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【受け入れ企業向け】在留資格「介護」を持つ外国人材の転職について徹底解説

日本の介護業界は、高齢化社会の進行と深刻な人手不足に直面しています。その解決策として注目されているのが「在留資格『介護』」を持つ外国人材の活用です。これらの人材は専門的な知識と技術を持ち、介護施設での貴重な戦力となります。

彼らの転職を受け入れる企業側は、在留資格に関する理解と、適切な手続きが必要です。本記事では、在留資格「介護」を持つ外国人材の受け入れ企業に必要な情報をまとめました。法的要件や実務上の準備、円滑な採用と職場環境整備など解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

外国人介護士って介護施設ではどれくらいの需要がある?在留資格の重要性も解説

日本の介護業界が直面している人材不足は年々深刻化しています。厚生労働省の推計によれば、2025年には約34万人の介護人材が不足すると言われており、その数字は2040年には約69万人にまで膨らむ見通しです。※1

この危機的状況を打開するための重要な施策として、外国人介護士の受け入れが進められています。介護施設では「特定技能」や「技能実習」などの在留資格を持つ外国人材も働いていますが、その中でも特に専門性の高い「在留資格『介護』」の保持者は、安定した人材として高い需要があります。

彼らは日本の国家資格である「介護福祉士」の資格を取得しており、専門知識と技術を備えた貴重な戦力となっています。では、実際に介護施設ではどの程度の外国人材が働いているのか、在留資格「介護」はなぜ重要なのか解説してまいります。

※1引用元:第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の将来推計について

外国人介護士の介護施設での需要について【2024年度の受け入れ数】

2024年度における外国人介護士の受け入れ数は、過去最高を記録しています。厚生労働省の発表によると、EPA(経済連携協定)、在留資格「介護」、特定技能、技能実習を合わせた外国人介護人材の総数は約5万人に達しました。※2

その中でも在留資格「介護」を持つ人材は約9千人で、前年比で約70%以上増加しています。※3この急増の背景には、コロナ禍からの回復に伴う国際的な人材移動の再開と、日本政府による外国人材受け入れ政策の強化があります。

現在、多くの介護施設が外国人材を必要としており、その理由は以下のとおりです。

外国人材を必要としている理由

  • 人手不足の解消
  • 多様な視点の導入による職場の活性化
  • 利用者とのコミュニケーションの多様化

この中でも、外国人材を採用したい理由として「人手不足の解消」が最も多くありました。

さらに、在留資格「介護」を持つ人材は定着率が高いことも魅力です。EPAや技能実習で来日した外国人材の中には、在留資格「介護」を取得して長期的に日本で働くケースが増加しています。

介護施設側も外国人材の受け入れ態勢を整える動きが活発化しており、多言語対応のマニュアル作成や異文化理解研修の実施、住居支援など、さまざまな取り組みが行われています。このような支援体制が整っている施設ほど外国人材の定着率が高く、結果的に安定した人材確保につながるでしょう。

※2引用元:外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について

※3引用元:介護分野における外国人の受入実績等

在留資格「介護」とは|重要性について

在留資格「介護」とは、2017年9月に新設された在留資格で、日本の国家資格である介護福祉士の資格を取得した外国人が、介護業務に従事するために認められる資格です。

在留資格「介護」は、他の外国人材受け入れ制度(EPA、技能実習、特定技能)で来日した外国人材が、介護福祉士の資格を取得することで在留資格「介護」に移行できます。より安定した立場で日本での就労を継続できるようになるでしょう。このキャリアパスの明確さが、外国人材の意欲と定着率の向上につながります。

この在留資格は、「専門的・技術的分野」に分類されています。単なる労働力ではなく、専門的な知識と技術を持つ人材として日本社会に貢献することが期待されています。

この在留資格に期待される内容は、以下の通りです。

在留資格「介護」に期待される内容

  • 質の高いケアを提供できる
  • 介護現場のリーダーもできる
  • 長期的な雇用が可能
  • 介護施設のグローバル化と多様性の促進につながる
  • 地域社会の国際化に貢献できる

在留資格「介護」は介護福祉士の資格を持つため、利用者の状態に合わせ適切な処置が行え、他のスタッフへ指導することも期待できます。

また、在留資格「介護」の在留期間は最長5年ですが、一定の条件を満たせば永住権の申請も可能です。長期的な人材育成と活用が見込めます。

異なる文化背景を持つ職員が増えることで、職場環境が活性化し、新しい視点やアイデアが生まれやすくなるでしょう。また、外国人利用者への対応も可能です。さらに、外国人材が地域社会の一員として生活することで、地域住民との交流が生まれ、地域社会の国際化にも貢献します。

このように、在留資格「介護」は多岐に渡った活躍が期待されているのです。

在留資格「介護」の要件は?要素について解説

在留資格「介護」を取得するためには、いくつかの明確な要件が定められています。これらの要件を理解することは、外国人介護士を受け入れる企業にとって非常に重要です。なぜなら、受け入れ対象となる人材の条件を正確に把握し、適切な人材採用と雇用管理を行うための基礎知識となるからです。

在留資格「介護」の主な要件は、4つに大別されます。

  • 資格要件
  • 活動内容の要件
  • 日本語能力の要件
  • 収入要件

これらの要件を満たすことで、外国人材は日本で介護職として働くことができるようになります。では、それぞれの要件について詳しく見ていきましょう。

項目 内容
資格要件
  • 日本の国家資格である「介護福祉士」の資格を保有していること
  • 資格を取るには日本人と同様に国家試験に合格するか日本の介護福祉士養成施設を卒業する
活動内容の要件
  • 介護福祉士の資格を活かした介護等(身体介護、生活援助、相談援助など)が主たる業務であること
  • 雇用契約に基づいて働くこと
  • 自営業や個人事業主としての活動は原則認められない
日本語能力の要件
  • 介護福祉士の国家試験自体が日本語で実施されるため、一定以上の日本語能力(日本語能力試験N2相当以上が目安)が必要
  • 実際の業務においても、利用者や同僚とのコミュニケーション、記録の作成などができる日本語能力が必要
収入要件
  • 報酬は日本人が従事する場合の報酬と同等額以上であること

これらは在留資格「介護」として働くための要件となります。在留資格「介護」の申請時には以下の要件があります。

在留資格「介護」申請時の要件

  • 介護福祉士登録証の提出
  • 雇用契約書の提出
  • 雇用する施設が介護保険法に基づく介護サービスを提供する事業所であること

これらの要件は、単に法的な手続きとしてだけでなく、質の高い介護サービスを提供し、外国人材が適切な環境で働くための重要な基準となっています。受け入れ企業としては、これらの要件を十分に理解した上で、採用計画を立てることが大切です。

在留資格 「介護 」を持つ人数は何人いる?いつからとれる?

在留資格「介護」は比較的新しい在留資格であり、その保有者数や取得までの道のりについて正確に把握することは、受け入れ企業にとって重要です。

この在留資格は、2017年9月の新設当初は取得者数が限られていました。しかし、近年では介護人材不足の深刻化と外国人材の受け入れ政策の拡充により、保有者数は着実に増加しています。

では、実際にどれくらいの外国人が在留資格「介護」を持っているのか、また取得までにはどのような流れがあるのかを詳しく見ていきましょう。さらに、2025年度の最新の介護福祉士国家試験の合格率についても触れ、今後の展望を考察します。

日本で働く在留資格「介護」を持つ人数【最新版】

2024年6月時点での出入国在留管理庁の統計によると、在留資格「介護」を保有する外国人は約1万人です。この数字は2020年の約千人から約10倍に増加しており、年々急速に伸びていることがわかります。※4

この増加傾向には、在留資格「介護」を取得するための多様なケースが関わっています。

在留資格「介護」を取得すためのケース

  • EPA(経済連携協定)を通じて来日した外国人材が取得するケース
  • 技能実習や特定技能で来日した外国人材がステップアップするケース
  • 日本の介護福祉士養成施設に留学生として入学し卒業後に取得するケース

EPA(経済連携協定)を通じて来日した外国人材が取得するケースは、フィリピン、インドネシア、ベトナムの3か国とのEPA協定に基づき、介護福祉士候補者として来日し、介護施設で働きながら国家試験に備えるというルートです。通常3〜4年の就労期間中に介護福祉士国家試験に合格することで、在留資格「介護」を取得できるようになります。

技能実習や特定技能から介護福祉士資格を取得するケースでは、介護分野の技能実習生や特定技能外国人として来日し、日本で働きながら日本語能力を高め、介護福祉士の国家試験に合格することで在留資格「介護」に移行するルートです。技能実習は最長5年、特定技能1号は最長5年の滞在が可能なため、その期間中に介護福祉士の資格取得を目指すことができます。

日本の介護福祉士養成施設に留学生として入学するケースでは、日本の介護福祉士養成施設(2年制または3年制)に留学生として入学し、卒業することで介護福祉士の資格を取得するルートです。2022年度以降の入学者は卒業後の国家試験合格が必要となりました。このルートでは、まず「留学」の在留資格で来日し、養成施設を卒業後に在留資格「介護」へ変更申請を行います。

このような多様なルートから在留資格「介護」へ移行する外国人材が増えていることは、日本の介護業界にとって心強い動きと言えるでしょう。

※4引用元:【在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表】 | 出入国在留管理庁

取得するまでの流れ【2025年度の外国人材による介護福祉士の合格率】

在留資格「介護」を取得するまでの流れは、大きく分けて3つのルートがあります。それぞれのルートについて詳しく解説します。

1つ目は「EPA(経済連携協定)ルート」です。フィリピン、インドネシア、ベトナムの3か国とのEPA協定に基づき、介護福祉士候補者として来日し、介護施設で働きながら国家試験に備えるというルートです。このルートで在留資格「介護」を取得するまでの流れは以下のとおりです。

  1. 母国で一定の看護教育を受けた者が選抜される
  2. 来日前に6か月間の日本語研修を受ける
  3. 来日後さらに2か月間の日本語・介護導入研修を受ける
  4. 介護施設で就労を開始(就労期間は原則4年)
  5. 就労期間中に介護福祉士国家試験に合格する
  6. 在留資格「介護」を取得

EPAを所管する国際厚生事業団では入国後より、日本語と介護に関する研修を行い試験対策のサポートをしています。

2つ目は「留学ルート」です。日本の介護福祉士養成施設(2年制または3年制)に留学生として入学し、卒業することで介護福祉士の資格を取得するルートです。2022年度以降は卒業後の国家試験合格が必要となっています。比較的短期間で在留資格「介護」を取得することが可能です。

このルートでは、まず「留学」の在留資格で来日し、養成施設を卒業し国家試験合格後に在留資格「介護」へ変更申請を行います。

3つ目は「技能実習・特定技能からのステップアップルート」です。介護分野の技能実習生や特定技能外国人として来日し、日本で働きながら日本語能力を高め、介護福祉士の国家試験に合格することで在留資格「介護」に移行するルートです。

技能実習は最長5年、特定技能1号は最長5年の滞在が可能なため、その期間中に介護福祉士の資格取得を目指すことができます。

これらのルートを通じて、2025年度の介護福祉士国家試験における外国人受験者の合格率は以下のとおりでした。※5•6

  • EPA37.9%
  • 特定技能33.3%
  • 技能実習32.3%

2025年度は日本人受験者の合格率(約78.3%)と比べるとやや低い数値でありますが、外国人材の合格率は毎年変動があります。

技能実習生や特定技能から移行するケースでは、就労が中心で学習時間の確保が難しいことが要因と考えられます。この課題に対応するため、近年では特定技能から介護福祉士資格取得を支援するプログラムが各地で展開されており、今後の合格率向上が期待されています。

介護福祉士の資格取得後は、在留資格「介護」への変更申請が必要です。この際には雇用契約書や介護福祉士登録証の提出、住民税の納税証明書などが求められます。

申請から許可までは通常1〜3か月程度かかりますが、特定の条件を満たす場合は「在留資格認定証明書交付申請」を利用することで、より円滑に手続きを進めることも可能です。

※5引用元:介護福祉士国家試験の受験者・合格者・合格率の推移

※6引用元:「第37回介護福祉士国家試験結果」において

在留資格 「介護」の在留期間はいつまで?ビザや永住権・家族の帯同について

在留資格「介護」を持つ外国人材を雇用する際、彼らがどれくらいの期間日本に滞在できるのか、家族を呼び寄せることは可能なのか、将来的に永住権を取得できるのかといった点は、企業側にとっても重要です。

これらの情報を正確に把握することで、長期的な人材活用計画を立てることができ、外国人材自身のキャリアプランや生活設計にも大きく関わってきます。

ここでは、在留資格「介護」に関連する在留期間の詳細、永住権取得の可能性、ビザに関する情報、そして家族帯同の条件について詳しく解説します。

永住は可能になる?在留期間について

在留資格「介護」の在留期間は、1年、3年、または5年のいずれかが付与されます。初回申請時には通常1年または3年の在留期間が認められ、更新申請を経て段階的に長期化していくのが一般的なパターンです。※7 

在留期間の更新に関しては、以下の内容が審査されます。

在留期間更新時の審査内容

  • 安定した雇用が継続していること
  • 介護福祉士としての資格を活かした業務に従事していること
  • 納税などの義務を果たしていること

これらの審査は、基本的に問題なく認められることがほとんどです。

永住権については、在留資格「介護」を持つ外国人も条件を満たせば申請が可能です。永住権を取得するための一般的な条件は以下のとおりです。※8

永住権を獲得するための条件

  • 10年以上日本に在留していること(ただし就労資格の場合は5年以上で申請可能)
  • 素行が善良であること
  • 独立した生計を営むに足りる資産または技能を有すること
  • 日本にとって利益があると認められること

在留資格「介護」は就労資格に該当するため、5年以上の在留で永住申請が可能となります。

しかし、実際の永住権取得のハードルはやや高く、日本語能力(N2相当以上が望ましい)や安定した収入(日本人の平均給与以上が目安)などの条件も考慮されます。

また、2022年から導入された「高度専門職ポイント制」の対象に在留資格「介護」も含まれるようになり、一定の条件を満たせば永住権取得までの期間が短縮される可能性も出てきました。

これは、介護分野における高度な専門性や日本語能力、年収などの項目でポイントを集め、70点以上獲得すれば3年での永住申請が可能になるという制度です。※9

永住権を取得するメリットとしては、在留期間が無期限になること、活動内容に制限がなくなること、再入国許可の手続きが簡略化されることなどが挙げられます。介護職として長期的に日本で働きたい外国人材にとって、永住権の取得は大きな目標です。

※7引用元:在留資格一覧表 | 出入国在留管理庁

※8引用元:永住許可申請 | 出入国在留管理庁

※9引用源:在留資格「高度専門職」(高度人材ポイント制) | 出入国在留管理庁

在留資格「介護」取得後のビザについて

在留資格「介護」を取得した外国人に発行されるビザ(在留カード)には、いくつかの特徴と注意点があります。まず、「介護」という在留資格名とともに、在留期間(1年、3年、または5年)が明記されます。また、就労制限の有無を示す欄には「就労制限なし」と記載されますが、これは「介護の仕事なら制限なく働ける」という意味であり、他の職種に就くことは原則として認められていません。

在留カードには、以下の情報が記載されており、常時携帯する義務があります。※10

在留カードの記載内容

  • 氏名
  • 生年月日
  • 性別
  • 国籍・地域
  • 住居地
  • 在留資格
  • 在留期間

また、在留カードの有効期間は在留期間の満了日までとなります。

在留期間の更新に関しては、期間満了日の3か月前から申請が可能です。更新申請時には、以下の準備が必要です。※10 

在留期間更新時に必要なもの

  • 在留期間更新許可申請書
  • パスポート
  • 在留カード
  • 介護福祉士登録証の写し
  • 雇用契約書の写し
  • 住民税の納税証明書

更新審査では、「介護福祉士として適切に業務を行っているか」「税金の滞納はないか」「健康保険や年金に加入しているか」などが重点的にチェックされます。

※10引用元:Q&A在留管理制度よくある質問

家族の帯同はできる?

在留資格「介護」を持つ方は家族の帯同が可能です。外国人材にとって、家族との生活は精神的な安定をもたらす重要な要素です。配偶者や子どもは「家族滞在」の在留資格を取得することで、日本での生活を共にすることができます。

この点は、外国人材の長期的な定着に影響を与えかねません。家族との生活が保障されることで、外国人介護福祉士はより安定した環境で業務に集中できるでしょう。特に子どもがいる場合、日本の教育を受けさせられることは将来的なキャリア形成においても大きなメリットとなります。

ただし、家族を帯同する場合にはさまざまな課題があります。

家族帯同の課題

  • 生活費や住居の確保など経済的な負担が増加する
  • 「家族滞在」の在留資格では就労に制限がある
  • 子どもの教育や配偶者の日本語習得など生活面でのサポートも考慮

受け入れ施設としては、家族帯同を希望する外国人材に対して、適切な給与水準の設定や住居の提供、地域の教育環境や生活インフラの案内など、包括的なサポートを検討することが望ましいでしょう。こうした配慮が、質の高い人材の長期的な確保につながります。

在留資格「介護」のメリット・デメリット

在留資格「介護」は、介護分野における外国人材の活用を促進する制度として、受け入れ企業にとっても、外国人材本人にとってもさまざまなメリットとデメリットがあります。双方にとってのメリット・デメリットを理解することで円滑な受け入れと長期的な人材確保につながるでしょう。

この項では、在留資格「介護」のメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。受け入れ体制を整える際に参考にしていただけたら幸いです。特に言語や文化の違いから生じる課題を事前に把握し、適切な対応策を講じることで、互いに尊重し合える関係性を構築することができるでしょう。

メリット:在留資格「介護」でできること

在留資格「介護」は、外国人材と受け入れ企業の双方にとって多くのメリットをもたらします。最大の特長は、介護福祉士としての専門性を最大限に活かした就労が可能な点です。技能実習生や特定技能とは異なり、業務内容に制限が少なく、介護福祉士として幅広い業務に従事できます。

また、在留期間が最長5年と比較的長く設定されており、更新も可能であるため、長期的なキャリア形成や施設側の人材育成計画が立てやすいという利点があります。外国人材にとっては、専門職としてのスキルアップや日本での生活基盤の確立につながり、受け入れ側にとっては人材への投資効果が長期的に得られるでしょう。

さらに、介護福祉士国家資格を有していることから、基本的な介護知識や技術はもちろん、一定レベルの日本語能力も備えているため、比較的スムーズな職場適応が期待できます。これにより、受け入れ側の教育負担が軽減され、早期戦力化が図れます。

このように、在留資格「介護」は単なる労働力確保の手段ではなく、専門的なスキルを持つ人材を長期的に活用できる制度として、日本の介護現場に新たな価値をもたらす可能性を秘めています。

デメリット:資格取得者が少なく競争率が高い

在留資格「介護」は、日本語力や国家資格取得が必須で、取得までの負担が大きいことがデメリットです。学費や時間がかかるうえ、職場環境によっては定着しにくい場合もあります。

そのため、資格保持者の獲得競争が激しく、優秀な人材を確保するのは容易ではありません。特に大都市圏では競争率が高く、地方の介護施設ほど不利な立場に置かれる傾向があります。

また、在留資格「介護」を持つ外国人材の採用には、一般的な採用活動よりも時間とコストがかかることも課題です。

言語面でのコミュニケーション、文化的な背景の違いへの配慮、生活環境の整備など、受け入れ準備に多くの労力を要します。これらの準備不足は、採用後のミスマッチや早期離職につながるリスクもあるため、十分な事前対策が必要でしょう。

さらに、資格を持っているとはいえ、日本の介護現場特有の習慣や業務フローに慣れるまでには一定の時間がかかります

例えば、介護記録の書き方や報告・連絡・相談のプロセス、チームケアの進め方など、日本固有の仕事の進め方を理解してもらう教育期間が必要です。この期間中は期待通りのパフォーマンスが得られない可能性も考慮しておくべきでしょう。

加えて、外国人材の受け入れには、既存のスタッフへの理解促進や異文化コミュニケーションの研修など、組織全体での受け入れ体制の構築も不可欠です。こうした組織的な変革を伴うため、単純な人材採用以上の経営的な判断と準備が求められます。

これらのデメリットは、適切な受け入れ計画と組織的な取り組みによって克服可能なものですが、安易な採用判断は双方にとって不幸な結果を招きかねません。中長期的な視点での計画立案と体制整備が重要です。

介護職での転職時に必要な手続きとは【本人編】

在留資格「介護」を持つ外国人が転職する際には、いくつかの重要な手続きが必要となります。

この手続きは、滞在・就労を継続するために不可欠なものであり、外国人本人と受け入れ企業の双方が理解しておくべき内容です。誤った手続きや手続きの遅延は、最悪の場合、在留資格の取り消しにつながる可能性もあるため、慎重な対応が求められるでしょう。

転職に伴う手続きには、転職先や雇用条件の変更内容によって異なるケースがあります。特に注意すべきは、手続きのタイミングです。計画的な転職活動と手続きの実施が重要となるでしょう。

円滑な人材受け入れのためにも、企業としてこれらの手続きに関する基本的な知識を持ち、適切な支援を提供することが望ましいでしょう。この項では、外国人材本人が行う手続きについて解説していきます。

在留資格が変わるときに必要な申請|在留資格変更許可申請

在留資格「介護」を持つ外国人が、異なる在留資格が必要となる職種へ転職する場合には、「在留資格変更許可申請」が必要となります。

例えば、介護福祉士から介護施設の通訳や管理業務などに主な業務内容が変わる場合は、「技術・人文知識・国際業務」などの別の在留資格への変更申請が求められるケースがあります。

この申請手続きは、原則として新しい職場での業務開始前に完了させる必要があります。申請から許可までには通常2〜3週間程度かかりますが、繁忙期や申請内容によっては1ヶ月以上要することもあります。そのため、転職の際は余裕をもって計画しましょう。

申請に必要な書類は、以下のとおりです。※11 

在留資格更新時に必要なもの

  • 在留資格変更許可申請書
  • 写真
  • パスポート
  • 在留カード
  • 新しい雇用契約書や労働条件通知書
  • 新雇用先の登記簿謄本や決算報告書
  • 給与支払証明書

特に新しい職場での業務内容が在留資格「介護」の要件を満たさない場合は、新たな在留資格に適合する業務内容であることを証明する資料を準備する必要があります。

申請先は、外国人の住居地を管轄する地方出入国在留管理局または出張所となります。

申請手数料は6,000円で、オンライン申請であれば5,500円です。許可がおりると新しい在留資格と在留期間が記載された在留カードが交付されます。この許可を得るまでは、原則として新しい業務に従事することはできません。

受け入れ企業側としては、外国人材が円滑に在留資格の変更手続きを行えるよう、必要書類の準備や申請のタイミングについてアドバイスを提供するなど、積極的なサポートが求められるでしょう。

専門性の高い手続きであるため、必要に応じて行政書士などの専門家に相談することも検討しましょう。

※11引用元:在留資格変更許可申請 | 出入国在留管理庁

在留期間が変わるときに必要な申請|在留期間更新許可申請

在留資格「介護」を持つ外国人が転職する際、在留期間の満了が近づいている場合には、「在留期間更新許可申請」が必要です。

この申請は、現在の在留期間が満了する前に行うことで、引き続き日本に滞在して就労することが可能になります。在留資格自体は「介護」のままで、期間のみを更新する手続きです。

申請のタイミングは、在留期間満了日の3ヶ月前から可能となります。余裕をもって申請することが望ましいです。遅くとも満了日の2週間前までには申請しましょう。

特に転職を伴う場合は、新しい職場の情報も含めた申請となるため、さらに時間的余裕を持った計画が必要でしょう。

必要書類としては、以下のとおりです。※12

在留期間更新時に必要なもの

  • 在留期間更新許可申請書
  • 写真
  • パスポート
  • 在留カード
  • 転職先との雇用契約書
  • 転職先の会社概要(登記簿謄本など)
  • 給与証明書

特に転職に伴う更新の場合は、前職の離職理由や転職の経緯を説明する資料を求められることもあります。転職による無職期間が長い場合は、その間の生活費の証明や転職活動の記録なども準備しておくと良いでしょう。

申請手数料は6,000円で、申請先は住居地を管轄する地方出入国在留管理局または出張所となります。オンライン申請であれば5,500円となります。

審査には通常2〜3週間程度かかりますが、転職を伴う場合や繁忙期には時がかかることもあるため、計画的な申請が重要です。

在留期間更新許可申請中も、現在の在留期間内であれば通常通り就労することができます。また、在留期間が満了した後も、申請中であれば許可が下りるまでの間は、現在と同じ条件で日本に滞在することが認められています。

ただし、この「みなし期間」中に転職先での就労を開始することはできません。新しい職場での就労は、原則として更新許可を得てからとなっています。

※12引用元:在留期間更新許可申請 | 出入国在留管理庁

働くときに必要な確認|就労資格証明書の確認

在留資格「介護」を持つ外国人材が転職する際、新たな雇用主は「就労資格証明書」の確認を行う必要があります。

これは、その外国人が合法的に就労できる在留資格を持っているかを確認するためのものです。この確認は法律で義務付けられており、違反した場合は罰則の対象となる可能性があるため、受け入れ企業側も十分な注意が必要です。 

就労資格の確認方法としては、主に在留カードの確認が基本となります。在留カードには、在留資格や在留期間、就労制限の有無などが記載されています。

在留資格「介護」の場合、原則として介護業務に従事する限り就労制限はありませんが、在留期間には注意が必要です。期間満了が近い場合は、前述した在留期間更新許可申請の状況も併せて確認しましょう。

不明な点がある場合は、出入国在留管理局に「就労資格証明書」の交付を申請することも可能です。この証明書があれば、その外国人がどのような就労が認められているのかを正確に把握することができます。

特に複雑なケースや初めて外国人を雇用する場合は、この証明書を取得することで安心して雇用手続きを進めることができるでしょう。

変更届の提出が必要なケースとは

在留資格「介護」を持つ外国人材が転職する際、一定の条件下では「所属機関等に関する届出」を出入国在留管理庁に提出する必要があります。

この届出は、就労先の変更を政府に報告するための重要な手続きです。届出の期限は変更があった日から14日以内と定められており、この期間内に適切に手続きを行うことが求められます。

届出が必要となる主なケースとしては、以下のような状況が挙げられます。※13

所属機関等に関する届出が必要なケース

  • 介護施設や事業所など就労先が変わった場合
  • 同じ法人内での異動であっても就労場所や雇用契約の内容が変わる場合
  • 雇用契約が終了(退職)した場合
  • 新たな雇用契約を締結(転職)した場合
  • 雇用先の名称変更や合併、分社化などの組織変更があった場合

届出方法は、出入国在留管理庁のウェブサイトからオンラインで行うことができます。「外国人在留支援センター(FRESC)」のポータルサイトを通じて電子申請も可能です。

また、紙の届出用紙を使用して郵送や窓口提出を行うこともできます。必要書類としては、届出書のほか、在留カードの写し、雇用契約に関する資料などが一般的です。

特に注意すべき点として、この届出を怠ると在留資格取消事由となる可能性があります。出入国管理及び難民認定法では、正当な理由なく届出をしなかった場合、在留資格が取り消される可能性があると定められています。

これは外国人本人にとって非常に大きなリスクとなるため、受け入れ企業側も手続きのサポートを積極的に行うことが望ましいでしょう。

また、届出内容に虚偽があった場合も同様に在留資格取消事由となります。正確な情報を提供することはもちろん、転職や雇用条件の変更について透明性を確保することが重要です。

外国人材の円滑な受け入れと安定した就労環境の提供のためには、こうした法的手続きの遵守が基盤となります。

※13引用元:所属(契約)機関に関する届出(高度専門職1号イ又はロ

おすすめの転職タイミングとビザ審査中の対応について

在留資格「介護」を持つ外国人材が転職を考える際、そのタイミングは非常に重要です。

最もおすすめできるのは、現在の在留期間の満了日まで少なくとも3ヶ月以上の余裕がある時期です。この時期であれば、新しい職場への適応期間を確保しつつ、必要な在留期間更新手続きも計画的に進めることができます。

逆に避けるべきタイミングは、在留期間満了直前の転職です。審査に時間がかかり、最悪の場合は在留資格の空白期間が生じる可能性もあります。

また、転職活動自体は在留期間中であれば自由に行うことができますが、実際の就労開始は適切な手続きを経てからになります。

特に在留資格変更を伴う場合は、許可を得るまでは新しい職場での就労を開始できないため、無収入期間への対策も必要です。計画的な貯蓄や、転職先との入職日の調整などを事前に検討しておくとよいでしょう。

ビザ審査中の対応としては、まず審査状況の確認を定期的に行うことが大切です。出入国在留管理局に問い合わせることで、審査の進捗状況を確認することができます。

審査に予想以上に時間がかかる場合は、その理由を確認しましょう。追加書類の提出などの対応が必要なこともあります。

原則として、新しい職場での就労開始は許可が下りてからですが、在留期間更新申請中でも就労可能なケースもあります。それは、同じ在留資格「介護」のままでの転職です。この点については、出入国在留管理局に個別に確認することをおすすめします。

受け入れ企業側としては、こうした状況を理解し、柔軟な入職日の設定や、審査中のコミュニケーション維持など、外国人材が安心して転職プロセスを進められるようサポートすることが重要です。

特に言語面での不安がある場合は、行政手続きのサポートや通訳の手配なども検討すべきでしょう。このような配慮が、結果として優秀な人材の獲得と定着につながるでしょう。

転職受け入れ時に必要な手続きや準備とは【受入企業編】

外国人介護福祉士を受け入れる企業側にも、様々な手続きや準備が必要です。法的な手続きはもちろん、職場環境や生活環境の整備など、多岐にわたる準備を計画的に進めることが、外国人材の円滑な受け入れと定着につながります。

特に初めて外国人材を受け入れる施設では、様々な不安や疑問があるかもしれませんが、適切な準備と対応により、むしろ職場の活性化や多様性の促進につながる貴重な機会となるでしょう。

受け入れ準備において特に重要なのは、外国人材を単なる「労働力」としてではなく、「チームの一員」として迎え入れる姿勢です。言語や文化の違いはあっても、同じ介護の専門家として尊重し、互いに学び合える関係性を構築することが、長期的な雇用関係の基盤となるでしょう。そのためには、既存のスタッフへの事前説明や研修も欠かせません。

また、外国人材の受け入れは、単に人材不足の解消だけでなく、組織全体の国際化や多様性の促進、新たな視点の導入など、様々なプラスの効果をもたらす可能性があります。こうしたポジティブな側面にも着目し、組織全体で歓迎する雰囲気を作ることが大切です。

手順①ハローワークへの届け出をする

在留資格「介護」を持つ外国人材を転職で受け入れる際、最初に行うべき重要な手続きがハローワークへの届け出です。

この手続きは、外国人雇用状況届出制度に基づくもので、すべての事業主に義務付けられています。外国人を雇用する場合、雇入れ日から2週間以内に事業所を管轄するハローワークに届け出なければなりません。

届け出には「外国人雇用状況届出書」を使用します。この書類には、以下の基本情報を記載します。※14

外国人雇用状況届出書に記載する内容

  • 雇用する外国人の氏名
  • 生年月日
  • 性別
  • 国籍・地域
  • 在留資格
  • 在留期間
  • 資格外活動許可の有無など

特に在留資格「介護」の場合は、その資格が介護福祉士の国家資格を基にしているため、資格情報も正確に記載しましょう。

ハローワークへの届け出は対面での提出だけでなく、電子申請システム「e-Gov」を利用することも可能です。電子申請では、複数の外国人従業員をまとめて届け出ることができるため、業務効率化につながるでしょう。

ただし、電子申請を行うためには事前に利用者登録が必要となりますので、初めて利用する場合は余裕をもって準備を進めることをお勧めします。

在留資格「介護」の転職者を雇用する際の届け出は、新規雇用と同様の扱いとなります。以前の雇用先からの転職情報は自動的に連携されないため、新たな雇用者として届け出を行う必要があります。

また、届け出の際には在留カードの確認も忘れてはなりません。在留カードには、在留資格や在留期間などの重要な情報が記載されているため、これらの情報が「介護」の資格要件を満たしているかを確認しておくことが重要です。

※14引用元:「外国人雇用状況の届出」について |厚生労働省

手順②受け入れに当たって必要な準備【職場環境】

在留資格「介護」を持つ外国人材の転職を受け入れる際には、職場環境の整備が非常に重要です。転職者は以前の職場での経験を持ってくるため、新規採用者とは異なるアプローチが必要になります。

職場におけるメンター制度の導入が効果的です。日本の介護現場に既に慣れている先輩外国人スタッフや、外国人との協働経験が豊富な日本人スタッフに、新たに転職してきた外国人材のサポート役をしてもらうことで職場への適応を促進できるでしょう。メンターは業務上の疑問だけでなく、職場の文化や暗黙のルールなどについても指導する役割を担います。

職場での研修プログラムも重要です。転職者であっても、各施設によって介護の方針やケアの方法は異なります。基本的な業務手順や施設独自のケア方針について、わかりやすく体系的に学べる研修プログラムを用意しましょう。

その際、視覚的な教材や多言語対応のマニュアルを活用することで、言語の壁を超えた効果的な研修が可能になります。

さらに、文化的配慮も欠かせません。宗教上の習慣や食事制限、祝祭日などに対する配慮は、外国人材が働きやすい環境づくりの基本です。例えば、礼拝の時間を確保したり、多様な食事の選択肢を用意したりするなどの対応が考えられます。

こうした配慮は、転職者にとって「この職場は自分を尊重してくれる」という安心感につながり、定着率向上につながるでしょう。

職場環境整備のもう一つの重要な側面は、キャリア開発支援です。在留資格「介護」を持つ外国人材は、既に介護福祉士の国家資格を持っています。さらなるスキルアップやキャリア形成を支援するための体制を整えることで、モチベーション維持や長期的な人材定着を促進できます。ケアマネージャーなど上位資格の取得支援や、専門分野のスキル向上につながる研修機会の提供が効果的でしょう。

手順③受け入れに当たって必要な準備【住環境】

在留資格「介護」を持つ外国人材の転職受け入れにおいて、住環境の整備は職場環境と同様に重要です。安定した住まいがなければ、彼らが安心して働き続けることはできません。

転職の場合、前職で住居を提供されていた外国人材は、転職と同時に住居も変える必要が生じます。住居支援の第一歩は、適切な物件探しのサポートです。

日本の賃貸契約は外国人にとって複雑で難解なプロセスです。言語の壁に加え、保証人や礼金・敷金といった日本独特の制度が理解の妨げになることがあります。そのため、不動産業者との交渉を代行したり、契約書の翻訳や説明をしたりするなどのサポートが求められます。

さらに、契約時の保証人引受や初期費用の立替・補助など、経済的な支援策も検討すべきでしょう。多くの外国人材は来日直後や転職直後は資金に余裕がないため、住居確保のための初期費用が大きな負担となります。

企業による家賃補助や社宅の提供は、彼らの経済的安定につながる重要な支援です。地方自治体によっては外国人向けの住宅保証制度や補助金を設けているケースもあるので、これらの制度を活用する方法もよいでしょう。

住居が決まった後も、生活基盤の整備支援は続きます。電気・ガス・水道などのライフラインの契約手続きや、インターネット接続の設定など、日本での生活を始めるために必要な手続きのサポートが求められます。また、近隣の医療機関や買い物施設、公共交通機関の利用方法などの生活情報の提供も必要です。

特に重要なのが、緊急時の対応体制の構築です。災害時の避難場所や連絡方法、医療緊急時の対応手順などを、外国人材が理解できる言語で説明しておきましょう。

地震や台風など、母国では経験したことがない災害に対する知識や対処法を伝えることは、彼らの安全を守るための基本的な責任となります。これらの情報を多言語で記載した緊急連絡カードを作成し、配布することも効果的です。

地域コミュニティとのつながりも住環境整備の重要な側面です。例えば以下のようなコミュニティや団体と連携することで、外国人材の孤立を防ぎ、日本社会への適応を促進できるでしょう。

外国人材が交流できるコミュニティ

  • 地域の国際交流イベント
  • 外国人支援団体
  • 同国出身者のコミュニティ

こうした地域とのつながりは、彼らの生活の質を高め、結果的に仕事のパフォーマンス向上にもつながります。

マニュアルは新しく必要?

在留資格「介護」を持つ外国人材の転職受け入れにあたり、基本的なマニュアルはあったとしても、外国人材向けの特化したマニュアルの新規作成または既存マニュアルの改訂が望ましいと考えます。

なぜなら、言語・文化的背景が異なる外国人材にとって、日本人向けに作成された通常のマニュアルでは理解が困難な場合が多いからです。

効果的なマニュアル作成のポイントは「わかりやすさ」と「具体性」です。

専門用語や業界特有の表現を多用せず、簡単な日本語または多言語対応のマニュアルがあるとよいでしょう。また、文章だけでなく、図表やイラスト、写真などの視覚的要素を積極的に取り入れると理解しやすくなります。

例えば、入浴介助の手順を説明する際には、文章による説明だけでなく、各ステップを写真で示すことで、より直感的に理解できます。

マニュアルの内容においては、日本の介護現場特有の慣習や考え方についても丁寧に解説する必要があります。

例えば、「利用者のプライバシーへの配慮」や「自立支援の考え方」など、日本の介護現場で重視される価値観は国によって異なることがあります。これらの基本的な考え方から具体的なケアの方法まで、段階的に説明することが大切です。

また、転職者特有の課題に対応するため、前職との業務の違いを明確にしたセクションを設けることも効果的です。施設によって介護の方針や手順は異なるため、「当施設では〇〇のケースではこのように対応します」といった形で、具体的な違いを示すことで混乱を防ぐことができます。

さらに実践的なアプローチとしては、外国人材が既に働いている施設では、彼らの意見を取り入れてマニュアルを作成または改訂をするとよいでしょう。実際に日本の介護現場で働く外国人の視点からは、日本人が気づかない「分かりにくいポイント」や「説明が必要な事項」が見えてきます。彼らの経験を活かすことで、より実用的なマニュアルになるでしょう。

マニュアルの形式についても検討が必要です。紙媒体のマニュアルだけでなく、動画マニュアルやスマートフォンアプリなど、デジタル形式のマニュアルも効果的です。

特に若い世代の外国人材は、紙のマニュアルよりも動画やアプリの方が親しみやすく、理解しやすい傾向があります。こうしたデジタルツールを活用することで、より効果的な教育・研修が可能になるでしょう。

ハローワークへの届け出を怠った場合はどうなる?

在留資格「介護」を持つ外国人材の転職受け入れにおいて、ハローワークへの届け出は法的義務であり、これを怠った場合は深刻な罰則が科される可能性があります。具体的には、「外国人雇用状況の届出」を怠った事業主に対しては、30万円以下の罰金が課せられます。※14

罰金だけでなく、届け出義務違反は事業所の社会的信用にも大きな影響を与えるでしょう。特に介護施設のような許認可事業では、法令違反の記録が今後の事業運営や行政との関係に悪影響を及ぼす可能性があります。

さらに、外国人雇用に関する法令違反が明るみに出ると、新たな外国人材の採用が困難になったり、既存の外国人従業員の信頼を失うリスクも考えられるでしょう。

また届け出義務違反が発覚した場合、是正指導が行われます。この指導に従わない場合は、さらに厳しい処分につながる可能性があります。例えば、事業所名の公表といった社会的制裁です。事業所名の公表は、直接的な罰金以上に事業運営に深刻なダメージを与えるでしょう。

さらに、届け出義務違反は関連する他の法令違反のシグナルとみなされることがあります。外国人雇用に関する基本的な届け出を怠っている事業所は、労働基準法や入管法の他の規定も遵守していない可能性が高いとみなされ、関係当局による立ち入り調査や監査の対象となりやすいです。

届け出義務を適切に行うためには、人事担当者や施設管理者が外国人雇用に関する法令について正確な知識を持つことが不可欠です。

定期的な研修や情報更新を通じて、関連法規の理解を深め、手続きの漏れがないようにしましょう。特に、複数の施設を運営している法人では、各施設の責任者に届け出義務の重要性を周知徹底することが大切です。

また、届け出のタイミングも重要です。外国人を雇い入れた日または離職した日から2週間以内に届け出を行う必要があります。

この期限を守るためには、採用決定から雇用開始までの間に十分な準備期間を設け、必要書類を事前に揃えておきましょう。期限直前になって慌てて対応すると、書類の不備や提出漏れなどのミスが生じやすくなります。

※14引用元:「外国人雇用状況の届出」について |厚生労働省

配置基準の注意点について

在留資格「介護」を持つ外国人材を転職で受け入れる際、介護施設における配置基準に関する注意点を理解しておくことは重要です。

介護保険法では、各種介護サービスごとに人員配置基準が定められています。これを満たさなければ介護報酬の減算や、指定取り消しといった厳しい処分を受ける可能性があります。

まず、在留資格「介護」保持者は介護福祉士の国家資格を有しているため、介護職員として配置基準に算入することができます。

これは、技能実習生や特定技能外国人とは異なる点であり、正規の介護福祉士として人員配置に含めることが可能です。

しかし、言語面でのハンディキャップがある場合は、即戦力として期待しすぎないよう、現実的な業務分担を考慮する必要があります。

特に注意が必要なのは、夜勤帯の配置です。夜勤は利用者の安全管理や緊急時対応など、より高度な判断が求められる場面が多く、コミュニケーション能力が十分でない場合は困難が生じる可能性があります。

そのため、外国人材を夜勤に配置する際は、日本語能力や業務習熟度を十分に評価した上で判断するべきでしょう。また、夜勤導入前に十分な研修期間を設け、緊急時の対応手順を繰り返し確認することも重要です。

さらに、サービス提供責任者や計画作成担当者などの役職への登用についても考慮が必要です。こうした役職は、利用者や家族との詳細なコミュニケーションや複雑な書類作成など、高度な日本語能力を要する業務が含まれます。

在留資格「介護」保持者であっても、こうした役職に就くためには十分な日本語能力と業務経験が必要です。役職登用を検討する際は、段階的な育成計画を立て、サポート体制を整えながら進めることをお勧めします。

また、配置基準を満たすためだけに外国人材を雇用するという考え方は避けるべきです。外国人材も一人の専門職として尊重し、その能力を最大限に発揮できる環境を整えることが重要です。

例えば、母国での経験やスキルを活かした業務分担や、言語能力を活かした多言語対応の利用者サポートなど、外国人材ならではの強みを活かす工夫を考えましょう。

介護現場における加算や減算に関わる配置要件は、頻繁に改定されます。最新の情報を常に把握しておきましょう。最新の情報を把握する方法は以下のとおりです。

配置要件の変更を把握する方法

  • 地域の介護保険事務所に相談
  • 都道府県の担当部署に相談
  • 介護関係の専門セミナーに参加する

これらを活用し、正確な理解を深めておきましょう。こうした努力は、結果的に適切な人員配置と質の高いサービス提供につながるのです。

介護ビザ・転職に関するよくある質問(FAQ)

在留資格「介護」を持つ外国人材の転職受け入れに関して、多くの施設や企業が共通して抱く疑問があります。ここでは、特に頻度の高い質問とその回答をまとめました。

これらの情報を理解することで、スムーズな受け入れ体制の構築が可能になるでしょう。

在留資格「介護」は比較的新しい在留資格であるため、正確な情報を得ることが重要です。誤った理解に基づいた対応は、後々トラブルの原因となりかねません。

以下のFAQを参考に、外国人材との協働による介護現場の発展を目指していただければ幸いです。

Q.ビザ審査中に転職しても大丈夫?

A.審査中の転職自体は法的に可能ですが、いくつかの重要な注意点があります。

まず、在留期間更新申請中の場合、申請時点での所属機関(雇用先)から変更が生じると、更新許可の判断に影響を与える点に注意が必要です。入国管理局では、申請時の情報に基づいて審査を行うため、審査期間中に状況が変わると、再度情報の確認が必要になります。その場合、審査期間も長引くでしょう。

転職を予定している場合は、新しい雇用先の情報を速やかに入国管理局に届け出なければなりません。この届け出には「所属機関等に関する届出」という専用の書類を使用します。

審査期間の延長は、転職を希望する外国人材も、受け入れを検討する企業にも、今後の見通しが立てにくくなるでしょう。

また、審査中の転職が与える影響については、転職の理由や新しい職場の条件が重要な要素となります。

例えば、より専門性を活かせる職場への転職や、キャリアアップにつながる転職であれば、審査に好影響を与える可能性があります。逆に、短期間での頻繁な転職や、明確な理由のない転職は、安定性や継続性を疑問視される可能性があるでしょう。

受け入れ企業側としては、審査中の外国人材を雇用する際、いくつかの準備が必要です。まず、当該外国人が法に則って就労できる状態であることを確認しましょう。

在留期間更新申請中の場合、申請時に「申請中」の証明書(シール)が旅券に貼付されます。このシールがあれば、たとえ在留期間が満了していても、結果が出るまでは以前と同じ活動(就労)が可能です。この点を確認し、書類として保管しておきましょう。

また、転職者が審査中であることを念頭に置いた雇用契約の締結も検討すべきです。例えば、「在留資格の更新が許可されることを条件とする」といった条項を契約に含めることで、万が一不許可となった場合のリスクを軽減できます。こうした措置は、双方にとって不測の事態に備える意味で有効です。

Q.転職による在留資格変更のタイミングは?

A.在留資格「介護」を持つ外国人材が転職する際、在留資格の変更手続きは必要ありません

在留資格「介護」は特定の雇用先に縛られない「資格系」の在留資格であるため、雇用先が変わっても資格自体の変更は不要です。これは「技能実習」や「特定技能」のように特定の雇用先との契約に基づく在留資格とは異なる点です。しかし、雇用先の変更を適切に届け出る必要があります。

雇用先変更の届け出は、転職から14日以内に「所属機関等に関する届出」を入国管理局に提出します。この届け出を怠ると、在留資格取消しの対象となる可能性があるため、必ず期限内に手続きを完了させる必要があります。受け入れ企業側としても、外国人材に対してこの手続きの重要性を伝え、必要に応じて手続きをサポートすることが望ましいでしょう。

また、転職のタイミングと在留期間の関係にも注意が必要です。在留期間の満了が近い時期に転職する場合、在留期間更新申請と雇用先変更の届け出が同時期に必要となります。

この場合、更新申請時には新しい雇用先の情報を提出することになりますが、転職先が決まっていない「空白期間」がある場合は注意が必要です。入国管理局は継続的な就労状況を重視するため、長期の空白期間がある場合は更新許可に影響する可能性があります。

転職を受け入れる企業側として注意すべき点は、在留期間の残存期間です。在留期間の満了が迫っている外国人材を雇用する場合、すぐに更新手続きが必要となります。更新申請には、新しい雇用先での雇用契約書や給与証明書などが必要となるため、これらの書類を速やかに準備する必要があります。

特に、前職との間に空白期間がある場合は、その理由や生活費の出所などについても説明を求められる可能性があるため、事前に確認しておくとよいでしょう。

在留資格「介護」の更新については、基本的に「継続的な就労実績」と「安定した雇用見込み」が重視されます。頻繁な転職や長期の未就労期間がある場合は、更新審査に影響する可能性があります。受け入れ企業としては、長期的な雇用計画を示すことで、外国人材の在留期間更新に貢献できるでしょう。

最後に、在留資格「介護」の特性として、介護福祉士の資格を維持していることが継続的な在留の条件となります。万が一、何らかの理由で介護福祉士の資格を喪失した場合(例:登録の抹消など)、在留資格の基盤が失われるため、他の在留資格への変更が必要となります。転職受け入れ時には、こうした基本的な条件も確認しておくことが重要です。

Q.ビザ更新時に必要な書類とは?

A.ビザ更新時に必要な書類は、外国人材本人が準備するものと企業側が準備するものがあります。

外国人材、本人の準備する書類は以下のとおりです。※15

ビザ更新時に外国人材本人が準備するもの

  • 在留期間更新許可申請書
  • 雇用契約書の写し
  • 介護福祉士登録証の写し

「在留期間更新許可申請書」は出入国在留管理庁のウェブサイトからダウンロード可能であり、外国人本人の基本情報や勤務先の情報などを記入します。

「雇用契約書の写し」は、新たな雇用先との契約内容を示す重要な書類として、労働条件や給与などが明確に記載されているものを準備します。

「介護福祉士登録証の写し」も必須です。在留資格「介護」の根拠となる資格証明であるため、必ず確認しておきましょう。

受け入れ企業の安定性や事業実態を証明するため、以下のような書類も求められます。

受け入れ企業が準備するもの

  • 役職員名簿
  • 会社の決算報告書
  • 住民税の納税証明書
  • 社会保険料の納付状況
  • 具体的な介護業務内容を示す資料(勤務表や業務マニュアルなど)

これらは外国人を適切に雇用できる環境にあることを示すために重要です。また、「住民税の納税証明書」や「社会保険料の納付状況」などの書類も、正規雇用されていることを示す証拠として必要となることがあります。

特に注意すべき点として、在留資格「介護」は介護業務を行うことを前提とした資格であるため、転職先でも介護業務に従事することが条件となります。そのため、「具体的な介護業務内容を示す資料(勤務表や業務マニュアルなど)」を準備し、適切な業務に従事することを証明することも重要です。

これらの書類は、単に形式的に提出するだけでなく、内容に一貫性があり、実態を正確に反映したものである必要があります。

※15引用元:在留資格「介護」 | 出入国在留管理庁

Q.介護ビザ でアルバイトはできる?

A.在留資格「介護」の本来の活動範囲外での就労を行うためには、「資格外活動許可」を取得する必要があります。

資格外活動許可は、本来の在留資格で認められた活動以外の就労を限定的に認める制度です。在留資格「介護」の場合、介護福祉士としての業務が本来の活動となるため、それ以外の仕事、例えば飲食店でのアルバイトなどを行う場合には、この許可が必要となります。許可が得られれば、原則として週28時間以内のアルバイトが可能となります。

しかし、ここで重要なのは、資格外活動がメインの活動を阻害してはならないという点です。つまり、アルバイトによって本来の介護業務に支障をきたすことは認められません。

企業側としては、外国人従業員がアルバイトを希望する場合、本業である介護業務に十分に従事できる勤務体制を確保した上で、必要に応じて資格外活動許可の取得をサポートする姿勢が望ましいでしょう。

また、注意すべき点として、在留資格「介護」を保持している人が介護関連の別の施設でアルバイトをする場合でも、資格外活動許可が必要となる可能性があります。

これは、在留資格が特定の雇用主との契約に基づいて付与されている場合が多いためです。そのため、副業を検討する際には、事前に出入国在留管理局に確認することが推奨されます。

企業側は、外国人従業員の副業・アルバイトに関する方針を明確にしておくことが重要です。労働時間の管理や健康管理の観点から、就業規則などで副業・兼業に関するルールを定めておくことで、外国人材を含む全従業員が安心して働ける環境を整えることができます。

場合によっては、企業内でのシフト調整や追加勤務の機会を提供することで、外国人材の経済的ニーズに応える方法も検討できるでしょう。

在留資格「介護」の転職を受け入れる時の準備を整えよう

在留資格「介護」を持つ外国人材の転職を受け入れる際には、法的手続きだけでなく、職場環境や受け入れ体制の整備も重要です。外国人材が円滑に職場に適応し、その能力を最大限に発揮できるよう、包括的な準備が求められます。

まず、受け入れの前提として、施設や事業所の受け入れ方針を明確にすることから始めましょう。単に人手不足を補うための一時的な対応ではなく、長期的な人材育成の視点を持つことが重要です。

在留資格「介護」を持つ人材は、すでに介護福祉士という専門資格を有しているため、その専門性を尊重し、キャリアパスを提示できる体制を整えることが望ましいでしょう。

次に、職場における多文化共生の環境整備です。日本人スタッフに対して、外国人材との協働に関する研修を行うことで、文化的背景の違いによる誤解やコミュニケーション上の障壁を減らすことができます。

また、宗教や食習慣などへの配慮も必要に応じて検討しましょう。例えば、礼拝の時間や場所の確保、食堂メニューの多様化などは、比較的導入しやすい配慮の一つです。

さらに、外国人材特有のニーズに対応するサポート体制も重要です。生活面での相談に乗れる担当者の配置や、必要に応じた通訳サービスの利用、行政手続きのサポートなど、仕事以外の面でも安心して生活できる環境を整えることで、長期的な定着につながります。

特に転職者の場合、前職での経験や習慣との違いに戸惑うことも少なくないため、丁寧なオリエンテーションと継続的なフォローアップが求められます。

また、介護現場特有の専門用語や記録の書き方など、日本語の運用能力を向上させるための支援も検討すべきでしょう。

すでに一定の日本語能力を有している人材であっても、職場によって使用される専門用語や表現には違いがあります。業務マニュアルをわかりやすい日本語で作成する、定期的な日本語学習の機会を提供するなどの取り組みが効果的です。

さらに、キャリア形成支援の観点からは、介護福祉士としてのスキルアップや専門性の向上を支援する仕組みを整えることも大切です。専門研修への参加機会の提供や、資格取得支援制度の導入などを通じて、外国人材のモチベーション維持とスキル向上を同時に実現することができます。

最後に、適切な評価・報酬体系の構築も忘れてはなりません。在留資格「介護」を持つ人材は、専門的・技術的分野の人材として位置づけられています。そのスキルや貢献に見合った評価と報酬を提供することで、人材の定着と満足度の向上につながるでしょう。同時に、キャリアパスを明確に示し、将来の成長機会を提示することも重要です。

以上のような総合的な受け入れ準備を整えることで、在留資格「介護」を持つ外国人材が持つ潜在能力を最大限に引き出し、互いに成長できる職場環境を構築することができます。それは結果として、サービスの質の向上や組織の活性化にもつながる投資となるでしょう。