急速に進む日本の少子高齢化を受け、介護業界は深刻な人材不足に直面しています。国内人材のみでは介護サービスの維持が困難になると見込まれるため、解決策の一つとして外国人介護人材の活用が期待されています。
しかし、外国人材を円滑に受け入れるためには、事前の受け入れ体制整備や、文化・言語の違いを乗り越えるための具体的な知識、そして入念な準備が不可欠です。
本記事では、介護施設が外国人材の採用を成功させるために知っておくべき基本的な情報や、採用時の初期費用・給料の目安、メリット・デメリットについて解説します。さらに、採用後の重要なポイントとなる育成方法や定着支援についても触れていきます。
- 1 外国人介護士の現状の採用人数
- 2 外国人介護士を採用が可能な4つの在留資格
- 3 外国人介護士の採用に関わる4つの在留資格の違い
- 4 介護施設の外国人採用して「知らなかった」では済まない3つの注意点
- 5 採用前に確認!外国人介護士の人員配置基準上の扱い
- 6 【2025年4月施行】外国人介護士の訪問系サービスの最新ルール
- 7 外国人介護士の採用時の給料は?
- 8 外国人介護士の採用コスト「初期費用」と「ランニングコスト」
- 9 外国人介護士の採用フローと求人方法
- 10 外国人介護士を採用する3つのメリット
- 11 外国人介護士の採用におけるデメリット:失踪リスクと対策
- 12 2つの失敗から学ぶ!外国人介護士への「説明」のポイント
- 13 外国人介護士を指導する3つのポイント
- 14 外国人介護士の課題は定着率!定着率UPには「介護福祉士」の資格取得を促すこと
- 15 まとめ
外国人介護士の現状の採用人数
日本の急速な高齢化により、介護人材不足は深刻化しています。そのような状況のなか、外国人介護士の方は、介護現場を支えるうえで、今やなくてはならない貴重な存在です。その重要な役割を担う外国人介護士が、現在、日本全国の介護施設や事業所でどのくらい活躍しているのでしょうか。具体的な人数を示す統計データは、以下のとおりです(※1)。
※1引用元:厚生労働省「介護分野の外国人受入実績」
日本の介護現場において、外国人介護士の方々は力強い支えとなっています。彼らが日本で働くための「在留資格」には、主に在留資格「介護」、EPA介護福祉士候補者、技能実習、特定技能の4つの種類があります。
それぞれに目的や要件が異なるため、一見すると少し複雑に感じられるかもしれません。ここでは、これらの違いを分かりやすく解説していきます。
外国人介護士を採用が可能な4つの在留資格
外国人介護士の採用を検討する際に、まず理解しておきたいのが在留資格の種類です。在留資格とは、外国人が日本に滞在し、活動するための「許可証」のようなものです。
現在、介護業務に従事できる在留資格は、以下の4つがあります。
①在留資格「介護」
②EPA介護福祉士候補者
③技能実習
④特定技能
4つの在留資格は、それぞれ特徴が異なります。求められる要件、従事できる業務範囲、受け入れ可能な期間などが、在留資格ごとに定められています。
そのため受け入れる施設は、求める人材像にあわせて、どの在留資格が適切か検討が必要です。ここでは、それぞれの在留資格について、その特徴と要件を具体的に解説します。
介護における在留資格①:在留資格「介護」
在留資格「介護」は、2017年9月に新設されました。これは、外国人が日本の介護施設などで専門的な介護業務をするための在留資格です。この資格の最大の特徴は、日本の国家資格「介護福祉士」をもつ外国人が対象となる点です。
介護における在留資格②:EPA介護福祉士候補者
EPA介護福祉士候補者は、日本と特定の国(インドネシア、フィリピン、ベトナム)との経済連携協定(EPA)に基づいて来日します。EPAは、二国間の経済的な結びつきを強めるための条約です。彼らは日本の介護施設で働きながら研修を受け、国家資格「介護福祉士」の取得を目指します。
この制度は、あくまで国同士の経済連携強化を主目的としており、日本の介護人材不足解消を目的とするものではありません。
介護における在留資格③:技能実習
技能実習制度の「介護」分野は、外国人が日本の介護現場で働きながら技術を学ぶための在留資格の一つです。
この制度の本来の目的は「国際貢献」です。具体的には、技能実習生が日本の介護技術や知識を習得し、母国に帰国した後、その技術を活かして自国の介護分野の発展に貢献することを意図しています。
しかし、「技術移転」という公式な目的とは別に、実際には、日本の深刻な介護人材不足を補う役割も担っている側面があります。
介護における在留資格④:特定技能
特定技能は、国内の人手不足が深刻な分野で、専門性や技能をもつ外国人を受け入れるための在留資格です。介護分野もこの特定分野の一つです。特定技能制度の主な目的は、介護現場の人手不足を解消することにあります。この制度では、「即戦力」となる人材の確保を意図しています。
外国人介護士の採用に関わる4つの在留資格の違い
在留資格「介護」、EPA介護福祉士候補者、技能実習、特定技能のそれぞれの違いが明確です(※2)。
ここでは、介護福祉士資格の有無、日本での滞在可能期間、求められる日本語能力レベル、これら3つのポイントに注目し、それぞれの在留資格の特徴を具体的に解説します。
※2引用元:厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」
4つの在留資格は介護福祉士の資格の持っているか?
4つの在留資格について、介護福祉士資格の有無はそれぞれ異なります。
在留資格区分 | 介護福祉士資格 |
在留資格「介護」 | あり |
EPA介護福祉士候補者 | なし |
技能実習生(介護) | なし |
特定技能(介護) | なし |
在留資格「介護」を取得するには、日本の国家資格である「介護福祉士」資格を保有していることが必須です。
一方、EPA介護福祉士候補者は、来日時点では介護福祉士の資格を保有していません。彼らは、日本の介護現場で働きながら研修を重ね、最終的に介護福祉士の資格を取得することを目指すことになります。
これに対して、特定技能と技能実習の在留資格では、介護福祉士資格の保有は必須要件ではありません。それぞれの制度が定める要件を満たせば、資格がなくても介護分野での就労を開始できます。これらの在留資格で働きながら、3年以上の実務経験を積むなどして国家試験の受験資格を満たせば、将来的に介護福祉士資格の取得に挑戦することも可能です。
4つの在留資格はどのくらい日本に滞在できるか?
外国人介護人材が日本で就労できる期間は、保有する在留資格によって異なります。それぞれの資格における滞在可能期間は以下の通りです。
在留資格区分 | 就労可能期間 |
在留資格「介護」 | 永続的な就労が可能 |
EPA | 介護福祉士資格取得後は永続的な就労が可能 (一定期間内に資格取得できない場合は帰国) |
技能実習 | 最長5年 |
特定技能 | 最長5年 |
まず、在留資格「介護」を取得している場合、期間の制限なく永続的に日本で就労することが可能です。
次に、EPA介護福祉士候補者として来日した場合は、日本での滞在中に介護福祉士の国家資格を取得することが、永続的な就労の条件となります。所定の期間内に資格を取得できない場合は、原則として帰国しなければなりません。
また、技能実習の場合、日本での就労期間は最長で5年間となります。技能実習を修了した後、在留資格を「特定技能」へ移行することで、さらに最長5年間、合計すると最大で10年間、日本での就労が可能となります。
最後に、特定技能の介護分野で就労する場合、日本に滞在できる期間は通算で最長5年間です。5年間のうちに介護福祉士の資格を取得し、在留資格「介護」へ変更できれば、その後は期間の制限なく日本で働き続けることが可能になります。
4つの在留資格が求められる日本語能力は?
日本語を母語としない人の日本語能力を測定・認定する試験が、日本語能力試験(JLPT)です。JLPT には N1 から N5 までの 5 つのレベルがあり、N1 が最も高いレベルとされています。
それぞれの在留資格が示す日本語能力の目安は、以下の通りです。
在留資格区分 | 日本語能力要件(目安) |
在留資格「介護」 | N2程度 |
EPA | 大多数は、就労開始時点で N3程度(N3~N5と幅あり) |
技能実習 | 入国時の要件は N4程度 |
特定技能 | 入国時の要件は以下を満たすこと ・ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力 ・介護の現場で働く上で必要な日本語能力 |
日本語能力試験(JLPT )のレベル別に、介護現場での申し送りにおいて、どの程度のコミュニケーションが可能になるのか説明します。
▼N5 レベル(一部のEPA介護福祉士候補者)
このレベルでは、申し送りの内容を理解し、参加することは難しいでしょう。
利用者さんの名前や「トイレ」「食事」といった基本的な単語であれば、ゆっくり、はっきり話してもらえれば聞き取れる可能性はありますが、会話全体の意味を把握するのは困難です。
情報を伝える際も単語を並べる程度にとどまり、状況を文章で説明することはできません。
▼N4 レベル(技能実習と特定技能)
N4 レベルになると、バイタルサインや食事摂取量など、短く簡単な定型文での報告であれば、ゆっくり話してもらえば理解できる部分が出てきます。
同様に、簡単な事実を自分で報告することも可能になります。ただし、少し複雑な出来事の説明や、早口での会話、詳細な指示の理解は難しいレベルです。
▼N3 レベル(EPA介護福祉士候補者)
日常的な申し送りの内容であれば、N3 レベルではその要点を理解できるようになります。
誰がどのような状態で、何があったかといった主要な情報を把握でき、自分が担当した利用者さんの基本的な状況を報告することも可能です。
ただし、複雑な状況の詳細や微妙なニュアンスまで正確に伝えたり、専門用語が多い内容を完全に理解したりするには、まだ難しい側面があります。
▼N2 レベル(在留資格「介護」)
N2 レベルに達すると、自然なスピードの申し送りであっても、詳細な情報を含めて正確に内容を理解できます。
利用者さんの状態変化の理由や今後の注意点なども把握し、自身の観察やアセスメント、提案などを交えながら論理的に報告することが可能です。
他のスタッフと対等に情報を交換し、申し送りに主体的に参加できるレベルと言えます。
上記の例から分かるように、介護現場における申し送りでのコミュニケーション能力は、日本語能力レベルに大きく左右されます。
N5レベルでは、基本的な単語の聞き取りや伝達が主となり、申し送り全体の理解や参加は困難です。
N4レベルになると、簡単な定型文での報告や理解が可能になりますが、複雑な内容や早口での会話への対応は難しい段階です。
N3レベルに達すると、日常的な申し送りの要点を理解し、担当利用者の基本的な状況を報告できるようになります。
そしてN2レベルでは、自然なスピードの申し送りも詳細まで正確に理解でき、自身の考察を交えた論理的な報告や他のスタッフとの対等な情報交換が可能となります。
介護施設の外国人採用して「知らなかった」では済まない3つの注意点
外国人介護士を雇用する際には、関連する法律を遵守することが非常に重要です。もし、法律を知らなかったり、意図せず違反してしまったりした場合でも、雇用した施設側が罰則を受ける可能性があります。
例えば、就労が許可されていない在留資格の方や、すでに不法に就労している方を雇用してしまうと、事業主が不法就労助長罪に問われる恐れがあります。
このような事態を避けるために特に注意すべき点として、ここでは、在留カードによる就労資格の確認やハローワークへの外国人雇用状況の届出義務、外国人介護士にも適用される労働関係法令について解説します。
注意点①:不法就労を防ぐために在留カードの確認は必須
外国人労働者が日本で働くためには、「在留資格」が必要です。これは日本への入国後に許可されるものであり、渡航前に母国で取得する「ビザ(査証)」とは異なる点をまず理解しておきましょう。
2025年3月現在、在留資格には約29の種類があり、資格ごとに日本国内で行える活動内容が細かく定められています。そのため、外国人介護士を雇用する際には、まず、その方が持つ在留資格で「就労が認められているか」を確認することが、最初のステップです。
受け入れ施設は、雇用契約を結ぶ前に、対象となる方の在留カードを必ず確認する法的義務を負っています。この確認の際には、単に在留カードの有無だけでなく、就労可能な在留資格であるか、実際に任せる業務内容が一致しているかもチェックする必要があります。
もし、この確認を怠り、就労できない在留資格の方を雇用したり、許可された活動範囲外の業務に従事させたりした場合、それは「不法就労」とみなされます。
不法就労が発覚した場合、働いた本人だけでなく、雇用した施設側にも厳しい罰則が科される可能性があります。「知らなかった」「うっかり確認を忘れた」といった理由は通用しないため注意が必要です(※3)。
※3引用元:警視庁「外国人の適性雇用について」
在留カードを確認する際は、以下の点をチェックしましょう。
画像引用「出入国在留管理庁」
・在留資格の種類: 介護分野での就労が認められている資格かを確認します。・就労制限の有無: 「就労不可」や「指定書により指定された就労活動のみ可」と記載されている場合は、特に注意が必要です。許可されている活動内容と業務内容が一致するか確認しましょう。・在留期間(満了日): 在留期間が有効期限内であるかを確認します。
在留カードを確認した後は、記録のため、必ずコピーを取るなどして社内に控えを保管しておきましょう。
注意点②:ハローワークへ「外国人雇用状況の届出」の義務
外国人労働者を雇用する場合、事業主が行うべき手続きの一つが、ハローワークへの「外国人雇用状況の届出」です。
外国人雇用状況の届出は、正社員、契約社員、パート、アルバイトといった雇用形態にかかわらず、雇入れ時と離職時に、氏名や在留資格などの情報を届け出る必要があります(※4)。
外国人雇用状況の届出は法律で義務付けられています。もし怠った場合、行政指導の対象となるだけでなく、30万円以下の罰金が科される可能性もあります。忘れずに手続きを行いましょう。
具体的な届出方法は、雇用する外国人労働者が雇用保険に加入するかどうかで異なります。
・雇用保険に加入する場合:特別な届出書類は不要です。雇用保険の「資格取得届」や「資格喪失届」といった通常の様式内に、外国人雇用に関する情報を記載する欄があります。日本人従業員と同様の雇用保険手続きの中で、あわせて届け出てください。・雇用保険に加入しない場合:専用の「外国人雇用状況届出書」を作成し、ハローワークへ提出します。
特に、雇用保険に加入しない短時間のアルバイトなどを雇用する場合は、この届出を忘れやすいため注意が必要です。
※4引用元:厚生労働省「外国人雇用のルールに関するパンフレット」
注意点③:外国人介護士にも日本の労働ルールが適用
外国人介護士を雇用する場合でも、日本人従業員と同様に、以下の労働関係法令が適用されます。
・労働基準法
・最低賃金法
・労働時間に関する規定
・社会保険(健康保険・厚生年金)
・雇用保険
これらの法令は、国籍にかかわらず等しく適用されることを理解しておきましょう(※5)。
ただし、ルール自体は同じでも、日本の労働慣習に馴染みのない外国人介護士にとっては、内容を正確に理解するのが難しいケースがあります。こうした認識のずれが、後々トラブルの原因となることもあります。
そのため、雇用契約を結ぶ際には、労働条件通知書などを書面で交付するだけでなく、口頭でもわかりやすい日本語で丁寧に説明することが必要です。
※5引用元:厚生労働省「外国人雇用のルールに関するパンフレット」
採用前に確認!外国人介護士の人員配置基準上の扱い
外国人介護人材の採用を検討する際には、在留資格の種類だけでなく、受け入れ施設側で事前に把握しておくべき点があります。
ここでは、介護報酬の算定にも関わる「人員配置基準」において、受け入れる外国人介護人材がいつから職員として算定できるのか、そのルールについて詳しく解説します。
外国人介護人材を受け入れる際、人員配置基準における扱いは在留資格の種類によって異なります。主なパターンは以下の通りです(※6)。
※6引用元:厚生労働省「外国人介護人材に係る人員配置基準上の取扱いについて」
在留資格「介護」や「特定技能」で就労する外国人介護人材は、最も早く人員配置基準に算定できます。具体的には、各施設で就労を開始した時点からすぐに、人員配置基準上の職員として算入することが可能です。
ただし、就労開始と同時に算定できる場合でも、注意点があります。受け入れ当初は、一定期間、他の日本人職員とチームでケアをおこなう、あるいは定期的な面談でフォローするなどの体制を整えましょう。
一方、「技能実習」や、EPA介護福祉士候補者の場合は、原則として、すぐに人員配置基準に算定することはできません。就労または実習を開始してから6ヶ月が経過した時点で、人員配置基準上の職員として算定できるようになります。
ただし、「技能実習」と「EPA介護福祉士候補者」には例外があります。これらの人材が日本語能力試験 N2を取得している場合、高い日本語能力を有していると判断されるため、6ヶ月の経過を待つ必要はありません。N2取得者であれば、就労または実習を開始した時点からすぐに人員として算定可能です。
【2025年4月施行】外国人介護士の訪問系サービスの最新ルール
外国人介護人材を受け入れる施設の種類には、在留資格ごとにルールが定められています。基本的には、日本の介護保険法にもとづく指定を受けた介護施設や事業所であれば受け入れ可能ですが、資格によっては制限があります。
主な在留資格と受け入れの制限は以下の通りです。
在留資格区分 | 就労可能な施設 |
在留資格「介護」 | 制限なし |
EPA介護福祉士候補者 | 制限あり |
技能実習(介護) | 制限あり |
特定技能(介護) | 制限あり |
EPA介護福祉士候補者が就労できるのは、主に以下の施設・サービスです。
・介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設
・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
・特定施設入居者生活介護
・通所介護(デイサービス)
・通所リハビリテーション(デイケア)
・認知症対応型通所介護
・短期入所生活介護/短期入所療養介護(ショートステイ)
なお、EPA介護福祉士候補者が日本の介護福祉士資格を取得した後は、訪問系サービスに従事することも可能になります。
これまで、「技能実習」または「特定技能」の外国人介護人材は、原則として訪問系サービスで就労できませんでした。これは、利用者の方のご自宅で介護職員と利用者が 1 対 1 になるという訪問サービスの特性上、コミュニケーションや緊急時対応に関する懸念があったためです。
しかし、2025年4月からは制度が変更され、これまで原則として訪問系サービスで働くことができなかった「技能実習」や「特定技能」の外国人介護人材も、以下の条件を満たせば、訪問介護などのサービスに従事できるようになります(※7)。
※7引用元:厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について」
主な条件としては以下になります。
・「介護職員初任者研修」などの研修を修了していること
・介護事業所などで 1 年以上の実務経験があること
さらに次のことも必須です。外国人介護人材に訪問サービスを担当してもらう際には、事前に利用者の方やそのご家族へ丁寧に説明し、「外国人スタッフが訪問する場合があること」について同意を得ておく必要があります。
外国人介護人材を受け入れて訪問サービスを提供する事業所は、以下の体制を整備する必要があります。
・訪問介護などの業務の基本事項に関する研修を実施する。
・責任者などが同行するなどして、必要な実地訓練を行う。
・業務内容などについて丁寧に説明し、本人の意向を確認しながらキャリアアップ計画を作成する。
・ハラスメントを防止するため、相談窓口の設置など必要な措置を講じる。
・情報通信技術の活用を含め、必要なサポート環境を整備する。
制度改正の施行日は、技能実習は2025年(令和7年)4月1日です。特定技能は2025年4月中に予定されています。
外国人介護士の採用時の給料は?
外国人介護人材を採用する際に、施設側が最も関心をもつ事項の一つが給与水準の設定でしょう。外国人介護士であっても、日本人と同等以上の給与を支払う義務があり、不当な低賃金で雇用することは法律で禁止されています。
給与額は、採用する外国人介護士の保有資格、経験年数、担当する業務内容などを考慮して、個別に決定します。
ここでは、主な 4 つの在留資格ごとに、給与設定の目安について解説します。ただし、これらはあくまで一般的な目安であり、最終的な給与額は個別の状況に応じて決定する必要がある点にご留意ください。
在留資格「介護」の給料
在留資格「介護」をもつ外国人介護人材は、日本の介護福祉士養成施設を卒業し、国家資格である介護福祉士の資格を有しています。これは専門的な知識と技術を習得していることの証明であり、その専門性は給与に反映させるべきです。
したがって、在留資格「介護」をもつ外国人介護士の給与水準は、同じ施設で働く日本人の介護福祉士と同等以上とすることが原則です。
在留資格区分 | 給与目安(月給) |
在留資格「介護」 | 239,800 円 (※8) |
※8引用元:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」
EPA介護福祉士候補者の給料
EPA介護福祉士候補者の給与についても、日本人と同等以上の処遇が原則です。EPA候補者は、介護福祉士資格の取得を目指して就労・研修をおこなう立場ですが、労働者として介護業務に従事するため、労働基準法などの労働関係法令が適用されます。
在留資格区分 | 給与目安(月給) |
EPA介護福祉士候補者 | 約 180,000 円 ~ 190,000 円 (※9) |
※9引用元:「在ベトナム日本国大使館」
(注意:この金額は特定の国の目安であり、他の公的データも参照することを推奨します)
介護技能実習生の給料
技能実習生の給与についても、日本人と同等以上の報酬を支払うことが技能実習法で定められています。技能実習制度は技能移転を目的としていますが、実習生は労働者として雇用契約を結び、実務を通じて技能を習得するため、労働関係法令が適用されます。
技能実習制度には、実習生の技能レベルに応じて 1 号、2 号、3 号という段階的な区分があります。技能レベルが向上する 2 号、3 号へと進むにつれて、一般的に給与も高く設定されます。
技能実習の号数 | 給与目安(月給) |
技能実習 1 号 | 166,049 円 |
技能実習 2 号 | 185,113 円 (※10) |
技能実習 3 号 | 213,986 円 (※11) |
※10引用元:出入国在留管理庁「技能実習制度及び特定技能制度の現状について」
※11引用元:出入国在留管理庁「外国人労働者受入れ制度について」
特定技能の外国人介護人材の給料
特定技能の外国人介護人材の給与水準も、日本人と同等以上であることが法律で義務付けられています。特定技能制度は、即戦力となる外国人介護人材を受け入れることを目的としており、その技能や経験に見合った適正な処遇が必要です。
在留資格区分 | 給与目安(月給) |
特定技能(介護) | 223,531 円 (※12) |
※12引用元:出入国在留管理庁「技能実習制度及び特定技能制度の現状について」
4つの在留資格の月給を比較すると、以下のようになります。
在留資格区分 | 給与目安(月給) |
在留資格「介護」 | 239,800 円 |
EPA介護福祉士候補者 | 約 180,000 円 ~ 190,000 円 |
技能実習 1 号 | 166,049 円 |
技能実習 2 号 | 185,113 円 |
技能実習 3 号 | 206,017 円 |
特定技能(介護) | 223,531 円 |
在留資格別の給与目安を見ると、介護福祉士資格を持つ在留資格「介護」が最も高く、専門性や日本語能力が給与水準に反映されていることがうかがえます。
技能実習では経験年数に応じて段階的に給与が上昇し、特定技能は一定の技能を持つ即戦力としての位置づけが給与に表れていると考えられます。
外国人介護士の採用コスト「初期費用」と「ランニングコスト」
外国人介護士の採用コストにあたって「具体的にどれくらいの費用がかかるのか」は、多くの施設にとって重要な検討事項でしょう。
外国人介護士の採用には、一般的に、紹介料や渡航費などの「初期費用」と、採用後の支援費などの「月々の費用(ランニングコスト)」が発生します。そして、これらの費用は、受け入れる在留資格によって大きく異なる点を理解しておく必要があります。
ここでは、4 つの在留資格(在留資格「介護」、EPA介護福祉士候補者、技能実習、特定技能)に着目し、それぞれの採用にかかる初期費用と月々の費用の内訳について詳しく解説します。
(注意:記載の金額はあくまで目安であり、為替レートの変動、利用するサービス、契約内容、地域などによって大きく異なる場合があります。必ず最新の公式情報や各サービス提供者にご確認ください。)
在留資格「介護」の採用コスト
日本の介護福祉士養成施設を卒業し国家試験に合格した外国人介護士は、在留資格「介護」を取得して専門職として日本で働くことができます。
この資格をもつ人材の採用方法は、基本的に日本人介護福祉士と同様です(※13)。
・求人広告: 介護専門求人サイトや求人情報誌への掲載料がかかります。
・ハローワーク: 求人掲載は無料ですが、採用活動に伴う時間・労力が必要です。
・人材紹介会社: 紹介手数料が発生します(一般的に年収の 20~35%程度が目安)。
・養成施設との連携: 採用にかかる費用は抑えられますが、関係構築のための労力が必要です。
他の在留資格と異なり、入国手続きなどの支払いがないため、採用方法によっては初期費用を抑えられる可能性があります。
※13引用元:厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」
EPA介護福祉士候補者の採用コスト
EPA介護福祉士候補者の受け入れは、日本で唯一の受入れ調整機関である公益社団法人:国際厚生事業団(JICWELS)を通じておこなわれます。採用には以下の費用が発生します(※14)。
求人申込手数料:
・初回受け入れ施設: 30,000 円
・受け入れ実績あり施設: 20,000 円
(内容:求人申請確認、翻訳、システム管理費など。求人登録時に支払い)・あっせん手数料: 131,400 円 / 1名あたり
(内容:現地面接、書類翻訳、マッチングシステム管理、契約支援、送出機関調整費など。マッチング成立時に支払い)・滞在管理費(年間):
国家資格取得前: 20,000 円 / 1名あたり
国家資格取得後: 10,000 円 / 1名あたり
(内容:入管報告取次、相談対応、情報提供、システム管理費など。初年度は入国後、以降は年度当初に支払い)
・フィリピン:
手数料(※): 約 450 米ドル (約 48,000 円)/ 1名
健康診断費用: 約 3,000 ペソ (約 6,100 円)/ 1名(実費)・インドネシア:
手数料: 約 423 万ルピア (約 32,800 円)/ 1名(出国前健康診断費含む)・ベトナム:
手数料: 約 450 米ドル (約 48,000 円)/ 1名
(注:外貨建て費用は為替レートにより変動します。円換算額は参考値です)
・看護・介護導入研修費(JICWELSへ支払い):
ベトナム候補者: 100,000 円(税別)/ 1名(一部負担金)
インドネシア/フィリピン候補者(日本語研修免除者): 実費(渡航費、宿泊料など。目安:インドネシア約22万円、フィリピン約20万円/1名)・日本語研修費(日本語研修実施機関へ支払い):
インドネシア/フィリピン候補者: 360,000 円 / 1名(一部負担金)
ベトナム候補者: 260,000 円 / 1名(一部負担金)
このように、EPA介護福祉士候補者の受け入れには、JICWELSや各国機関への手数料、研修費用など、多岐にわたる費用が発生します。
EPA介護福祉士候補者の受け入れの主な費用は、JICWELSへの申込・あっせん手数料や年間管理費、そして候補者出身国機関への手数料や健康診断費用です。
さらに、入国後の導入研修や日本語研修にも、一部負担金や実費などの関連費用が必要となります。これらの費用には為替変動の影響を受けるものも含まれます。
※14引用元:JICWELS(国際厚生事業団)「EPA 候補者の受入れにあたり受入れ機関にお支払いいただく各種手数料」
介護技能実習生の採用コスト
介護分野の技能実習生を受け入れる施設は、監理団体に「監理費」を支払う必要があります。監理団体とは、実習生の募集・入国手続きの支援や、受け入れ企業への指導・監査などをおこなう、国から許可を受けた非営利団体です。
監理費は、主に以下の種類に分けられます。平均的な金額目安は以下の通りです(※15)。
・初期費用(受け入れ時)
平均額: 341,402 円 / 1名
主な内訳:入国後講習費、募集・選抜費、入国後講習中の手当など・定期費用(月額)
技能実習1 号(1年目)平均: 30,551 円 / 1名
技能実習2 号(2~3年目)平均: 29,096 円 / 1名
技能実習3 号(4~5年目)平均: 23,971 円 / 1名
主な内訳:監査・訪問指導費、海外送出機関への支払い、帰国渡航費積立など・不定期費用(発生都度)
平均額(※発生した場合の目安): 154,780 円 / 1名
主な内訳:一時帰国渡航費、来日時の渡航費(初期費用に含まれない場合)など
・3年間(技能実習2号修了まで): 約 141 万円
・5年間(技能実習3号修了まで): 約 198 万円
注意点があります。受け入れ施設には、実習生のための適切な宿泊施設(寮、借り上げアパートなど)や生活備品(寝具、家電など)を確保・提供する義務があります。上記の監理費には、これらの住居関連費用は含まれていません。 そのため、実際に企業が負担する総費用は、監理費に加えてこれらの費用が必要になる場合があります。
※15引用元:出入国在留管理庁「技能実習制度及び特定技能制度の現状について」
介護特定技能外国人の採用コスト
特定技能の外国人介護人材を受け入れる施設は、法律で定められた支援計画を作成・実施する義務があります。多くの場合、この支援業務は国に登録された登録支援機関に委託されます。
特定技能外国人 1 名あたりの支援委託料(月額)の平均額は 28,386 円 です(※16)。
・人材紹介手数料: 紹介会社を利用した場合(年収の 15~30%程度が目安)。
・在留資格関連費用: 行政書士に申請代行を依頼する場合の報酬(数万~十数万円程度)。
・海外からの渡航費: 本人負担の場合もありますが、企業が負担または一部補助する場合(数万~十数万円程度)。
・海外現地での手続き費用: 送出機関への手数料や現地手続き費用(国や機関により異なる)。
費用項目すべてを網羅した公式統計データはないため、特定技能外国人の受け入れにかかる総費用を把握するには、登録支援機関への委託料に加え、利用するサービスや採用ルートに応じた上記費用を個別に確認し、見積もりを出す必要があります。
外国人介護人材の採用にかかる費用は、在留資格によって大きく異なります。
・EPA候補者は、JICWELSや各国機関への手数料、研修費など、多岐にわたる費用が必要です。
・技能実習は、監理団体への監理費(初期・定期・不定期)が主な費用ですが、住居関連費用が別途必要です。
・特定技能は、登録支援機関への委託料が中心ですが、紹介手数料や渡航費などのその他費用も考慮する必要があります。
採用コストは重要な判断材料ですが、費用だけで判断するのではなく、それぞれの在留資格の特性、受け入れ後の教育・サポート体制、定着率なども考慮し、自施設にとって最適な採用方法を検討することが重要です。
※16引用元:出入国在留管理庁「技能実習制度及び特定技能制度の現状について」
外国人介護士の採用フローと求人方法
外国人介護人材の受け入れプロセスは、選択する在留資格によって大きく異なります。これは、在留資格ごとに必要な手続きや、連携する主な関係機関(例:JICWELS、監理団体、登録支援機関など)が異なるためです。
採用をスムーズに進めるためには、検討している在留資格の具体的な採用フローを把握しておくことが重要です。ここでは、4 つの在留資格について、それぞれの採用の流れと求人方法を解説します。
在留資格「介護」の採用フローと求人方法
※17引用元:厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」
在留資格「介護」をもつ外国人介護士は、すでに日本国内に滞在しているケースが多いため、採用方法は基本的に日本人介護福祉士と同様です。主な採用フローと求人・アプローチ方法は以下の通りです。
1.求人情報の公開・アプローチ
2.応募受付・書類選考
3.面接(複数回の場合あり)
4.内定・条件提示
5.本人の在留資格変更手続きサポート
6.入社準備・受け入れ
・地域の養成校・日本語学校へのアプローチ:
近隣の介護福祉士養成校や日本語学校に留学生の在籍状況を問い合わせてみましょう。実習生やアルバイトの受け入れから協力関係を築くことも有効です。・求人募集広告の活用:
介護専門求人サイトや求人情報誌などを利用します。求人広告では、「外国人留学生の採用を積極的に行っている」旨を明確に記載すると、応募につながりやすくなります。・ハローワークや専門機関の活用:
地域のハローワークへの求人申し込みは基本的な方法です。また、主要都市(東京・名古屋・大阪・福岡)には「外国人雇用サービスセンター」があり、専門的な相談や支援を受けられます。・その他の相談窓口:
介護老人保健施設協会など、業界団体の支部が留学生受け入れ支援をおこなっている場合もあります。
在留資格「介護」を持つ外国人材の採用は、多くが国内にいるため、日本人と同様の求人、選考、面接、内定というフローで進められます。
効果的なアプローチとしては、地域の養成校や日本語学校との連携、外国人材の採用を明記した求人広告の活用、ハローワークや専門機関への相談などが有効です。
EPA介護福祉士候補者の採用フローと求人方法
※18引用元:厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」
EPA介護福祉士候補者は、日本の介護現場で働きながら国家資格取得を目指す外国人介護人材です。
公益社団法人 国際厚生事業団(JICWELS)が唯一の受入調整機関として、候補者と受け入れ施設のマッチングから入国後のサポートまでを一貫して支援します。
1.JICWELS主催の説明会への参加(必須): 年に一度開催される説明会に参加し、制度や手続きについて理解を深める
2.求人申込み: JICWELSへ求人を申し込み
3.マッチング: JICWELSが候補者と施設双方の意向を確認しマッチング
4.受入準備: マッチング成立後、雇用契約の締結や住居の手配などの受け入れ準備
5.入国・研修: 候補者は来日後、JICWELSによる導入研修などを受け配属
EPA介護福祉士候補者は実務経験を積みながら学習し、原則として滞在 4 年目に介護福祉士国家試験を受験します。合格すれば在留資格「介護」へ移行し、継続就労が可能です。不合格の場合は原則として帰国となります。
EPA介護福祉士候補者の求人は、JICWELSへの申込みが唯一の方法となります。上記の通り、まずはJICWELSの説明会に参加することが第一歩です。
介護技能実習生の採用フローと求人方法
※19引用元:厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」
技能実習制度で外国人介護人材を受け入れるプロセスには、主に海外の「送出機関」(候補者の募集・選抜などをおこなう)と、日本国内の「監理団体」(受け入れ企業への指導や実習生のサポートなどをおこなう)が関わります。
1.監理団体の選定・加入: まず、自施設に合った監理団体を探し加入
2.求人申込み: 加入した監理団体に求人を申し込み
3.候補者の選定: 監理団体が送出機関と連携して候補者を探す。受け入れ施設は、書類選考や面接(オンラインまたは現地)で実習生を決定
4.技能実習計画の作成・認定申請: 監理団体のサポートのもと技能実習計画を作成し、「外国人技能実習機構(OTIT)」(※計画の審査・認定機関)へ認定を申請
5.在留資格申請・入国準備: OTITの認定後、在留資格関連の申請
6.入国・入国後講習: 実習生は来日後、法定の入国後講習を受講
7.実習開始: 講習修了後、受け入れ施設での実習(就労)を開始
技能実習生の求人は、基本的に加入した監理団体を通じておこないます。信頼できる監理団体を選ぶことが、円滑な受け入れの第一歩となります。
技能実習のことを詳しく知りたい方は、解説記事「【介護分野】技能実習制度とは?固有要件と受け入れポイントを徹底解説!」をご覧ください。
介護特定技能外国人の採用フローと求人方法
※20引用元:厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」
特定技能の在留資格をもつ外国人介護人材の受け入れには、受け入れ施設による支援計画の作成・実施が義務付けられています。
支援計画の作成や実施には専門知識が必要で事務負担も伴うため、多くの企業は、出入国在留管理庁長官の登録を受けた「登録支援機関」に支援業務を委託しています。登録支援機関は、受け入れ企業に代わって支援計画の作成・実行や各種届出などをおこないます。初めて受け入れる企業にとって、登録支援機関への委託はスムーズな受け入れに有効な選択肢です。
1.求人・マッチング: 下記のいずれかの方法で候補者を探し、選考・内定
2.支援計画の作成: 受け入れ企業または登録支援機関が支援計画を作成
3.在留資格関連申請: (海外から呼ぶ場合)在留資格認定証明書交付申請、(国内の場合)在留資格変更許可申請
4.入国・受け入れ準備: (海外から呼ぶ場合)ビザ申請・入国。受け入れ準備
5.就労開始・支援実施: 就労を開始し、支援計画にもとづく支援
・人材紹介会社(民間職業紹介事業者)の活用
・登録支援機関への相談
・ハローワークの利用
・自社ウェブサイトや各種求人媒体での直接募集
・技能実習からの移行希望者の直接採用
特定技能の外国人介護人材受け入れには、企業による支援計画作成・実施が義務付けられており、多くは専門の登録支援機関に委託されます。人材探しは紹介会社、登録支援機関、ハローワークなどを利用します。
特定技能のことを詳しく知りたい方は、解説記事「特定技能「介護」受け入れ可能施設|完全ガイド」をご覧ください。
外国人介護士を採用する3つのメリット
受け入れ施設にとって、外国人介護士は具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、3 つのメリットの補助金制度を活用できる、若く意欲的な労働力を確保しやすい、日本人と比較して定着率が高い傾向があるについて解説します。
外国人介護士を採用するメリット1:補助金制度を活用できる
外国人人材の雇用を考える際、ビザ申請サポートや通訳・翻訳など、日本人とは異なる費用が発生することがあります。こうした経済的な負担を軽減し、外国人介護士が安心して能力を発揮できる職場環境づくりを支援するため、国は助成金制度を用意しています。
外国人人材の代表的な制度として「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」があります。これは、外国人介護士が働きやすい環境を整備する事業主に対して、その経費の一部を助成するものです。
【助成率と上限額】
要件 | 助成率 | 上限額 |
賃金要件を満たす場合 | 対象経費の 2/3 | 72 万円 |
上記以外の場合 | 対象経費の 1/2 | 57 万円 |
・通訳・翻訳費用(外部委託費、翻訳機器導入費など)
・雇用管理の専門家(弁護士、社会保険労務士など)への相談・委託費用
・多言語対応の社内標識やマニュアルなどの作成・改修費用
申請時の注意点は、助成金の申請には審査があり、支給決定まで時間がかかる場合があります。また、制度内容は変更される可能性があるため、申請前には必ず厚生労働省や管轄労働局の公式サイトで最新情報を確認しましょう。
詳しく知りたい方は、厚生労働省「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」を参照ください。
国の助成金とは別に、市区町村によっては独自の補助金制度を設けている場合があります。詳しく知りたい方は、解説記事「外国人介護人材のための補助金制度とは?|制度の仕組みや申請方法を徹底解説」をご覧ください。
外国人介護士を採用するメリット2:若い労働力を確保しやすい
公益財団法人:介護労働安定センターの調査によると、日本の介護職員の平均年齢は 48 歳であり、日本の介護職員の高齢化が進んでいます。
そのため、介護業界でも若い人材の確保は大きな課題です。このような状況において、外国人介護人材の採用は、不足する若い労働力を補う有効な手段となりえます。
外国人介護士、全体の詳細な平均年齢データはありませんが、技能実習生の年齢構成を見ると、20 歳から 24 歳が約 40%、25 歳から 29 歳が約 25% を占めており、若年層が中心であることがわかります。
※21引用元:外国人技能実習機構「外国人技能実習制度における課題等に関する調査」
若い世代が職場に加わることは、組織全体の活性化や職場環境の改善につながる可能性も期待できます。もちろん、個々の能力や意欲は年齢だけで判断できませんが、若年層の労働力を確保できる点は、外国人介護人材採用の大きなメリットと言えるでしょう。
外国人介護士を採用するメリット3:定着率への期待が持てる
日本の介護職員の早期離職は課題とされています。公益財団法人 介護労働安定センターの調査では、日本人介護離職者の約74%が勤続 3 年未満で職場を去っているというデータもあります(※22)。
※22引用元:厚生労働省「離職率・採用率の状況」
一方、外国人介護人材については、個々の勤続年数に関する統一的なデータはまだ十分ではありませんが、在留資格の制度設計を見ると、日本人介護離職者の約74%が勤続 3 年未満での退職よりは長期的な就労になっています。
・外国人介護労働者の在留期間: 「技能実習」は最長 5 年、「特定技能」も最長 5 年の就労が可能です。EPA介護福祉士候補者は、国家試験合格を目指す期間(通常 4 年)就労します。
・資格移行による長期化: 技能実習を良好に修了した人材は、特定技能 1 号へ移行できる点です。これにより、技能実習と合わせて通算で最長 10 年間、日本で介護職として働く道が開けます。また、EPA候補者や特定技能も、介護福祉士資格を取得すれば在留資格「介護」へ移行し、期間の制限なく日本で働き続けることが可能です。
外国人介護士の制度は、日本の介護職員に早期離職が見られる状況と比較して、より長期間の就労ができると言えます。制度面からは、外国人介護人材が比較的長く働き続ける期待が持てると言えるでしょう。
外国人介護士の採用におけるデメリット:失踪リスクと対策
外国人介護人材の受け入れにおいて、注意すべき点として「失踪」のリスクがあります。例えば、技能実習制度では、2023年(令和5年)に 9,753 人の実習生が失踪したと報告されています(※23)。
※23引用元:法務省「技能実習生の失踪者の状況」
しかし、失踪のリスクは、受け入れ企業側の適切な対応によって軽減できる可能性が高いです。
失踪の背景には、低賃金や劣悪な労働環境、コミュニケーション不足による孤立感、将来への不安など、様々な要因が複合的に関連している場合が多いと指摘されています。詳しく知りたい方は、解説記事「介護施設が直面する技能実習生の7つの問題」をご覧ください。
したがって、企業側が以下のような対策を積極的に講じることが、失踪リスクを減らす鍵となります。
・適正な労働条件と待遇の確保: 日本の労働関係法令を遵守し、日本人と同等以上の賃金や労働時間管理を徹底
・良好なコミュニケーションと人間関係の構築: 定期的な面談、相談しやすい雰囲気づくり、文化や習慣への理解促進
・監理団体や登録支援機関との緊密な連携: 問題の早期発見と解決に向けて協力
外国人介護士を単なる「労働力」としてではなく、尊重すべき「仲間」として真摯に向き合い、働きやすく安心して生活できる環境を提供することが、結果的に失踪を防ぐ有効な対策となります。
2つの失敗から学ぶ!外国人介護士への「説明」のポイント
外国人介護士の受け入れは、人材確保や多様性促進の観点から多くの介護施設にとってメリットがあります。しかし、コミュニケーション不足や事前の認識合わせが不十分だと、双方にとって不幸な結果を招くケースも少なくありません。
最悪の事態を避けるには、受け入れ前の「丁寧な説明」が重要です。認識のずれや誤解は、後々の大きなトラブルの原因となりえます。
ここでは、受け入れがうまくいかない施設に共通して見られる「説明」における課題を 2 点取り上げます。そのうえで、外国人介護士との相互理解を深めるための具体的な説明事例を解説します。
失敗①:給与に関する説明が不十分
外国人介護士へ賃金について説明する際には、文化や制度の違いを前提とした、より丁寧なコミュニケーションが大切です。日本の税金や社会保険の仕組みは、彼らの母国の制度と大きく異なる場合が多いためです。
例えば、給与から税金や社会保険料が差し引かれる「天引き」の仕組み自体、外国人介護士にとっては初めて聞く概念かもしれません。
そのため、以下のような点について、疑問や不安を感じやすいようです。
・なぜ給与が「基本給」など様々に分かれているのか?
・「通勤手当」や「住宅手当」など、各種手当は何なのか?
・なぜ、総支給額から税金や社会保険料などが差し引かれるのか?
これらの点を曖昧にしたまま雇用すると、「事前に聞いていた話と違う」「なぜこんなに引かれるのか」といった不信感やトラブルにつながりかねません。
安心して気持ちよく働いてもらうためには、雇用契約を結ぶ最初の段階で丁寧に説明し、しっかりと納得してもらうことが非常に重要です。
以下は、厚生労働省が示している外国人人材向けの賃金説明の例文です。「やさしい日本語」で書かれており、給与明細を見せながら説明する際の参考になります。
— (ここから引用) —
【給与に関する説明事例(やさしい日本語)】
・給料をもらうとき、会社からもらう紙があります。これを「給与明細」といいます。給与明細を見てみると、あなたの給料が何円かわかります。
・あなたの給料は、「基本給」と「手当」と「割増賃金」を合わせたものです。
・「基本給」は、最初から決まっている給料です。毎月、同じです。
・「手当」は、あなたに、会社が決めた理由があるときだけ、会社がはらう給料です。たとえば、「資格手当」があります。あなたが仕事の役に立つスキルの資格をもっていたら、「基本給」とは別に、「資格手当」がもらえます。(※その他、通勤手当、住宅手当など、貴社で支給する手当があれば具体的に説明しましょう)
・「割増賃金」は、法律で決まっている時間より長く仕事をしたり、休みの日に仕事をしたときに、会社がはらう給料です。毎月、同じではありません。(※残業代、休日出勤手当などのことです)
・会社は、あなたの給料から、あなたの税金(所得税、住民税など)と社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料など)のお金を引きます。そして、あなたの代わりに、あなたの税金と保険のお金を、国や市役所などに払います。これは、日本の法律で決まっています。あなたが実際に受け取るお金(手取り額)は、税金と保険のお金が引かれた後のお金ですから、給与明細の「総支給額」より少なくなることを覚えておいてください。
— (引用ここまで) —※24引用元:厚生労働省「外国人社員と働く職場の労務管理に使えるポイント・例文集」
・給与明細の実物を見せる: 必ず実際の給与明細を見せながら、どの項目が例文のどの言葉に対応するのか、具体的に指し示しましょう。視覚的に理解を助けます。・対話を心がける: 一方的に説明せず、相手の表情を見ながら「ここまでで分からないことはありますか?」など、こまめに問いかけ、質問しやすい雰囲気をつくりましょう。・具体的な手当や控除項目を補足する: 例文は基本的な内容です。実際に支給される手当の種類や、控除される税金・社会保険料の名称などを具体的に補足説明することが重要です。・質問を歓迎する姿勢を示す: 最後に「後で分からなくなっても、いつでも聞いてくださいね」と伝え、疑問点を解消しやすい関係性を築くことが、相手の安心感につながります。
失敗②:就業時間の説明が不十分
日本の職場には、始業時刻にスムーズに業務を開始できるよう、少し早めに出勤して準備をおこなう慣習が見られることがあります。
これは「5分前行動」といった考え方や、遅刻に厳しい文化的背景も影響しているかもしれません。そのため、始業前の準備時間を労働時間とみなさない場合もあります。
一方、国や文化によって時間に対する考え方は様々です。日本とは異なり、定刻丁度に行動を開始する文化や、時間に対してより柔軟な文化もあります。
そのため、外国人介護士の中には、「9時始業」なら「9時ちょうどに職場に到着すれば良い」と考える人もいます。彼らの文化では自然なことであり、時間にルーズという意味ではありません。まず、こうした文化的な違いがあることを理解しておくことが大切です。
このような認識の違いによる誤解を避け、全員が気持ちよく業務を始めるためには、受け入れ施設側が始業時間に関するルールを明確に伝える必要があります。以下の点は、はっきりと説明しましょう。
・「9時始業」は、「9時に業務を開始できる状態」を意味するのか、「9時に出社」を意味するのか?
・始業前に着替えや準備が必要な場合、具体的に何分前までに出勤する必要があるのか?
・遅刻・欠勤する場合の連絡方法(いつ、誰に、どのように連絡するか)は?
丁寧に説明し、認識を合わせることが、円滑なコミュニケーションと良好な職場環境の構築につながります。
以下は、厚生労働省が示している外国人介護人材向けの就業時間説明の例文です。「やさしい日本語」で書かれており、ルールを伝える際の参考になります。
— (ここから引用) —
【就業時間に関する説明事例(やさしい日本語)】
・この会社で仕事が始まる時間は 9 時です。「仕事が始まる時間」は、あなたが、いつも仕事をする場所で、仕事を始める時間です。会社に着く時間ではありません。あなたは、9 時に、いつも仕事をする場所にいて、仕事を始めなければなりません。会社が決めた服に着替えたり、道具を準備したりすることは、9 時より前に終わらせてください。
・仕事が始まる時間に遅れてはいけません。日本の会社では、時間に遅れることは、約束を守らないことだと考えられます。遅刻が多いと、周りの人に迷惑がかかったり、信頼を失ったりするかもしれません。時間を守ることは、あなた自身の評価にもつながります。
・電車やバスが遅れたり、病気などあなたの理由で、会社に遅れそうなときは、それがわかった時点ですぐに、会社に電話で連絡してください。「遅れること」と「遅れる理由」「どのくらい遅れそうか」を伝えてください。(例:もし電車が止まって「遅れるかもしれない」と思ったら、すぐに電話してください。遅れるかどうか、はっきりわからなくても、まず連絡することが大切です。)あなたが連絡なく会社に来ないと、みんなが心配しますし、仕事の段取りも変更しなければならず困ることがあります。
— (引用ここまで) —※25引用元:厚生労働省「外国人社員と働く職場の労務管理に使えるポイント・例文集」
・具体的な場所と時間を示す: 「9時に仕事をする場所」がどこなのか、着替えや準備にどれくらい時間がかかり、何時までに出勤する必要があるのかを具体的に伝えましょう。・遅刻連絡のルールを明確に: 「誰に(連絡先の担当者名)」「どの電話番号へ」「いつ(遅れると分かった時点ですぐ)」「何を(氏名、遅刻理由、到着予定時刻など)」伝える必要があるのかを、具体的に説明し、メモを渡すなどの工夫も有効です。・文化的背景の違いに配慮する: 日本の慣習を一方的に押し付けるのではなく、「日本では時間を守ることが信頼につながる」といった形で、理由を添えて説明すると理解を得やすくなります。
外国人介護士の受け入れを成功させるためには、給与や就業時間といった基本的なルールについて、文化や制度の違いを踏まえた丁寧な説明が不可欠です。こうした事前の丁寧なコミュニケーションが、相互理解を深め、外国人介護士が安心して長く活躍できる職場環境づくりにつながります。
外国人介護士を指導する3つのポイント
外国人介護士が日本の介護現場で能力を発揮し、安心して働き続けるためには、多角的な指導とサポートが欠かせません。文化や習慣の違いを理解し、個々の状況に合わせた丁寧なアプローチが求められます。
ここでは、「仕事」「言語」「生活」の3つの側面における具体的な支援のポイントについて解説します。
指導のポイント①:仕事面でのアプローチ
外国人介護士が日本の介護現場にスムーズに適応し、着実にスキルアップしていくためには、計画的かつ具体的な仕事面のサポートが重要です。
効果的なアプローチの一つとして、広島県で行われている取り組みが参考になります。この取り組みでは、外国人介護士の「月ごとに達成すべき具体的な目標」を設定することから始めています。次の図をご参照ください。
※26引用元:広島県の健康福祉局「外国人介護人材受入のためのガイドブック」
この目標により、本人も指導者も、毎月何を目指して業務に取り組むべきかが明確になり、段階的なスキル習得につながりやすくなります。
外国人介護士への仕事の教え方は、言語や文化の違いから理解や習得に時間がかかることを念頭に置き、丁寧で分かりやすい指導を心がけることが大切です。以下の4つのステップで進めるのが効果的です。
・まず、相手がリラックスして学べる雰囲気を作り
・これから教える作業が具体的に何の作業なのかを明確に伝える
・その作業について、どの程度知っているか(経験や知識の有無)を確認
・「この作業を覚えたい」という意欲を引き出すように働きかけ
・作業の手順を一つずつ言葉で説明しながら、実際にやって見せる
・必要であれば、重要なポイントを指し示すなど、視覚的にも分かりやすく伝える
・実際に本人に作業をしてもらい、間違いがあればその場で修正
・作業をしながら、その手順や意味を説明してもらうことで、理解度を確認
・本人が完全に理解できるまで、繰り返し実践してもらい確認
・一人で仕事(作業)に取り組んでもらう
・困ったときや分からない時に誰に聞けばよいか、相談相手を明確にしておく
指導のポイントとして、外国人介護士は日本人以上に理解や習得に時間がかかる場合があります。そのため、焦らず、丁寧に、分かりやすく、本人が納得するまで粘り強く指導することが大切です。すぐにできなくても「待つ」姿勢を意識しましょう。
指導のポイント②:言語学習のサポート体制とリソース
厚生労働省は、外国人介護士の日本語学習支援に力を入れています。介護の専門的な日本語を効果的に習得し、質の高いケアを提供できるよう、自律的・計画的な学習を促進するWebコンテンツを提供しています。
※27引用元:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」
これらのWebコンテンツを活用することで、外国人介護士は自身のレベルやスキルに合わせて学習計画を立て、継続的に日本語能力を高めることができます。
<主な学習支援コンテンツ>
指導のポイント③:生活面での情報提供
出入国在留管理庁は、日本で生活する外国人材向けに『生活オリエンテーション動画』を制作し、オンラインで公開しています。
※28引用元:出入国在留管理庁「生活オリエンテーション動画」
この動画では、住まい、仕事、教育、医療、防災、各種手続きなど、生活に必要な基本ルールや役立つ情報が視覚的に分かりやすくまとめられています。YouTubeで公開されており、いつでも視聴可能です。
外国人介護士の課題は定着率!定着率UPには「介護福祉士」の資格取得を促すこと
多くの外国人介護士には在留期間に制限があるため、受け入れ施設にとって人材の『定着』は重要な経営課題です。その定着を促す鍵となるのが、国家資格である『介護福祉士』の取得です。
資格を取得すると、在留資格『介護』への移行が可能です。在留資格「介護」になると、日本の永住権取得や家族帯同の道も開かれ、生活基盤の安定につながります。しかし、介護福祉士国家試験は簡単なものではありません。近年の合格率は以下の通りです。
対象 | 合格率 |
外国人介護士 | 37.9% |
日本人介護士 | 78.3% |
※引用元:厚生労働省「第37回介護福祉士国家試験の試験結果」
外国人介護士と日本人介護士の介護福祉士試験合格率に見られる約40%の差は、日本の介護制度や文化への深い理解を前提としているため、外国人介護士にとって知識習得の大きな壁となっている状況を示しています。
この難関を突破できるよう、施設が外国人介護士の資格取得をいかに支援し、合格へ導くかが、人材の安定確保と定着を実現する上で極めて重要です。
まとめ
日本の急速な少子高齢化は介護業界に深刻な人材不足をもたらしており、国内人材だけではサービスの維持が困難になる見込みから、外国人介護士の活用が重要な解決策として期待されています。しかし、円滑な受け入れには、事前の体制整備、文化や言語の違いを乗り越える知識、そして入念な準備が欠かせません。
現在、外国人介護士は日本の介護現場を支える貴重な存在であり、その受け入れは主に在留資格「介護」、EPA介護福祉士候補者、技能実習、特定技能という4つの在留資格を通じて行われています。これらは目的や要件、滞在可能期間、求められる日本語能力レベル(N5からN2まで段階があり、コミュニケーション能力に大きく影響)が異なります。
外国人材を採用する際には、まず不法就労を防ぐための在留カード確認が法的義務であり、就労可能な資格か、期間は有効かなどを厳しくチェックする必要があります。また、ハローワークへの外国人雇用状況の届出も義務付けられています。労働基準法などの日本の労働ルールは国籍に関わらず等しく適用されるため、日本人と同等以上の待遇を確保し、誤解が生じないよう丁寧に説明することが重要です。
人員配置基準上の扱いも資格によって異なり、在留資格「介護」や「特定技能」は就労開始時から算定できますが、「技能実習」や「EPA」は原則6ヶ月後(N2取得者は例外)となります。さらに、2025年4月からは「技能実習」や「特定技能」の人材も一定条件下で訪問系サービスに従事できるようになります。
給与設定においては、日本人と同等以上の処遇が法的に義務付けられており、資格の有無や経験、技能レベルに応じて決定されます。在留資格「介護」が最も高い傾向にあります。採用コストは在留資格によって大きく異なり、EPAではJICWELSへの手数料、技能実習では監理団体への監理費、特定技能では登録支援機関への支援委託料などが主な費用となります。
受け入れ失敗の多くはコミュニケーション不足に起因し、特に給与(天引きの仕組み等)や就業時間(日本の時間感覚)に関する説明不足がトラブルを招きやすいため、文化差を理解した上で「やさしい日本語」などを用いた丁寧な事前説明が極めて重要です。
受け入れ後の指導においては、仕事面では段階的な目標設定と丁寧な実技指導、言語面では公的な学習リソースの活用支援、生活面ではルールや手続きに関する情報提供といった多角的なサポートが求められます。
そして、外国人介護人材の多くが在留期間に制限を持つ中で、真の定着を実現するための鍵となるのが、国家資格である「介護福祉士」の取得です。外国人にとって合格は容易ではありませんが、資格取得は在留資格「介護」への移行、ひいては永住や家族帯同の道を開き、生活基盤の安定につながります。したがって、施設側が資格取得を積極的に支援し、合格へ導く努力をすることが、人材の安定確保と長期的な定着を実現する上で最も重要な課題と言えるでしょう。