を採用することができます。では、具体的にどのような場合に特定技能を選ぶべきなのでしょうか。
まず、人材不足が深刻で早急な対応が必要な場合です。特定技能の場合、来日してすぐに介護業務に従事することができます。人手不足で現場が切迫している状況では、この「即戦力性」は大きな利点になるでしょう。
千葉県のある特別養護老人ホームでは、特定技能外国人を5名採用したところ、来日後1ヶ月以内に全員が基本的な介護業務をこなせるようになったという事例があります。事前に特定技能評価試験を通じて一定の技能を持つ人材を厳選したことと、来日前から日本語研修を実施していたことが成功の要因だったとのことです。このように、事前の準備と適切な選考プロセスを経ることで、特定技能外国人を効果的に即戦力として活用することが可能となるのです。
長期的に人材を育てるなら技能実習?施設ごとの適性を比較
介護現場において「じっくりと時間をかけて人材を育てたい」「将来的に中核となる人材を育成したい」と考えている施設には、技能実習制度が適しているでしょう。技能実習は「開発途上地域等への技能移転による国際協力」を目的としており、一から体系的に技能を習得させるプロセスを重視しています。このような特性は、長期的な人材育成を重視する施設にとって大きなメリットとなり得ます。
技能実習が適している施設の第一の特徴は、体系的な研修プログラムを有している点です。技能実習では、実習計画に基づいて段階的に技能を習得させていくため、マニュアルや研修システムが整備されている施設との相性が良いでしょう。
福岡県の中規模デイサービスセンターでは、技能実習生を受け入れ、3年間かけて丁寧な指導を行ったことで、実習3年目には日本人スタッフと遜色なく業務をこなせるようになったという事例があります。特に利用者とのコミュニケーション面では、時間をかけて信頼関係を構築できたそうです。このように、時間をかけた人材育成が可能な環境があれば、技能実習制度は大きな効果を発揮します。
一方で、技能実習を選択する際にはいくつかの課題も考慮する必要があります。まず、来日後すぐには戦力にならない点です。入国後講習や初期の技能指導に時間がかかるため、即戦力を求める場合には不向きかもしれません。また、監理団体への監理費用や、実習計画の作成・認定など、初期段階での手続きや費用面での負担も比較的大きくなります。
さらに、実習生の日本語レベルが入国時点では初級レベルであることが多いため、利用者とのコミュニケーションに課題が生じる可能性もあります。特に認知症ケアなど、高度なコミュニケーション能力が求められる場面では、実習初期段階では限界があることを認識しておくべきでしょう。
技能実習は、長期的視点での人材育成を重視する施設、特に教育体制がしっかりしている大規模施設や、地域密着型の中小施設に適しています。実習生の成長を組織の成長と捉え、時間をかけて育成していく姿勢があれば、技能実習制度は有効な選択肢となるでしょう。
特定技能と技能実習、どちらが自社に合う?判断基準を整理!
特定技能と技能実習は、制度の目的や運用面で大きく異なります。そのため、自社に適した制度を選ぶためには、両者の違いを明確に理解し、自社のニーズと照らし合わせて判断する必要があります。これまでのポイントをまとめて解説します。
特定技能制度の特徴は、以下の内容でした。
- 即戦力の確保が目的
- 一定の技能水準と日本語能力がある
- 入国後すぐ働ける
- 技能実習修了者は試験が免除される
- 在留期間は1号が最長5年
- 2号が更新可能(介護分野は2号への移行が可能)
- 2号では家族の帯同も可能
- 転職の自由が認められている
- 必要であれば登録支援機関への費用がかかる
- 直接雇用も可能
一方、技能実習制度は以下の内容です。
- 開発途上国への技能移転による国際貢献が目的
- 働くまで準備期間が長く必要
- 在留期間は最長5年間
- 家族の帯同は認められていない
- 原則として転職の自由なし
- 監理団体を介する分のコストがかかる
自社の人材戦略に合わせて、適切な制度を選択することが成功の鍵となるでしょう。
介護企業が知るべき、特定技能と技能実習の成功事例と失敗事例
介護分野で外国人材を受け入れる際には、成功事例から学ぶとよいでしょう。特定技能と技能実習、それぞれの制度における成功事例と失敗事例を紹介します。
これらの事例から学べる成功のポイントは以下の通りです。
- 受け入れ前の準備が重要
- 日本語教育と介護技術の基礎教育は入念に行うべき
- 受け入れ後の継続的な教育・サポート体制の構築
- 生活面でのサポートが定着率を左右する
- キャリアパスを明確に示すことでモチベーション維持につながる
- 職場の受け入れ体制づくりが重要
失敗事例から学べる教訓としては、以下の点が挙げられます。
- 言語面でのサポート不足がコミュニケーション問題を引き起こす
- 期待と現実のギャップを埋める丁寧な説明の必要性
- 監理団体や登録支援機関との連携の重要性
これらの点に留意することで、外国人材受け入れの成功確率を高めることができるでしょう。
【参考】介護福祉士は特定技能・技能実習と何が違う?
特定技能や技能実習について理解を深めた上で、介護分野における最上位の国家資格である介護福祉士との関係性について解説します。外国人材の長期的なキャリア形成を支援するためには、これらの制度と介護福祉士資格がどのように関連しているかを理解することが重要です。
介護福祉士とは?特定技能・技能実習との違いを解説
介護福祉士は社会福祉士及び介護福祉士法に基づく国家資格であり、介護分野における最も重要な専門資格の一つです。介護を必要とする人の心身の状況に応じた介護を行うとともに、介護に関する指導や助言を行うことができる専門職として位置づけられています。特定技能や技能実習が在留資格であるのに対し、介護福祉士は専門性を証明する資格になります。
介護福祉士と特定技能の違いを詳しく見ていきましょう。
項目 | 介護福祉士 | 特定技能生 | 技能実習生 |
資格 | 国家資格 | 在留資格 | 在留資格 |
求められる水準 | より高度な専門知識と技術 | 基本的な介護技術と日本語能力(JFT-Basic等) | 最初の6ヶ月は利用者の身体への直接接触を伴う業務が禁止されている |
在留期間 | 更新回数に制限なく滞在可能 | 1号が最長5年
2号は条件付きで更新可能 |
最長5年間 |
介護福祉士資格を持つことのメリットは多岐にわたります。まず、「介護」という在留資格で長期滞在が可能となり、家族の帯同も認められます。また、転職の自由があり、より良い条件の職場を選ぶことが可能です。さらに、専門性の証明となるため、より高い給与や待遇を期待することができ、キャリアアップの選択肢も広がります。
介護事業者としては、外国人材の特定技能や技能実習から介護福祉士へのキャリアパスを支援することで、長期的な人材確保につながるでしょう。次項では、特定技能生と技能実習生がどのように介護福祉士を目指せるのかについて詳しく解説します。
介護福祉士を目指せるのはどっち?特定技能生と技能実習生の資格取得の可能性
特定技能生と技能実習生、どちらも介護福祉士の資格取得を目指すことが可能ですが、そのプロセスや難易度には違いがあります。それぞれの立場から介護福祉士を目指す場合の道筋を見ていきましょう。
特定技能生が介護福祉士を目指す場合、最も一般的なルートは実務経験ルートです。特定技能生として3年以上介護現場で働いた後、介護福祉士国家試験を受験することができます。この試験は日本語で行われるため、高い日本語能力が必要ですが、特定技能生として実務経験を積みながら日本語能力を向上させることで、合格の可能性は高まるでしょう。また、特定技能生は転職が可能なため、より良い研修環境や勉強時間が確保できる職場を選ぶこともできる点が有利です。
一方、技能実習生が介護福祉士を目指す場合も、同様に実務経験ルートが主な選択肢となります。技能実習生として3年以上の実務経験を積んだ後、介護福祉士国家試験の受験資格を得ることができます。しかし、技能実習制度は最長で5年間の在留期間であり、その間に日本語能力の向上と介護技術の習得、さらに国家試験への準備を行う必要があります。技能実習は原則として転職ができないため、受入れ企業の支援体制が資格取得へつながるかを大きく左右する点が特徴的です。
実際の資格取得率を比較すると、第36回介護福祉士国家試験では特定技能生は合格率38.5%ですが技能実習生は47%と、技能実習生の方が介護福祉士資格取得率が高い結果でした。※3
特定技能と技能実習、どちらの制度から介護福祉士を目指す場合でも、受入れ企業の支援体制が決定的に重要です。長期的な人材育成の視点から、介護福祉士取得支援を人材戦略の一環として位置づけることで、外国人材の定着率向上と質の高いケアの提供につながるでしょう。
※3引用元:https://www.mhlw.go.jp/content/12004000/001230244.pdf
特定技能・技能実習から介護福祉士へのキャリアパスとは?
介護分野における外国人材のキャリアパスを考える上で、特定技能・技能実習から介護福祉士への道筋を理解することは非常に重要です。それぞれの制度から介護福祉士を取得し、長期的なキャリア形成を実現するための具体的なパスを見ていきましょう。
最も一般的なキャリアパスとしては、「技能実習(最長5年)→特定技能1号(最長5年)→介護福祉士取得→介護在留資格」というルートが考えられます。このルートでは、技能実習で基礎的な介護技術と日本語を習得し、特定技能1号に移行して実務経験を積みながら介護福祉士試験の準備を行い、合格後は「介護」という在留資格で長期的に日本での就労が可能となります。
また、「特定技能1号(最長5年)→介護福祉士取得→特定技能2号または介護在留資格」というルートも選択肢として挙げられます。特定技能1号から直接介護福祉士を目指すこのルートは、比較的シンプルであり、最初から特定技能として入国した外国人材に適しています。
介護事業者が外国人材の介護福祉士取得を支援する方法としては、以下のような取り組みが効果的です。
- 業務時間内での学習時間の確保
- 勉強会の実施
- 模擬試験の実施や過去問題の解説
- 企業内日本語教室の開催
- 外部の日本語学校との連携
- 合格者による体験談共有会の開催
- 合格へのインセンティブ設定 など
特定技能と技能実習、どちらの制度から介護福祉士を目指す場合でも、受入れ企業の支援体制が重要です。長期的な人材育成の視点から、介護福祉士取得支援を人材戦略の一環として位置づけることで、外国人材の定着率向上と質の高いケアの提供につながるでしょう。
介護福祉士取得後のキャリアパスとしては、さらなる専門性の向上や管理職へ昇進など、さまざまな可能性が開かれるでしょう。一部の先進的な介護施設では、介護福祉士資格を取得した外国人材に対して、認知症ケアの専門研修を提供したり、リーダー職への起用を行ったりするなど、継続的なキャリア発展の機会を提供しています。
また、介護福祉士取得後に「特定技能2号」や「介護」の在留資格を取得すると、家族の帯同が可能となり、より長期的な定住を視野に入れたキャリア形成が可能です。一部の施設では、家族を含めた生活支援として住居の提供や子どもの教育支援なども行っており、外国人材とその家族が日本社会に溶け込みながら長期的に活躍できる環境づくりに取り組んでいます。
介護事業者としては、外国人材を単なる人手不足の解消策としてではなく、将来の介護現場を支える貴重な人材として捉え、長期的な育成・定着を図ることが重要です。特定技能生・技能実習生から介護福祉士へのキャリアパスを明確に示し、その実現に向けた具体的な支援を行うことで、外国人材のモチベーション向上と質の高い介護サービスの提供につながるでしょう。
このような総合的なキャリア支援は、外国人材にとっての魅力を高めるだけでなく、介護施設の人材戦略としても効果的であり、人材確保の競争力強化にもつながります。外国人材の長期的なキャリア形成支援は、今後の介護業界における重要な経営戦略の一つとなるでしょう。
介護業界における特定技能と技能実習の違いを正しく理解しよう
この記事では特定技能制度と技能実習制度の違いについて解説してきました。
特定技能は介護人材確保のための在留資格で、即戦力となる外国人材を受け入れる制度。一方、技能実習は技術移転が目的の制度で、母国での技能活用を前提とする制度であることがわかりました。
その他にも制度上での仕組みの違いはさまざまです。
特定技能は
- 試験合格や技能実習修了が要件
- 最長5年滞在可能
- 職場変更が可能
技能実習は
- 最長5年だが段階的に技能習得を図る
- 職場変更は原則不可
どちらも介護分野で重要な役割を担っていますが、目的や柔軟性に違いがあります。
制度の違いを理解して、自社の状況に合わせた外国人材受け入れの参考にしていただければと思います。