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外国人介護士の給料設定はどうする?在留資格ごとに給料が違う理由と待遇の重要性

日本の介護現場では深刻な人材不足が続いており外国人介護士の受け入れが年々増加しています。しかし、外国人介護士を雇用する際には、在留資格ごとに異なる制度や給料体系、雇用条件を理解することが重要です。

本記事では、外国人介護士の給料に焦点を当て、各在留資格における給与水準や制度の違い、雇用時の注意点などを詳しく解説します。適切な給料設定と待遇は、外国人介護士の定着率を高め、質の高い介護サービスを提供するための重要な要素となります。介護人材の確保に悩む事業者の皆様にとって、無駄なコストを抑えつつ、良好な雇用関係を構築するための参考になれば幸いです。

株式会社BKUは、ミャンマーの送り出し機関と日本国内の登録支援機関を運営する人材紹介会社です。ミャンマー人材の文化・言語などの理解はもちろん、外国人材の紹介から採用、入国手続きまで一貫してサポートできることが当社の強みです。

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伊勢明敏プロフィール写真

株式会社BKU代表取締役|日本で光学機器メーカーで研究職として4年間従事。その後ミャンマーに移住して、株式会社BKUを創業。9年間の在住中では、外国語大学と仏教大学にてミャンマーの言語・文化を専門的に学習。ミャンマーの言語・文化・制度すべてに精通した人材紹介から、累計400名以上の技能実習生・特定技能人材の送り出し実績を持つ。

目次

外国人介護士「技能実習生」とは?現状と背景を解説

 

外国人介護士「技能実習生」とは?

介護分野における人材確保は、日本の高齢社会が直面する最も深刻な課題の一つとなっています。人口減少と高齢化が同時進行する中、国内の人材だけでは介護需要をカバーできない状況に陥っているのです。

こうした背景から政府は外国人介護士の受け入れ体制を整備し、その一環として「技能実習制度」を介護分野にも適用することにしました。これにより、外国人が日本の介護施設で働きながら技能を習得できるようになったのです。(※1)

しかし、単なる労働力不足の解消策として位置づけるのではなく、日本の介護技術を習得してもらい、母国の高齢化対策に貢献してもらうという本来の目的を忘れてはなりません。

※1引用元:厚生労働省 社会・援護局「技能実習「介護」における固有要件について

日本における介護人材不足の現状

日本の介護業界が直面している人材不足は、もはや危機的な状況にあると言えるでしょう。厚生労働省の推計によると、2025年には約32万人、2040年には約69万人の介護人材が不足するとされています。

この深刻な状況の背景には、いくつかの要因が存在します。

介護職の人材不足の要因

  • 急速な高齢化の進行
  • 少子化による労働人口の減少
  • 介護職の離職率の高さ
  • キャリアパスが不明確
  • 社会的評価が低い

団塊の世代が全て75歳以上となる2025年以降、介護需要はさらに増大すると予測されている一方で、少子化による労働人口の減少も深刻であり、介護業界だけでなく様々な業界で人材の奪い合いが起きています。

また、介護職の平均離職率は約15%と全産業平均の約10%よりも高い水準にあることも問題です。その主な理由としては、身体的・精神的負担の大きさに比べて給与水準が低いことが挙げられます。

このような複合的な要因が介護人材不足に拍車をかけている中、注目されているのが外国人介護士の受け入れです。国内の人材だけでは対応しきれない現状を踏まえ、政府は様々な在留資格を整備し外国人材の活用を推進しています。

外国人介護士の受け入れ制度について

外国人介護士の受け入れ制度はここ数年で大きく整備されてきました。

現在、介護分野で外国人を雇用する主な在留資格としては以下の4つです。

介護分野の主な在留資格

  • 「技能実習」
  • 「特定技能」
  • 「EPA(経済連携協定)候補生」
  • 「介護」
  • 「技能実習制度」

2017年11月から介護分野への適用が始まりました。この制度の本来の目的は、開発途上国への技術移転を通じた国際貢献です。技能実習生は最長5年間、日本の介護施設で実習しながら技能を習得し、帰国後はその技能を母国で活かすことが期待されています。受け入れには、日本語能力試験N4以上という条件がありますが、実際の業務では利用者とのコミュニケーションが必要なため、入国時からある程度の日本語能力が求められます。

  • 「特定技能制度」

2019年4月に始まった比較的新しい制度です。この制度は人材不足への対応を目的としており、即戦力となる外国人材の受け入れを促進しています。介護分野での特定技能(1号)は最長5年間の在留が可能で、日本語能力試験N4以上と介護技能評価試験の合格が条件となり、技能実習から特定技能へのキャリアパスも設定されています。

  • 「EPA候補生」

特定の国(インドネシア、フィリピン、ベトナム)との二国間協定に基づく制度で、看護師・介護福祉士の候補者を受け入れるものです。候補者は来日後、日本の国家試験合格を目指して学習・就労します。合格すれば在留期間の更新が可能となり、事実上の永住も視野に入れられます。

  • 「介護」

2017年9月に創設されました。これは介護福祉士の資格を持つ外国人を対象とした制度で、在留期間の更新に制限はなく、永住も視野に入れられます。日本語能力試験N2以上という比較的高い語学力が求められる点が特徴です。

これらの制度はそれぞれ異なる目的や条件を持っていますが、共通しているのは単なる労働力の補充だけでなく、「質の高い介護」の提供を目指している点です。

主な送り出し国と背景

外国人介護士を日本に送り出している主な国々はアジア諸国が中心となっています。

特に、ベトナム、フィリピン、インドネシア、中国、ミャンマーなどからの受け入れが多くなっています。これらの国々が送り出し国として多い背景にはいくつかの要因があります。

アジア諸国が送り出し国として多い理由

  • 母国で働くよりも経済面で安定するから
  • EPA(経済連携協定)の締結国だから
  • 文化的な共通点が多いから

例えば、ベトナムの介護職の月給は約2〜3万円程度と言われており日本での給与は大きな経済的チャンスとなります。彼らの多くは、家族の生活を支えるための送金や将来の起業資金の蓄積などを目的としていることが多いのです。

また、日本はインドネシア、フィリピン、ベトナムとの間でEPAを締結し、看護師・介護福祉士候補者の受け入れを行っており、これらの国々からの介護人材の流入が促進されました。

さらに、アジア諸国は日本と地理的に近く文化的な共通点も多いため、比較的適応しやすいという側面があります。

外国人介護士「特定技能実習生」の受け入れ条件とは?何年働ける?

外国人介護士「特定技能実習生」の受け入れ条件とは?何年働ける?

特定技能制度は2019年4月に創設された比較的新しい制度で、介護分野における人材不足に対応するために導入されました。この制度は即戦力となる外国人材を受け入れることを目的としており、技能実習制度とは異なり最初から労働者として位置づけられている点が特徴です。

「特定技能実習生」受け入れ条件

  • 日本語能力試験N4以上または日本語基礎テスト合格
  • 介護技能評価試験合格

ただし、介護分野の技能実習(第2号)を修了した人は、これらの試験が免除されるというキャリアパスも設定されています。

在留期間は原則1年ごとの更新で通算5年が上限です。

詳細は、「【介護分野】技能実習制度とは?固有要件と受け入れポイントを徹底解説!」をご参照ください。

給料は在留資格ごとで変わる?外国人介護士を採用する4つの在留資格について

外国人介護士を採用する4つの在留資格について

外国人介護士を雇用する際には在留資格によって給料体系や雇用条件が大きく異なります。同じ職場で働いていても在留資格の違いによって受け取る給料に差が生じることもあるため、制度の違いを正確に理解することが重要です。

ここでは、介護分野で外国人を雇用する主な4つの在留資格について、給料を中心に解説します。

また、在留資格によって可能な業務範囲や必要な日本語レベルも異なるため、それらの点も考慮に入れる必要があります。

技能実習生の給料

技能実習制度は、開発途上国への技術移転を目的とした国際貢献の制度です。したがって、技能実習生は厳密には「労働者」ではなく「実習生」という位置づけになります。しかし、実際には日本の労働関連法令が適用され、最低賃金以上の報酬を支払う必要があります。

技能実習生の給料について(※2)

  • 日本人と同等以上であることが求められる
  • 平均月給は約16万円〜18万円程度
  • 地域差があり、都市部ではより高い傾向
  • 実習期間に応じて給料が上がっていくのが一般的

例えば、東京都の最低賃金(2024年10月時点)は1,113円であり、月給に換算すると約17万8,000円(1,113円×8時間×20日)となります。一方、最低賃金が低い地域では、月給が15万円程度になることもあります。

技能実習制度の特徴として、受け入れ先の企業や監理団体が、住居や渡航費などの生活面でのサポートを提供する場合が多い点が挙げられます。住居費が無料または低額で提供されることも多く、実質的な手取り収入はある程度確保されるケースが多いです。ただし、これらの支援内容は受け入れ先によって異なるため契約前に確認が必要です。

※2引用元:厚生労働省|在留資格区分別にみた賃金

特定技能制度(特定技能1号)の給与

特定技能制度は、2019年4月に始まった比較的新しい制度で、人材不足が深刻な分野における即戦力となる外国人材の受け入れを目的としています。介護分野もその対象となっており、「特定技能1号」という在留資格で外国人材を雇用することができます。

特定技能1号の給料について(※3)

  • 日本人と同等以上の給与水準であること
  • 平均月給は約18万円〜20万円程度
  • 地域差があり、都市部ではより高い傾向
  • 転職が可能なため、特定技能人材を確保したい企業は魅力的な給与や待遇を提示する必要がある

実際に、特定技能人材の確保を目的として初任給を日本人よりも高く設定している施設もあります。

また、特定技能1号の外国人材は夜勤や残業などの勤務形態にも対応できるため、シフト編成の自由度が高まります。ただし、適切な割増賃金の支払いや労働時間の管理は厳守する必要があります。

※3引用元:厚生労働省|在留資格区分別にみた賃金

EPA (経済連携協定)候補生の給料

EPA(経済連携協定)に基づく介護福祉士候補者の受け入れは、2008年からインドネシア、2009年からフィリピン、2014年からベトナムとの間で始まりました。この制度は二国間協定に基づく特別な枠組みであり、他の制度と比較していくつかの特徴があります。

EPAの介護福祉士候補者の給料について

  • 一般的に技能実習生や特定技能実習生よりも高く設定される
  • 約18万円〜22万円程度
  • 国家試験に合格して介護福祉士となった後は日本人介護福祉士と同等の約22万円〜25万円程度になることが一般的

EPA候補者の給料が比較的高い理由としては、候補者の多くが母国で看護師などの医療従事者としての経験を持っていることや、来日前に一定の日本語教育を受けていることが挙げられます。

また、EPAの枠組みでは候補者は来日後に日本の介護福祉士国家試験の合格を目指します。試験に合格すれば、「介護」の在留資格に切り替え、無期限に更新が可能になります。試験に合格するまでの在留期間は原則として3〜4年間で、候補者は介護施設で働きながら国家試験の準備をすることになります。

在留資格「介護」

在留資格「介護」は、2017年9月に創設された比較的新しい在留資格です。この資格は、介護福祉士の国家資格を取得した外国人を対象としており、日本の介護現場で専門職として長期的に働くことを想定しています。

在留資格「介護」を持つ外国人の給料について

  • 一般的に他の在留資格よりも高い水準
  • 平均月給は約22万円〜25万円程度
  • 国家資格を持つため、日本人の介護福祉士とほぼ同等の給与水準

この在留資格の大きな特徴は、条件を満たしている限り永続的に日本で働き続けることが可能であり、家族の帯同も認められています。このため、長期的なキャリア形成や生活設計が可能となり、それに見合った給与体系が求められます。

なお、在留資格「介護」への道筋としては、EPA候補者として来日し国家試験に合格する方法や、日本の介護福祉士養成施設を卒業して国家試験に合格する方法などがあります。後者の場合、まずは「留学」の在留資格で来日し、養成施設で学んだ後に資格を取得するという流れになります。

特定技能実習生と技能実習生の違いとは?転職や廃止についてわかりやすく解説

特定技能実習生と技能実習生の違いとは?

外国人介護士を受け入れる制度として「特定技能制度」と「技能実習制度」が存在しますが、名称が似ているため混同されることが少なくありません。両者には目的や条件、労働者の権利など様々な面で重要な違いがあります。

さらに、「特定技能制度は廃止された」という誤った情報が広まることもありますが実際にはそのような事実はありません。

では、これら2つの制度の具体的な違い、転職の可否、最新の制度状況について詳しく見ていきましょう。

「特定技能実習生」と「技能実習生」の違い

正確には「特定技能実習生」という呼称は存在せず、「特定技能(1号)在留資格保持者」と「技能実習生」がそれぞれ別の制度に基づく在留資格です。これらは目的、位置づけ、権利など多くの点で異なります。

特定技能制度

  • 2019年4月に施行
  • 人材不足が深刻な分野で即戦力となる外国人材の受け入れが目的
  • 対象となる外国人は「特定技能1号」という在留資格で滞在
  • 最長5年間働くことができる
  • 同じ業種内であれば転職が可能
技能実習制度

  • 1993年に制度化された制度
  • 本来の目的は開発途上国への技術移転による国際貢献
  • 介護分野が対象となったのは2017年11月から
  • 最長5年間の在留が可能
  • 原則として同一の実習実施者(雇用先)の下で実習を続けなければならない。

両者の大きな違いとして、就労場所の選択と転職の自由があります。

このように、似た名称でも内容が大きく異なる制度であるため、外国人介護士を雇用する際にはそれぞれの制度の特徴を十分に理解し自社のニーズに合った制度を選択することが重要です。

特定技能実習生は転職できる?

特定技能(1号)在留資格保持者(いわゆる特定技能1号)は原則として転職が可能です。

特定技能1号が転職できる背景には、この制度が「労働力不足への対応」を明確な目的としていることがあります。労働市場の流動性を確保することで、より効率的な人材配置を実現するとともに、外国人労働者の権利も保護するという考え方が根底にあるのです。

ただし、転職する場合には一定の手続きが必要となります。具体的には、新しい受け入れ機関との雇用契約を結び、入国管理局への在留資格変更申請などを行う必要があります。

特定技能1号の転職の自由は外国人材にとって大きなメリットですが、雇用する側にとっては人材確保の競争が生じることを意味します。そのため、外国人材が「この職場で働き続けたい」と思えるような環境づくりが求められるのです。

特定技能実習生は廃止された?

「特定技能実習生は廃止された」という情報が一部で広まっていますが、これは事実ではありません。

この誤解が生じた背景には、制度の変更や新設に関する情報が正確に伝わっていないことがあると考えられます。2019年4月に特定技能制度が新設された際、既存の技能実習制度との関係性が複雑であったため両者が統合されたり、どちらかが廃止されたりしたという誤った認識が広まった可能性があります。

実際には、特定技能制度と技能実習制度は並行して存在しており、それぞれ異なる目的と運用方法を持っています。むしろ、両制度は接続するようにデザインされており、技能実習を修了した外国人が次のステップとして特定技能1号に移行するというキャリアパスが想定されているのです。

つまり、「廃止」ではなく「連携」と表現するのが適切でしょう。

【医療実習生】外国人介護士を雇用するメリットとデメリットについて

外国人介護士のメリットデメリット

深刻化する介護人材不足を背景に、外国人介護士の受け入れが進んでいます。

しかし、外国人介護士を雇用することには、様々なメリットとデメリットが存在します。高齢化社会における介護サービスの質と量を確保するためには、これらを正確に理解し適切な対策を講じることが重要です。

本節では、外国人介護士を雇用する際に考慮すべきメリットとデメリットについて、具体的な事例も交えながら詳しく解説していきます。

外国人介護士を雇用するデメリット

外国人介護士の雇用には多くのメリットがありますが、同時に見過ごせないデメリットも存在します。これらの課題を事前に理解し適切な対策を講じることは、持続的な雇用関係を構築する上で不可欠です。

外国人介護士を雇用するデメリット

  • 言語の壁がありコミュニケーションを取るのが難しい
  • 文化や価値観が違う
  • 行政手続きの煩雑さ
  • 教育や指導にコストがかかる
  • 離職のリスクがある
  • スタッフや利用者の中には文化や言語的な問題で抵抗感を示す人もいる

記録業務や申し送り、緊急時の対応など、高度な日本語能力が求められる場面が少なくありません。外国人介護士の日本語レベルに応じて十分な研修期間を設けたり、通訳支援を行ったりする必要があるため、短期的には即戦力にならない可能性も考慮すべきでしょう。

次に、時間感覚や仕事への取り組み方、高齢者に対する考え方など国によって大きく異なることがあります。また、宗教的な慣習(祈りの時間や食事制限など)に配慮する必要が生じるのです。

在留資格の申請や更新、社会保険の手続き、住民登録などの手続きが発生します。特に、入国時や在留資格の更新時には、書類の準備や提出に多くの時間と労力を要します。

また、外国人介護士には日本の介護技術だけでなく、日本の文化や生活習慣や職場でのマナーなども教える必要があります。これらの教育には専門のスタッフや時間、場合によっては予算も必要となります。

特に特定技能の在留資格を持つ外国人介護士は転職が可能であるため、より条件の良い職場へ移ってしまうケースも少なくありません。

さらには、母国の家族との離別によるホームシックや、文化的な孤立感から精神的ストレスを抱え、予想外の帰国に至ることもあります。このような離職は採用や教育にかけたコストを回収できないだけでなく、サービスの質にも影響を及ぼします。

外国人介護士を雇用するメリット

デメリットがある一方で、外国人介護士を雇用することには様々なメリットもあります。これらのメリットを最大限に活かすことで、介護サービスの質の向上や職場環境の改善につながる可能性があると考えられます。

外国人介護士を雇用するメリット

  • 人材不足の解消
  • 多様性がもたらす職場の活性化
  • 経済的メリット
  • 国際貢献
  • 将来的な事業展開の可能性

日本の介護業界は慢性的な人手不足に悩まされており、厚生労働省の推計によれば2025年には約32万人、2040年には約69万人の介護人材が不足するとされています。外国人介護士の受け入れは、この深刻な人材ギャップを埋める重要な手段となるでしょう。

次に、異なる文化や価値観を持つ外国人介護士が加わることで職場に新しい視点や発想が生まれます。例えば、母国での介護経験や知識を活かした独自のケア方法を提案してもらうことで、サービスの質が向上することもあります。

実習生や特定技能の外国人介護士の場合、受け入れ初期段階では給与水準が日本人新人職員と同等か若干低めに設定されることが多いです。もちろん、キャリアの進展に応じて適切な昇給を行うべきですが、初期コストの観点では経営的なメリットがあります。

さらに、国際貢献という側面も考慮に値します。特に技能実習制度は、開発途上国への技術移転を目的とした国際貢献の制度です。日本で培った介護技術や知識を母国に持ち帰ってもらうことで、相手国の高齢化対策に貢献できます。これは企業の社会的責任(CSR)の一環としても評価される取り組みとなるでしょう。

また、将来的な事業展開の可能性も広がります。例えば、外国人介護士が母国に帰国した後も良好な関係を維持することで、将来的に現地での事業展開や人材ネットワークの構築に役立つ可能性があります。

これらのメリットを最大化するためには外国人介護士が働きやすい環境を整え、適切なサポート体制を構築することが不可欠です。

外国人介護士と日本人介護士の雇用条件と給与体系について

外国人介護士と日本人介護士の雇用条件と給与体系について

外国人介護士の雇用に関心をお持ちの事業者にとって、給与設定や雇用形態は重要な検討事項です。在留資格ごとに条件が異なるため適切な理解が必要です。

ここでは、外国人介護士の雇用において押さえておくべき給与と雇用形態のポイントを解説します。

外国人介護士はアルバイトでの雇用は可能?

外国人介護士をアルバイトとして雇用できるかどうかは、その外国人が持つ在留資格によって大きく異なります。

在留資格 アルバイトは可能か
技能実習生 不可
特定技能1号 基本的には不可
EPA候補者 不可
在留資格「介護」 可能
在留資格「留学」 可能(条件あり)

特定技能1号は転職が認められているため正式な雇用契約を結び直すことで、別の介護施設で働くことは可能です。

一方、「留学」の在留資格を持つ外国人留学生については、入国管理局から「資格外活動許可」を取得することで、週28時間以内のアルバイトが可能です。

ただし、どの在留資格であっても労働基準法や最低賃金法などの労働関連法令は当然適用されます。アルバイトであっても、適切な賃金や労働条件を確保する必要があります。

また、社会保険の適用については労働時間や勤務日数に応じて判断されますので法令に従った適切な対応が求められます。

在留資格によってどれほど給料が変わる?

外国人介護士の給料は、在留資格によって大きく異なります。厚生労働省の「在留資格区分別にみた賃金」によると、同じ介護職であっても、在留資格の違いによって月給に2万円から5万円程度の差が生じているのが現状です(※4)。この給料格差を理解することは、適切な人材配置と公平な待遇設計のために不可欠です。

 

在留資格別平均給料

在留資格 平均給料
在留資格「介護」 月額22万円〜27万円程度
EPA候補者 月額20万円〜25万円程度
特定技能1号 月額18万円〜22万円程度
技能実習生 月額16万円〜18万円程度

介護事業者がコスト面だけを考慮して、安価な労働力を求めて技能実習生のみを採用するという選択は、必ずしも最適とは言えません。それぞれの在留資格の特性を理解し、事業所のニーズや将来計画に合わせて、バランスの取れた人材構成を検討することが望ましいでしょう。

例えば、「介護」ビザ保持者を中核人材として配置し、その指導のもとで特定技能や技能実習生を育成するといった形です。

在留資格別の給料差は存在しますが、それぞれの位置づけや期待される役割の違いを踏まえた上で、公平かつ適切な給料設定を行うことが、外国人介護士の定着と育成につながるのです。

※4引用元:厚生労働省|在留資格区分別にみた賃金

外国人介護士の給料は日本人介護士より安い?

外国人介護士の給料が日本人介護士より安いかという問いに対しては、一概に「はい」とも「いいえ」とも言えない複雑な実態があります。法的には、すべての在留資格において「日本人と同等以上の給与水準」が求められています。

特に厚生労働省の「技能実習生の労働条件の確保・改善のために」という指針では、技能実習生に対しても最低賃金以上の報酬支払いが義務づけられており、国籍による差別的取扱いは禁止されています(※5)。

しかし、統計データを見ると外国人介護士の平均給与は、日本人の新人介護士と同程度かやや低い水準にあることが多いです。特に技能実習生や特定技能の場合、基本給は日本人新人介護士とほぼ同等でも、経験や役職に応じた手当が少ないため、総支給額では差が生じることがあります。

ただし、この差は必ずしも国籍による差別というわけではなく、経験年数やスキル、役職の違いによる部分が大きいと考えられます。例えば、来日したばかりの技能実習生が、10年以上のキャリアを持つ日本人介護士と同じ給料を受け取るとは考えにくいでしょう。また、言語面での制約から外国人介護士が担当できる業務範囲が限られる場合もあります。

外国人介護士の給料を考える際の重要な視点は、「同一労働同一賃金」の原則です。同じ仕事内容、同じ責任、同じスキルレベルであれば、国籍に関わらず同等の報酬が支払われるべきです。

外国人介護士と日本人介護士の給料差は、単純な比較ではなく、経験やスキル、担当業務などを踏まえた総合的な視点で評価することが大切です。公正かつ透明性のある給料体系を構築することが、多様な人材が協働する職場づくりの基盤となります。

※5引用元:厚生労働省「技能実習生の労働条件の確保・改善のために」

外国人介護士の給料に影響する5つの要素

外国人介護士の給料に影響する要素

外国人介護士の給料は一律ではなく様々な要因によって大きく変動します。同じ在留資格であっても、職場環境や個人のスキルによって月給に数万円の差が生じることも珍しくありません。介護事業者が適切な給料設定を行うためには、これらの影響要素を正確に理解し、総合的に判断することが重要です。

以下では、外国人介護士の給料に影響する主な5つの要素について詳しく解説します。

職種・業務内容(訪問介護・施設介護など)

外国人介護士の給料を決める重要な要素の一つが職種や業務内容です。介護業界には訪問介護、施設介護、デイサービスなど様々な形態があり、それぞれで求められるスキルや責任範囲が異なります。この違いは当然ながら給料にも反映されるのです。

施設介護(特別養護老人ホームや介護老人保健施設など)

  • 24時間体制のため、夜勤や早朝・深夜勤務が発生し総支給額は比較的高くなる傾向
訪問介護

  • 自宅を訪問してサービスを提供するため、独力で判断・行動する能力が求められる
  • 日本語能力が高く、ある程度の経験を積んだ人材が多く基本給も比較的高めに設定される
デイサービス

  • 日中のみの勤務が基本
  • 夜勤手当などの加算がなく、総支給額としては施設介護よりもやや低くなる

直接介護業務だけでなく記録作成やケアプラン作成など間接業務にも携わる場合は、より高い日本語能力や専門知識が必要となり、それに応じて給料も上昇します。

また、介護補助としての業務が中心なのか、あるいは一人で判断を求められる業務が多いのかによっても責任の重さが異なり給料に影響するでしょう。

外国人介護士を雇用する際には、彼らの言語能力や経験に応じて、適切な職種・業務内容を割り当てることが重要です。コスト管理と人材育成のバランスを取りながら、適切な業務配分と給料設計を行うことが求められます。

地域差・施設の規模による違い

外国人介護士の給料には、地域や施設の規模によって顕著な差が生じます。この地域間格差は、最低賃金の違いや生活コストの差、そして何より地域ごとの人材需給バランスに起因しています。同じ資格や経験を持つ外国人介護士でも、勤務地域によって月給に2万円〜5万円程度の差が生じることは珍しくありません。

地域差による違い

  • 都市部(特に東京、大阪、名古屋など)の外国人介護士の給料は、地方と比較して全般的に高い傾向

      例えば、2023年10月時点の最低賃金は東京都が1,113円で地方では850円前後の県が多い

    →月給に4万円以上の差が生じる可能性も

  • 地方でも住居費補助や生活支援など、給料以外の待遇面が良いところがある

地方では人材不足がより深刻であるため、優秀な外国人介護士を確保するために高い給料を提示するケースも増えています。

特に、過疎地域の介護施設では、外国人材の確保が施設運営の生命線となっており、住居費補助や生活支援など、給料以外の待遇面も含めた総合的な条件で競争力を高めようとする動きが見られます。

施設規模による違い

  • 大規模な介護施設や大手チェーンの運営する施設では基本給は比較的高めに設定されていることが多い

      例えば、従業員100人以上の大規模施設では、月給20万円以上からスタートすることが多い

  • 大規模施設では夜勤や残業の機会も多く総支給額が増加する傾向

一部の施設では、優秀な人材を確保するために積極的な昇給や手当の充実を図る一方、経営難で給料アップが難しい施設では人材流出に悩まされています。

介護事業者としては、単に地域の相場に合わせるだけでなく、自施設の強みを活かした独自の給料・待遇パッケージを設計することが重要です。

例えば、基本給は平均的でも、住居費補助や帰国旅費支援、家族への送金サポートなど、外国人介護士特有のニーズに応える福利厚生を充実させるといった工夫が考えられます。

外国人介護士を雇用する際には自地域や施設の特性を踏まえつつ競合施設の動向も注視しながら、魅力的かつ持続可能な給料設計を行うことが求められます。

外国人介護士の日本語レベルとスキルはどの程度必要なのか

外国人介護士に求められる日本語レベルとスキルは、在留資格によって異なります(※6)

在留資格 日本語レベル
EPA介護福祉士・候補者 ベトナム人:N3程度以上
インドネシア人・フィリピン人:N5程度以上
在留資格「介護」 日本語についての要件はなし
但し、介護福祉士国家試験取得が必要
※養成校ルートで在留資格「介護」を取得する場合、
養成校入学時にはN2相当レベルの日本語能力が求められる
技能実習 N4程度以上
特定技能 N4程度以上

「日本語+介護」の専門的な語彙や表現を理解し、使いこなせることも重要なスキルとなります。

例えば、「バイタルサイン」「体位変換」「嚥下」「褥瘡」といった医療・介護特有の専門用語や、「お召し上がりください」「お手洗いはこちらです」といった丁寧な表現まで習得する必要があります。

介護スキルについては母国での介護経験がある方もいればまったくの未経験者もいます。日本特有の介護技術や考え方(例:自立支援介護)については、来日後に研修を通じて習得していく場合が多いでしょう。

詳細は、「特定技能介護で求められる日本語レベルとスキル向上のための学習法」をご参照ください。

※6引用元:厚生労働省「外国人介護人材の受入れについて」

残業や夜勤はできる?

外国人介護士の残業や夜勤については、在留資格によって規制が異なります(※7)。

在留資格 残業が可能か
EPA介護福祉士・候補者 可能
技能実習 月45時間、年間360時間以内は可能
特定技能1号 可能

ただし、残業や夜勤を行う際には、以下の点に注意が必要です。

  • 労働時間や休憩時間は労働基準法を遵守し、適切な割増賃金を支払うこと
  • 文化的・宗教的な背景により、特定の時間帯や曜日に働けない場合があること
  • 言語面で不安がある場合

例えば、イスラム教徒の場合、1日5回の礼拝時間が必要であり、ラマダン(断食月)中は体力的な配慮が必要です。

さらに、言語面でのハンディキャップがある状態での夜勤は、緊急時の対応に不安が生じる可能性があります。そのため、日本語能力が一定レベルに達するまでは夜勤を控えるか、必ず日本人スタッフと組み合わせるなどの配慮が望ましいと考えられます。

このように、法的には可能であっても個人の状況や能力に応じた柔軟な対応が求められるのが、外国人介護士の残業・夜勤の実態です。コミュニケーションを密にとり、無理のない範囲での労働環境を整えることが長期的な雇用関係構築の鍵となるでしょう。

※7引用元:厚生労働省「技能実習生の労働条件の確保・改善のために」

生活費や送金事情からみる給料の価値

外国人介護士にとっての給料の価値は単に金額だけでなく、日本での生活費や母国への送金事情なども考慮して総合的に判断する必要があります。

多くの外国人介護士は自身の生活費を賄いつつ、家族への仕送りを目的として来日しています。このため、手取り額がどれだけ残るかは重要な関心事となっています。

母国への送金に関しては、例えばフィリピンの看護師の月給が2万円から3万円程度であるのに対し、日本では20万円前後の収入が得られるため、その差は約7倍から10倍になり日本での就労は大きな経済的メリットとなります。

経費 費用

住居費

都市部は月々5万円〜8万円程度

地方は3万円〜5万円程度

食費 2万円〜3万円
光熱費や通信費 1万円〜2万円

多くの介護施設では住居支援(寮の提供や家賃補助)を行っているケースが多く、この場合は生活費の大幅な削減につながります。その他日用品や交際費などを含めると、月々の最低生活費は12万円前後となるでしょう。

また、外国人介護士が直面する経済的課題として、来日時の費用(渡航費、仲介手数料など)の返済があります。特に技能実習生の場合、高額な仲介手数料を支払って来日するケースが報告されており、来日後の数年間はその返済に追われる実態があります。

このような状況を踏まえると、単純な給料額だけでなく住居支援や食事補助、帰国時の渡航費補助など、総合的な待遇パッケージとして検討することが、外国人介護士を雇用する上では重要となります。

外国人介護士の待遇・福利厚生の実態とは?

外国人介護士の待遇・福利厚生

外国人介護士を適切に処遇し長期的な雇用関係を構築するためには、給料だけでなく、包括的な待遇・福利厚生の整備が重要です。日本人スタッフとの公平性を保ちつつ、外国人特有のニーズにも対応した制度設計が求められます。

外国人介護士の待遇

  • 基本給に加えて各種手当(資格手当、処遇改善手当、夜勤手当など)を組み合わせたものが一般的
  • 昇給制度あり
  • 賞与(ボーナス)あり
  • 有給休暇の取得促進や柔軟な勤務形態の提供

実際の現場では、日本語能力の向上や資格取得に連動した昇給システムを導入している施設も増えています。

例えば、N3からN2へのレベルアップで月給1万円アップ、介護福祉士資格取得で3万円アップなど、明確な基準を設けることでモチベーション向上につながります。

また、賞与(ボーナス)についても、日本人スタッフと同等の基準で支給することが望ましいでしょう。一部の施設では、外国人スタッフには賞与を支給しないケースもありますが、これは不公平感を生みモチベーション低下や離職につながる可能性があります。

さらに、外国人介護士が働きやすい環境づくりのために母国の祝日や重要な文化的行事に合わせた休暇取得を認めることは、文化的配慮として高く評価されます。

外国人介護士の福利厚生

  • 健康診断の実施
  • レクリエーション活動の提供
  • 社員旅行や食事会の開催

特に日本文化を体験できるイベントは、日本での生活に馴染むきっかけとなり定着率向上に寄与します。

このように、給料以外の待遇・福利厚生も含めた総合的な処遇パッケージを設計することが、外国人介護士の採用・定着には不可欠となっています。

外国人介護士の社会保険・住居支援・交通費は?

外国人介護士を雇用する際には、社会保険、住居支援、交通費など基本的な福利厚生の適切な提供が法令遵守と人材定着の両面で重要です。

外国人介護士の社会保険

  • 健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険の加入が法的に義務付けられている
  • 技能実習生や特定技能の外国人にも例外はなく、これらの保険に必ず加入させなければならない
外国人介護士の住居支援

  • 寮や社宅の提供:施設が所有または借り上げた寮や社宅を格安で提供する
  • 家賃補助:民間アパートなどを借りる際に家賃の一部を事業所が負担する
  • 入居初期費用の負担:敷金・礼金・仲介手数料など、入居時の初期費用を事業所が負担する

これらの住居支援は実質的な給与アップと同等の効果があり、特に都市部での採用では大きな魅力となります。

ただし、寮や社宅の場合はプライバシーの確保や生活ルールの設定など、適切な管理が求められる点に注意が必要です。

外国人介護士の交通費

  • 通勤手当として支給するのが一般的
  • 公共交通機関を利用する場合は実費支給、自転車や徒歩の場合は距離に応じた手当を支給するケースが多い
  • 遠方から通勤する場合には、通勤時間の短縮のために住居の斡旋を行うなどの対応も必要
その他の支援

  • 来日時の渡航費負担
  • 一時帰国時の渡航費補助
  • 引越し費用の負担など

特に技能実習生や特定技能の場合、3年や5年といった一定期間後の帰国が前提となっているため、帰国時の支援も重要な要素となります。

これらの支援は法定外福利厚生として位置づけられますが、外国人介護士の経済的負担を軽減し安心して働ける環境を整えるための重要な投資と考えるべきでしょう。適切な社会保険の加入と住居支援、交通費の支給は、外国人介護士の生活基盤を支え、長期的な雇用関係構築の土台となります。

外国人介護士の不満が出やすいポイントとその対策

外国人介護士を雇用する際には彼らが抱きやすい不満や課題を理解し適切に対応することが重要です。実際の現場で外国人介護士から寄せられる不満には、いくつかの共通するポイントがあります。それらを理解し事前に対策を講じることで、離職防止につなげることができるでしょう。

外国人介護士の不満が出やすいポイント

  • 期待していた給料と実際の手取り額の差
  • 言語によるコミュニケーションの壁
  • 文化や習慣の違いによる摩擦
  • キャリアパスの不明確さ
  • 心理的孤立感
  • 期待していた給料と実際の手取り額の差に対する対策

採用段階から手取り額について明確に説明し、各種控除の意味や必要性についても丁寧に伝えることが大切です。給与明細の読み方を教えるオリエンテーションを実施している施設もあります。

  • 言語によるコミュニケーションの壁に対する対策

やさしい日本語の使用、視覚的な指示(イラストや写真を活用したマニュアル)の導入、定期的な日本語学習支援などが効果的です。また、翻訳アプリやICT機器の活用も近年増えています。

  • 文化や習慣の違いによる摩擦に対する対策

互いの文化を理解し合うための研修や交流の場を設けたり、日本人スタッフに対しても外国人の文化や習慣について学ぶ機会を提供することが大切です。

  • キャリアパスの不明確さに対する対策

在留資格の更新や変更の可能性、昇進や昇給の基準、資格取得支援などを明確に示すことが重要です。例えば、日本語能力の向上や介護福祉士資格の取得による具体的な処遇改善プランを提示することで、将来への展望を持てるようになります。

  • 心理的孤立感に対する対策

同じ国出身の先輩スタッフによるメンター制度の導入、定期的な相談会の開催、母国語で相談できる窓口の設置などが効果的です。また、母国の祝日や行事を尊重し、可能な範囲で休暇を認めることも大切です。

これらの不満に対処するためには、「傾聴」と「理解」の姿勢が何よりも重要です。定期的な面談や匿名でのアンケート調査などを通して、外国人介護士の声に耳を傾け迅速に対応することで、信頼関係を構築し定着率の向上につなげることができるでしょう。

離職防止のための定着支援について

外国人介護士の離職を防ぎ、長期的な勤務を促進するためには体系的な定着支援制度の構築が不可欠です。採用にかかるコストと時間を考えると、一度雇用した人材の定着率を高めることは経営上も大きなメリットをもたらします。

ここでは、効果的な定着支援の仕組みについて解説します。

外国人介護士の離職を防ぐ定着支援

  • 「段階的な教育・研修システム」の確立
  • 「メンター制度」の導入
  • 「日本語学習の継続的支援」
  • 「生活支援の充実」
  • 「家族との関係維持支援」
  • 「段階的な教育・研修システム」の確立

OJT(実務を通じた研修)とOff-JT(座学や演習)を組み合わせた研修プログラムを用意し、達成感を得られるよう小さな目標設定を心がけましょう。

  • 「メンター制度」の導入

日本人のベテランスタッフや同じ国出身の先輩スタッフをメンターとして配置し、業務上の悩みだけでなく、生活面の相談にも乗れる関係性を構築します。特に同じ国の先輩がいる場合は母国語での相談が可能となり大きな安心感につながります。

  • 「日本語学習の継続的支援」

業務時間内での学習時間の確保、日本語教材の提供、オンライン学習の環境整備、日本語検定受験料の補助など、様々な形での支援が考えられます。特に介護の専門用語や記録の書き方など、業務に直結する日本語学習を重点的に支援することが効果的です。

  • 「生活支援の充実」

銀行口座開設、携帯電話契約、各種行政手続きなど、来日直後の生活セットアップを丁寧にサポートすることで、外国人介護士の不安を軽減できます。また、病院受診の際の通訳支援、地域コミュニティへの参加促進、生活相談窓口の設置なども重要です。特に緊急時(病気、事故、災害など)のサポート体制を明確にしておくことは、安心感の醸成につながります。

  • 「文化的配慮と交流機会の創出」

母国の食文化や宗教的習慣への配慮(例:食事制限、礼拝時間の確保など)を示すとともに、日本文化を体験できるイベントや日本人スタッフとの交流会を定期的に開催することで相互理解を深めることができます。

  • 「家族との関係維持支援」

多くの外国人介護士は家族と離れて働いています。定期的な帰国休暇の付与、通信環境の整備(Wi-Fi環境の提供など)、家族を日本に招待する際のビザ取得サポートなど、家族との絆を維持できるような配慮が大切です。

このように、外国人介護士の定着支援は業務面だけでなく、生活全般をカバーする総合的なアプローチが必要です。一時的なコストは発生しますが、離職率の低下と業務効率の向上という形で長期的には大きなリターンをもたらすでしょう。

介護職の外国人労働者「特定技能実習生」を雇用する際の注意点と問題点は?

外国人労働者を雇用する際の注意点と問題点

外国人介護士の雇用は人材不足の解消という明確なメリットがある一方で、様々な課題にも直面します。特に「特定技能」と「技能実習」という二つの主要な在留資格で就労する外国人介護士には、それぞれ異なる雇用条件や注意点があります。

ここでは、外国人介護士を雇用する際に特に注意すべきポイントについて解説します。

契約書の整備とコンプライアンスを保つ

外国人介護士を雇用する際、最も重要なのは適切な契約書の作成と法令遵守です。特定技能の場合、日本人と同等以上の給与水準が法的に義務付けられています。技能実習生においても最低賃金法はもちろん、労働基準法に則った処遇が必要です。契約書は必ず母国語または理解できる言語で作成し、給与体系や労働条件を明確に示さなければなりません。

特に注意すべきは、残業代の適正な支払いと社会保険の加入義務です。過去には外国人労働者の残業代未払いや、社会保険未加入といった法令違反で行政処分を受けた介護施設も少なくありません。

また、登録支援機関や監理団体への手数料を実習生本人に負担させるような行為も禁止されています。

契約書に記載する内容

  • 労働時間や休日数
  • 残業の取り扱い
  • 昇給や賞与の有無
  • 社会保険や住居に関する条件

曖昧な表現は避け、具体的な数字を用いた明確な条件提示が求められます。

さらに、定期的な契約内容の見直しや在留資格の更新手続きなどの支援体制も整えておくことで、後々のトラブルを防止できるでしょう。

文化・宗教への違いへの配慮が重要

外国人介護士との円滑な職場関係を構築するためには、文化や宗教の違いへの理解と配慮が欠かせません。日本とは異なる価値観や習慣を持つ介護士が安心して働ける環境づくりは離職防止にも直結します。

特に配慮すべき点として、食事制限や礼拝時間の確保などの宗教的慣習があります。イスラム教徒の場合は豚肉を使用した食事を避ける必要があり、昼食時に対応可能な選択肢を用意することが望ましいでしょう。また、特定の時間帯に礼拝を行う必要がある場合は業務シフトの調整も検討する必要があります。

休暇制度についても、母国の祝祭日や重要な行事に合わせた柔軟な対応が求められます。旧正月などは日本のカレンダーには含まれていなくても、アジア圏からの介護士にとっては非常に重要な期間です。可能な限り帰国できるよう配慮することで、モチベーション維持にもつながります。

こうした文化的配慮は「特別扱い」ではなく、多様な人材が活躍できる職場環境の基盤となるものです。日本人スタッフへの異文化理解教育も並行して実施することで相互理解を深め、チームワークの向上にも寄与するでしょう。

言葉の壁に対する対策を行う

外国人介護士が直面する最大の課題の一つが「言葉の壁」です。

特に介護現場では利用者との円滑なコミュニケーションが不可欠であり、言語能力の向上支援は雇用側の重要な責務となります。

日本語学習支援

  • 介護専門用語や方言、高齢者特有の表現などを集めた用語集の作成
  • イラストや多言語表記を活用したマニュアルの整備
  • 簡潔で明確な「やさしい日本語」を使用するよう全スタッフに周知する

厚生労働省の「技能実習生の入国・在留管理に関する指針」においても、適切な言語サポートの提供が推奨されています(※8)。言語面での支援は単なる業務効率化だけでなく、外国人介護士の精神的負担軽減や安全なケア提供にも直結する重要な要素です。施設全体で取り組むべき課題として位置づけ、継続的な改善を図ることが望ましいでしょう。

※8引用元:厚生労働省「技能実習生の入国・在留管理に関する指針」

転職や在留資格の更新に注意!

外国人介護士の雇用において見落としがちなのが、在留資格の更新手続きや転職に関するルールです。特に特定技能と技能実習では制度の仕組みが大きく異なるため、それぞれの特性を正確に理解しておく必要があります。

在留資格 転職が可能か
特定技能 介護分野内であれば可能
技能実習生 不可

特定技能の場合、転職に際しては新たな雇用契約の締結や在留資格変更申請など一定の手続きが必要となります。

一方、技能実習生は実習先の倒産や不正行為などの特別な事情がある場合は、監理団体を通じて新たな実習先への変更が可能です。

更新手続きは期限の3ヶ月前から可能となりますが、必要書類の準備や審査には時間がかかるため、余裕をもったスケジュール管理が重要です。

在留資格 在留資格の更新
特定技能 通算5年まで
技能実習生

最長5年間(1号、2号、3号と段階的に)

また、更新時には日本語能力や介護技能の向上が確認されるため、日頃からの教育体制の充実が求められます。

更新が不許可となるケース

  • 頻繁な無断欠勤
  • 法令違反
  • 給与の未払いなど

雇用側のコンプライアンス違反が外国人介護士の在留資格に影響を与える可能性もあるため、法令遵守の徹底が不可欠です。

外国人介護士への違法な低賃金労働のリスクは?

外国人介護士に対する不適切な賃金設定は単に倫理的問題にとどまらず深刻な法的リスクを伴います。

特に近年、外国人労働者の権利意識の高まりや行政の監視強化により、違法な低賃金労働に対する取り締まりは厳格化しています。

厚生労働省の「技能実習生の入国・在留管理に関する指針」では、給与明細の交付や、控除項目の明確な説明など、透明性の高い賃金管理が求められています(※9)。

外国人介護士への不適切な賃金設定

  • 日本人スタッフとの不当な賃金格差
  • 残業手当の未払い
  • 寮費・食費などの名目で過剰な天引きを行う

特定技能制度では、日本人と同等以上の待遇が明確に義務付けられており、意図的な低賃金設定は「外国人であること」を理由とした差別的取扱いとみなされます。

違法な低賃金労働が発覚した場合、行政処分として改善命令や外国人雇用の停止、最悪の場合は刑事告発に発展するケースもあります。さらに、SNSなどを通じて施設の評判が急速に広まり、人材確保が一層困難になるという二次的被害も考えられるでしょう。

外国人介護士の雇用にあたっては、短期的なコスト削減よりも適正な処遇による長期的な人材定着を重視する姿勢が重要です。

※9引用元:厚生労働省「技能実習生の入国・在留管理に関する指針」

外国人介護士の離職率を下げるための対策5選

外国人介護士の離職率を下げる対策

外国人介護士の雇用において大きな課題となるのが高い離職率です。言語や文化の違いによる孤立感、キャリアパスの不透明さ、さらには給与面での不満など、様々な要因が重なって離職につながります。特に、入職から1年以内の早期離職は、採用コストや教育投資の観点からも大きな損失となります。

しかし、適切な対策を講じることで離職率を大幅に改善できる可能性があります。

以下では、外国人介護士の定着率を高めるための実践的な対策について解説します。

給与・待遇の改善で不満を減らす

外国人介護士の離職理由として最も多いのが、給与や待遇への不満です。

特に日本人スタッフとの不当な格差は、モチベーション低下の大きな要因となります。給与・待遇の改善は単なるコスト増ではなく、離職防止による長期的な人材確保の投資と捉えるべきでしょう。

給与・待遇の不満への具体策

  • 基本給の適正化
  • 各種手当の整備
  • 賞与や昇給の仕組みを透明化
  • 住居面でのサポート

同等の資格や経験を持つ日本人スタッフとの均衡を図ることはもちろん、出身国の経済状況も考慮した上で、「生活できる賃金」を保証することが重要です。また、夜勤手当や資格手当など、明確な基準に基づく各種手当の整備も効果的です。

賞与や昇給についてはわかりやすく提示しておきましょう。例えば、勤続年数や評価に応じた昇給テーブルを作成し、将来的な収入見込みを可視化することは大きな安心感につながります。

寮や社宅の提供においては、プライバシーへの配慮や適切な居住環境の整備が求められます。また、家賃補助や引っ越し費用の一部負担など、柔軟な住居支援制度の導入も検討価値があるでしょう。

適正な給与・待遇は、単に離職防止だけでなく母国へのポジティブな情報発信にもつながります。母国の友人や家族への推薦によって優秀な人材の継続的な応募につながる好循環を生み出す効果も期待できます。

キャリアパスや昇進の見える化を図る

外国人介護士が長期的に働き続けるためには、将来のキャリア展望が見えることが重要です。多くの外国人介護士は、専門的なスキルを身につけながらステップアップしたいという強い意欲を持っていますが、キャリアパスが不明確だと将来への不安から離職を選択してしまいます。

キャリアパスや昇進を見える化する具体策

  • 入職時からキャリアパスを明示する
  • 資格取得支援
  • 定期的なキャリア面談

例えば「3年目までに介護福祉士資格取得→5年目でユニットリーダー→7年目で主任」といった具体的な昇進モデルを示すことで目標設定が容易になります。日本人スタッフと同様の昇進機会があることを明確にすることも、公平感の醸成につながるでしょう。

介護福祉士や介護支援専門員などの上位資格取得に向けた学習時間の確保や受験料の補助制度の導入は、キャリアアップ意欲を高める効果があります。特に日本語の壁がある外国人スタッフには、専門用語の学習支援や模擬試験の実施など、きめ細かなフォローが求められます。

半年に一度程度、今後のキャリア希望や課題について率直に話し合う機会を設けることで、個々の希望に合わせたキャリア支援が可能になります。また、すでに昇進を果たした先輩外国人スタッフのロールモデルを見せることで、具体的なイメージを持ちやすくなるでしょう。

キャリアパスの見える化は単なる離職防止策ではなく、人材育成の観点からも重要な取り組みです。明確な成長機会を提示することで外国人介護士のポテンシャルを最大限に引き出し、組織全体の介護品質向上にもつながります。

メンタルケアや相談体制を整える

外国人介護士は言語の壁や文化の違い、家族との離別など、日本人スタッフとは異なる特有のストレス要因を抱えています。こうした精神的負担に対するサポート体制の充実は離職防止の要となります。

メンタルケアの具体策

  • 相談窓口の設置
  • 入職初期の「バディ制度」の導入
  • 定期的なメンタルヘルスチェックの実施
  • 母国の家族と連絡を取りやすい環境整備

可能であれば、外国人スタッフの母国語に対応できる専門のカウンセラーや通訳を配置することが望ましいでしょう。難しい場合は通訳アプリや翻訳ツールを活用した対応も検討する価値があります。

また、先輩の外国人スタッフや語学力のある日本人スタッフをメンターとして付けることで、業務上の悩みだけでなく生活面の困りごとにも対応できる体制を整えられます。特に来日直後の不安定な時期は細やかなフォローが重要です。

ストレスチェックシートを多言語化し、定期的に実施することで問題の早期発見・早期対応が可能になります。また、ストレス対処法や心身のリラックス方法についての研修も併せて行うことで、セルフケア能力の向上も期待できます。

さらに、母国の家族と連絡を取りやすい環境整備も重要です。安価な国際電話サービスの情報提供や、Wi-Fi環境の整備、オンラインでの家族面談の機会提供なども検討価値があります。家族の安否や様子が確認できることは、大きな安心につながります。

メンタルケアは外国人介護士が持つ能力を最大限に発揮するための基盤となります。心理的安全性の高い職場環境は、介護サービスの質向上にも直結するものと認識し、組織全体で取り組むべき課題として位置づけることが大切です。

現場の支援体制や教育制度を強化する

外国人介護士が安心して業務に取り組むためには、日々のサポート体制と継続的な教育機会の提供が不可欠です。特に言語の壁がある状況では、通常以上に丁寧な教育体制が求められます。

支援体制や教育制度の具体策

  • 多言語対応のマニュアル整備
  • OJT(実務研修)とOff-JT(座学研修)のバランス
  • 外国人介護士の学習進度に合わせた段階的な業務拡大
  • デジタル技術の活用

業務手順書や記録様式などを母国語や「やさしい日本語」に翻訳することで、理解度を高めることができます。特に介護特有の専門用語や日本独自の表現については、イラストや写真を交えた視覚的な説明資料が効果的です。

また、現場での実践的な指導と定期的な座学での復習や新たな知識習得の機会を組み合わせることで理解度が深まります。研修時には通訳を配置するなど言語面での配慮も忘れないようにしましょう。

初期は基本的なケアから始め、徐々に複雑な業務へと移行していくことで無理なく成長できる環境を整えることができます。達成できた業務は「スキルマップ」などで可視化し、成長実感を持たせることも大切です。

翻訳アプリやAI音声通訳デバイスの導入、eラーニングシステムの活用など、テクノロジーを取り入れた教育支援も検討する価値があります。特に地方の小規模施設ではオンライン研修などの遠隔教育の仕組みが有効でしょう。

支援体制の強化は短期的にはコストと時間がかかりますが、長期的には質の高いケア提供と職員定着につながる重要な投資です。外国人介護士の能力を最大限に引き出すための環境整備として、継続的な改善を図ることが望ましいでしょう。

帰属意識を高める社内イベントや交流会を行う

外国人介護士の離職防止には、業務面のサポートだけでなく、「この職場に所属している」という帰属意識の醸成も重要です。異国の地で働く彼らにとって、職場の人間関係は単なる仕事上のつながりを超えた重要な社会的ネットワークとなります。

イベントや交流会の具体策

  • 定期的な交流イベントの開催
  • チームビルディング活動
  • 地域コミュニティとの連携

季節の行事や誕生日会など、業務を離れた場での交流は相互理解を深める絶好の機会となります。特に日本の文化体験イベント(お花見や七夕など)と外国人スタッフの母国文化を紹介するイベントを組み合わせることで、双方向の文化交流が実現できます。

また、業務改善ワークショップや合同研修など共通の目標に向かって協働する機会を設けることで、チームの一体感を醸成できます。言語の壁を考慮し視覚的な手法や簡単なゲーム形式を取り入れるなどの工夫も有効でしょう。

地域のお祭りやボランティア活動への参加を促すことで、職場を超えた社会的つながりを構築できます。地域住民との交流は日本語学習の機会にもなり、生活面での情報収集にも役立ちます。

帰属意識の向上は単なる福利厚生としてではなく、チームケアの質を高め組織全体のパフォーマンスを向上させる重要な要素です。外国人スタッフが「この職場で長く働きたい」と思える環境づくりに継続的に取り組むことが望まれます。

外国人介護士の給料に関するまとめ

外国人介護士の給料に関するまとめ

外国人介護士の適切な給料設定と処遇改善は人材確保と定着の鍵を握ります。これまで見てきた様々な課題や対策を踏まえ、在留資格別の給料相場や適正な給料設定の考え方について最新の情報を整理しましょう。

また、今後の外国人介護士雇用の展望についても触れ長期的な視点での人材戦略の重要性を確認します。

【在留資格別】給料まとめ

外国人介護士の給料は在留資格によって制度的背景や相場が異なります(※10)。

在留資格 平均給料
在留資格「介護」 月額22万円〜27万円程度
EPA候補者 月額20万円〜25万円程度
特定技能1号 月額18万円〜22万円程度
技能実習生 月額16万円〜18万円程度

全ての在留資格において、日本人の介護職と同等以上の給与支払いが原則ですが統計データを見ると外国人介護士の平均給与は、日本人の新人介護士と同程度かやや低い水準にあることが多いです。

ただし、この差は必ずしも国籍による差別というわけではなく、経験年数やスキル、役職の違いによる部分が大きいと考えられます。外国人介護士の給料は、経験やスキル、担当業務などを踏まえた総合的な視点で評価することが大切です。

※10引用元:厚生労働省|在留資格区分別にみた賃金

外国人介護士への適正な給料設定が重要

外国人介護士に対する適正な給料設定は単なるコスト管理の問題ではなく、人材確保と定着、さらには介護サービスの質に直結する重要な経営課題です。

適切な給料設定のポイント

  • 「同一労働同一賃金」の原則に基づく公平な処遇
  • 地域の相場を考慮した競争力のある給与水準の設定
  • 明確かつ透明性の高い給与体系の構築
  • 介護職としてのキャリアパスに連動した昇給制度の整備

外国人であることを理由とした不当な賃金格差は、モチベーション低下や離職につながるだけでなく法的リスクも伴います。同等の業務・責任を担う日本人スタッフとの均衡を図ることが基本となります。

特に介護人材の確保が困難な地域では、近隣施設よりも魅力的な条件を提示することで優秀な人材を獲得しやすくなります。「安さ」で外国人を雇用するという発想からの転換が求められるでしょう。

また、基本給と各種手当の区分、昇給や賞与の条件、各種控除項目など、給与に関する全ての要素を外国人スタッフが理解できる形で説明することが重要です。特に母国語での給与明細の提供や、定期的な給与面談の実施は効果的な取り組みといえます。

キャリアアップに関しては明確に提示しましょう。例えば、勤続年数や取得資格、評価結果などに応じた具体的な昇給ステップを設定することで長期的な就労意欲を高めることができます。

適正な給料設定は経営的視点から見ても合理的な選択です。採用コストや教育コストを考慮すると、定着率の向上による総人件費の安定化は長期的には経営効率の向上につながるでしょう。

今後の外国人介護士雇用に向けての展望とは

外国人介護士の雇用を成功させるためには、単に給与だけでなく総合的な待遇と環境整備が鍵となります。国内の介護人材不足は今後さらに深刻化することが予測されており、2040年には約69万人の介護人材が不足するとの推計もあります。

ポイントは以下の8点です。

  1. 外国人介護士の各種制度ごとの給与水準
  2. 日本人介護士との給与比較
  3. 住居手当など付加的コストの考慮点
  4. キャリアパスと昇給システムの重要性
  5. 生活支援や文化的配慮の必要性
  6. 技術活用による言語の壁の低減
  7. 制度変更への対応と活用法
  8. 外国人介護士雇用の総合的な価値評価

外国人介護士の雇用は単なる人材不足への対応策ではなく、組織の多様性と競争力を高める戦略的投資として位置づけることが重要です。給与体系の整備、生活支援の充実、技術活用による業務環境の改善、そして制度活用の最適化を通じて、互いに尊重し合いながら長期的に共に成長できる関係構築を目指すことが、持続可能な介護サービス提供の基盤となるのです。